Windows LiveのWebサービス、および、クライアントアプリケーションが、ともに最新版となって生まれ変わった。まだ、Betaを称しているが、大きな変更が加えられ、クラウド系サービスとクライアントを密接につなぐ重要なソリューションとなっている。そして、これは、そのまま7の世界につながっていくことになる。 ●新しくなったWindows Live 現在、Windows Liveを活用するためのアプリケーションとしては、Messenger、メール、フォトギャラリー、ムービーメーカー、Writer、Toolbar、ファミリーセーフティなどが提供されている。これらのアプリケーションはWindows Liveサイトの「ダウンロードBeta」から入手できる。ダウンロードサイトの名前にまでBetaがついているのはご愛敬だが、ここでおすすめパックをダウンロードし、それを起動することで、任意のアプリケーションを選択してインストールすればいい。 今回のLiveの刷新で、大きく変わったのは、ストレージに関する考え方だ。Windows Liveには、従来からSkyDriveというサービスが用意され、任意のファイル等を保管しておくことができていたが、このストレージがフォトなどを保存する領域として使われるようになり、すべてを合わせて25GBが自由に使えるようになった。従って、フォトサービスでオンラインアルバムに写真を登録してから、SkyDriveを覗くと、フォトサービスに登録した写真のファイルがそこに見えるはずだ。 また、クライアントアプリケーションのフォトギャラリー上で写真を選択し、メニューからオンラインアルバムにアップロードを指示し、フォルダ名とアクセス権を設定するだけで、簡単にオンラインアルバムを作ることができる。 さらに、Microsoftは、サイドバーガジェットとして「Windows Live フォトガジェット」を提供、ファイルをサイドバー上のガジェットにドラッグするだけで、アルバムに写真を追加できるようにもしていて、ダウンロードページから入手できるようになっている。ただ、このページはいったいどうやって見つけたらいいのか、よくわからない。ニュースリリースが出たから知ることができたものの、普通にLiveのサービスを使っているユーザーは、きっと存在に気がつくことはできないだろう。 今回のクライアント用アプリケーションの刷新については、11月の中旬にニュースリリースが出て12月からの提供がアナウンスされた。その約束通りの発表だが、本当なら、このタイミングでのニュースリリースの方がよかったんじゃないだろうか。 このあたりのチグハグさに、Liveサービスが抱える根の深い問題を感じる。今回のアップデートで、さらにバージョンの上がったOutlook Connectorも、以前から何度かこのコラムでレポートしているが、まだ、不具合を抱えたままだ。Outlookとの間でメールとカレンダーの同期ができるはずなのだが、同期時にエラーが発生してしまう。今回新しくなったメールアプリケーションでは、メールもカレンダーもうまく同期できるので、問題は、Outlook Connector側にあるのだろう。いったい何年かければうまく動くようにできるのだろう。 ●Live SkydriveとLive MeshとLive Sync Windows 7には、Vistaで標準アプリケーションだったWindowsメールやWindowsカレンダー、Windowsフォトギャラリーなどが添付されなくなる。これらのアプリケーションを使いたい場合は、Liveサービスの一環として提供されている各アプリケーションをダウンロードしてインストールすることになるようだ。 つまり、Microsoftが以前から提唱している「ソフトウェア+サービス」というコンセプトを、こうした形で提案する目論みのようだ。ソフトウェアとしてのOSと、クラウド系のサービスとしてのLiveを合わせ、それらをつなぐノリとして、クライアント用アプリケーションを提供、その全体がWindowsであるとするという考え方だ。 ただ、現在のMicrosoftが、似たような機能を、複数の異なるサービスで提供している点も気になる。いったい、どれが残るのか、いま一つ見えてこないのだ。 たとえば、SkyDrveはストレージサービスだが、その基本的なUIはWebかフォトギャラリーのようなクライアントのみで、Windows OSとの親和性は重視されていない。ところが、Microsoftは、日本語化こそされていないが、SkyDriveとは別に、Live Meshと称するサービスを提供している。こちらは、クラウド上にデスクトップを作ることができ、そのデスクトップとクライアントPC上のフォルダを同期させることができるようになっている。デバイスとしてのクライアントPCは、複数台を登録することができ、結果として、クラウド上のデスクトップに置いたフォルダの内容は、すべてのPCで同一に保たれたものを、オンラインでもオフラインでも読み書きすることができるようになる。 クラウド上のデスクトップに作成したフォルダは、クライアントPC上では、デスクトップに表示されるほか、個人用フォルダにも「Live Mesh Folders」という名前のフォルダができる。このフォルダは、通常のファイルシステム内に作成したフォルダとほとんど同じように扱うことができる。つまり、OSから見たときに、通常のフォルダと同じように見えて、フォルダの新規作成やファイルの編集、参照、削除、作成といったことが、どのアプリケーションからもできるわけだ。 その一方で、従来のFoldershareのサービスが、Windows Live Syncとしてリニューアルした。驚いたことにすでにヘルプも含めて日本語化が完了し、クライアントソフトをインストールすれば、複数台のコンピュータ間でフォルダ内容を同期することができるようになる。 ●Windows 7がもたらす世界に、Liveサービスは調和できるのか これら一連のサービスが提供されていることを見ると、Windows 7のやろうとしていることの一面が見えてくる。 例えば、Windows 7では、従来の個人用フォルダがライブラリフォルダと呼ばれるようになるようだ。英語版しか手元にないので、日本語訳がどうなるかわからないが、スタートメニュー内で、ユーザー名が表示され、現在「個人用フォルダ」と呼ばれている項目にマウスポインタをホバーさせると「Libraries Folder」という表記を確認できる。 実は、Windows 7のこのフォルダ直下には、ユーザーが自由にファイルを作成することはできない。コマンドプロンプトで強引にファイルを作っても、開いたウィンドウ内にはそれが表示されないのだ。つまり、個人用フォルダは、ドキュメントやフォト、音楽といった用途別ライブラリの置き場として機能する。 だから、新たにフォルダを作ることはできないが、ライブラリを作ることはできる。そして、デフォルトで用意されたライブラリ、新規に自分で作ったライブラリには、自由にファイルを作成したり保存したりすることができる。 注目すべきは、これらのライブラリも純粋なフォルダではないという点だ。というのも、これら個々のライブラリのプロパティを開くと、そのライブラリに含まれるフォルダを指定できるようになっているからだ。 これは、今までの場所タブと同じようだが、ここでは複数のフォルダを指定しておくことができる。つまり、ライブラリは複数のフォルダに分散するファイル群を、そのフォルダ位置に関係なく、フラットに参照することができる一種の検索フォルダ的なものと考えることができる。ちなみに、複数のフォルダを設定した場合は、Save Folderとしてどれかを指定しておき、新規に作成したり、他のフォルダからコピーや移動したファイルやフォルダはそのSave Folderに保存されることになる。 例えば、複数のフォルダの1つとして、Meshサービスのフォルダを指定しておけば、複数台のPCから、同一のライブラリを使えるような環境ができあがる。現在のMeshサービスでは、ファイルの総容量が5GBに制限されているが、将来的に、今のSkydriveのように25GBといった容量が許されるようになれば、コンピュータそのものの使い方にも影響を与えるようになるだろう。まさに、クラウドの時代を予感させるサービスだし、Windows 7との親和性も感じられる。今のLiveには、こうした先進性が欠けているようにも思う。7とLive、そしてLive内の調和がうまく機能するまでには、まだ少し時間がかかりそうだ。きっとそれまでは、Betaがとれることはないのだろう。
□Windows LiveダウンロードBeta
(2008年12月19日)
[Reported by 山田祥平]
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