平澤寿康の周辺機器レビュー

第11回 【特別編】バッファローのSSD搭載NAS開発者インタビュー
〜静音から無音への挑戦


 



バッファロー「LinkStation Mini LS-WSS240GL/R1」

12月下旬 発売

希望小売価格:111,300円



 2.5インチHDDを採用することで手のひらに乗るコンパクトボディを実現するとともに、ファンレス仕様で優れた静音性を実現したことで注目を集めた、バッファローのNAS「LinkStation Mini」。そのLinkStation Miniシリーズに、SSDを採用する最新モデル「LS-WSS240GL/R1」が登場することになった。2.5インチHDDではなくSSDを採用することで、無音に近い静音性を実現したとされるこの新モデルは、どういった意図で用意されることになったのか、バッファローで話をうかがってきた。

●耳を当ててもわからないほどに静か

バッファロー 松崎真也氏

 「見た目は全く変わらないので、そういう部分での面白さはないんですが、“静か”というところに、今回の製品は大きな特徴があります」。こう語るのは、事業本部 市場開発事業部 NASマーケティンググループリーダーの松崎真也氏だ。

 従来よりユーザーから、静かなNASが欲しいという要望があったそうだ。そういった中で出てきたのが、2.5インチHDDを採用し、ファンレスを実現したLinkStation Miniであった。そして、実際にLinkStation Miniはかなり好評を得たそうだが、それではまだ満足していなかったようだ。

 今年後半になって、SSDの大容量化と低価格化の波が押し寄せてきた。しかもSSDは、駆動部分が一切なく、基本的に無音で利用できる。当然、静音化を突き詰めようとすると、SSDは非常に好都合となる。

 「SSDが登場して来たことで、『これは無音ができるんじゃないか』という想定で、トライしてみることにしました」(松崎氏)。

 また、SSDを採用することによるメリットがもう1点ある。それは、振動がなくなるということだ。2.5インチHDDであろうと、稼働中にはどうしても振動が発生してしまい、その振動が筐体や周囲の物体に伝わって音が発生してしまう。しかしSSDであれば振動は発生しないので、振動が原因の音も完全に消すことができる。

 ただ、残念ながら、完全な無音は達成できなかったそうだ。「実は、内部の電子部品、特にDC/DCコンバータなどの回路が若干の音を出してしまうんです」。こう語るのは、市場開発時業務 次長 エンジニアの大屋誠氏だ。

 とはいえ、その音は非常に小さいものだ。HDDを搭載する従来のLinkStation Miniでは、アイドル時で約17dBほど、シーク時で19dBほどであるのに対し、LS-WSS240GL/R1では、アイドル時で0.4dB、アクセス時で2.3dB。この数字を比べるまでもなく、圧倒的に静かなことがわかるだろう。ただし、法規によって、この数値でも「無音」と称することはできないそうだ。

 松崎氏は、「騒音の測定は、無音室の中で1mの距離で測るのですが、その距離離れると人間の耳では正直ほとんど聞こえません。測定器でやっと拾える程度の音でしかありません」と語っていたが、確かに実際に製品を見せてもらっても、動作音は全く聞こえなかった。しかも今回、かなり静かな会議室で見せてもらったのだが、動作中のLS-WSS240GL/R1を耳に当てても、周囲の音に紛れて、動作音は全く認識できなかったほどで、無音と言ってしまってもいいと感じるほどだった。

 もちろん、手に持っても振動は一切感じない。はっきり言って、正面のランプがなければ、動作しているかどうかもわからないほどで、とにかくこれまでのNASとは次元の違う静音性が実現されていることは間違いない。また、手にしてみると、とても軽い。HDDが入っていないケースのみの状態かモックアップのように感じる。

●オーディオ用途をターゲットに

バッファロー 大屋誠氏

 では、なぜこのような静音性を追求したNASを実現したのか。その問いに大屋氏は、「AV系の用途も想定していないわけではないですが、今回はオーディオのお客様をターゲットとして考えています」と答えてくれた。

 AV用途でNASを活用している具体的な例は、東芝の液晶テレビ「REGZA」シリーズが挙げられる。REGZAの一部機種では、NASやUSB接続のHDDを利用してテレビ番組の録画が行なえるため、リビングルームにREGZAとともにNASやHDDを置く例が増えている。その場合にNASやUSB HDDの騒音が気になるという声もあるのでは、と思ったのだが、実はそうではなかった。

 「REGZAの場合では、音だけではなく映像にも集中するので、NASやHDDの音はほとんど気にならないのです。しかし、音楽では音にだけ集中しますので、他の小さな音や振動が重要なポイントになってくるんです」(大屋氏)。

 筆者は、オーディオの世界に疎いため、オーディオ用途と聞いたときはピンと来なかったが、高級オーディオメーカーの「LINN」などが、既にネットワーク対応のオーディオ機器を発売しており、そういったオーディオ機器では、PCやNASで管理しているデータを再生できるような機能が備えられているそうなのだ。「そういったオーディオ機器メーカーさんは、DLNAに対応して、ネットワークHDDとデータのやりとりをしつつ再生するという方向にシフトしつつあるのです」(大屋氏)。

 例えば、CDからリッピングしたデータをNASに蓄積し、NASからそのデータをネットワーク経由で転送しつつ再生できるというわけだ。しかも、そういった機能を実現しているのは、高級オーディオの世界が中心なので、ちょっとした騒音でも問題視される可能性が高い。

 「音楽関係のお客様からのニーズで、あえてSSDを使って音にフォーカスしました」とは大屋氏の言葉だが、高級オーディオ分野での利用では、LS-WSS240GL/R1の優れた静音性は非常に大きな魅力になるはずだ。

 また、SSDを採用することで温度の面でのメリットもあるそうだ。HDDは高温に弱いものの、SSDは比較的高温下でも比較的安定して動作する。つまり、高温となる環境での利用に適しているというわけだ。「耐温度という面では、HDDよりもSSDのほうが優れています。ですので、オーディオ機器を設置しているラックの中に閉じ込めるような形での利用でもメリットがあると思います」(松崎氏)。


●SSD以外の基板の構成などは従来と同じ

SSDモデルは黒のみ、HDDモデルは白と黒の2色。左がSSDモデルだが、外観だけではわからない

 LS-WSS240GL/R1は、内部の基板の構成は従来のLinkStation Miniと全く同じだそうだ。つまり、LinkStation MiniのHDDをSSDに交換しただけに近い構成というわけだ。ネットワークインターフェイスがGigabit Ethernet対応である点や、120GBのSSDが2台搭載されており、RAID 0(ストライピング)またはRAID 1(ミラーリング)で運用できる点も、もちろん同じだ。

 ただし、基板が同じということで、せっかくSSDを採用しているものの、速度はHDDモデルとほとんど変わらない。これは、コントローラがボトルネックとなっているためだ。また、速度の面だけでなく、消費電力についてもほとんど変わらないそうだ。SSDには多数のNANDフラッシュメモリチップが搭載されている(LS-WSS240GL/R1に採用されているSSDでは1基あたり16チップ搭載する)ため、HDDとほとんど変わらない電力を消費してしまうのだという。

 「もともとのコンセプトでは、『無音』と『省電力』というものがありまして、HDDのようにモーターがないので期待は大きかったのですが、現時点では予想外にSSDの消費電力が大きくて、HDDモデルよりもほぼ同じか若干減る程度です」(松崎氏)。

 ただ、大屋氏が「現在利用しているSSDは、将来省電力化が図られる予定で、その世代になるとSSDの消費電力が半分になります」と語っていたように、SSDの消費電力については近い将来改善される方向のようだ。そのため、将来的にはSSD採用によって低消費電力がメリットとしてクローズアップされることになるだろう。

 なお余談だが、現在のLinkStation miniは、HDDを交換してもフォーマットする機能が公開されていないため、ユーザー側でHDDをSSDに交換しても、認識させることはできない。製品保証上しかたのないことだが、ユーザー側で交換可能なキットの登場も期待したいところだ。

●今後の価格低下と大容量化に期待

 このようにLS-WSS240GL/R1は、HDD搭載モデルと比較して、音以外のメリットは正直あまりないように思える。松崎氏も、「せっかくのSSDを生かし切れていない部分があるとは正直思っています。ただ、速度を優先される方と、音を優先される方とではニーズが異なりますし、NASではネットワークまわりがボトルネックになりますので、速度よりも音が静かであったり振動がしないという点への要望が増えています。そこに注目して今回の製品に仕上げました」と語っていたが、今回の製品に関しては、あくまでも究極まで静音性にこだわって製品化したプレミアムモデルとして、従来のLinkStationシリーズとは異なるコンセプトの製品と考えるべきだろう。

 それは価格からも容易に想像できる。LS-WSS240GL/R1の販売価格は、定価が111,300円。おそらく実売価格は10万円を若干切る程度になると思うが、SSDを2台搭載しているとはいえ、120GB×2台、計240GBという容量を考えると、かなり高価な印象だ。バッファローも、「確かに(価格は)高めではありますが、こういう部分にこだわりたいという方に対しては、十分投資できる金額になっているとは思います」(松崎氏)と、LS-WSS240GL/R1をマスマーケット市場で売れる製品とは考えていないようだ。

 とはいえ、今後のさらなるSSDの大容量化と価格の低下によっては、一般用途をターゲットとし、比較的購入しやすい価格設定のSSD採用NASの投入も十分に期待できる。「現状では、まだ価格も高く容量も少ないですので、手を出せる人も限られるでしょう。しかし、(NASの)音がうるさいという声はかなりあります。(SSDが)大容量になって値段も下がれば、多くの人がメリットを享受できるようになります。そういった意味で、この先楽しみなものが出てきたな、と思っています」と松崎氏は語っていた。ユーザーにとっても、今後の展開が非常に楽しみになったと言っていいだろう。

□バッファローのホームページ
http://buffalo.jp/
□ニュースリリース
http://buffalo.jp/products/new/2008/000874.html
□製品情報
http://buffalo.jp/products/catalog/storage/ls-wsgl_r1/
□関連記事
【12月10日】バッファロー、小型NAS「LinkStation Mini」にSSD搭載モデル
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/1210/buffalo1.htm

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(2008年12月15日)

[Reported by 平澤寿康]


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