工人舎「SH6KT12A」ミニレビュー
11月14日 発売 価格:69,800円~ 工人舎は、モバイルノートPC専業のメーカーで、2006年に発売されたAMD Geodeベースの「SA1」は、当時としては画期的な10万円を切るミニノートとして人気を集めた。 ただ、その後はワンセグ/光学ドライブ/SSD/GPSの搭載など、高機能高価格路線を進んでしまったことと、ネットブックの登場により5万円台でモバイル可能なノートPCが当たり前になったことから、なんとなく印象が薄れていた。モバイルノートのメインストリームからはちょっと外れ、こだわりのある人向けの、やや特殊な製品という雰囲気が強くなっていた。 しかし、11月14日に発売された「SH6KT12A」は、HDD/メモリを増強しながら、価格を69,800円と2万円引き下げてきた。ネットブックとしては、やや高価ではあるが、タッチスクリーン機能やワンセグチューナ搭載という機能を考えれば、検討に値する範囲に戻ってきた印象だ。現在でも、モバイルPCとして魅力的な存在なのか、改めてレビューしてみよう。 ●ハードウェアはほぼ従来通り 「SH6」シリーズの原型である「SH6KB04A/SK6WB04A」は2007年6月に登場している。CPUにIntel A100(600MHz)、チップセットにIntel 945GU Express(ビデオ機能内蔵)を採用し、Intel Ultra Mobile Platform 2007に準拠している。Atom登場以前の当時としては先端のモバイルプラットフォームだ。A100は、簡単にいえばDothanベースのPentium Mだと思えばよい。 今年(2008年)3月にモデルチェンジされた際に、OSがWindows Vista Home BasicからWindows XP Home Editonになり、価格が89,800円に下げられた。型番は「SH6KX04A/SH6WX04A」だ。 今回の「SH6KT12A」は、この製品のHDDを40GBから120GBに、メモリを512MBから1GBに強化されている。以前のモデルでこの仕様にすると94,800円になっていたので、今回の69,800円はかなりのバーゲン価格と言ってよいだろう。 逆に言えば、ハードウェア面では、ほぼ1年半前の登場時からほとんど変わっていない。
●回転型液晶で、3通りの操作 「SH6」の最大の特徴は、回転型のタッチスクリーン液晶だろう。この液晶は通常のノートPCと同様に使えるほか、液晶を裏返して本体と一体化することで、タブレットPCとしても使用できる。いわゆるコンバーチブル型のタブレットPCなのだ。 タブレットPCとして使用する場合、本体に内蔵されているスタイラスペンによる操作が中心となる。ただし、OSは素のままのWindows XPなので、特にペンに向けた機能は用意されていない。 さらに、SH6では液晶の左右にポインティングデバイスとマウスボタンも備えているので、左右の手を放さずに操作することもできる。通常のキーボード+タッチパッドも加えれば、3通りの操作が可能なのだ。 ネットブックの主流が、低価格な普通のノートに向かっているのに対し、SH6は立ったままでの操作を考慮しており、モバイルで使うことを想定して製品と言えるだろう。
●2通りのアンテナが付属するワンセグチューナ SH6のもう1つの特徴がワンセグチューナの搭載だ。視聴はNew Softの「Presto! PVR for Kohjinsha」で行なう。アンテナはロッドタイプと、電波が弱い時用の外部アンテナの2種類が付属してくる。 残念なのはロッドアンテナが内蔵できず、取り外し式なことで、使わないときは付属の布製ケースのポケットにしまっておくようになっている。もともとは、スタイラスペンをしまっておくためのポケットだったところだ。取り付けたままにしておくこともできるが、ネジなどで留まっているわけではないので、抜け落ちが心配だ。 受信感度は、印象としては、最新のUSBワンセグチューナとあまり変わらない。ビルの窓際では、電波の弱いTOKYO MX(MX TV)以外は視聴できる状態で、外部アンテナを窓にくっつけるとMXも視聴できるというところだ。 個人的な感想としては、アンテナが収納型ではなく、取り付ける操作が必要なので、あまり内蔵しているメリットは感じなかった。付属のアンテナ類やソフトがなくなることで、少しでも安くなるなら、そういうモデルもほしいところだ。
●パフォーマンス 600MHzのA100がCPUなので、パフォーマンスを心配していたのだが、OSが軽いWindows XP Home Editonということもあって、WebのブラウジングやYouTubeの通常品質の動画再生は問題なく視聴できる。ただし、ニコニコ動画はコメントが多いと、コマ落ちしてしまう。 なお、Windows XPは通常版ではなくULCPC版になっている。これも、価格が安くできた理由の1つだろう。 メモリは1GB搭載されているが、128MBはビデオメモリとして取られている。メモリスロットは本体底面から簡単にアクセスできるのだが、チップセットのIntel 945GU+ICH7Uでは、1GBが上限なので、これ以上強化することはできない。しかし、実用的には十分なので問題にはならないだろう。 120GBになったHDDは、54GBずつCとDの2つのパーテーションに分けられている。Cドライブは約48GB、Dドライブは丸ごと空いているので、容量は十分だろう。なお、SH6シリーズは2.5インチHDDを使用しているため、アクセス速度に不満は感じない。 使っていて引っかかったのは、無線LANの操作ぐらいだ。ハードウェアのスイッチをONにしても使用できず取扱説明書を読み、「Fn」+「F4」という操作をして、ようやく使えた。これはハードウェアスイッチだけでON/OFFできるようにしてほしい。 また、Webブラウザで工人舎のサイトがブックマークされているが、飛んでいくとFlashプレーヤーがインストールされておらず、表示できないのも興ざめだ。こういうあたりも初心者が対象ではなく、経験者用のサブPCだという印象を受ける。逆にモバイルノートが主力のメーカーがサイトのトップページをFlashにしている方が問題なのかもしれない。 ●廉価なモバイルノートとして現在でも通用する性能 ありていに言ってしまえば、「SH6KT12A」はモデル末期のディスカウントモデルなのだが、使った印象はかなり良かった。CPUとメモリ、OSなどのバランスが良くて、何かを我慢しているという印象がほとんどない。 モバイル性を重視しているので、キーボードがちょっと狭いのだが、そのあたりは設計している側も割り切っている印象だ。キー配置も、半角/全角の位置がESCの右にあるのを除けば、あまり変なところはない。一部のネットブックのように、日本語入力を使っていない人間が設計したような配置のキーボードに比べると、ずっとマシだ。 パワーは必要ないが、手頃に持ち歩けて、メモやメールチェックを中心に使うのであらば、検討対象に加えてよい製品だと思う。
□工人舎のホームページ (2008年11月27日) [Reported by date@impress.co.jp]
【PC Watchホームページ】
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