エプソンダイレクトは19日、ネットブック「Endeavor Na01 mini」(以下Na01)を発売した。同社初のネットブックであり、大型液晶の搭載や、思い切った低価格など、他社の製品とは一線を画すものとなっている。 エプソンダイレクトのネットブック戦略について、同社の吉崎宏典社長、調達・技術部の佐藤茂樹部長、事業推進部マーケティンググループの関島英典係長に話を聞いた。 -- エプソンダイレクトがこの時期にネットブック市場に参入した狙いとはなんですか。
吉崎 PC市場の裾野の広がりに限界が感じられるなかで、唯一、ネットブックの需要が拡大している。しかも、家庭において、2台目、3台目という形での購入が促進されている。ネットブックは、既存のPC市場を食っているのではなく、新規の需要を創出していると捉えています。それに、ノートPC市場の20%を占めるようになってきますと、どうしても存在を無視することができなくなる。その市場に対して、エプソンダイレクトも入っていくべきであるとの判断が、今回の製品投入ということになります。 ただ、正直なところ、ちょっと遅かったかな、という反省はあります。外資系メーカーが、この市場に参入してきた当初は、一時的なものではないかという判断もありましたし、ここまで短期間で立ち上がってくるとは思っていなかった。そうした市場動向を捉えて、本格的に製品企画を開始したのは今年4月。当社のポジションや、企業規模を考えると、もっと早く立ち回るべきでした。 佐藤 確かに我々の役割からいえば、いの一番にこの市場に参入すべきだったという反省があります。ただ、フォロアーであるということで、逆にこだわることができた部分もあります。例えば、10.2型の液晶パネルの搭載は、企画当初から決まっていたものです。先行する他社が8.9型のパネルを搭載し、それに対して文字が細かい、画面が見にくいなど、使い勝手の悪さを指摘する声が挙がっていました。それならば、10.2型で行こうと。Na01では、1,024×600ドットのWSVGA液晶を搭載し、使い勝手を高めています。また、10.2型のサイズにすると、キーボードもしっかりと作り込める。Na01では17mmのキーピッチを確保することを前提に開発しましたから、これも当社ならではのこだわりの部分だといえます。キーストロークも2mmを実現した。また、タッチパッドのクリックボタンも、いくつかの先行他社のようにパッドの左右に配置するのではなく、ノートPCで一般的となり、多くの人が慣れ親しんだパッドの下の部分にしっかりと配置する。ネットブックを作るという考え方ではなく、低価格のノートPCを作るという考え方で開発を進めてきたともいえます。 -- 直販価格は46,800円。この点ではかなりがんばりましたね。
佐藤 これも、後発ということを考えれば、5万円を切るのは当然であろう、という判断のもと、最初から4万円台にすることを決めていました。この時期に参入して、5万円台、6万円台という選択はできませんよ。むしろ、5万円以下ということを先に決めてから仕様を詰めていった、という方が正しいでしょうね。 -- 160GBのHDDの採用も先に決めたのですか。 佐藤 いや、これに関しては何度も仕様が変わりました。80GBで行こうと議論していた時期もありますし、120GBという時期もありました。議論に議論を重ねた結果、最終的に160GBという容量に落ち着きました。当社の場合、ダイレクト販売のみですから、実際に製品を見ていただく場所がない。他の商品と比べていただくことができないのです。そのため、まずは、スペックを見てわかる人が、「おおっ」と思っていただけるような仕様と価格設定が必要となる。それで実際に使ってみたら、品質的にも十分納得していただけるものであることが理解してもらえる。そんな製品にしたいと考えていました。 -- 一方で他社のネットブックには搭載されているWebカメラは搭載していませんね。 佐藤 Webカメラを利用するのは主に海外のユーザーです。他社は、海外でのビジネスも視野に入れていますから、どうしてもカメラが必要になる。一方で、日本のユーザーはそれほど利用しませんから、日本におけるビジネスを行なっているエプソンダイレクトのネットブックには必要ない。日本のユーザーが必要としないものは搭載しないで済むのです。今回の製品では、日本のユーザーの利用シーンと、コスト削減という観点から、Webカメラを非搭載としています。 -- Na01は、どんなユーザーターゲットを想定していますか。
関島 一言でいうと、「お父さん」と呼ばれるミドルエイジということになります。想定しているのは、自分が2台目のPCとして購入したり、子供に与えるためのPCに、ネットブックを選択するといったシーンです。 -- わかりやすいですね。 吉崎 もう少し細かく言えば、30代後半から40代、50代の男性で、理工系大学の出身。いまは、技術系の仕事に就いており、技術的な部分にこだわりを持っている。そんなところでしょうか。 関島 カラーをブラック一色としたのも、ターゲットをミドルエイジとし、こうした技術系のプロファイルを持った人たちに購入していただきたいと考えたからです。一番、ソリッドで密度の高い印象を与える色ですね。 -- ただ、娘に買い与えて、好評を得る色とデザインではないですね。もっと、「カワイイ」感じのバリエーションがあっても良いと思います。 吉崎 (苦笑しながら)最初の製品ですから、まずはターゲットを明確に絞り込むということを優先しました。
-- ネットブック市場を見ますと、パワーユーザーが最初に飛びついたという点では、エプソンダイレクトの顧客層に適した製品ともいえますが、顧客の要求に対して1台ずつカスタマイズするというエプソンダイレクトのやり方からすれば、仕様が統一されているネットブックは適していないともいえます。果たして、適した製品なのか、適していない製品なのか、どっちでしょう。 吉崎 適しているのか、適していないのかといえば、私は適していると思います。エプソンダイレクトを支えていただいているユーザー層が、2台目、3台目のPCとして購入していただくには、Na01は、最適な製品の1つだといえるからです。 佐藤 それとBTOに関しては、「可能性がないわけではない」という段階まではお話しできます。今回の製品では、基本仕様での出荷となりますが、将来的には、必要に応じてBTO対応についても検討していきたいと考えています。まずは、OSの選択ができるといったようなことは可能かもしれません。 -- ネットブックに関しては、完成品として中国の工場でパッケージする形ですね。 吉崎 そうです。エプソンダイレクトは、ノートPCも、デスクトップPCも、長野県内でアセンブリをしてから出荷していますが、ネットブックはパッケージ(完成品)として中国から輸入するという、エプソンダイレクトの過去15年の歴史のなかで、初めての試みの製品となります。ただ、初回入荷分に関しては、長野県内の工場で全量品質検査をしてから出荷をしています。ここで得たノウハウを中国のODMにフィードバックし、製品品質のさらなる向上を図る考えです。BTOを視野に入れるとなると、中国からの輸入形態も考えていく必要があるでしょうね。 -- 完成品の形で入荷するということは、在庫を確保するわけですから、2日間の納期保証を一歩進めて、翌日納期保証ということができるかもしれませんね。 吉崎 物理的にはできるでしょうし、実際に可能だと思います。とはいえ、確実なところで2日間の納期保証としています。 -- 他社のネットブックとの違いはどこにありますか。 吉崎 1つは品質という点です。これまでエプソンダイレクトは常に品質にはこだわってきました。この姿勢はネットブックでも変わりません。実際に触っていただくとわかるのですが、画面の見やすさ、キーボードの使いやすさは、他社と明確な差があると自負しています。それと、国内でナンバーワンの評価を得ているサポート体制は、ネットブックでも同様に利用できますから、その点でも、他社のネットブックとは違う満足度を感じていただけるのではないでしょうか。 Endeavor Na01 miniは、品薄にならないように在庫を確保しています。また、東京・秋葉原のEpson Direct PLAZAでも実機も見ていただくことができます。安心の製品を、迅速にお届けする姿勢は、ネットブックでも変わりません。まずは、ネットブックからエプソンダイレクトの製品の触れていただき、その良さを理解していただき、当社のノートPCやデスクトップにステップアップしていただくということも、ぜひ期待したいですね。 □関連記事 (2008年11月19日) [Text by 大河原克行]
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