【WinHEC 2008】基調講演レポート Windows 7のデバイス管理はよりスマートに
会期:11月5日~7日(現地時間) 会場:米国Los Angeles Convetion Center Windows 7の概要に関しては、すでに前週のPDCでほぼ紹介されつくされ、WinHECでは数々のセッションでWindows 7がハードウェアとからめて解説される。WinHECのレジストレーション時に配布されたWindows 7のDVDは、PDCで配布されたものと、まったく同じM3ビルドで、すべてのAPIが実装されているが、GUIに関しては未実装となっている。こうした中で、ハードウェアパートナーに向けてどのよなメッセージが発信されるのか、注目されたのがSteven Sinofsky氏のスピーチだ。 ●Windows 7の新たなファンクションが豊かなデバイス体験を実現し、ビジネスチャンスを高める 初日、2人目のスピーカーとして壇上に上がったのはWindows and Windows Live担当上級副社長Steven Sinofsky氏だ。Sinofsky氏はPDCでも基調講演を担当したが、PDCではWindows 7の拡張Aeroなどの派手な部分に多くのスポットライトを当てたのに対して、WinHECでは、それらの部分にはいっさい触れず、デバイス関連の話題に絞ったスピーチに徹した。 Sinofsky氏は、顧客本位のユーザー体験を提供することの重要性をアピールした上で、PCが人々の暮らしや仕事の中での役割が広がっていく中、Windows 7がどのような視点でユーザーに素晴らしい体験を提供していくかを示す新たな手法を紹介した。 Windows 7は、あらゆるタイプのPCをサポートするのは当然として、 1. 箱から取り出したデバイスが、なんの心配もなく動くようにすること。 といった使命を持つと説明した。 これは、過去のWindowsが目指してきたことでもある。そのミッションの一例として、Sinofsky氏は、新しいデバイスとしてマルチタッチのインターフェイスや、センサーによる環境の状態とロケーションを伝達する新たなAPIの追加などを挙げ、こうした新しい技術をヒントにビジネスチャンスが広がっていくとした。 同氏は「今日は、21個ものデモンストレーションを用意してきたんだ。これは世界記録ものだね」と、笑いながらMike Anguilo氏をステージに呼び、一連のデモンストレーションを始めた。 最初のデモはマルチファンクション対応などで複雑化する複合デバイスを、いかに容易に扱えるようにするかを示すものだった。Windows 7では、デバイスセンターと呼ばれる新たなUIが用意され、USB端子などに装着されたデバイスを素早く認識、そのデバイスで何ができるのか、そのデバイスがどのようなデザインなのかがすぐにわかるアイコンで表示される仕組みがある。デバイスドライバとは別に、ベンダーが、そのためのメタデータを用意しておき、それを使って、デバイスをビジュアライズ(可視化)する。これによって、ユーザーは箱を開けてデバイスを取り出しすぐに使えるようにできる。 ステージでは、実際にリボンがかかったプレゼントの箱から無線LAN対応のデジタルフォトフレームを取り出し、瞬く間に望みの写真を表示させた。また、デバイス装着時の認識の速さも、Vistaに比べて圧倒的にスピーディになっていた。 USBに装着したLogitechのWebカメラは、本体をディスプレイにクリップで止める前にドライバのロードが完了し、すぐにTV電話のスクリーンに映像が映し出された。そして、専用のアプリケーションがベンダーから提供されている場合は、デバイスのアイコンをダブルクリックするだけで起動し、プログラムメニューをたどる必要がないことも紹介された。 EPSONの複合機、Nokiaの携帯電話、MicrosoftのZuneなど、さまざまなデバイスが接続され、それらのデバイスが、簡単な操作で最大限の実力を発揮していくデモンストレーションが続いた。
一連のデモの中では、Eee PCでも軽々と運用できるWindows 7のフットプリントが紹介され、かなり貧弱な処理能力しかないネットブックであるにもかかわらず、プロジェクタに接続し、デジカメで写真を撮影し、USBケーブルでカメラをつなぎ、取り込んだ写真を通信カードを使って3Gネットワーク経由でフリッカーにアップロードする様子がデモされた。 また、Windows Media Playerが新たにさまざまなコーデックが追加されたことも紹介された。たとえば、iTunesでリッピングしたMP4ファイルをそのまま再生でき、WMAしかサポートしていないポータブルプレーヤーと同期させようとすると、自動的にWMAへのトランスコードが行なわれて転送されるという。この機能はプレーヤーデバイスのビジネスを大きく変えることになりそうだ。 このほか、センサーを使って環境光に応じて表示を変化させるアプリケーションや、HPのタッチスマートPCを使ったマルチタッチジェスチャーなど、多岐にわたるデバイスを使ったデモンストレーションがあわただしく続けられた。Sinofsky氏は、「とにかく、Windows 7を使ってもらってのフィードバックが品質の向上にきわめて重要だ」とアピール。これからベータを経て、RCからRTMに至るフェイズを紹介しつつ、ハードウェアパートナーの協力が欠かせないことを強調し、スピーチを終えた。 ●64bit対応を強くハードウェアパートナーに要請
2日目の基調講演は、Windows Server and Solutions Division担当副社長のBill Laing氏がWindows Server 2008 R2の紹介を中心に、次世代のエンタープライズコンピューティングを語った。ステージにはHPとIBMのマシンが設置され、192個という圧倒的な数の論理プロセッサの稼働状況を示すタスクマネージャーのパフォーマンス表示は、会場を笑いの渦に巻き込んだ。 Windows Server 2008 R2は2010年のリリースが予定され、ベータテストの最終段階に入っている。そのリリースの前には、Windows Server 2008 のSP2リリースが予定され、Home Serverからエンタープライズ向けまで各種のサーバーソリューションが揃うことがアピールされた。また、11月にはスモールオフィス向けのサーバーパッケージも出荷されるという。 Laing氏は、現在のハードウェアのトレンドが、マルチコア、64bit、省電力、仮想化にあるとし、Microsoftのサーバー製品が、きちんとそれぞれのカテゴリに万全な対応をしていることを強調した。
また、R2における新機能として、VPNを使わずにリモートデスクトップなどがシームレスにできるダイレクトアクセスや、Hyper-Vによる仮想化のデモなどが行なわれ、仮想マシンの中でLinuxプラットフォームの稼働も紹介された。 Windows 7一色のように見える状況の中で、淡々と、サーバープラットフォームを語ったLaing氏ではあったが、観衆に対して、サーバープラットフォームがハードウェアパートナーに求めることは、Windows 7のチームと同じで、特に64bit対応を顧客に勧めること、そしてドライバ類を対応させることであると訴え、静かにステージを降りた。
□WinHECのホームページ(英文) (2008年11月7日) [Reported by 山田祥平]
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