西川和久の不定期コラム

CanoScan 5600Fを試す




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 スキャナと言えば、その昔、SCSI接続もしくはパラレルポート(プリンタポート)接続のフラットベッド型やフィルムスキャナを使った以来、特に必要性も感じず、長い間周辺機としては所持していなかった。SCSIカードとの相性やターミネータで苦労したのが妙に懐かしい。

 そんな中、編集部から「使ってみては」と送られてきたのがこの「CanoScan 5600F」だ。USB接続の最新スキャナはどんな感じなのかさっそく試してみることにした。店頭では19,800円前後で販売されている。

Text by Kazuhisa Nishikawa



●ご対面!

 このCanoScan 5600Fは、白色LED(反射原稿用光源のみ)を搭載し、ウォームアップレスの省エネタイプ。最大4,800dpiでフィルムスキャンにも対応、ボディにさまざまなボタンがあり、簡単一発スキャンなど、多彩な機能を持つフラットベッド型のスキャナだ。WindowsはもちろんMac OS Xにも対応している。さっそくパッケージを開け、本体などのチェックを行なった。

本体
最大A4/レター/216×297mmの原稿サイズに対応していることもあり、272×491×97mm(幅×奥行×高さ)/約4.3kgと、それなりのサイズ&重量だ

原稿台カバーを上げたところ
原稿台カバーを上げたところ。原稿台のほぼ中央上下にあるくぼみは、35mmスリーブ・マウント用フィルムガイドを使うときにユニットを固定する部分だ

付属品
付属品は、Windows/Mac両対応のソフトウェアが入ったCD-ROM、35mmスリーブ・マウント用フィルムガイド、USBケーブル、電源ケーブル、説明書など

EZボタン
簡単に目的別のスキャンができるボタンだ。左側はPDF系、右側は用途別に並んでいる。真ん中にあるのは電源ランプ

ボディ後
ボディの後ろ側は、単に電源コネクタとUSBコネクタがあるだけ

ロックスイッチ
輸送時などの破損防止用にロックスイッチが右側奥にある。原稿読み取りユニットを固定するものなので、使用時にはOFFにする

 詳細な仕様については同社のHPをご覧頂きたいが、大まかには以下の通りだ。

  • 形式:フラットベッド型
  • 走査方式:原稿固定読み取り
  • センサー:白色LED(反射原稿)/冷陰極蛍光ランプ(フィルム)
  • 光学解像度:4,800×9,600dpi
  • 読み取り解像度:25~19,200dpi
  • 最大原稿サイズ:A4/レター/216×297mm
  • サイズ・重量:272×491×97mm(幅×奥行×高さ)/約4.3kg
 箱自体、本体のサイズからそれなりだが、重さも約4.3kgなので、ショップで購入後持って帰るのは可能な範囲だろう。ソフトウェアとしては、ドライバ(TWAIN)「ScanGear」、ユーティリティ「MP Navigator EX」、画像編集「ArcSoft PhotoStudio」、OCR「読取革命Lite」がWindows版(Vista/XP/2000)、Mac版(v10.3.9~10.5)共に付属する。

●セットアップ

 ドライバ及びソフトウェアのセットアップは、本体に電源を入れUSBをPCへ接続する前に行なう。これはWindows版もMac版も同じである。機能を選択してインストールする方法もあるのだが、「おまかせインストール」で行なうのが無難だろう。メッセージに従い、インストールが終了すると再起動して、準備完了だ。

インストール
今回は「おまかせインストール」で行なった。以降Mac版も全く同じパネルが表示される

インストールするソフトウェアの確認
インストールするソフトウェアの確認。ざっとながめて[インストール]ボタンをクリック、この後、使用許諾のパネルなどが何回か表示される

再起動
毎回思うのだが、このアプリケーションをインストールした後の再起動は何とかならないものなのだろうか? Mac版でも再起動をする必要がある

MP Navigator EX
MP Navigator EX。このほかに「Canon Solution Menu」も立ち上がるが、簡単な内容のものなので省略した

試に[SCAN]ボタンを押したところ
この状態で「試しに!」と雑誌を原稿台へセットし本体の[SCAN]ボタンを押したところ、スキャンが始まった

PDFになっている!
スキャンが終わると、この画面へ自動的に切り替わる。既にPDF形式で保存済み。かなり簡単で家電感覚だ!


 冒頭に少し書いたが、その昔、思い通りのサイズへスキャンするにはそれなりのPCを使い、更に設定や知識などが必要だったことを考えると、ボタン1つでPDFにまでなってしまうのはまさに家電感覚。通常の用途であれば、これだけで十分だろう。色も無調整のままでかなりオリジナルに近い。

 ちなみに今回接続しているPCは、Atom CPU(シングルコア)を搭載したマザーボード、Intel D945GCLFにメモリを2GB搭載しWindows XPで動かしているもの。以降「●使い勝手」の部分で試しているアプリケーションも含め全くパワー不足は感じない。このネットトップ並みのPCでこれだけ動くのだから、PC側のスペックはあまり気にする必要は無い。

●使い勝手など

1)雑誌からスキャン

 まず、オーソドックスに雑誌をスキャンしてみる。方法は2種類(細かく分類すると4パターン)。「原稿/画像の読み込み」から原稿の種類を選び、そのまま[スキャン]を押すパターン、もう1つは[スキャナドライバを使う]をチェックし、[スキャン]を押すとドライバのパネルが開くので、そこで[基本モード][拡張モード][おまかせモード]を使い分けるパターンだ。どのような原稿を読み込みたいかにもよるが、通常であれば前者だけでかなりの範囲がカバーできると思われる。

原稿/画像の読み込み
原稿/画像の読み込み。全体の流れは、ここに書かれている1)2)3)となる。[スキャナドライバを使う]にチェックを入れなければそのままスキャンを開始、チェックを入れると、右側のパネルが別途開く

基本モード
基本モード。プレビューや出力解像度、トリミング、各種画像補正などが行なえる。[とじ部の影補正]にも対応

拡張モード
拡張モード。基本モードの各パラメータが細かく調整できる。ただここまで細かくなると一般的には難しいかも知れない

2)紙焼きからスキャン

 デジカメ真っ盛りのご時勢、あまり紙焼きは見かけなくなったが、昔銀塩カメラで撮った写真などをデジタルデータ化するにはこの手のスキャナが最適。1)の雑誌のパターンとほぼ同じで、原稿の種類を[カラー写真/モノクロ写真]から選択、原稿台の上下左右、各紙焼きとの間隔が1cm以上になるように並べて準備完了だ。

原稿/画像の読み込み
原稿の種類をカラー写真もしくはモノクロ写真とし、[スキャン]を押せば読み込みがはじまる。1)と同様、[スキャナドライバを使う]をチェックするとドライバのパネルが開き、色合いなどの調整が可能になる

紙焼きを配置
今回は2枚でテストした。原稿台の各上下左右、各紙焼きとの間隔を1cm以上開ければ、自動的に別の原稿扱いとなり、枚数分のデータが分離して保存される

1回のスキャンで2枚分のデータに
ご覧のように、1回のスキャンでデータは2枚分に分かれて保存され、手間いらずだ。色などは後述する[画像補正]でいろいろ好みに仕上げることができる

3)フィルムからスキャン

 35mmスリーブフィルムと35mmマウントフィルムに対応したフィルムガイドが付属するので、簡単に取り込みが可能だ。この時、反射原稿とは違う光源に切り替える必要がある。方法は、原稿台カバーの保護シートを外すだけ。また、ネガとポジは自動判別するので特に指定する必要はない。

フィルムのスキャン
MP Navigator EXのメインメニューから[フィルム]を選ぶと、この画面になる。できればこの説明に保護シートを外す絵を入れてもらえればもっと解り易くなるのでは!?

フィルムガイドをセット
奥に見える白い板が、外した保護シートだ。原稿台のFILMマークに合わせてフィルムガイドをセットする。フィルムは表面(正しく見える方)を下に向ける

プレビューで写真を選択
一旦プレビューで各写真が表示されるので、実際に取り込む写真を選択し[スキャン]を押すと本スキャンが始まる

4)画像補正/編集

 画像補正/編集は、MP Navigator EX内蔵のものと、付属アプリケーションのArcSoft PhotoStudioと、2パターンある。内蔵のものでも、回転やトリミングに加え、自動:自動写真補正/顔くっきり補正/美肌加工、手動:明るさ/コントラスト/シャープネス/ぼかし/下地除去など、一通りの機能は揃っている。通常、こちらだけで十分対応できるだろう。

画像補正/編集
[写真画像の補正]を選ぶと、内蔵のソフトウェアが、[写真画像の編集]を選ぶとArcSoft PhotoStudioが起動する

内蔵補正ソフトウェア
MP Navigator EX内蔵の補正ソフトウェア。初心者にもわかり易いインターフェイスでやりたい事が簡単にできるようになっている

ArcSoft PhotoStudio
ArcSoft PhotoStudio。ご覧のように、かなり本格的な画像編集ソフトウェアだ。もちろんデジカメで撮った普通の写真データも扱えるし、TWAINドライバを直接呼び出すこともできる

5)文字認識

 スキャンしたデジタルデータ(ただしPDFは不可)から「読取革命Lite」を使い文字認識する機能も備えている。時間の関係であまり詳しく試していないものの、テストした範囲では結構な認識率だった。先の紙焼きからスキャンを使い、名刺などを一気に複数枚読み込み、文字認識すれば便利かも知れない。

文字をテキストに変更
画像を選び[文字をテキストに変更]を押すと「読取革命Lite」が起動する

テキスト範囲の設定
自動的に文字のあるレイアウトを認識する機能もあるが、このデータは結構文字が多くしかもカラーなので、今回はキャプションの一部を範囲指定した

見事に認識
ご覧のように見事に文字認識している。一箇所“7”になっているのは、元画像の背景がたまたまヒットしたようで、モノクロの原稿ならこの手の問題は発生しないだろう


●総論

Mac対応
Macにも対応しており、画面キャプチャを撮りはじめたのだが、Windows版と全く同じだったので今回は省略した。Macユーザーにもお勧めだ

 以上、駆け足であるが、CanoScan 5600Fの機能をご紹介した。まだまだ書き切れていない部分も数多くあるのだが、多分書籍1冊分になりそうな勢いなのでお許し願いたい。今回ご紹介した範囲だけでもこのスキャナはなかなかの優れものだと言うことがお解り頂けると思う。印象的だったのはソフトウェアで、初心者から上級者まで対応できるように、うまくユーザーインターフェイスを作り込んでいる部分だ。階層の浅い部分は初心者向けに、ちょっと触るとフル機能となかなか良い設計だ。

 久々にスキャナを触って、扱いやすく高機能、しかも低価格なのには驚いている。ここ数年は他の周辺機器も含めあまり使っていなかったこともあり、この連載で筆者もいろいろ楽しみながらご紹介できればと思っている。



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【10月21日】キヤノン、実売1万円を切るフラットベッドスキャナ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0821/canon.htm

バックナンバー

(2008年10月29日)

[Reported by 西川和久]


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