発売中 価格:15,540円 デジカメで撮影した画像のExifに、GPSで取得した位置情報を埋め込むためのツールとしてソニーが販売していた「GPS-CS1K」はちょっと面白い製品だった。その後継モデルとなる「GPS-CS1KSP」が2008年3月に登場し、現在はそちらが販売されている。そこで今回は、このGPS-CS1KSPを取り上げ、使い勝手などを見ていくことにしよう。 ●ソニー製以外のデジカメも正式サポート GPS-CS1KSPは、GPSユニット自体は従来モデルであるGPS-CS1Kと全く同じで、ハード面の仕様は全く変わっていない。三角柱のような形状はもちろん、思った以上に大きなサイズにも変更はなく、持ち運びは結構かさばってしまう。どうせなら、GPSユニットの小型化も実現してもらいたかったところだ。 電源は単三乾電池1本と、こちらも当然変更なし。駆動時間は、アルカリ乾電池使用で約10時間、ニッケル水素充電池使用で約14時間。実際にアルカリ乾電池とニッケル水素充電池双方で使ってみたが、確かにニッケル水素充電池のほうが長時間利用できた。駆動時間が有利なのはもちろん、どうせなら外出時には常に持ち歩いて利用したいものなので、アルカリ乾電池を使うよりも、ニッケル水素充電池を2~3本用意して使う方が絶対にオススメだ。 GPSユニットは従来と全く同じだが、付属品や付属ソフトは一部変更・追加されているとともに、サポート範囲も変更されている。 まず付属ソフトとして、デジカメで撮影した画像のExifにGPSユニットで記録した位置情報を埋め込むためのソフト「GPS Image Tracker」と、地図ソフトとして昭文社の「Super Mapple Digital Ver.7 for Sony」が添付されているのは従来モデル同様。それらに加えGPS-CS1KSPでは、ソニー製デジカメに付属している「Picture Motion Browser」の最新版である「Picture Motion Browser 3.0」も標準添付となった。 また、付属品として、自転車やバイクのハンドル部分にGPSユニットを固定するためのアタッチメントと、腕に固定するためのアームバンドが新たに付属するようになっている。 そして、最も大きな違いとなるのが、サポートの範囲だ。従来は、ソニー製デジカメでのみ動作を保証していたのが、GPS-CS1KSPでは、Exif 2.1以降に対応する全デジカメが動作対象となった。従来モデルでも、ソニー製以外のデジカメとの組み合わせで利用することは可能だったが、今回正式に動作対象となったため、ソニー製以外のデジカメを利用しているユーザーも安心して利用できるようになったと言える。 ●GPS電波の受信とデジカメの時間設定には注意が必要 GPS-CS1KSPの使い方は、従来モデル同様に非常に簡単だ。GPSユニットに関しては、特に事前の設定作業は必要なく、単3乾電池を本体内の電池ホルダーにセットし電源を入れるだけでいい。あとは、15秒ごとにGPSからの電波を受信し位置情報を記録していく。位置情報は約31MBの内蔵メモリに保存され、約360時間分の位置情報が記録できる。GPS衛星から送られてくる電波には時刻情報も含まれているため、ユーザーがGPSユニットに時刻を設定する必要もない。とにかく、電池を入れて電源を入れるだけでOKと考えていい。 受信感度に関しても従来モデルと全く変わっていない。周囲に高いビルや空を遮るものがない場所なら、かなり高い精度で測位が可能だが、高いビルが建つ街中や立木の多い山道などでは、正確な測位ができない場合も少なくない。実際に、多摩川の河川敷で利用した場合には、ほとんど誤差のない測位ができたが、都心を歩いたり、江ノ島内を歩いた場合などでは正確に測位できない場面も多く、途中の軌跡が大きく飛んでしまった。乗り物内では、GPSユニットを窓の近くに置けば測位可能だが、建物内や地下などでは一切測位ができないため、移動中に電車や地下鉄を利用したり地下街を通ると、その間軌跡が完全に抜け落ちてしまう。もちろん、GPS衛星からの電波のみで測位するという仕様上、この点はどうしようもないが、それでもある程度の測位はできているので、家の周囲を散歩したり、旅行に出掛けるときだけでなく、普段の街歩きでもカメラと一緒に持って出掛けて十分活用できると考えていい。 GPSユニットはむき出しのまま持ち歩いてもいいが、基本的には付属のケースに入れて持ち歩くのがおすすめ。ケースにはマジックテープが取り付けられているので、カバンやリュックのショルダーなどに簡単に固定できるからだ。また、付属のカラビナで引っかけておいてもいい。もちろん、ズボンやジーンズのベルトループなどに引っかけてもいいだろう。自転車やバイクであれば、付属のホルダーを使ってハンドルに固定すれば、受信状況やバッテリー状況も確認できて便利。徒歩やジョギング時などに利用する場合には、アームバンドで腕に取り付ければいい。GPSユニット固定用の付属品が豊富になったことで、さまざまな形態で利用できるようになったことは嬉しい。 とはいえ、GPSユニットの扱い方にはある程度注意する必要がある。 まず、GPS衛星の電波を受信する必要があるため、基本的に電波受信部が隠れないようにしなければならない。GPSユニットは三角柱のような形状をしているが、電波受信部はソニーロゴやGPSロゴが印刷されている面に用意されているので、この面が障害物で隠れないように注意する必要がある。 ただ、実際には必要以上に神経質になる必要はない。受信するのは電波なので、多少の障害物はすり抜けてくれる。実際にGPSユニットを布製のカバンの中に入れた状態でもGPS衛星の電波は問題なく受信できたし、受信面が少々下を向いていてもある程度は大丈夫だった。それでも、金属製のアタッシュケースなど、完全に電波を遮断してしまうカバンの中に入れたり、受信面を体側にしてズボンのポケットに入れたような状態ではさすがに受信できなくなるので注意したい。
そして、GPSユニットの取り扱い以上に気を付けなければいけないのが、デジカメの内蔵時計設定だ。なぜなら、デジカメで撮影したデータのExifに記録されている撮影時間情報と、GPSユニットで記録した位置と時間の情報を照らし合わせて、そのデータが撮影された位置を割り出すようになっているからだ。もしデジカメの内蔵時計がずれていると、正確な位置情報が得られなくなるため要注意だ。 ●「Picture Motion Browser 3.0」が標準添付に
デジカメで撮影したデータに位置情報を埋め込む作業も、従来までと同じで非常に簡単だ。GPSユニットをUSBケーブルでPCに接続した状態で、付属ソフト「GPS Image Tracker」を起動し、GPSユニットで記録した位置情報のログデータを取り出す。すると、地図上に移動の軌跡がラインで表示される。次に、撮影したデータをソフトに取り込むと、GPSユニットのログデータとExif情報から撮影場所が特定され、地図上にプロットされていく。そして、右下の「位置情報を保存」ボタンを押せば、撮影データのExifに位置情報が埋め込まれることになる。 このとき、位置は自由に変更可能となっている。GPSユニットは場所によってはGPS衛星からの電波が受信できないこともあるし、誤差も生じる。また、デジカメ側の内蔵時計がずれていても、実際の撮影場所とずれてしまう。こういった場合には、地図上のプロットマークを動かすことで位置を修正すればいい。 ちなみに、Picture Motion Browser 3.0は、地図情報をローカルで持っているのではなくGoogle マップを利用している関係上、利用時にはPCがインターネットに接続されている必要がある。しかしそのおかげで、日本以外の位置情報も地図上で確認できる。海外旅行にGPSユニットを持って行った場合でも、地図上に軌跡や撮影場所を表示できるわけだ。 Exifに位置情報が埋め込まれたら、基本的に作業は完了。あとはそのデータを、Exifの位置情報に対応した画像ビューアや地図ソフトなどで読み込めば、地図上で撮影場所が確認できるようになる。 従来モデルでは、Exif対応の地図ソフトとして「昭文社 Super Mapple Digital Ver.7 for Sony」が付属しており、そちらを利用して地図上で撮影位置を表示して確認できた。GPS-CS1KSPにもSuper Mappleは付属しているが、新たにExif位置情報に対応した画像ビューア「Picture Motion Browser 3.0」(以下PMB)も付属するようになった。 Super Mappleは地図ソフトなので、デジカメ画像の閲覧用途には活用しづらいが、PMBは画像ビューアであり、画像の管理や閲覧も非常にやりやすい。そのうえで、地図上に写真の撮影位置がプロットされるだけでなく、GPS Image Trackerで保存したGPSログデータを自動的に読み込み、その時の行程の軌跡も地図上に表示してくれるので、どのように移動してどこで写真を撮影したのかということもPMBだけで確認できる。管理できるデータは静止画だけでなく動画もサポートしており、サイバーショットやハンディカムで撮影した動画も表示できる。ただし、筆者が利用しているデジカメ(Panasonic DMC-TZ1)で撮影した動画は残念ながら扱えなかった。 さらに、移動の軌跡を含めた位置情報と写真を圧縮(サイズは320×320ドット、640×480ドット、1,280×1,280ドットの3種類から選択するか、自由に設定可能)してメールに添付し転送する機能も用意されている(送られたデータはInternet Explorer 6以降を利用して表示できる)ため、友人との写真や位置情報の共有も簡単に行なえる。ちなみに、写真31枚を利用して640×480ドットに圧縮しメール添付データを作ってみたところ、1.8MBほどの圧縮データができあがった。この程度の容量であれば、メールに添付するとしても安心だろう。 このように、GPS-CS1KSPの活用にはPMBが不可欠とも思えるほど便利なソフトなのだが、もともとPMBはソニー製デジカメやハンディカムの一部に付属しているソフトで、従来モデルではソニー製デジカメ使用者しか活用できなかったのだ。しかし、PMBが標準添付になったことで、筆者のようにソニー製以外のデジカメを使っている人にとって、やっとGPSユニットをフルに活用できるようになったと言っても過言ではない。そういった意味でも、PMBの標準添付は大いに歓迎できるポイントだ。 ちなみに、PMBでの撮影位置の確認は、GPS Image Trackerと同じように、Google マップを利用することになるので、こちらも利用時にはインターネットへの接続が必須となる。
●GPSユニットの形状は改善の余地あり GPS-CS1KSPは、MPBが標準添付となったことで、ソニー製以外のデジカメを使っている人でもMPBが利用できるようになった点を除き、基本的な仕様や使い勝手は従来モデルであるGPS-CS1Kとほぼ同じと考えていい。ということで、GPSユニットの使いづらいと感じていた部分も従来モデルと全く同じということになる。 まず、最も気になるのは、GPSユニットのサイズと形状だ。とにかく、見た目以上に大きくて、ポケットや鞄に入れるにしてもかさばってしまう。そして、三角柱のような形状のため、ぶら下げて携帯する時はもちろん、どこかに固定するにもとにかく収まりが悪い。電源が単三乾電池なので、ある程度の厚さが生じるのは仕方がないかもしれないが、カラビナでぶら下げた状態でも電波受信面がくるくると回転しないような形状であってくれると良かったように思う。 また、付属ケースも余り使い勝手が考慮されていないように思う。GPSユニットをしっかり保護してくれることは間違いないが、ケースの取り外しが思った以上に面倒。しかも、電池ボックスの蓋がケースの底に位置するため、電池の交換時に毎回ケースを外さなければならない点もかなり気になった。電池はほぼ1日ごとに交換する必要があるため、ケースから取り出さずとも電池の交換ができるようになっていて欲しかった。 ただ、MPBをだれでも使えるようになったことと、自転車やバイクのハンドルにGPSユニットを固定するアタッチメントおよびアームバンドが付属になったことで、全体的な使い勝手は従来モデルよりも遙かに向上していることは間違いない。しかも、対応デジカメの制約がなくなったことで、特にソニー製以外のデジカメを使っている人にとっては、MPBが使えるだけで全く別物と思えるほどの進化が実現されていると感じるはずだ。さらに、販売価格は従来モデルと同じであり、実質的な値下げとも考えられる。とにかく、デジカメをより活用するためのグッズとして大いにオススメできる製品だ。 ちなみに、従来モデルをGPS-CS1KSP相当にアップグレードするためのキットがSonyStyleで販売されていたが、残念ながら5月中旬で販売が終了してしまっている。発売当初は注文が殺到し、予約注文すらできなかったようだが、わずか2カ月ほどで販売終了というのはちょっと短すぎるのではないだろうか。欲しい人にはほぼ行き渡ったという判断なのかもしれないが、せめて1年間ぐらいは販売を継続してもらいたかった。 □ソニーのホームページ (2008年9月2日) [Reported by 平澤寿康]
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