「無安定マルチバイブレータ」(後編)




 前回用意した部品を、回路図を見ながらブレッドボード上に配置して、動く回路を作ります。

 まず、もう一度回路図を見てください。どこから手をつけたらいいでしょう?

「自由に好きなところから作り始めてください」というのが、我々のスタンスなんですが、今回は方針を決めて、ステップ・バイ・ステップで説明してみます。

前回掲載したものと同じ回路図に、説明を追加したものです。接続する向き(極性)が重要な部品について補足しています

 組み立てる手順をアニメーションにしてみました。最低限のジャンプワイアで作れるようにしたので、部品がちょっと詰まり気味です。ブレッドボードをもう少し広く使ったほうが、LEDが見やすいかもしれませんね

 はじめに部品のリード線の形を調整します。これをフォーミングといいます。

 曲げて切る作業ですが、一度切ってしまったものは戻せませんので、慣れるまでは、曲げただけの状態でいったんブレッドボードに挿してみて、それからちょうどいい長さに調整するようにしたほうがいいでしょう。

抵抗器は縦に挿すことにして、写真の左端のようなフォーミングにしました。LEDはリード線を切ってしまうと、極性が見分けにくくなるので、少しだけ長さを変えて切りました。やり直しが効きませんので、最初は長めに切っています

写真は、秋葉原のパーツ店で見つけた、あらかじめフォーミングしてあるトランジスタです。普通はリード線がまっすぐな状態で売られています。その場合は、先細ペンチやピンセットを使って、写真のようにフォーミングしてください

 それでは部品を挿していきましょう。

 今回は左右シンメトリな回路なので、ブレッドボードの中心からスタートしました。

 一番上のラインに電池のプラス、一番下のラインにマイナスがつながることを覚えておいてください。

抵抗を4本挿します。100Ωと39KΩのものを2本ずつ使用しますので、位置に注意してください。ブレッドボードの形状によっては、違う形にフォーミングしたほうがいいかもしれません。手持ちの材料に合わせて調整してください

抵抗の値は表面に印刷されたカラーコードから知ることができます。しかし、線が細かったり、色が見わけにくかったりして、判読が難しいことがあります。我々はカラーコードを読むよりも、テスターで測ってしまうことが多いです。カーボン抵抗器の値にはかならず誤差があって、数パーセントずれた数値が表示されます(テスター自体の誤差もあるでしょう)

LEDを挿します。長いほうの足がアノード、というのはもう覚えましたね。今回のレイアウトでは、LEDと電解コンデンサが近すぎてちょっと窮屈かもしれません。LEDの足を長めにして、立体的に配置しました

電解コンデンサも極性に注意します。長いほうがプラスです。胴体にもマイナス側に帯状のマークがついています。電解コンデンサはコンデンサの一種で、電気を蓄える働きをします。この回路では、電解コンデンサに電気が少しずつ溜まっていって、あるレベルを超えるとスイッチ(トランジスタ)が切り替わる仕掛けになっています

2つのトランジスタが一種のスイッチとして働いて、左右のLEDを交互にチカチカさせます。文字が印刷してある平らな面が、違う方を向いていることに注意してください

トランジスタの3本の足には、それぞれ名前がついています。これがなかなか覚えられないかもしれません。文字が書いてある面に向かって、左からエミッタ(E)、コレクタ(C)、ベース(B)です。日本では昔から「エクボ(ECB)」と覚える人が多いようです

ジャンプワイアで部品をつなぎます。真ん中のバッテンになっているところが、この回路の見どころ

最後に電池ボックスをつないで、できあがり

 無事に、LEDがチカチカしましたか? イッパツで動かないことも多いと思います。そういうときは、電池をすぐに抜いて、一呼吸置いてからデバッグしましょう。「気持ちを切り替えて、じっくり見直す」ことが肝心です。

 ブレッドボードの場合、挿したリード線の接触が悪かったり、隣の穴に挿してしまっていたり、といったあたりが動かない原因であることが多いと思います。どうしても動かないときは、いったん全部の部品を抜いて、ブレッドボードの向きを少し変えてやり直してみるといいかもしれません(視点が変わると気持ちも切り替わります)。回路図を紙に印刷して、接続した部分にチェックをつけながら進めるのもいいと思います。

 話が前後しますが、デバッグの際には、まずテスターで電池の電圧を測ってください。電池ボックス内の接触が悪いこともありますので、電池ではなく、電池ボックスの端子で測ったほうがいいでしょう。3V前後の値が出ればOKです。

 今回作った無安定マルチバイブレータ回路は、少数の手に入りやすい部品だけで作れ、動きが目で見てわかる面白さがあります。実はとても有名な回路で、検索すると変化形がいろいろ見つかります。その1つが、次の回路です。1bitのメモリとして機能します。回路図を見ると、よく似ていることがわかると思います。

【動画】動作例
電解コンデンサがなく、そのかわりにスイッチがトランジスタの下に見えます。全体の構成はよく似ています。この回路図では電池を省略しました。V+に電池のプラス、GND(グラウンド)にマイナスがつながります

■■ 注意 ■■

・この記事の回路や部品の使用例は、短時間の実験を目的としたものであり、一般的な利用を想定していません。
・実際に実験を行なう際は、怪我や火災などが起きないよう十分注意してください。
・この記事を読んで行なった行為によって生じた損害はPC Watch編集部および、メーカー、購入したショップもその責を負いません。

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(2008年8月29日)


船田戦闘機、スタパ齋藤、上杉季明によるユニット。電子工作からバンド演奏までさまざまな活動を行なうが、各活動に共通するテーマは“電気が通ること”としている。電子部品・電子回路の玄人ではなく、それらに対して強い興味を抱いている。ブレッドボーダーズは、そんな立ち位置から電子部品・電子回路に触れていくプロジェクトである。


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