NVISION08レポート Emerging Companies Summit編その1
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MotionDSPのデモの様子。左が補正前 |
会期:8月25日~27日(現地時間)
会場:米国カリフォルニア州サンノゼダウンタウン
NVISION08の2日目となる26日(現地時間)は、カンファレンス系だけでも、「NVIDIA Research Summit / CUDA Developer Conference」、「Emerging Companies Summit」、「PartnerForce Summit」、「Automotive Visual Computing」、「Professional Visual Computing」、「iGames Expo」、「Enterprise Solutions Round Table Meeting」、「Game Developer Track」と多岐にわたって、平行して午前中から夕方までさまざまなセッションが行なわれる。
本レポートではEmerging Companies Summitの中の「Lifestyle Computing」というトラックの内容についてお伝えする。Emerging Companiesとは新興企業のことで、このカンファレンスでは、ビジュアルコンピューティングに関する独特の新技術/製品を開発した企業がそれらを持ち寄ってプレゼンテーションする。
●リアルタイムで動画の画質向上
最初に紹介するのはMotionDSPの「Ikena Reveal」というソフトウェア。MotionDSPは、携帯電話や防犯カメラなど解像度やフレームレートの低い動画を解析して、画質を引き上げる技術を持っている。
その効果は絶大で、もともとの映像では認識できない車のナンバープレートなど小さな文字も判別できるようになり、米国のシークレットサービスやCIAなどにも採用されておいる。
MotionDSP CEOのSean Varah氏 | ある動画の1フレームを抜き出したところ。解像度が低くて文字は判別できない | MotionDSPの技術で後続の10フレームを参照して補正すると、文字が判別できるようになった |
同社はちょうど1年前に「Demo fall 2007」で、その技術を発表し、本誌でもレポートしているので、覚えている方もいるかもしれない。そのときに発表したものは、ユーザーが撮影した動画を同社のサーバーにアップロードして、サーバー側で高画質化を行なうものだった。今回、披露したIkena Revealはそのスタンドアロンパッケージで、CUDAによるGPU支援を盛り込んでいる。
MotionDSPの技術は、動画の1つのフレームに対して、その前後の10~20フレームから、色や位置、動きなどを参照。そこから同社独自のアルゴリズムで計算し、撮影時に失われた精細さを復元する。このときに補正するのは解像度だけではない。たとえば携帯電話で撮影した動画は、露出が不適切だったり、圧縮によるブロックノイズがあったり、手ぶれや/被写体ぶれがあったりするが、同社の技術はそういったものも修正できる。
従来のビデオ編集ソフトなどでも、明るさやコントラストなどを修正できる。しかし、それらは単一のフレームだけで修正するため多くの場合ノイズが発生する。これに対しMotionDSPの技術では、複数のフレーム、つまり時間軸フィルタを適用することでノイズの発生を抑える。
サンプル動画の1コマ。露出不足で暗くなっている | 従来の技術でそのフレームだけに対してコントラストなどを調整すると、明るくはなるがノイズが目立つようになる | MotionDSPの技術で処理すると、ノイズは抑えられているのが分かる |
MotionDSPの技術で処理した別の例。左は露出が足りず、ほとんど真っ黒にしか見えないが、補正をかけると右のように様変わりする |
これらに加え、前述の通り、各種ノイズを減らしたり、カメラと被写体の動きを検知して、カメラのぶれだけをなくしたり、フレーム間に中間の映像を挿入してフレームレートを向上させたりできる。
なぜこれまでこういったソフトがなかったのか。それは単純に作業量が膨大だからだ。同社によると、MotionDSPの作業負荷はH.264の10倍以上という。これを毎秒30コマ程度の映像に適用すると、多大な時間を要してしまう。
そこで、Ikena RevealではCUDAによるGPU支援を新たに盛り込んだ。これにより、その場で行なわれたデモでは、クアッドコアのCPUで処理させた場合、CPU負荷は100%になり、再生時のフレームレートは3~4fps程度になったのに対し、GPU支援をONにすると、CPU負荷は20%程度になり、フレームレートは15fpsに向上した。
同社は現在、この技術のAPIを公開して、他社に採用を呼びかけている。採用が進めば、たとえばIkena Reveal+CUDA環境のPCでYouTubeを閲覧すると、自動的にリアルタイムでこのような画像補正が行なわれるようになる。
Ikena Revealのスクリーンショット。リアルタイムで動画上の縦の線を動かして、補正前後の効果を確かめられる。メニューにある「Use GPU」ボタンを押すとGPU支援が効く | クアッドコアCPUのみで処理すると、フレームレートががくっと落ちる | GPU支援を使うと、CPU負荷が減り、フレームレートも15fpsを維持している |
□MotionDSPのホームページ(英文)
http://www.motiondsp.com/
□製品情報(英文)
http://www.motiondsp.com/products/IkenaReveal
□関連記事
【2007年9月27日】ケータイ動画をTV並に高画質化するサイト
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0927/demo02.htm
●ブラウザアドオンの画像ビューワー
Cooliris CTOのAustin Shoemaker氏 |
Coolirisは、同名のブラウザ拡張ツールを紹介した。「Cooliris」は、最初は「PicLens」という名前でFirefox用のアドオンとして登場したフリーの画像ビューワ。現在では、Internet ExplorerとSafari(Mac版含む)にも対応している。
Coolirisをインストールすると、Google、Yahoo!、Flickrなどの対応サイトで画像検索を行なった時、サムネール画像にカーソルを合わせると、Coolirisを起動するためのアイコンが表示される。
Coolirisを起動すると、検索結果の画像サムネールだけがずらりと並び、マウスカーソルをドラッグするか、画面下部のナビゲーションバーを操作すると、3Dで左右に画面がなめらかにスクロールする。
このソフトの利点の1つは、通常のブラウザの場合のようなウィンドウあるいはタブ間を行き来する必要がなくなる点。Cooliris上に表示されたサムネールをクリックすると、その画像が拡大され、もう一度クリックすると縮小されて一覧表示になる。また、検索結果画面がシームレスにスクロールするので、次のページや前のページのリンクをクリックする必要がない。
Coolirisにも検索の入力フォームがあるので、そこから検索エンジンを変更したり、別の単語で検索を書けることも出来る。また、画像だけでなくYouTubeの動画検索にも対応している。
検索結果をブラウザで見たい時は、アイコンをクリックするとブラウザに戻る。メールのアイコンをクリックすると、Cooliris上でメッセージを入力して、宛先を指定することで、友人にそのURLを知らせる機能もある(要ユーザー登録)。
もう1つの大きな特徴がMedia RSSに対応している点。これにより、Cooliris上でAmazon.comで検索をかけると商品のサムネールが表示され、サムネールをクリックすると価格情報などが表示され、そのままカートに商品を入れることができる。
このほか、画面左の「Discover」ボタンを押すと、ニュース、映画、スポーツといったジャンルが表示る。それらを選択するとそのジャンルの最新ニュースのサムネールが表示され、サムネールをクリックすると、ニュースの概要のテキストや、動画が表示される。
今後の予定としては、対応サイトを増やすほか、iPhone版が予定されている。なお、現時点では日本語による検索も可能だが、米国のサイトでの検索にのみ対応するため、Googleでは検索結果が表示されるが、Amazon.comでは利用できない。
□Coolirisのホームページ(英文)
http://www.cooliris.com/
□関連記事
【4月24日】YouTubeの動画を3Dギャラリーで観賞可能になった「PicLens」の最新版(窓の杜)
http://www.forest.impress.co.jp/article/2008/04/24/piclens.html
【2007年9月13日】画像共有・画像検索サイト専用のビューワーを追加するFirefox拡張「PicLens」(窓の杜)
http://www.forest.impress.co.jp/article/2007/09/13/piclens.html
●ブラウザベースの3D仮想空間
Vivaty社長兼CEOのKeith McCurdy氏 |
Vivatyは、同名のWebベース3D仮想空間を紹介した。Vivatyは、一言で表わすと、ブラウザ上で動作するSecond Lifeのようなものだ。現在、AIMとFacebook上で動作する。
他の仮想空間同様、Vivatyでは、自分のアバターを作成/カスタマイズし、他のユーザーとのコミュニケーションを楽しむ。特徴的なのは、URLを指定することで、Web上の画像や動画を自分の部屋のインテリアのように貼り付けられる点。
これによって、たとえば、友人を自分の部屋に招待し、部屋に貼られた動画のサムネール画像をクリックすると、その動画がその場で再生されるので、Web上の無数のコンテンツをVivaty内で共有できる。
また、Facebookの友人リストから選んで、チャットする機能もあるため、他のサービスのように、わざわざ友人リストを作り直す必要がないというメリットもある。
このほか同社では、2DベースのFlashアプリケーションよりも表現力が豊かでありながら、ファイルサイズが3MBとSecond Lifeなどのスタンドアロンアプリケーションよりも小さく、インストールが容易である点などをメリットに挙げている。
利用は無償で、今後、順次対応サイト/サービスを増やしていく。
Facebook版Vivaty | 画像や動画などインターネット上のコンテンツのURLを入力すると…… | 部屋のインテリアの1つとしてそれらを貼り付けられる |
□Vivatyのホームページ(英文) http://www.vivaty.com/
□NVISION08のホームページ(英文)
http://www.nvision2008.com/
(2008年8月28日)
[Reported by wakasugi@impress.co.jp]