8月23日 発売 価格:オープンプライス いま、ホットな話題の1つであるミニノート。日本エイサーの「Aspire one」もそうした製品の1つだ。今年のCOMPUTEX TAIPEIで披露され、注目を集めた。日本エイサーからも今月23日から発売が予定されている。その国内モデルをチェックしてみたい。 ●ネットブックのトレンドに即したスペック 現在、8~10型程度の液晶ディスプレイを持つネットブックが多数発表・発売されていることは周知のとおり。5万円台から購入できる製品も多く、非常に注目を集めている製品ジャンルだ。今回取り上げる、Aspire oneもそうした製品の1つ。他社製品との比較を表にまとめたので参考にしてほしい。 本製品のスペック面での特徴は、意外に少ない。CPUにAtom N270(1.60GHz)、1GBメモリ、Windows XP Home Editionを組み合わせた、ネットブックでは主流とも言えるスペックだ。液晶ディスプレイは8.9型で、1,024×600ドットのいわゆるWSVGAの解像度を持つもの。本体サイズや重量面でも、他社製品と比較すると、ちょうど中間ぐらいの大きさとなる。 そうした中から特徴的な面を挙げるとすれば、ストレージに120GB HDDを採用している点となるだろう。現時点で、この価格帯の製品では最大のストレージ容量となるからだ。また、その価格面でも他社に比べて、やや割安に販売される予定となっており、入手しやすい価格で、今のネットブックのスタンダードスペックが手に入るという点が、本製品の大きな魅力といえる。
表1 5万円台で購入可能な,主なネットブック製品
●マルチカード+SDカードのユニークな構成 本製品は奥行き170mmとネットブック製品でも短い部類に入るが、インターフェイスはしっかりと詰め込まれている。メジャーなインターフェイスを多く盛り込む性格になっているのは面白い傾向だ。 1つはUSB2.0インターフェイスで、右側面に2基、左側面に1基を備えている。IEEE1394端子は備えていないが、周辺機器は圧倒的にUSB製品が多いわけで、このポート数を増やすことを重視しているのだろう。 そして、右側面のSDカード/xD-Picture Card/メモリースティック対応カードスロットに加え、左側面にもSDカードスロットスロットを備えているのが特徴だ。左側面のSDカードスロットはStorage Expansionと名付けられているとおり、本来は内蔵ストレージの拡張に用いられるものだ。というのも、海外ではLinux+フラッシュメモリドライブ構成のモデルが発売されており、このSDカードスロットも活用されているのだ。日本ではHDDモデルのみの発売となるため、このスロットが空いてしまったというわけだ。このSDカードスロットは普通にリムーバブルスロットとして利用できる。 また、左側面のスロットはSDカード専用スロットなので、SDカード装着後も突起が発生しない。移動が多いデータ用やワークスペースとして、ここに16GBなりのSDカードスロットを装着したままにしておいても持ち運びに支障いのが嬉しいポイント。もちろん、デジカメなどのデータ受け渡し用には、別途マルチカードスロットを利用することができる。活用次第では非常に便利な存在になるだろう。パフォーマンスの面では左右のスロットに違いはないようだ。 ●液晶とタッチパッドの使い勝手にクセ さて、液晶ディスプレイは8.9型の1,024×600ドットという、ネットブックでは標準的な解像度を持つパネルである。解像度に無理はなく、文字などの視認性は悪くない。光沢パネルということもあって発色も良い。ややコントラストが強めに感じるが、見映えが良いと感じる人も多そうなレベルであり、これは好みの問題だろう。 ただ、その光沢液晶があだとなって、表面反射は大きく、映り込みが激しい。これは輝度を最大(ちなみに10段階で調整が可能)にしても、強い外光には負けてしまう印象を受ける。とくに屋外利用においてはストレスを感じることも多そうだ。 キーボードは一般的な6段配列にまとまっている。キーピッチなどの仕様が公開されていないが、中央の文字部分は実測で約17mmのキーピッチとなっている。パンタグラフ式と思われるが、ストロークもスイッチ感がしっかりあり、ふわふわとしたところはない。 慣れが必要だと感じたのは、一部の記号キーと、左下のCtrlキー、Fnキーが小さくなっている部分。とくに左下のCtrlキーとFnキーは、意識無く打つとFnキーと同時押ししてしまうことが何度かあった。一方で右側のCtrlキーとアプリケーションキーが意外に大きなサイズになっており、もう少しバランス良く設計されていても良かったと思う。ただ、全般にキータッチ、文字の打ちやすさなどは良く、サイズのわりには無難にまとまったキーボードといえる。 タッチパッドは本製品でもっともクセのあるデバイスといえる。その理由の1つは左右にボタンが割り振られている点だ。この配置に加えて、左右ボタンはわりと堅めで、片手での操作が非常に行ないづらい。タップによるクリックを活用して左クリックを極力使わないようにするか、中指でパッド操作、人差し指と薬指で左右ボタンをクリック、といった使い方を工夫してカバーする必要がある。 クセがあると感じたもう1つの理由は、スクロール機能が敏感に反応し過ぎるきらいがある点だ。タッチパッドのサイズは製品サイズのバランスから考えて過度に小さいと感じることはないのだが、組み込まれているSynapticsのドライバによる上下・水平スクロール機能に割り当てられている範囲が広すぎて、ふとしたときにすぐにスクロール機能が反応してしまうのだ。もっとも、これはドライバの設定ツールから利用エリアを調整することができるので、利用者の好みで範囲を絞ると良いだろう。
●持ち運び用のソフトケースが付属 次に、モバイルという観点で本製品を見てみたい。本体サイズは冒頭でも触れたとおり、他のネットブックと大きな違いはない。ただ、突起物がないうえ、前方底面がややカーブする以外は厚みもほぼ均一。バッグに収納したときの違和感のなさは魅力的だ。また、本体もかなりガッシリしており、持ち運びノートとしてタフに利用できそうな印象を受ける。 ACアダプタもかなり小型。ただし、AC側のケーブルはデスクトップPCで使っていそうな太いものが付属している。ACアダプタとケーブルの接続口は3つ口のミッキー型なので簡単に交換も効かない。持ち運びという点でもっとも難儀するのは、このACケーブルだろう。もっと細いケーブルを付属して欲しかった。
バッテリは3セルの2,200mAhのものが搭載されている。大容量バッテリなどはリリースされていない。公称では約3時間の駆動が可能とされているが、実際に負荷をかけた状態でテストしてみた。 ここでは、Windows XPの省電力設定で「常にオン」と「ポータブル/ラップトップ」に設定。また、ポータブル/ラップトップ設定時には液晶輝度が抑えられるが、先述の映り込みの問題を考慮して、ポータブル/ラップトップ設定で液晶輝度を最大にして利用した場合の3パターンを測定した。バッテリ駆動時は、SD解像度のWMVファイルをループ再生させている。 結果はポータブル/ラップトップ設定時で2時間弱、常にオンで1時間40分台という結果になった。このテスト方法は、最低駆動時間の目安になるといえるもので、省電力設定とよりも液晶輝度のほうが結果に大きく影響してしまっているが、液晶輝度を適度に下げて使えば、2時間以上は持たせることができそうである。ただ、この結果は心許ない印象を受けるのも事実で、ユーザーにもよるだろうが予備のバッテリが必要になる人も少ないないだろう。
表2 バッテリ駆動時間テスト結果
●完全分解が必要だがメモリ増設は可能 さて、本製品のメモリは、オンボードに512MB、SO-DIMMで512MBの合計1GBという容量になっている。日本エイサーでは増設は不可としているものの、Intel 945GSE自体はDDR2-533を2GBまで搭載可能になっているので、SO-DIMM側のモジュールを交換することで利用できる可能性はある。非サポートであることを承知のうえで、これを試してみることにした。 結論から言うと、1GBモジュールへの交換で、合計メモリ1.5GBとして利用は可能だった。ただし、そのSO-DIMMモジュールの交換は本体の完全な分解が必要となるので、難易度はかなり高い。分解の順番は写真に掲載するが、キーボード→パームレスト→マザーボードの順に外していくことになる。 ただ、本製品を分解することで、HDDの交換も可能になる。HDDは9.5mm厚品が利用されている。9.5mm厚という選択肢の多いサイズが利用されていることで、より大容量のHDDへの交換にチャレンジしてみる価値はあるだろう。 ここで、合わせてメモリ増設前と増設後のベンチマーク結果の比較もしておきたい。このベンチマークテストにおいては、PCMark05がXGA解像度を要求するため、外部ディスプレイに接続して作業を行なっている。 結果を見ると、メモリ増設の効果は見られない。メモリの速度自体は変わっていないため、こうした軽量のベンチマークテストでは効果が得られなかったものと思われる。実使用における効果に期待といったところだろう。 そのほか、絶対的なスコアはAtom搭載製品としては標準的なもの。HDDアクセス速度も2.5インチ製品としては標準的で、飛び抜けたところはないが、目立って悪いところもないスコアとなっている。
表3 ベンチマーク結果
●オーソドックスにまとまったミニノートPC 液晶の映り込みとタッチパッドに苦言は呈したものの、Aspire oneはネットブックとして、ほどよいバランスでまとまったオーソドックスな製品である印象を受けた。 黎明期にある製品ジャンルにオーソドックスという言葉は存在しないかも知れない。だが、どこか飛び抜けた部分があるわけではないが、どこを取っても不足がない。現状の他社製品との比較などから見て、ネットブックの主流は本製品のようなものになるのではないかと感じさせる製品なのだ。 見方を変えると、これといって目立った特徴のない製品ではあるが、ネットブック製品数が少ない現状では、特徴のなさが大きな特徴と言っても良いかと思う。そして、何より価格が安い。この製品ジャンルにおいて、これは大きな魅力だろう。 他社製品と比較して極端に劣るわけではないが、シンプルなスペックだから価格が安いというのは、なんだかBTO販売されているノートPCのようでもあり、やはりこの製品ジャンルには適切な言葉ではないかも知れないのだが“円熟味”すら感じさせる製品になっている。価格は安いがネットブック製品の良さが堪能できる……そんな優秀なコストパフォーマンスが魅力の製品といえるだろう。 □日本エイサーのホームページ (2008年8月18日) [Reported by 多和田新也]
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