今回はブレッドボード上に回路を作るときに必要なものを紹介します。ちなみに、ブレッドボード上に電子回路を作ることをブレッドボーディングと呼びます。 まず必要なのは、ブレッドボード上の穴と穴(つまり端子どうし)を接続するための導線です。一般に“ジャンプワイヤ”呼ばれ、市販されています。ジャンプワイヤには、被覆の内側にある芯線が単線のものと、より線のものがあり、被覆の色はさまざまです。
より少ない本数で小売りされているジャンプワイヤもあります。ブレッドボーディングは個性が現れる作業で、人それぞれ好んで使う長さ・色のジャンプワイヤが出てくるようです。ですから、最初にセット品を買うのではなく、気に入った長さや色のジャンプワイヤを徐々に揃えていくと経済的です。 また、ジャンプワイヤは自作できます。より線のジャンプワイヤは先端の接続ピンのハンダ付けや熱収縮チューブによる処理が必要で、市販品を購入するのが無難ですが、単線のジャンプワイヤは容易に作れます。 一般的なブレッドボードに適したジャンプワイヤの芯線直径は、0.3~0.8mm(AWG #30~#22)です。単線の被覆導線なら、線の端の被覆を剥けばそのままブレッドボードに挿してジャンプワイヤとして使えます。被覆を剥く作業はワイヤストリッパを使うとよいでしょう。
ちなみに“AWG”はAmerican Wire Gauge(米国ワイヤゲージ規格)の略です。多くのケースで芯線の太さを示すために用いられる単位で、数が大きくなるほど細くなります。我々はブレッドボード用として22AWG・被覆・スズメッキ単線を使っています。22AWGの単線の公称直径は約0.65mmとなっていますが、実際に測ってみると若干の開きがあり、0.58~0.62mmくらいであることが多いようです。 さて、ワイヤストリッパを使うときは、芯線に傷を付けないようにすることが大切です。芯線に傷が付くと、単線の場合は折れやすくなりますし、より線なら細い導線が切れるなどしてショートの原因となることもあります。ワイヤストリッパ上にある刻印(AWGやmm)は、目安とし、実際に被覆を剥いてみてスムーズに剥けるか、芯線に傷が付かないかを確認することが大切です。 この他に、あると便利な道具は、ニッパーとラジオペンチです。ブレッドボード上に挿す部品の足をニッパーで切ったり、その足を折り曲げたりするときにラジオペンチを使います。
以上の道具があれば、快適にブレッドボーディングを楽しむことができると思います。 しかし、写真のようなニッパーやラジオペンチを必ず用意しなくてはならない、というわけではありません。ニッパーの代わりに古くなった爪切りを使ってもいいですし、ブレッドボーディングだけを考えれば手近なピンセットがラジオペンチの役割を果たすでしょう。 ちなみに、前述のワイヤストリッパですが、この先端部は小さなペンチ状になっていて、刃の根本部分で導線や部品の足を切ることもできます。簡易的にニッパーやラジオペンチの代替えとしても使えるわけです。さらに言えば、単線のジャンプワイヤを自作しないのであれば、ワイヤストリッパも不要になるかもしれません。 とは言え、こういった道具を使えばより快適に作業を進められるのは確かです。どの道具も多くの種類が市販されており、精度や品質の違いや価格の差があります。また、基本的にどれも消耗品───ニッパーやワイヤストリッパはやがて切れ味が落ちますし、ラジオペンチなら摩耗やガタつきが生じます。自分に適した最良の道具を選ぶのは難しいのですが、一方で、道具の探求もブレッドボーディングの楽しみの1つですので、このあたりは皆さんのご判断にお任せしたいと思います。 最後に、必ず必要になる道具を1つ挙げておきます。電圧や電流の値を調べたり、導通の有無を確認するための計測器、テスターです。現在の主流はデジタルマルチメーターと呼ばれるデジタル式の多機能なテスターとなっています。
三和電気計器のAU-31。電圧値・電流値・抵抗値を調べられるアナログ式テスターですが、ゼロΩ調整の必要がなく、電圧や抵抗はレンジ設定不要で使えます。デジタルマルチメーターの利便を持つアナログ表示テスターといったところでしょうか。 三和電気計器のPM10。ポケットサイズのデジタルマルチメーターで、カバー一体型なので外に持ち出しての使用にも便利です。 デジタルマルチメーター(DMMと表記することもあります)やテスターがなくてもブレッドボーディングは楽しめますが、トラブルや疑問を解消しづらくなります。 例えば、回路図どおりにブレッドボード上に配線したけれど……思った通りに動かなかったり、全く動作しなかったりすることは少なくありません。時には、回路図とブレッドボード上が完全に一致しているのに! ということも。 そういったトラブル原因の見極めには、DMMやテスターの利用が近道です。見た目には接続されている回路でも、テスターで調べたら導通がなかった、回路上から想定外の電圧が見つかった、抵抗値がおかしい、といったことが調べられる=ブレッドボード上の回路をデバッグするのが容易になる、というわけです。
このように、電気という目には見えにくいものを数値で把握できるのがDMMやテスターを始めとする計測器です。この先必要になってくる計測器として、時間軸に沿った電圧等の変化を調べられるオシロスコープがありますが、これはまた別の機会に紹介しましょう。 なお、DMMやテスターは、使い方を誤ると本体や計測対象の回路を破損してしまう可能性があります。使用する際にはDMMやテスターに付属する説明書をよく読み、トラブルのないように扱ってください。
(2008年7月31日)
【PC Watchホームページ】
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