日本エイサーからAV機能に特化したノートPCが発売された。アスペクト比16:9、16型液晶を採用し、高品質なサウンド出力を謳うスピーカーも搭載している「Aspire 6920」シリーズだ。見た目の大きな特徴は、キーボード左に配置された大型のマルチメディアコントローラー。エイサーはこの製品を持ち運べるホームシアターと位置付けているが、はたして製品の使い勝手はどうなのだろうか? ●デスクトップPCに代わるマルチメディアノートPC Aspire 6920シリーズはAV機能に特化したマルチメディアPCだ。ちょっと前までなら、自宅で使うPCの場合、デスクトップPCを購入するのが主流だったが、現在はノートPCの方が売れているという。これは日本の住宅事情などもあるが、デスクトップの代わりにノートPCを使うことができるほどノートPCの性能が上がっているというのも一因と言えるだろう。Aspire 6920シリーズも、このようなデスクトップPCの代替を狙っている。 ノートPCに16型の大画面ワイド液晶を搭載した本機は、スピーカーも高品位なものが搭載されDVDなどの映像や音楽を楽しむのに適しているという。実際にDVDなどを再生して見たが、ノートPCとしてはなかなかの性能でクリアな音質だ。音量を最大にした場合でも、かなりの音量にもかかわらず、割れずに再生できるのはマルチメディアPCを謳うだけあると感じた。 キーボードの左側には大き目のマルチメディアコントローラーが用意されており、視覚的、直感的に操作を行なうことが可能で、映像や音楽ソースを楽しむための機能が充実している印象を受ける。実際の操作感としては、軽くタッチしてコントロールすることができ、反応もよく使い勝手がよい。バックライトのON/OFFも切り替えることができるので、暗い部屋でDVDなどを楽しんでいるときにでもじゃまにならないですむ。
ネットワーク機能は1000BASE-Tの有線LAN、IEEE 802.11a/b/g対応の無線LAN、モデムが用意されている。また、Bluetoothにも対応している。インターフェイスはUSB 2.0にSDカード、ミニD-Sub15ピンなどがある。IEEE 1394を積んでいないのは疑問もあるが、ビデオカメラなどを使わないのなら困らないだろう。また、30万画素のWebカメラやマイクもディスプレイ上部に搭載されているので、ヘッドセットなどを購入しなくても、ビデオチャットやボイスチャットを利用することが可能だ。
●オリジナルソフトウェアで使い勝手を向上 PCの使い勝手を向上させるために、各メーカーはオリジナルソフトウェアを用意しているのだが、エイサーも例外ではない。いくつかの機能がまとめられた分かりやすいツールがプリインストールされており、オーディオコントロールやバッテリパフォーマンスの設定、バックアップの作成などができるようになっている。 バックアップの機能が用意されているメーカー製PCはいくつかあるが、普段から使うソフトウェアにその機能があるのは少し珍しいかもしれない。バックアップを頻繁に行なうユーザーには便利なのは当然だが、そうでないユーザーもいつも動いているソフトウェアに機能があることで、バックアップの頻度が上がりそうだ。さらにセキュリティ機能を高めるソフトウェアも用意されており、ファイルやフォルダの暗号化などを行なうことが可能だ。 また、オリジナルのマルチメディアプレーヤーも用意されている。インターフェイスはWindows Media Playerよりも、Windows Media Centerに近い物だが、使い慣れれば便利なソフトウェアだ。
●飛び抜けて高くは無いが、ホームシアターPCとしては十分な性能 ここまで外見や使い勝手の面などを主に見てきたが、ここからはAS6920-602G16の性能を見ていこう。また、Aspire 6920シリーズにはAS6920-602G16のほかに上位機種2製品が用意されている。その2製品も一緒に表にまとめてみたので、参考にして欲しい。
【表】ハードウェア構成
まず、CPUだがCore 2 Duo T7500を採用している。上位機種ではCore 2 Duoの中でも最新の45nmを採用したT8000シリーズを搭載している。 メモリはPC2-5300 DDR2 SDRAMの1GBモジュールを2枚搭載している。初期の頃のWindows Vista採用機種は、動作の重さに不満が出ることもあり、その理由の大半がメモリの搭載容量不足だった感は否めない。最近はメモリを2GB搭載するのが主流になって、それほど重いという話も聞かなくなってきた。Aspire 6920シリーズでもOSにWindows Vista Home Premiumを採用しているが、メモリを2GB搭載しているので容量の心配は無いだろう。
グラフィックス機能はチップセット機能であるGMA X3100を利用している。3Dゲームを楽しむには厳しそうだが、Windows VistaのAeroを動作させる分には問題なさそうだ。CPUやグラフィックス周りのベンチ結果については後述するので、そちらを参考にしてもらいたい。また、上位2機種にはNVIDIAのグラフィックスチップが搭載されているのもポイントだ。 バッテリは6セルの物が採用されており、動作時間は2.3時間となっている。ノートPCとしては短く感じるが、あまり移動中に使うことを想定していない大型PCなので問題にはならないだろう。また、2時間以上動作するなら一般的な映画などを観ることができる。一時的に寝室に持ち込んで映画などを寝ながら見ることもできるだろう。重量についても3.5kgと重量級ではあるが、あまり持ち歩かないことを前提とするならば問題無い。 ●ベンチマークの結果は さて、それではAS6920-602G16でベンチマークソフトをいくつか走らせてみたので結果を見ていこう。AS6920-602G16はシリーズ中、一番下位のモデルだが、Core 2 Duoを採用し、メモリも2GB搭載していると言うことを考えれば、インターネットを見たり、メールの読み書きはもちろん、エンターテイメント系のアプリケーションも全く問題ない性能を持っている。Windows VistaのAeroも、Windowsエクスペリエンスインデックスの結果を見れば分かるように、余裕を持って動作させることが可能だ。
しかし、3DMark06やフロントミッションオンラインベンチマークの結果はあまり芳しくない。AS6920-602G16はグラフィックス機能をチップセット内蔵のGMA X3100で処理しているため、ゲームなどを楽しむには向いていないのは仕方が無いところだ。 PCMark05や3DMark06のCPUの結果などを見ると、割と高い値が出ているため、グラフィックス処理を伴わない処理には強いと考えられる。たとえば、Microsoft Officeなどのビジネススイートなどは複数動かしてもサクサク動作するだろうし、動画のエンコードなども得意な分野の作業と言えるだろう。 また、上位機種のAS6920G-812G25やAS6920G-832G32は、いずれもNVIDIAの最新グラフィックスチップ、GeForce 9500M GSを搭載しているため、ハイエンド3Dゲームを除けば快適にプレイすることも可能だ。デスクトップの代替機として考えていて、かつ3Dゲームも楽しみたいと思っているのなら、上位機種をお勧めする。 省スペースでありながら高性能が欲しいユーザーは多いはず。総じて言うなら、Aspire 6920シリーズは、そんなユーザーの中でもとくに、家族みんなで使いたい、と考えているような方お勧めできるPCだ。インターネットやメールのチェック、マルチメディアソースの再生、ビジネスソフトウェアを使うのが主ならAS6920-602G16で十分だろう。ただし、3Dゲームを楽しみたいと思うのならAS6920G-812G25がお勧めだ。また、Blu-ray Discの映画などを楽しみたいのなら、対応ドライブを搭載したAS6920G-832G32を購入するのもよいだろう。 □日本エイサーのホームページ (2008年6月30日) [Reported by 山本 倫弘]
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