【COMPUTEX TAIPEI 2008】NVIDIA編 NVIDIA、GeForce 9Mによる動画エンコードやHybrid SLIをデモ
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NVIDIA Notebook Products General ManagerのRene Haas氏 |
会期:6月3日~7日(現地時間)
会場:Taipei World Trade Center Nangang Exhibition Hall
Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/3
Taipei International Convention Center
NVIDIAが6月3日(米国時間)に発表したモバイル向けGPU「GeForce 9Mシリーズ」。6月5日には、COMPUTEX TAIPEIにおいて本製品の発表会が開催された。この場では、同社が推し進めるGPUコンピューティングを利用した動画エンコードやフォトレタッチ、モバイル製品としては初めてとなるHybrid SLIのデモンストレーションを実施した。
●Intel製チップセットとの組み合わせでも動作するHybrid SLI
NVIDIAのWebサイトには、すでにGeForce 9Mシリーズの製品情報がアップされているが、今回の発表会では、このうち、いくつかの製品に関する詳細な仕様を得ることができた。まずは、それらを表にまとめておきたい。
表1:GeForce 9Mシリーズの仕様 | |||||||
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GeForce 9100M G | GeForce 9200M GS | GeForce 9300M GS | GeForce 9400M | GeForce 9500M G | GeForce 9600M GS | GeForce 9600M GT | |
種別 | マザーボードGPU | ディスクリートGPU | ディスクリートGPU | マザーボードGPU+ ディスクリートGPU | ディスクリートGPU | ディスクリートGPU | ディスクリートGPU |
SP数 | 8 | 8 | 8 | 16 | 16 | 32 | 32 |
Coreクロック(MHz) | 450 | 530 | 580 | 580 | 500 | 430 | 500 |
シェーダクロック(MHz) | 1,100 | 1,300 | 1,450 | 1,450 | 1,250 | 1,075 | 1,250 |
メモリクロック(MHz) | 400 | 700 | 700 | 700 | 800 | 800 | 800 |
最大メモリ容量(MB) | 256 | 512 | 512 | 768 | 1,024 | 1,024 | 1,024 |
メモリインターフェイス(bit) | 128 | 64 | 64 | 128 | 128 | 128 | 128 |
メモリ帯域幅(GB/sec) | 12.8 | 11.2 | 11.2 | 24.0 | 25.6 | 25.6 | 25.6 |
テクスチャフィルレート(billion/sec) | 3.6 | 4.2 | 4.6 | 8.0 | 8.0 | 6.8 | 8.0 |
FLOPs(billion/sec) | 26.4 | 31.2 | 34.8 | 61.0 | 60.0 | 103.0 | 120.0 |
注意が必要なのは、この表のうち「GeForce 9100M G」はAMDプラットフォーム向けのチップセットを指している点と、「GeForce 9400M」というGPUは実際には存在しない点である。詳しくは後述するが、これらはHybrid SLIに大きな関わりがある製品だ。
発表会に登壇したRene Haas氏は、冒頭でGeForce 9Mシリーズのハイライトに4点を挙げた。
1つ目のハイライトであるHybrid SLIについて、ノートPCにはバッテリライフとパフォーマンスという相反する2つの課題があり、デスクトップですでに導入されているエキサイティングな技術であるHybrid SLIは、ノートブックにおいてはさらに役に立つ機能であるとアピール。Hybrid Powerによる50%のバッテリ駆動時間と、GeForce Boostによる80%のパフォーマンスアップという数字を示した。
ノートPC版のHybrid SLIを利用できる環境については、まず外付け側のGPUに関しては、すべてのGeForce 9MシリーズでHybrid Power、GeForce Boostともにサポートされるという。ただし、Intelプラットフォームにおいては現時点でHybrid Powerのみのサポートとなる。これはNVIDIA製チップセットではなく、MontevinaプラットフォームとNVIDIA製GPUの組み合わせでHybrid SLIが利用されるためだ。Motevinaプラットフォームで投入されるチップセット内蔵グラフィックを使ったSLIというのは、さすがに無理な相談といえるだろう。
一方のAMDプラットフォームは、先述したGeForce 9100M Gをチップセットに利用した環境で、Hybrid Power、GeForce Boostの両方が利用可能となる。ただし、こちらはAMD製チップセットとの組み合わせで利用することはできないとのこと。
また、今回のタイミングでGeForce 8200Mという統合型チップセットもラインナップに追加された。デスクトップ向けのGeForce 8200はHybrid SLIをサポートしていたが、モバイル向けであるGeForce 8200MはHybrid SLIはサポートされない点に注意を要する。
ちなみに、先に紹介した“GeForce 9400M”とは、内蔵グラフィックのGeForce 9100M Gと、外付けグラフィックのGeForce 9300M GSを組み合わせた際の名称となる。デスクトップ向け製品のレビュー記事でも紹介したが、Hybrid SLIのGeForce Boostは、内蔵+外付けグラフィックによるSLIを有効にした状態に対し、そこで得られるパフォーマンスに即したブランド名を付ける。この場合は、それがGeForce 9400Mなのである。
発表会では、このGeForce 9100M G+GeForce 9300M GSを利用したGeForce Boostのデモが行なわれた。3DMark06のPerlin Noiseを実行し、そのフレームレートが倍以上になっていることを示している。
Hybrid SLIのコントロールツール。デスクトップ向けドライバとは表現が異なるものの、利用できるモードは同じ | 3DMark06 Perlin Noiseテストの結果。左がGeForce Boost有効時、左がGeForce 9300M GS単体時のもので、GeForce Boostによって倍以上のスコアを出している |
●GeForce 9Mを使ったアプリケーションアクセラレートをデモ
2つ目のハイライトとなるGeForce 8Mシリーズとの比較に関しては、ジオメトリ処理の効率化などによるという。ちょうど、デスクトップでもG80からG92コアでシェーダ処理の効率化がなされたが、GeForce 9Mシリーズも同じようなアプローチをとっていると想像される。
なお、3Dパフォーマンスについては、セグメント別に3DMark Vantageのパフォーマンスグラフが示された。こちらはAMDのRadeonシリーズとの比較になるが、Mobility Radeon 3600/3400シリーズに対して、同セグメント製品が50~100%ほど高速であるとし、そのアドバンテージをアピールしている。
GeForce 9600M GTとRadeon HD 3670、GeForce 9600M GSとRadeon HD 3650のパフォーマンスを比較したグラフ | GeForce 9300M GSとRadeon HD 3470、GeForce 9200M GS/9100M G、Radeon HD 3450/3400をそれぞれ比較したグラフ |
続く、PureVideo HDに関しては、機能の紹介のみが行なわれた。デスクトップ向けではG92コアのGeForce 8/9シリーズでデュアルストリームのハードウェアアクセラレーションに対応しているが、この機能の一環としてBD Liveを正式にサポートすることになる。
最後のハイライトがGPUによるアプリケーションのアクセラレーションだ。すでに、エンタープライズやデスクトップ向けのジャンルでは、CUDAと呼ばれるプラットフォームにより、GPUを汎用アプリケーションに利用する動きが始まっている。このGeForce 9Mシリーズ以降、ノートブックの分野でもこの動きが本格化することになる。
発表会では、実際にGeForce 9Mシリーズを使用した汎用アプリケーションの動作デモを実施。1つは、国内でも紹介されている「RapiHD」を使った動画エンコードのデモで、国内紹介時に比べてユーザーインターフェイスが洗練された新しいバージョンを使用。iTunesを使ったCPUによるエンコード処理と、RapiHDを使ったGPUによるエンコード処理を行ない、その速度差をアピールした。
RapiHDによる、iPhoneで再生可能なH.264動画エンコードのデモ。撮影時に47.7FPSの値が出ている。この直前にiTunesによる動画エンコードも実施されており、その違いは歴然であった | GPUとCPUによる動画エンコード処理速度の違いを表したグラフ |
RapiHDは現時点でユーザーが利用可能な状態で提供されていないが、「あと数週間のうちに提供が開始される予定である」と表明された。それは当然デスクトップ向けのGeForce 8/9シリーズでも利用できるはずであり期待される。さらに、RapiHDのエンジンを使用したAdobe Premiere用プラグインの投入も表明されている。
このほか、Adobe PhotoShop CSのレタッチ処理をGPUを使って一瞬で完了させるデモも実施。こちらの正式な対応時期についてが、NVIDIAでは情報をもっていないとのことで、コメントは得られなかった。
Adobe PhotoShop CSのブレ補正処理をGPUで処理するデモ。処理は一瞬で完了した | こちらは、GPUとCPUによるフォトレタッチ処理速度の違いを表したグラフ |
なお、この2つの処理については、CPUとGPUによる速度差がグラフで示され、GeForce 9Mシリーズの優位性を強調。このグラフには未発表のGPUも含まれており、さらに高速な処理速度が実現されている。
さらに、汎用アプリケーションのアクセラレーションに関連した話題として、同社が今年買収したPhysXエンジンのCUDAへの適用についても紹介された。CUDA上で動作するPhysXドライバが登場予定で、GeForce 9Mシリーズでも利用可能となる予定になっている。プレゼンではスカートの裾の動きを表したPhysXのデモが紹介されている。なお、PhysXドライバの投入時期については、「今年の夏」としている。
スカートの裾の動きを表したPhysXのデモ。CUDA上で動作可能なPhysXドライバが提供され、GeForce 9Mシリーズでも利用可能になる | ゲーミング環境における、GeForce 9Mシリーズのアドバンテージを示した表 | こちらは汎用アプリケーション利用や電力などにおけるGeForce 9Mシリーズのアドバンテージを示した表 |
GeForce 9100M GチップセットとGeForce 9600M GTを搭載するMSIの「GX-630」 | こちらはIntelのSantaRosaプラットフォームの製品で、GeForce 9300Mシリーズを搭載するASUSTeKの「VX3V」 |
●未発表チップセット搭載マザーを展示
本発表の会場はNVIDIAの最新製品が数多く展示されていたが、この中に現時点で未発表の「GeForce 9300」を搭載したマザーボードがあった。同社が未発表製品を公の場で展示するのは昨今では稀な出来事だ。
本製品の詳細については未発表製品であるため詳しいコメントを得られていないが、Intel向けの統合型チップセットであることから見て、M7Aのコードネームで呼ばれた製品だろう。GeForce 9シリーズブランドであることから、Hybrid SLIに対応するIntel向けチップセットと想像される。2チップ構成のチップセットで、ここで展示された5社のいずれもがnForce 730iを組み合わせたものとなっている。
abitの「IN7AG」 | ASUSTeKの「P5N7A-D」 | ECSの「MCP7AT-A」 |
GIGABYTEの「GA-E7AUM-DS2H」 | J&W Technologyの「JWN7AM02」 |
□COMPUTEX TAIPEIのホームページ
http://www.computextaipei.com.tw/japanese/index.shtml
□関連記事
【5月7日】【多和田】Hybrid SLI対応AMD向けチップセット「nForce 780a SLI」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0507/tawada141.htm
【4月16日】NVIDIA、GPU支援による動画エンコード機能をデモ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0416/nvidia.htm
(2008年6月6日)
[Reported by 多和田新也]