インテル、ゲルシンガー副社長来日記者会見
|
パトリック・ゲルシンガー氏 |
5月30日 開催
インテル株式会社は5月30日、都内で記者会見を開き、米国から来日した本社 上席副社長 兼 デジタル・エンタープライズ事業本部長のパトリック・ゲルシンガー氏が、Intel製品のビジョンなどについて説明した。
HPCからスマートフォンまでIAで展開する戦略 |
同氏はまず、インテルアーキテクチャ(以下IA)の価値は、18~24カ月でトランジスタの集積度は倍増する“ムーアの法則”、高速なハードウェアの登場によるリッチなソフトウェアの登場による“ソフトウェアスパイラル”、ネットワークによって生み出される価値はデバイス数の2乗に比例して増大する“メトカーフの法則”、ネットワーク参加者のサブグループの最大数は2n乗-n-1となる“リードの法則”の4点に集約されるという。
そして、これらの価値を十分に発揮させるために、同社はHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)から携帯端末に至るまで幅広い分野においてIAを採用する戦略をとった。この結果、優れた互換性と拡張性を実現し、上記の4つの価値を相乗効果でさらに高めることができたと話した。
HPC分野においては、医療画像やゲノム研究、気象予測などにおいて、数十年相当のムーアの法則に則ったプロセッサ性能以上のものが求められているため、同社は積極的に開発/展開している。CPUのみならず、リファレンスプラットフォームやソフトウェアツール/ライブラリの充実などを図り、スーパーコンピュータランキング500のうち354のシステムがIAを採用するという実績を誇った。
HPC分野ではムーアの法則に則ったCPU以上の性能が必要 | スーパーコンピュータラインキング500のうち354がIAを採用 |
ミッションクリティカルな分野においては、Itaniumプロセッサで対応する。次期の「Tukwila(開発コード)」は、クアッドコアで30MBのキャッシュを内蔵するほか、マルチスレッディングやQuickPathインターコネクト、統合されたメモリコントローラによって、従来比最大2倍の性能を実現し、依然として高い需要がある市場に応えていくとした。
サーバー分野はXeonプロセッサで対応するが、これは2007年もっとも成功した分野であるという。Canelandプラットフォームは当初から4コアから6コアCPUへのアップグレードパスを残していたため、市場に受け入れられた。次期6コアCPUの「Dunnington(開発コード)」では19億個のトランジスタを集積し、16MBのL3キャッシュを内蔵するなど、大幅な性能向上を見込んでいる。
また、サーバー分野では今後仮想化がさらに進化し、アーキテクチャやOS、グラフィックスを再構築することにより、仮想化環境でのパフォーマンスをネイティブ程度にまで引き上げ、利用価値をさらに高める。消費電力の削減や管理の容易化を目指すとした。
ミッションクリティカル分野向けの次期CPU「Tukwila」の主な特徴 | Dunningtonの主な概要 | 仮想化が進化し、新たな利用モデルが生まれる |
環境についても注力し、さまざまな業界のフォーラムに参加し、エコへ貢献する。2010年までにITプラットフォームの電力消費を50%削減し、リーダーシップを発揮したいとした。また、業界で初めてエネルギー効率を測るベンチマーク「SPECpower」も策定し、このベンチにおいてXeonが最も優れているという結果をアピールした。
エネルギー効率の改善プログラムへの参加 | SPECpowerを策定し、Xeonがもっとも消費電力あたりの性能に優れることをアピール |
クライアント分野においては、Tick Tock開発モデルを継続し、2008年後半にNehalem、2009~2010年にWestmereとSandy Bridge(いずれも開発コード)をリリース。このうちNehalemは統合メモリコントローラやQuickPathインターコネクトの搭載により「Pentium Pro以来の最大の拡張」として位置づけ、Sandy BridgeはAVE命令の搭載により「並列性を高めたベクトル志向の製品」として位置づけた。
クライアント向けCPUのTick Tock開発モデル | Nehalemの主な概要 | Sandy BridgeのAVX命令による新しい効果 |
ゲームやオーディオなどのビジュアルコンピューティング分野では、CPUのマルチコア/マルチスレッド化により高い性能を提供すると共に、優れたIAプログラミングと開発ツールでソフトウェア開発をサポートする。
また、複数のIAコアを内蔵し、スケーラブルな性能を実現できる「Larrabee」は、IAアーキテクチャを採用しながらも、将来ディスクリートGPUとして、DirectXとOpenGLをサポートし、ゲームやワークステーション分野向けに提供するとした。
ビジュアルコンピューティングの進化でより高い性能への需要 | Larrabeeはビジュアルコンピューティング実現のためのIAプロセッサ | ミドルウェアの充実による開発環境のサポート |
クライアント分野では、企業向け市場にはvProによる高い接続性/管理性を提供するとともに、低価格のネットブック市場向けにはAtomをリリースして対応していく。
また、現在、携帯電話の多くは開発環境が断片化されており、ソフトウェア開発に困難をもたらしているが、将来ここにもIAを推進していくことで、優れたソフトウェアの互換性と高い性能を提供できるとした。
企業での運用管理性を高めるvProテクノロジー | さまざまなモバイルプラットフォームを展開 | IAでモバイルインターネットを推進する「Atom」 |
IAを採用すればさまざまなサイトとの互換性を高められる | AtomのCPUとコンパニオンチップ | 低消費電力だけでなく、性能も同クラスと比較して2倍 |
最後に同氏は、「HPC分野でもDOSが使えるし、スマートフォンでもDOSが使える。どの性能セグメントにおいても互換性を維持しているのはIAだけであり、ここにIA最大のメリットがあると言えるだろう」と語った。
□インテルのホームページ
http://www.intel.co.jp/
□関連記事
【2007年6月13日】GoogleやIntelなど、PC電力低減と温室効果ガス削減を目指す団体設立
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0613/csci.htm
【4月2日】インテル、Atomでモバイルインターネットを推進
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0402/intel.htm
【2007年6月11日】【海外】Intelが進める、32コアCPU「Larrabee」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0611/kaigai364.htm
(2008年5月30日)
[Reported by ryu@impress.co.jp]