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組込システム会議「ESC SV 2008」レポート【Microsoft編】

Windows Embeddedの製品ラインを再編

【写真01】これはそれほど不思議ではないのだが、名前はこのまま行くのだろうか? 4つ目の話とも絡む事であり、なんとなく整合性が取れていない気がする

会期:4月14日~18日(米国時間)

会場:米国サンノゼ McEnery Convention Center



 本当は3本目の原稿はx86系プロセッサの動向をお届けしようと思ったのだが、x86系の動向に関係してくることもあり、先にこちらの話を取り急ぎお届けする。ESC SVの3日目午後にMicrosoftのKevin Dallas氏(General Manager, Windows Embedded)による基調講演が開催された。氏の講演はWindows EmbeddedのEmbedded Marketへの取り組みと今後の展望を示したものだが、講演の最後で4つの発表と今後2年のロードマップが公開された。

●4つの発表

 まず4つの発表である。1つ目はWindows Embedded CEのCertification Programの実施(写真01)。WindowsのCertification Programは既に広く普及しているが、Windows CEについてもこれを行なうという話である。

 2つ目はWindowsのBSP(Board Support Packages)のCertification Feeを最初の1回目については無料にするとの話。2回目からは有償だそうだが、これはBSP Certifiedの製品リリースを考えているベンダーには追い風だろう。

 3つ目は「SPARK your Imagination」と呼ばれるパートナープログラムである。これは

・Windows Embedded CE 6.0 R2が動作するハードウェア(BSP Certified)
・Windows Embedded CE 6.0 R2 Platform Buildr (Full Version)
・Visual Studio 2005 Professional (Full Version)
・Step-by-step guide to build Windows Embedded CE 6.0
・Pre-build Windows Embedded CE 6.0 Image

といった、フルセットでは1,000ドルを軽く超えるパッケージが格安(実際の値段はパートナーによって異なるが、例えばVIAのARTiGOだと単体で300ドルを切っており、SPARKキットも500ドル未満との話だった)で入手できるというものだ。このSPARK your Imaginationは、ADVANTECH/iCOP/Keith&Koep GmbH/Special Computing/VIAの5社からハードウェアが提供されることになっている。

 4つ目がラインナップの整理である。従来Windows Embedded CE/Windows XP Embedded/Windows for Embedded Systemという名称で販売されていた3つの製品ラインナップが、今回Windows Embedded Compact/Standard/Enterpriseと改称されることになった(写真04)。さらに、これにとどまらず新しい製品も発表された。それが、Windows Embedded POSReadyである(写真05)。

【写真02】BSPの認証を受けたボードは、Microsoftによってサポートされることになる(あくまでハードウェアのみではあるが) 【写真03】日本ではVIAのpico-ITXベースが一番入手しやすいかもしれない。問題はiCOPが今後どの程度絡んでくるかだろう
【写真04】Compactが一番問題かも。これをWindows Embedded CEとかにしておけば、Windows Embedded CE Certificationとの整合性も取れたのに、と思わなくも無い 【写真05】POSReadyはCategory Solutionsに分類されており、今後特定用途向け製品がここに追加されるとしている。個人的にはWindows MobileとかWindows Automotiveなんかもここに入るのではないか? という気がするが、現時点ではそこまで統合するつもりはないようだ

 とりあえずPOSReadyは脇において置き、これらの製品の特徴と併せて今後のロードマップも同時に示されたので、先に紹介しておく(写真06)。まず全般としてだが、今年前半中にまずWindows Embedded Enterprise、後半にWindows Embedded Standardがリリースされ、2009年に入ったところでWindows Embedded POSReady、後半にWindows Embedded Compactと来て、その後に「Quebec」がWindows Embedded Standardの後継製品として登場する。

 Windows Embedded Enterprise(写真07)は従来のWindows for Embedded Systemそのままである。これは特に変更はないようだ。

【写真06】QuebecはWindows Embedded Enterpriseに属するかと思ったのでちょっと意外であった。もっとも、次にはQuebecベースのEnterprise向けが登場すると思われるが 【写真07】構成としてはWindows XP SP2相当の製品となる

 これに続くのがWindows Embedded Standardである(写真08)。こちらはWindows XP Service Pack 3をベースとしたものになるほか、「業界初」(Dallas氏)の10年のサポートが提供される。こちらの記事で紹介した「Windows XP Embedded "2"」は、このWindows Embedded Standardの事であろう。

 Windwos Embedded POSReady(写真09)は、Windows Embedded StandardにPOS関連サービスを追加したものになる。

 Windows Emebedded Compact(写真10)は現在のWindows CE 6.0 R2の後継となる、バージョンとしては7.0に相当する製品となる。

 最後が問題のQuebec(写真11)で、やはりWindows Vistaベースの製品となることが明確にされた。このあたり、筆者の予測は外れてなくてよかった(というほど大した予測ではないのだが)。

【写真08】リリースは6月のTech Edでということになるらしい 【写真09】「Point of Service for .NET」なんてものは初めて目にした
【写真10】とりあえずARM/MIPSなどといった幅広いプロセッサがサポートされることなどは今と変わらないとしていた。ただ具体的にどんなものになるのかは未公開だった 【写真11】ちなみにModular Designを採用したものになる、とDallas氏は強調していた。これを使えば本当に1GBで快適に動くVistaが出てくるかもしれないが、その頃にはMIDもきっと2GBを超えるメモリを普通に積んでいるのであろう

●Windows Embedded POSReadyデモ

 基調講演の中では、実際にWindows Embedded POSReadyでどんなシステムが作れるか、のデモも行なわれた。ここでは12のベンダーが提供する12種類のデバイス(タッチスクリーンやバーコードリーダー、プリンタなど)にWindows Embedded POSReadyを組み合わせて作ったシステムで、実際にPOSを使うシナリオがデモされた(写真12~20)。まだデモの段階のものにあれこれ言うのも何なので、今回は筆者の感想は差し控えさせていただきたい。

【写真12】POSを使っての処理スタート。アメリカのスーパーなどの場合、この左側にはベルトコンベアなどを組み合わせた台があり、購入者はカートに積んだ品を全部台に載せてから、自分は右側に移動する。手前の説明者が、ここでは購入者になる 【写真13】まずレジのスタート。指紋認証でレジ係を認証する仕組みだが、お約束通りなかなか認識されなかった 【写真14】1品づつアイテムを通してゆく(バーコードスキャナは、液晶モニターの下に位置する)。スキャンされると、それが画面に即時反映される
【写真15】同じ商品が複数ある場合、数量を画面から変更することで、商品の数だけスキャンする手間を省いてくれる 【写真16】野菜などの場合、重さを測定して金額を決める事になる。こうした場合、画面に商品種類が登場し、これを選ぶと測定した重さから金額が確定される 【写真17】たまに複数の商品が同じバーコードになっている場合がある。これを判別するため、バーコードスキャナの横にはカメラが置かれており、ここで画像認識をリアルタイムで行ない、バーコードの結果と画像認識で判断した商品が一致していないと、この様に警告を出してくれる
【写真18】ショッピングカートの下の段に荷物を積んで、支払わずに通り抜けられる事を防止するために、ここにもカメラが 【写真19】こちらは支払い画面。現金/小切手/カードから選べる(アメリカではスーパーでも小切手やカードを使う事は割と普通である)。ちなみに半透過になっている背面スクリーン、左側にはレジを通した商品一覧が、右側には広告が表示されている 【写真20】写真18のカメラは、Diet Cokeが下に積まれている事を発見しており、支払いのタイミングでこれがスキャンされていないとこんな具合に警告が

 とりあえずReadyPOSはおいて置いて、Windows CE R6.0 R2でx86を積極的にサポートする姿勢を改めて見せたことで、今まではARMなどががっちり握っていたマーケットにx86を入りやすくする切っ掛けを作ったのは間違いない。ちなみにこのマーケットに積極的な反応を示しているのは、AMD以外の「3社」というところが、非常に興味深い。このあたりは次にx86系プロセッサのレポートで触れたいと思う。

□ESC SV 2008のホームページ(英文)
http://www.cmp-egevents.com/web/esv/home
□関連記事
【4月15日】組込システム会議「ESC SV 2008」開幕レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0415/esc01.htm

(2008年4月18日)

[Reported by 大原雄介]

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