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32nmプロセスの「Westmere」は6コアに
〜Intelロードマップ2009-2010




●Nehalemからアーキテクチャの大きな変更はないWestmere

 Intelは、パフォーマンスデスクトップPCとボリュームサーバーセグメントでのパフォーマンスCPUの汎用CPUコア数を、継続して増やす。2010年前半に市場投入する32nmプロセスの「Westmere(ウェストミア)」は、汎用CPUコアが6個の「ヘキサコア(Hexa-core)」になる見込みだ。IntelはWestmereでは、ソケットをNehalem世代と互換にし、プラットフォームを継承する。しかし、CPUコア数は1.5倍に増やし、共有L3キャッシュも12MBへと1.5倍にする。L2キャッシュは、おそらく各コア256KBずつに留まると推定される。

 Westmereでは、Nehalem世代からアーキテクチャは大きく変更しない。命令セットの拡張としては、暗号化アクセラレーションを支援する新命令「AES-NI」が加わることが明らかにされている。バーチャルマシンの切り替えをより高速化するほか、セキュリティスタック「LT(LaGrande Technology)-SX」がサポートされる。

 Intelは、65nmプロセス世代でMCM(Multi-Chip Module)によるクアッドコアを導入。45nm世代では、クアッドコアをメインストリーム価格帯にも積極的に投入し、さらに、Nehalemファミリでネイティブクアッドコアへと移行させる。ロードマップ上では、45nmプロセスがクアッドコアの世代だ。実際には、クアッドコアCPUは、今年(2008年)第4四半期でも、IntelのデスクトップCPU全体の出荷の10%程度を占めるに過ぎない。しかし、製品ラインナップ的には、クアッドコアにスポットライトが当てられている。

 そして、Intelは32nm世代でも、さらに汎用CPUコアを増やし続ける。少なくとも、パフォーマンスデスクトップとボリュームサーバーはヘキサコアへと移行する。サーバーは、汎用コアを増やすことで性能アップを得やすい。Intelは、パフォーマンスデスクトップでも、同様だと判断したようだ。Westmereの派生CPU群については、まだCPUコア数がいくつになるのか、明確にはわかっていない。

 ダイサイズ(半導体本体の面積)的には、32nmプロセスで6コア+12MBのWestmereは、45nmプロセスで4コア+8MBのBloomfield(ブルームフィールド)/Gainestown(ゲインズタウン)と、ほぼ変わらないか小さくなるはずだ。そのため、Intelの製造コスト的にも、WestmereはBloomfield/Gainestownと同じ位置に来るだろう。ただし、45nmから32nmへのプロセス移行による製造コスト増も加わる。ちなみに、Westmereのすぐ後ろには、新マイクロアーキテクチャの「Sandy Bridge(サンディブリッジ)」も控えている。

Westmereの内部構成(推定図)
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●Bloomfieldを置き換えるWestmere

IntelのデスクトップCPU最新ロードマップ
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IntelデスクトップCPUの比較表
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 上が現在判明している限りのIntelのデスクトップCPUロードマップだ。赤いラインはCPUマイクロアーキテクチャの移行する境界を示している。Core Microarchitecture(Core MA)は、元々モバイルCPUとして開発されていたため、メインストリームCPUから投入され、1年足らずでローエンドまで浸透した。しかし、サーバー&パフォーマンスデスクトップをターゲットに開発されたと見られるNehalemは、下への浸透にはやや時間がかかる。

 Nehalemは、今年第4四半期に、パフォーマンスクアッドコアの「Bloomfield(ブルームフィールド)」が投入される。Bloomfieldは、現在のユニプロセッサのクアッドコアCPUの上位製品を置き換える。ちなみに、IntelはNehalem世代からは、マルチプロセッサ構成の制約を外す計画だ。そのため、プラットフォーム側が対応できるなら、Bloomfieldでもデュアルコア構成が可能だと推測される。

 Bloomfieldがカバーする範囲は、メインストリームの上位までで、ミッドレンジから下へNehalemアーキテクチャが普及するのは、来年(2009年)中盤となる。廉価版クアッドコアの「Lynnfield(リンフィールド)」と、GPU統合版デュアルコアの「Havendale(ヘイブンデール)」で、Nehalemを一気に浸透させるという計画は、今のところ変更されていないようだ。

 Havendaleは、デュアルコア版のNehalemと、グラフィックス統合チップセットGMCH(Graphics Memory Controller Hub)をワンパッケージに納めたMCM(Multi-Chip Module)だ。CPUコアは4MBの共有キャッシュを搭載し、QuickPath Interconnect(QPI)でGMCHダイと接続している。GMCHダイには、デュアルチャネルDDR3インターフェイス、PCI Express Gen2 x16、GPUコア、DMIインターフェイスなどが実装されている。単体でメインメモリDRAMとPCI Express Gen2デバイスを接続できる。パッケージはHavendaleが「LGA1160」で、これはLynnfieldも同様だ。

Nehalemファミリの内部構成
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 2010年前半には、WestmereがBloomfieldと同じ位置に来ると推測される。Westmere世代では、Lynnfieldに当たる製品がヘキサコアになるのかオクタコアになるのか、今のところはわかっていない。しかし、メインストリームとその下をカバーするHavendaleがデュアルコア以上になることは考えにくい。32nmでは、デュアルコアはダイサイズがさらに小さくなり製造コストが下がるため、Havendaleではカバーしない、いわゆるバリューセグメントも、Nehalem系アーキテクチャへと切り替わって行くだろう。

●Diamondvilleがローエンドに登場

 一方では、Intelが「Nettop」と呼ぶ、ローコストPCセグメントには、新たに「Diamondville(ダイヤモンドヴィル)」が投入される。ローコストPCは、OLPC(One Laptop per Child)やクラスメイトPC、199ドルPCといった低価格のPCデバイスの総称だ。政府機関などが学校に供給したり、エマージング市場で低価格に販売される製品を想定している。従来のシンクライアントの一部もこの市場に含まれ、成熟市場向けの新しい低価格コンピュータ製品も期待されている。

 Diamondvilleは、携帯情報機器向けに開発された低消費電力x86 CPU「LPIA(Low Power Intel Architecture)」である「Silverthorne(シルバーソーン)」と同じ製品で、「Bonnell(ボンネル)」CPUコアを使っている。シングルコア版「Diamondville SC(Single Core)」と、デュアルコア版「Diamondville DC(Dual Core)」が存在する。CPUブランドは、すでに発表されている通り「Atom(アトム=原子)」となる。Coreに対してAtomと、より小さなイメージを持ってきた。

Diamondvilleのブロックダイヤグラム
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 今後の焦点の1つは、LPIA系CPUが、ローコストPCセグメントに留まるのか、それとも、もう少し上のセグメントまで上がって来るのかという点にある。現実的には、バリューセグメントのPCの中には、用途的にはLPIAでカバーできるものがある。Intelが、もし積極的にそのレンジもLPIAへと置き換えるつもりになれば、可能だ。

 チップセットのロードマップは非常に単純だ。現行のCore MAは「Bearlake(ベアレイク)」ファミリから「EagleLake(イーグルレイク)」ファミリへと移行する。しかし、システムアーキテクチャが異なるNehalem系には、新チップセットが必要となる。そのため、Nehalemファミリの登場とステップを合わせて、新世代チップセットが投入される。Bloomfield向けの「Tylersburg(タイラスバーグ)-DT」と、Lynnfield/Havendale向けの「Ibexpeak(アイベックスピーク)」だ。EagleLakeは、現行FSB(Front Side Bus)アーキテクチャの最後のチップセットファミリとなる。Diamondvilleは、バリューCPU向けの「945GC」チップセットがカバーする。

Intelのデスクトップ向けチップセットロードマップ
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Heavendaleのシステムアーキテクチャ
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PC向けのNehalemプラットフォーム
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システムパーティショニングの変化
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●AMDの45nmプロセスは今年第4四半期頃

 同時期のAMDは、まず、今年(2008年)前半は65nmプロセスのクアッドコア版Phenom(Agena:アジーナ)を、ハイパフォーマンスとローパワーの両方向へとファミリ展開する。AMDは、当初の計画と較べると、Phenomの投入がずれ込み、パフォーマンスエリアの製品がスライドしてしまった。よく知られている通り、AMDはBarcelona/Agenaのダイステッピングを切り替えつつあり、それまでボリュームとラインナップが制約されている。また、AMDはトリプル(3)コアのPhenomを、Phenom 8000番台として投入しつつある。

 AMDの45nmプロセスへの移行は、現在の予定では、今年第4四半期とされている。Agenaの後継となる45nm版クアッドコアCPU「Deneb(デネブ)」は、Opteron系の45nmクアッドコア「Shanghai(シャンハイ)」と同じダイ(半導体本体)の製品となる見込みだ。各CPUコアのL2キャッシュは現在と同じ512KBずつだが、共有L3キャッシュが2MBから6MBに拡張される。Shanghaiのダイはすでに公開されている。

 加えて、AMDは同じ45nmプロセスで廉価版のクアッドコアCPU「Propus(プロープス)」を投入すると言われている。Propusは、共有L3キャッシュを備えず、各CPUコアのL2キャッシュのみの構成となる。CPUのキャッシュSRAMエリアは、通常、歩留まりにはほとんど影響しない。冗長SRAMセルが設けられているためだ。にもかかわらずSRAM部分をカットするのは、ダイサイズ(半導体本体の面積)を小さくすることで、1枚のウェハから採れる個数を増やすためだと推測される。

●45nmプロセス化はスロースタートで後半にダッシュ

 45nmプロセス化では、AMDの約1年先を走るIntelだが、Intelも決して順調というわけではない。Intelは当初の計画より、第1四半期と第2四半期の、45nmプロセスCPUの出荷比率を下げた。以前の計画では、第1四半期に45nm CPUが10%を超え、第2四半期に20%を超える予定だった。しかし現在は、第1四半期の出荷は当初予定の半分以下、第2四半期も20%以下に修正されている。その一方で、第3四半期には、当初予定していた30%強を大きく上回る50%前後まで45nmの比率が高まっている。この計画の通りに進むなら、45nmへの世代交代は今年前半はスローペースだが、後半になって急にピッチを上げ、第4四半期には60%が45nmへと移行することになる。

 Intelの今年(2008年)を概観すると、見えてくるのは、後半が変動期になることだ。前半はチップセットの世代交代以外は大きな動きは少なく、後半から来年(2009年)にかけて、Nehalemによる大きな波が来る。Nehalemでは、プラットフォームの変更が加わるため、変化は大きい。

□関連記事
【3月21日】【海外】モバイルにもL3キャッシュをもたらすNehalem
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0321/kaigai427.htm
【2007年10月2日】【海外】デュアルコアからオクタコアまでスケーラブルなNehalem
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1002/kaigai390.htm
【2007年9月27日】【海外】Penrynの1.5倍のCPUコアを持つ次世代CPU「Nehalem」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0927/kaigai389.htm

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(2008年3月26日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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