●SP1に向けた3つのパッチ 紆余曲折の末、ようやくリリースが決まったと思われたWindows VistaのService Pack1(SP1)だが、またもやトラブルが発生している。ただし今回はSP1そのものの問題ではない。 2月12日、Microsoftは既存のWindows VistaにSP1をあてるための必須条件となるアップデートの配布を、Windows Updateを通じて開始した。このアップデートは最大3つのモジュールからなる。 まず「KB935509」は、Windows Vista EnterpriseとWindows Vista Ultimateに搭載されているBitLockerの更新プログラム。したがって、この2種以外のVistaユーザーには配布されないし、EnterpriseやUltimateのユーザーであってもBitLockerを使っていなければ配布されない。 次に「KB938371」はSP1のインストールと削除を確実に行なうために不可欠な内部コンポーネントの更新を行なうもの。さらに「KB937287」はインストールソフトウェアの更新を行なうためのもので、Service Pack以外にも今後の更新プログラム、言語パック、各種オプション機能等のインストールに必要になるものだとしている(種類はいずれも「重要」、Vistaの全エディションで必要な更新)。 ところがこのアップデートを開始してからまもなく、KB937287に関する不具合が報告され始めた。典型的な症状は、KB937287を適用しようとすると、0%適用の状態でシステムが再起動してしまい、起動後またKB937287の適用が始まり、0%でまた再起動する、という無限ループだ。うまく適用されたと思っても、再起動した後、またKB937287を適用するよう求められる、という報告も見られる。 ほかにも、このアップデートの適用後、メモリリークエラーが出るようになったという苦情、自分のマシンにこのアップデートが適用されたかどうか分からないというとまどい(特に64bit版Vista)などが多く報告され、Windows Vista Team Blogは、プチ祭り状態になってしまった。 この問題が厄介なのは、1度無限ループ状態にはまってしまうと、簡単に取り除くことが困難であることだ。1度完全にシャットダウンしても、セーフモードで起動しても、この状態から抜け出ることは不可能で、中にはハードディスクをフォーマットしてしまったユーザーもいる。一方で、回復コンソールから「C:\Windows\winsxs」フォルダにあるxmlファイルをリネームするだけで解決するという人もいるのだが、問題が生じているすべてのユーザーに有効とは限らないようだ(ちなみに筆者のシステムでWindowsからこのフォルダを参照すると、あまりにも多くのフォルダがあるせいか、エクスプローラーが確実に落ちる)。 もちろん、この問題の影響を受けていないユーザーもいる。筆者の仕事マシンには2月14日にKB938371とKB937287が自動更新で配布されたが、両方とも問題なく適用されている(BitLockerは使っていない)。問題なく適用されたマシンについて、これらの更新を削除する必要はないようだ(というより、これらの更新は1度インストールすると、アンインストールすることはできないことになっている)。
●現時点では対応策なし 残念ながら現時点でこの問題に対する解決策は提示されておらず、とりあえずKB937287の自動配布を停止している、という状況のようだ。問題が生じたユーザーに対しては、USのトラブルシュート用の電話番号が案内されるばかりで、まだ具体的な対策のめどは立っていない。分かっているのは、この問題の影響を受けるのは、比較的限られた少数のユーザーだけ、ということらしいが、Windowsの普及を考えれば実数は相当な数に上るのではないかと思われる。 以前書いたように、Windows Vista SP1については、配布する前から一部ドライバパッケージとの非互換性が見つかるなど、SP1適用を躊躇するような事実が明らかになっている。それに加えて、SP1適用に必須な更新が一部とはいえシステムに大きな問題を引き起こす可能性があるのでは、ユーザーは何を信じればいいのか分からない。 Windowsは、さまざまなライブラリやアプリケーションも含め、バイナリサイズが10GBを越える巨大なものになってしまった。あまりにも巨大になりすぎて、もはや生みの親であるMicrosoftの手にさえあまるものになってしまったのではないか。そう思わざるを得ない憂鬱なニュースだ。 □Windows Vista Team Blogの関連項目(英文) (2008年2月22日) [Reported by 元麻布春男]
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