デルから登場した「Latitude XT」は、同社初のタブレットPCである。Latitudeシリーズは、企業向けのノートPCであり、企業で多く導入されているが、これまでタブレットPCを発売していなかったというのは意外に思えた。 今回登場したLatitude XTは、デルのタブレットPCについての長年の研究をもとに、ユーザーの声を反映して「最も優れたタブレットPC」を目指して開発された製品だという。早速、その使い勝手などをレビューしてみることにしたい。 ●タブレットPCとしては軽量なボディを実現 Latitude XTは、12.1型ワイド液晶を搭載したタブレットPCであり、本体サイズは297×218.6×25.4mm(幅×奥行き×高さ/LEDバックライト液晶搭載時)と、ほぼA4用紙サイズだ。最小重量(4セルバッテリ、LEDバックライト液晶搭載時)は約1.62kgで、コンバーチブルタイプのタブレットPCとしては、スリムで軽い。筐体は、直線を基調としたシンプルなデザインで、フルフラットになっているため、カバンへの収まりもよい。本体カラーはダークグレーで、オフィスなどでの使用にも違和感はない。 デルのPCは、BTOメニューが豊富で、仕様のカスタマイズが柔軟にできることも特徴だ。今回の試用機では、CPUとしてデュアルコアの超低電圧版Core 2 Duo U7600(1.2GHz)が搭載されていたが、シングルコアの超低電圧版Core 2 Solo U2100(1.06GHz)も搭載可能だ。メモリ容量は、1GB/2GB/3GBから選べる(試用機のメモリは1GB)。ユーザーに開放されているSO-DIMMスロットは1基で、1GB構成時のみSO-DIMMスロットは空いているが、2GB以上を選択すると、SO-DIMMスロットは埋まる。チップセットは、グラフィックス統合型のATI Radeon Xpress 1250を採用しており、DirectX 9をサポートする。 HDDは、1.8インチHDDまたはSSDから選択できる。HDDの場合、容量は40GB/80GB/120GBの3種類が用意されており、SSDの場合は、32GBか64GBを選べる。現時点では、SSDはHDDに比べて非常に高価だが、SSDは機械的に動作する部分がないため、衝撃に対して非常に強いことがメリットだ。32GB SSDを選択すると40GB HDD選択時に比べて96,600円高くなり、64GB SSDを選択すると159,600円高くなるので、個人が気軽に導入するにはまだ高価だが、SSDがオプションとして設定されていること自体は評価できる。なお、試用機では、40GBの1.8インチHDDが搭載されていた。
●薄型軽量のLEDバックライト液晶と屋外対応の高輝度液晶を選択可能 本製品は1スピンドルモデルだが、USB経由で接続する外付けの光学ドライブユニットが付属する。このドライブユニットは、「D-bay」と呼ばれており、内蔵のドライブが着脱式となっていることが特徴だ。D-bay用のオプションとしては、標準のDVD-ROMドライブのほか、CD-RW/DVD-ROMコンボドライブ、DVD±R/RWドライブ、FDD、80GBセカンドHDDが用意されており、BTOによって選択できる。 ディスプレイには、12.1型ワイド液晶が採用されている。解像度は、1,280×800ドット(WXGA)で、12.1型ワイド用としては妥当な解像度である。液晶パネルとして、LEDバックライト液晶と屋外対応の高輝度液晶(DLV液晶)が用意されていることも面白い。前者は、薄くて軽いことが特徴であり、輝度は220cd/平方mとなる。後者は、400cd/平方mという一般的なノートPCの液晶ディスプレイの約2倍の輝度を実現しており、明るい屋外でも視認性が高いことが特徴だ。その代わり、高輝度液晶を選択すると、本体の厚みが5mm増加する(重量も増加する)。屋内での利用が中心ならLEDバックライト液晶を、屋外でも使うことが多いのなら高輝度液晶を選択すればよいだろう。今回の試用機は、LEDバックライト液晶が搭載されていたが、LEDバックライト液晶でも輝度は十分高く、視認性は良好であった。 OSは、Windows XP Tablet PC Edition 2005/Vista Business/Vista Ultimateの3種類から選択できる。Vista Ultimate/Businessでは、標準でTablet機能がサポートされているため、タブレットPCとして問題なく利用が可能だ。なお、試用機には、Windows XP Tablet PC Editon 2005が導入されていた。
●スタイラスだけでなく、指でも操作が可能なタッチパネルを搭載 タブレットPCでは、液晶にタッチパネルが搭載されており、スタイラス(ペン)などを利用して各種の操作を行なえる。タブレットPCに採用されているタッチパネルは、その仕組みによって、電磁誘導式と感圧式に大別される。電磁誘導式は、専用ペンで操作を行ない、ペンの位置を非接触で検知できることが特徴だ。電磁誘導式タッチパネルでは、指先などで押しても操作できない。それに対して、感圧式では、パネルが押されたことを感知するため、専用ペン以外にも指先などでも操作できる。以前は、電磁誘導式のほうが精度が高いとされていたが、最近の感圧式タッチパネルは、電磁誘導式と比べても遜色のない精度を実現しているようだ。ただし、電磁誘導式では、ペンに右クリックなどのボタンを設定できるという利点がある。 Latitude XTのタッチパネルは、電磁誘導式と感圧式の両方の特徴をあわせもっており、専用ペンでも指でも操作が可能だ。専用ペンで操作する場合(ペンモード)は、パネルに近づけるだけでポインタが反応し、指先で操作する場合(タッチモード)は、パネルに触ることで反応する。それぞれのモードの切り替えは、ユーティリティによって設定できる。また、自動モードに設定しておけば、ペンモードが優先されるが、指でパネルをダブルタップすることで、タッチモードに切り換えられる。 利用シーンに応じて、ペン指先を使い分けることができるので、非常に便利だ。ペン収納部には、スタンバイ時などにペンが収納されていないとインジケータが点灯し、ペン紛失への注意を喚起する。付属のペンにはボタンが2つ用意されており、右クリック操作などが可能だ。 Latitude XTは、コンバーチブルタイプのタブレットPCであり、液晶パネルを180度回転して折りたたむことで、ピュアタブレットとして使うことも可能だ。液晶の周りには、Windowsセキュリティボタンや画面回転ボタン、タブレットQuickSetボタン、Eメールショートカットボタンなどが用意されており、ピュアタブレット状態での操作性を向上させている。また、液晶右下にはスライド式の指紋センサーが搭載されているほか、TPM1.2セキュリティチップも搭載しているので、セキュリティ面も安心だ。
●セカンダリバッテリを追加すれば最大9.5時間の連続駆動が可能 キーボードのキーピッチは18.5mmで、配列も標準的なので、タイピングしやすい。パッドタイプとスティックタイプの2種類のポインティングデバイスを搭載しており、好みに応じて使い分けることが可能だ。
インターフェイス類も充実しており、USB 2.0×3(うち1つはパワードUSB)、IEEE 1394、ミニD-Sub15ピン、LAN、音声入出力を装備している。カードスロットとしては、SDカードスロットとExpressCardスロットを搭載する。また、オプションのメディアベースを本体底面に装着できる。メディアベースには、USB 2.0ポート×4(うち1つはパワードUSB)やミニD-Sub15ピン、DVI出力、シリアルポート、IEEE 1394、LANなどのほか、DVD±R/RWドライブも内蔵している。 無線LAN機能もBTOによってカスタマイズ可能で、IEEE 802.11b/g対応、IEEE 802.11a/b/g対応、IEEE 802.11a/b/g/nドラフト対応の3種類から選べる。また、オプションでBluetooth 2.0+EDRを追加することもできる。ワイヤレススイッチが用意されているほか、ワンタッチで無線LANの電波の検出が可能なWi-Fiキャッチャー機能も搭載している。
バッテリは、軽量な4セルタイプ(28Wh)と大容量の6セルタイプ(42Wh)から選択できる。バッテリに残量インジケータが用意されており、ボタンを押すだけで、目視で残量を確認できるのは便利だ。連続駆動時間は公表されていないが、オプションのセカンダリバッテリスライス装着時の駆動時間から推測すると、4セルで3時間程度、6セルでは4~5時間の駆動が可能と予想される。なお、オプションのセカンダリバッテリスライス(45Wh)を本体底面に装着すると、最大9.5時間の連続駆動が可能になる。
ACアダプタについては、スリムで軽い超小型45W ACアダプタと、大容量の65W ACアダプタの2種類が用意されている。なお、試用機に付属していたのは、65W ACアダプタであった。
●パフォーマンスも十分で、タブレットを活かす業務に最適 参考のために、ベンチマークテストを行なった。利用したソフトは、Futuremarkの「PCMark05(Build 1.2.0)」と「3DMark06(Build 1.1.0)」、「フロントミッションオンラインオフィシャルベンチマークソフト」の3種類だ。比較対象用に、レノボ・ジャパン「ThinkPad X61 Tablet」やパナソニック「Let'snote Y7」、ソニー「VAIO type T VGN-TZ90S」の結果もあわせて掲載している。 結果は表に示したとおりで、動作クロックの高い低電圧版Core 2 Duoを搭載しているThinkPad X61 TabletやLet'snote Y7にはかなわないものの、同じCore 2 Duo U7600を搭載しているVAIO type T VGN-TZ90Sと比べると、ほとんどの項目で上回っている。特に、グラフィックス周りのスコアは大きく向上している。これは、搭載しているグラフィックス統合型チップセットの違いによるものであろう。重さ1.6kg程度のモバイルノートPCとしては、水準以上のパフォーマンスだといえる。
【表】ベンチマーク結果
Latitude XTは、携帯性の高いタブレットPCであり、ペンでも指先でも操作できるなど使い勝手も優れている。企業向けモデルという性格もあり、最小構成でも281,400円(2月7日現在)と価格がかなり高いことがネックだが、タブレットを活かした業務アプリケーションを導入し、営業用のツールとして使うには最適なマシンだ。 □デルのホームページ (2008年2月8日) [Reported by 石井英男]
【PC Watchホームページ】
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