Macworld Conference&Expo San Francisco 2008レポート Macworld展示ホールレポート【Microsoft編】
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会場:San Francisco The Moscone Center (モスコーニセンター)
価格:会期:1月15日~18日(現地時間)
米MicrosoftのMacintosh Business Unit(通称、MacBU)は、モスコーニセンター内でプレス向けのブリーフィングを開催した。展示ホール内のMicrosoftブースの情報とともにお伝えする。
Macworldが開幕した1月15日(日本時間16日)、米Microsoftは「Microsoft Office 2008 for Mac」(以下、Office 2008)の販売開始を正式に発表した。Macintosh向けとしてはOffice 2004以来、約4年ぶりのバージョンアップとなる。そしてAppleのジョブズCEOによる基調講演でも触れられていたとおり、PowerPCとIntel製CPUの両プロセッサにネイティブ対応するユニバーサルバイナリ化を果たした最後の大型アプリケーションといえる。
Office 2008は、Macintosh向けのOffice史上で初めて米日同時発売を実現しており、すでに国内のアップルストアやPC販売店、量販店の店頭に並んでいる。Windowsプラットホームには2007年から最新のOfficeスイート「Microsoft Office 2007」が提供されている。このWinows向け最新版から採用されているOpen XML形式のOfficeファイルをMacintoshでも直接取り扱うことができるようになり、クロスプラットホーム環境でOfficeを利用するユーザーにとって待望のバージョンアップだろう。
Office 2008には3つのエディションが用意される。まず、Word、Excel、PowerPoint、Entourage、Automaterツールを含む基本的なスイートが「Office 2008 for Mac」。日本では通常版が49,800円、従来バージョンからのアップグレード版が29,800円(いずれも税別参考価格)で提供される。
また「Office 2008 for Mac ファミリー&アカデミック」は、家庭内およびアカデミックな利用を目的にするもので、最大3台のMacintoshにインストールして利用することができる。商用利用ができないことに加え、EntourageにMicrosoft Exchange ServerのサポートがないこととAutomaterツールが含まれない点などが基本パッケージとは異なっている。価格は22,800円。そして最上位エディションとして「Office 2008 for Mac Special Media Edition」もラインナップされた。基本パッケージの内容に加えて、デジタル資産管理ツール「Microsoft Expression Media for Mac」が同梱されている。価格は通常版が52,800円、アップグレード版が32,800円だ。
展示ホールにおけるMicrosoftブースは、例年どおりAppleブースに隣接して設営されている。Appleブースを除けばほぼ最大級といっていいスペースが確保され、会期中を通じてにぎわっていた。待望の販売開始となったことでお祭りムードもあり、Office 2008 for Macのロゴが入ったM&Mチョコレートが配られたり、抽選で1名にOfficeのイメージがレーザー刻印されたMacBook Proが当たるプレゼントなども行なわれていた。
ブースの構成はメインステージとなるシアターでのプレゼンテーションを中心に、WordやExcelそしてPowerPointなどの個々のアプリケーションのハンズオンコーナーが周囲に配置されている。ハンズオンコーナーは、それぞれのアプリケーション開発を担当したスタッフが説明員として動員されていることもあって、基本的な内容から難易度の高いものまで、幅広く来場者の質問などに応えていた。
Office 2008のパッケージにはMicrosoft Messengerも含まれており、Live Messengerを利用しているWindowsユーザーとチャットを行なうこともできる。Office 2008に含まれいるMessengerは、現在でも公式サイトからダウンロードが可能なMessenger 6だが、ブースでは次期バージョン「Messenger 7」の紹介も行なわれていた。
Messenger 7のデモはCommunication Serverを介した企業向けの内容だった。チャットの手段を、従来の文字を中心にしたやりとりからビデオや音声中心に移行することを目指しているという。現在は企業ユーザーを対象にβテストが行われており、2008年遅くのリリースを予定している。Liveサービスを使った場合の個人ユーザー向けの機能追加などは今後明らかにされる模様だ。Messengerについては、後述するインタビューでも今後の展望について触れられている。
●Macintosh Business Unitインタビュー
Office 2008のパッケージを手にするグループマーケティングマネージャのシェリダン・ジョーンズ氏(左)とプロダクトユニットマネージャのジェフ・プライス氏(右) |
ブリーフィングでは、Macintosh Business UnitのグループマーケティングマネージャのSheridan Jones(シェリダン・ジョーンズ)氏とプロダクトユニットマネージャのGeoff Price(ジェフ・プライス)氏が質問に答えた。
--- Office 2008の開発でフォーカスした点を教えてください。
シェリダン・ジョーンズ: Office 2008の開発には2つの大きなテクノロジーチャレンジがありました。ご存じのように(Intel CPUにネイティブな)ユニバーサル・バイナリ化を実現すること、そしてOpen XMLへの対応です。これら技術的な部分以外ではデザイン面、特にユーザーの使いやすさを追求するというところにフォーカスしています。今までは求める機能にアクセスするために、複雑な手順が必要な場合もありました。今回は、ワンクリックするだけでOffice 2008が持っているパワーに簡単に接することができるように工夫をしています。この目標は実現できていると自負しています。
ジェフ・プライス: Office 2008はレドモンド(※シアトルにあるMicrosoftの本拠地)にある開発チームが4年を費やした大きなバージョンアップです。開発には3つのテーマがありました。1つはOfficeとして、大きなジャンプを遂げるバージョンであるということです。(Open XMLへの)ファイルフォーマットの変更はMacintoshにとどまらずWindowsにとっても重要な要素です。SmartArtツールを追加したり、Excelのグリッドも巨大化しています。2つ目のテーマは、お客様の言葉に耳を貸すということ。開発期間を通してさまざまなフィードバックを得ました。そして3つ目のテーマが、Macintoshのアプリケーションとして素晴らしいものを作るということです。Mac OS Xはバージョンアップのサイクルが短く、新しい技術が次々に投入されます。我々もそれに歩調を合わせていくようにしました。
--- いったいどれぐらいの機能が加わったか、教えてください。
ジェフ・プライス: 数えてみたことはないですね(笑)
シェリダン・ジョーンズ: (Open XMLファイルのサポートなどの)核心ともいえる部分のほか、機能の追加や小規模な変更も数え切れないほどあります。とりあえず無事に出荷を迎えることができましたので、レドモンドに戻って開発の資料を読み返してみるのもいいかも知れません。休暇を取るのとどっちが有意義か考えてみます(笑)
--- ユーザーが従来バージョンから移行するにあたって、注意すべき点はありますか?
シェリダン・ジョーンズ: ファイルフォーマットは(下位)互換性を確保していますので、Ofiice for Mac 2004で作成されたファイルはもちろん、それ以前のものでも問題なく利用することができます。むしろユーザーの皆さんに知っていただきたいのは、Office 2008で採用された新しいファイル形式(Open XMLフォーマット)のことです。あとはご自身の環境が(Office 2008の)推奨動作環境になっているかどうかという点でしょう。特にIntel Macをお使いの場合、動作速度は改善されます。(ともにネイティブ動作をさせた場合でも、PowerPCに比べて)一般的に30%程度の改善があると言われています。Office 2008では機能によって、Office 2004をRosettaを使って利用していた場合に比べると、同じ機能でも2~3倍のパフォーマンスが得られるものもあります。
--- 企業ユーザーの場合、当面は従来バージョンとOffice 2008が混在した状況になりますが、これについてどう考えていますか?
シェリダン・ジョーンズ: 2つの方法で対応することができます。1つは(Mactopiaから)無償でダウンロードできるコンバータ「Microsoft Office Open XML File Format Converter」を利用することです(筆者注:Open XML形式のファイルをOffice 2004、Office v.Xで利用できるファイル形式にするもの。2008年12月末まで利用可能)。もう1つ、混在環境が前提であるならOffice 2008で保存する際のデフォルト形式をあらかじめ変更しておくこともできます。
--- AppleのビジネススイートであるiWork'08には、表計算ソフトのNumbersが加わりました。競合製品としてどう思いますか? また、Office 2008の3つのエディションはそれぞれどのようなターゲットにフォーカスしていますか?
シェリダン・ジョーンズ: 2つの質問にまとめて答えようと思います。Office 2008とiWork'08は、まったく異なるユーザー層をターゲットにした製品で、競合するものではないと考えています。Office 2008は生産性を追求したコンプリートパッケージと位置づけています。私たちのコアターゲットはクロスプラットホームでの互換性が必要なユーザーです。企業のユーザーはもちろんのこと、家庭やあるいはアカデミックな環境でもそうした互換性が必要かつ重要なユーザーがたくさんいるのです。また「Microsoft Expression Media」は、これまでデジタル資産の管理が必要なプロ写真家やWebマネージャが利用していました。今回、Office 2008とのバンドルパッケージを用意したことで、これをさらに幅広いターゲットに提供しようと考えています。デジタル資産の管理が必要なユーザーはこれからも増えていくでしょう。
--- Office 2008関連のWebサイト構築は何をもたらしましたか?
シェリダン・ジョーンズ: お客様との直接的なコミュニケーションを取ると言うことで、開発者ブログは大きな成果が得られたと思います。さらにティザーサイトや、Officeを使ったアートを集めるArt of Officeも作りました。これらはマーケティング的な観点からの大きなチャレンジです。私たちは2007年冒頭にOffice 2008の開発を発表し、すでにキックオフを行なっています。それから1年間話題を維持し、継続的に盛り上げていくことを実践してきました。これれは今後も続けていこうと考えています。販売が開始された今は、全世界を対象にした広告キャンペーンを始めたところです。
--- Messenger 7の概要と、Live Messengerとの今後の連携について教えてください。
ジェフ・プライス: まず最初に、MacintoshのMessengerは(現行バージョンでも)、Communication ServerとLive Serverの両方を利用することができます。現在Messenger 7はβ版で、Office Communicatoin Serverを利用している企業ユーザーがβテスターになっています。企業内のチャットサービスでビデオと音声が使えるようになり、私たちはこのビデオと音声にフォーカスしています。Microsoftではこのビデオソリューションを標準化していくことを考えていて、次のステップとしては、Liveサービスでビデオと音声が機能することを目指しています。すべての準備が整いLive Messengerが新しくなれば、次のステップに移行すると言えるでしょう。現時点ではこのプランに明確なタイムテーブルがあるわけではありません。しかし、開発のトッププライオリティになっていて、かなりの人間が作業に関わっています。
--- ありがとうございました。
□Macworld Conference&Expoのホームページ(英文)
http://www.macworldexpo.com/
□米Appleのホームページ(英文)
http://www.apple.com/
□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.co.jp/
□製品情報
http://www.microsoft.com/japan/mac/products/office2008/default.mspx
□関連記事
【1月15日】「Macworld San Francisco」、15日開幕
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/0115/mw01.htm
【2007年12月5日】マイクロソフト、「Office 2008 for Mac」を1月16日発売
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1205/ms.htm
□Macworld Conference&Expo 2008レポートリンク集
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2008/link/macworld.htm
(2008年1月21日)
[Reported by 矢作晃]