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2008 International CESレポート【その他編】

Art.Lebedevの有機LEDキーボードが初お披露目
~2009年に期待がかかる無線HD転送技術のデモも

富士通が展示したH.264エンコーダとUWBを組み合わせたHD映像の無線転送デモ。奥にある機材から、手前の機材へ転送している

会場:Las Vegas Convention Center
    Sands Expo and Convention Center/The Venetian

会期:1月7日~10日



●いますぐ使えるHD無線転送技術

 このCES期間中に発表され、150型プラズマが注目されたパナソニックの基調講演でも紹介されたことで、一気に知名度を高めたWireless HD。とはいえ、規格が策定されたばかりの技術で、その基調講演で紹介された機器の発売は2009年。ほかの製品が登場するのも、早くて今年半ば以降になるだろう。

 こうしたHD映像の無線転送で、今すぐにでも実用化できるものを展示したのが富士通だ。これは、同社のリアルタイムH.264エンコーダチップ「MB86H51」を利用したデモ。2007年のCESでも似たようなデモが実施されていたことをお伝えしたが、これはHD映像をUSB転送(つまり有線転送)するデモと、SD解像度の映像をIEEE 802.11nで転送するデモであった。今年はHD映像(1080/60i)をH.264にリアルタイムエンコードしたうえで、UWBで無線転送するデモへとパワーアップした。

トランスミッタ側の基板。矢印に示されているのがH.264エンコードチップの「MB86H51」。UWBのトランスミッタはMiniPCIで接続されている こちらはレシーバ側の機材で、Sigma Designsのサンプルボードで、デコード用のチップは搭載していない

 「ハードウェア、ソフトウェアの開発を含めて2カ月で作った試作品」(ブーススタッフ)というデモ機は、ATMEL製ARMベースのコントローラチップを中心にした構成で、接続されたFujitsu MB86H51では、HDMI端子から入力したソース映像をH.264へエンコード。MiniPCIで接続されているUWBコントローラを介してレシーバ機器へ転送していた。レシーバ側はSigma Designsのサンプルボードが使用されていた。

日立で展示された、MPEG-2のHD映像を802.11n無線LANで転送するデモ

 Wireless HDとは異なり圧縮というプロセスが入ることになるが、10Mbpsでも映像の劣化はあまり感じられないことを2枚のディスプレイで示している。また、MB86H51は動作時の消費電力が750mAと非常に小さいため、ヒートシンクレスで使用できるうえ、フレームバッファ用のメモリも1チップに統合したSiPであることから、製品化に際して小型化しやすいメリットもある。また、ハードウェアベンダーのコスト面の要望に応えるべく、フレームバッファを排除してトランスコーダのみをチップ化した廉価版も予定しているそうだ。

 そもそも、このデモは無線転送技術の展示ではなく、映像エンコーダの技術展示である。ここではUWBを利用しているが、極論すれば転送インタフェースは何でもいいわけだ。このH.264エンコードを利用することで、転送インタフェースは既存技術を自由に採用することができる。フルHD映像活用の幅を広げる土台になり得るチップという見方もできるのではないだろうか。

 このほか日立のブースでも、HD映像の無線転送が実施されていた。映像コーデックはMPEG-2が採用されているが、こちらは映像コーデック云々というよりも、QoSをちゃんとやることで、IEEE 802.11nでHD映像を乱れなく飛ばすことができるというのがポイントとなる。MPEGのエラー訂正のプライオリティを上げたり、その時点で最適な無線チャネルを適宜選択して転送することで帯域幅を確保するのだ。

 ただし、これはプロトタイプによる技術デモで製品化は2009年以降とのこと。とはいえ、今年から来年にかけてはHD映像を無線転送できるような現実的なソリューションが登場してくるのは間違いない。さまざまな製品が登場してくるだろう。

●6デバイス同時充電器とリモコン付き電源タップ

 米CallPadのブースでは、USBバスパワーでバッテリを充電するタイプのデバイスを、6台同時に接続できる充電器「ChagerPod」が展示されていた。ベース部にはACアダプタを利用して6V DC/3Aの電力を供給。ここから各種デバイスに合わせたケーブルを介してデバイスへ接続することで充電を行なうというもの。ベース部は99.95ドル、ケーブルは9.95ドルで発売されており、このほかにベースと主要なケーブルをセットにした製品も発売されるという。

 ACアダプタが100~240Vに対応しているのも大きなポイントで、海外旅行にもガジェットが手放せない人にも便利。見た目のインパクトが大きいが、意外に実用的なアイテムだ。

米CallPadが展示した「ChagerPad」。ACアダプタに接続されたベースステーションから、6台のデバイスを同時に充電できる iPodやPSP、microUSBなど、さまざまな対応ケーブルを発売しており、利用できる機器も少なくない

 また、米Belkinも外観がこれとよく似た製品を展示していたが、こちらは5個までのヘッドフォンなどを接続し、iPodなどの音楽を5人で同時に聴くという趣旨の製品。5人に聞かせるなら、スピーカーをつないだ方がいい気もしないでもないが、集中して聞きたいときなどに使うと言ったところだろうか。

 このほか同社はリモコン付きの電源タップを展示。リモコンでタップから機器への電源供給を遮断することで、待機電流すら流れるのを抑止し、電気代を抑えようという製品だ。

 8個あるうちの6個のコンセントがリモコン対応で、残りの2個は常に給電される。また、電源タップ本体状のボタンでも、6個のコンセントをOFFにできる。

Belkinの音楽共有アダプタ、というと聞こえはいいが、仕組みは単なる分岐ケーブルと同じ こちらはリモコン対応電源タップ。6個の口の中央にあるボタンでもON/OFFできる

●有機LEDキーボードの実機デモ。発売は来月予定

 ロシアのデザイン会社であるArt.Lebedev Studioといえば、全キートップに有機LEDディスプレイを埋め込んだキーボードで一躍有名になったメーカー。CESでは同社もブースを出展し、フルキーボード版の「Optimus Maximus Keyboard」の動作デモを実施。Optimus Maximus Keyboardの実機デモが、こうした大規模な展示会で行なわれるのは、これが初だ。

 実際、ハードウェアはすでに完成し、発売は来月を予定。今はソフトウェアの最終開発を進めており、こちらが完成次第、出荷開始するとのことだ。

Art.Lebedev Studioがデモを行なった、有機LEDディスプレイ搭載キーボード「Optimus Maximus Keyboard」。コンセプト紹介から2年余を得て、いよいよ来月発売される……か? 会場ではMac OS用のコントロールソフトを用いて、キートップの内容を自在に変化させるデモを実施。各国語版キーボードのほか、イルミネーション風な表示デモも見ることができた

●電動アシストローラースケート「iShoes」

 IT機器のネーミングでは、以前は「e」を付けた製品が多かったが、iPodの成功以降は、ガジェット系製品を中心に「i」の文字を付けるものが増えたように思う。CES会場で見かけた、そんな製品の一つが「iShoes」で、ロゴマークもiPodのフォントに近いデザインが印象的。

 このiShoesは、電動のローラースケートといった趣の製品で、手元のスイッチを押すと前に進む。走行スピードは時速21.7kmで、フル充電からおよそ4.8km(3マイル)の走行が可能という。製品は重さ5.3kgで骨組みがむき出しになった、非常に原始的な製品になっている。

 手元のスイッチも無線とかではなく普通にケーブルでつながれており、これほど「i」の文字に違和感を覚える製品もないのだが、最寄駅までの距離など、歩くとちょっと遠いけど、駐輪場を確保するのが面倒なので、やっぱり歩いちゃうような距離で利用するには便利かも知れない。持ち運びは面倒そうだが。

モーターを内蔵したローラースケート風機器「iShoes」 ブーススタッフの1人が実際に装着して走行デモも行なっていた。片足あたり3輪なので安定感はありそうだ

●CES会場でBMWザウバーのF1マシンが走行

LVCC向いのGold lots Parkingに設置された「BMW Pit Lane Park」。F1マシンが実際に走行するとは思えない、小ぶりなスペースである

 CESのメイン会場であるLasVegas Convention Centerの向いにあるGold lots Parkingには、BMW Sauber F1 TeamがIntelと協力して「BMW Pit Lane Park」を開催。ここでは、同チームのF1マシンやBMW Formulaマシンを間近で見ることができたり、F1マシンのピットワークを体験するコーナーを展示。ほかにも、WiMAXによるリモートコントロール行なうという展示物もあるのだが、来場者の関心は、なんといっても実際のF1マシンの走行を見ることにある。

 1日に3回行われるF1マシンによるデモは、レースドライバーのグラハム・レイホール氏の手によって、ガードレール内の狭いエリア内でドリフトを繰り返しながら走行するもの。筆者が見に行ったのは会期最終日の昼食時という、CES期間中でも最も人の動きが鈍いであろう時間帯であったが、それにも関わらず、間近で見られるパフォーマンスとあって会場には多くの人が訪れていた。

 正味2分足らずではあったが、轟音とともに抜群のマシンコントロールでF1マシンが動きまくるという迫力満点のパフォーマンスに、訪れた観衆からは盛大な拍手が送られていた。


Pit Lane Parkではタイヤ交換や給油作業など、ピットワークを体験できるコーナーが設けられている Intelが協賛していることもあって、PCを使ったレースゲームコーナーや、WiMAXを利用してリモートコントロールを行なうラジコンなども展示されている。WiMAXラジコンカーは残念ながら走行させているところを見ることはできなかったのだが、ラジコン内に埋め込まれたカメラ映像も転送しており、Pit Lane Parkのエリア外から操作するデモという F1マシンの走行デモを行なったグラハム・レイホール氏。デモ走行後は、来場者のサインや写真撮影の要望に気軽に応えていた<
F1マシン走行デモの様子。ドリフト用スペースは会場の2カ所に設けられており、轟音を響かせながら巧みなマシンコントロールを披露。2カ所でドリフトしたあとの会場はタイヤの白煙に包まれてしまうほどだ

□2008 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
□関連記事
【2007年12月26日】Art.Lebedev、フル有機LEDキーボードの正規出荷を2月末に延期
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1226/artlebedev.htm
【2007年1月12日】【CES】ExpressCardを利用するデバイスの新提案が続々登場
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/0112/ces18.htm

(2008年1月15日)

[Reported by 多和田新也/wakasugi@impress.co.jp]

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