DDR3-1333に対応するIntel X38 Expressの登場も記憶に新しい中、Intelから1,600MHz FSBに対応した「Core 2 Extreme QX9770」と「Intel X48 Express」が登場する。2008年第1四半期の発売が予定されているこれらの評価キットを借用することができたので、パフォーマンスをチェックしていきたい。 ●1,600MHz FSBとDDR3-1600に対応するIntel X48 1,600MHz FSBに対応する初の製品として、CPUとチップセットが各1製品ずつラインナップされる。まずは、チップセットとなる「Intel X48 Express」(以下、Intel X48)について紹介していきたい。 Intel X48は、基本的にはIntel X38をベースに2つの機能が追加されたものとなる。1つは1,600MHz FSBへの対応。もう1つが、DDR3-1600への対応である。後者については、現状JEDECで承認されていない規格であるが、Intelが提唱するメモリの追加プロファイル「XMP(EXtreme Memory Profile)」によって、1,600MHz動作のプロファイルを追加したメモリモジュールが提供される予定だ。 ただし、このDDR3-1600の利用には2つの制限がある。1つは1チャネルにつき1 DIMMまでのサポートとなる点である。Intel X48はデュアルチャネルメモリインターフェイスとなるので、モジュールは2枚までしか装着できないことになる。 もう1つは、1,600MHz FSB時しか使えない点である。Intel X38でもDDR3-1333は1,333MHz FSB利用時にしか正式サポートはされておらず、最大FSB=最大メモリクロックは同一であるという従来の方式が踏襲されることになる。 ただ、Intel X48でのDDR3-1333は1,333MHz FSB時のみとなり、1,600MHz FSB時にはサポートされない。1,600MHz FSB時にサポートされるメモリは、DDR3-1600のほかはDDR3-1066のみとなる。つまり、メモリモジュール4枚を利用したい場合は、必然的にDDR3-1066しか選択肢がないことになる。このあたりは導入に際して最も注意が必要なポイントといえる。 今回試用するのは、Intel純正のIntel X48搭載マザーボード「DX48BT2」である(写真1)。比較対象として用意したIntel X38搭載マザーボード「DX38BT」と比較して、電源回りのコンデンサが変更されている以外は、大きな違いが見受けられない。サウスブリッジはいずれもICH9Rを搭載している。
評価キットにはDDR3-1600のXMPを持つ、Corsair Memoryの「CM3X1024-1600C7DHXIN」も付属していた(写真3)。画面1の通り、1,600MHz FSBのパラメータを持っており、その時は7-7-7-20/1.8Vとなっている。
1,600MHz FSBに対応するCPUは「Core 2 Extreme QX9770」である。動作クロックは3.2GHz(400MHz×8)で、「Core 2 Extreme QX9650」の3GHz(333MHz×9)から動作クロックが200MHz向上。45nmプロセスのYorkfieldコアを採用するクアッドコア製品となる。L2キャッシュは12MBである(写真4、画面2)。
このCPUは冷却面のスペックが大きく変わった。TDPが136Wへ上昇し、T.Caseは55.5℃へ引き下げられているのだ。TDP136Wということで電源に対する要求も高まるはずだが、本製品は初めて登場した1,600MHz FSBの製品ということもあり、マザーボード上の電源周りのスペックはIntel X48搭載マザーボードであれば満たしていると判断していい。 ただ、CPUクーラーに関しては相当余裕を持った対処が必要だと思われる。過去、Core 2 Extreme QX6800の初期ステッピングで、TDP130W/T.Case54.8℃というスペックがあったが、最近のTDP130W製品はT.Caseが64.5℃を維持しており、久々に高い要求が出された製品となる。 評価キットには、Core 2 Extreme QX9650のリテール品に付属するものと同じ、12cm角ファンを用いた大型のCPUクーラーが付属していた(写真5)。販売される製品で同じクーラーが付属するかは不明だが、冷却能力の高いCPUクーラーが必須といえるだろう。 ●1,333MHz FSB化とDDR3-1600の効果を見る それでは、ベンチマークテストの結果をお伝えしていきたい。テスト環境は表に示した通り。1,600MHz FSBと1,333MHz FSBの効果を見るため、Core 2 Extreme QX9770とCore 2 Extreme QX9650のそれぞれでFSBとメモリクロックを統一した環境を用意した。
【表】テスト環境
Core 2 Extreme QX9770では動作クロックも引き上げられているが、この効果を見るため、共通して利用することができるDDR3-1066の設定でも測定した。また、Intel X48/X38搭載マザーボードによるスコア差も見るため、Core 2 Extreme QX9650では同じメモリ設定を両マザーボードで測定している。 メモリパラメータは、すべて7-7-7-20で統一。動作クロックが速くなるにつれ、レイテンシも減ることになる。なお、動作電圧はBIOS上の設定メニューから、1,066MHz時は1.52V、1,333/1,600MHz動作時は1.84Vに指定している。 では、CPUの性能から見ていきたい。テストはSandra XIIの「Processor Arithmetic/Processor Multi-Media Benchmark」(グラフ1)、「.NET Arithmetic/Multi-Media Benchmark」、「JAVA Arithmetic/Multi-Media Benchmark」(グラフ2)と、PCMark05のCPU Test(グラフ3、4)である。 この結果は、ほぼCPU性能に依存する結果となった。これは妥当な結果といえる。ただ、.NET/Javaのテストはアプリケーションテストとしての性格も色濃いためメモリクロックによるバラつきが出るが、誤差というには大きく、メモリが速ければスコアも安定して速いとはいえない結果も見られる。 続いては、メモリ性能のテストである。利用したテストは、Sandra XIIの「Cache & Memory Benchmark」(グラフ5)と、PCMark05の「Memory Latency Test」(グラフ6)だ。 まずSandraによるメモリアクセス速度のテストでは、CPUの動作クロックによって、キャッシュメモリに速度差が付いていることが分かる。 また、メインメモリ部のアクセス速度もメモリの動作クロックによる差がある。DDR3-1066時は、1,333/1,600MHz FSBよりもメモリ側の帯域幅が不足することになるため、メモリクロックの向上がはっきり表れる格好となっている。Intel X48とX38の違いについては、目立つほどの差とはなっていない。 レイテンシについても、ほぼCPUクロック、メモリクロックによってグループが分かれる結果となった。1,600MHz FSBと1,066MHzメモリの時に若干高速な結果も出ているが、そのほかの結果の傾向から見ても、これは誤差と判断するのが妥当といえる。
さて、次に実際のアプリケーションの性能を見ていきたい。テストは、「SYSmark 2007 Preview」(グラフ7)、「PCMark Vantage」(グラフ8)、「CineBench R10」(グラフ9)、「動画エンコードテスト」(グラフ10)である。 複数アプリケーションが動作する上、HDDへの依存度も高いSYSmark2007やPCMark Vantageは、どうしても誤差が大きく出ている。理屈の上ではあり得ないスコアの上下関係も発生しているが、これも誤差によるものと判断できる。 若干ながらCore 2 Extreme QX9650+Intel X48+DDR3-1333の環境においてスコアが伸び悩む傾向にあるのは気がかりな点ではある。ただ、動画エンコードなどはIntel X38の同環境に比べると高速な傾向も出ているので、今後のチューニングは望まれるが、ハードウェア面で致命的な何かを抱えているとはいえず、それほど気に留める必要もないだろう。 また、全体的な傾向としてCore 2 Extreme QX9770が良好なスコアを出しており、このあたりはクロック差の優位性を感じる点だ。また、PCMark VantageのGamingや、SD解像度の動画エンコードにおいては、メモリクロックの優位性も色濃く出ている。
続いては3Dベンチマークだ。テストは「3DMark06」(グラフ11、12)、「3DMark05」(グラフ13)、「Crysis Single Player Demo」(グラフ14)、「Unreal Tournament 3 Demo」(グラフ15)、「LOST PLANET EXTREME CONDITION」(グラフ16)である。 先のPCMark VantageのGamingのスコアで見られたように、メモリクロックの効果が大きいことが分かる。ただ、これら実際のゲームにおいては、DDR3-1066/1333/1600の性能差よりもCPUクロックの方が効果が大きくなっているのが特徴的な結果といえる。 最後に消費電力のテストである(グラフ17)。先述の通り、DDR3-1066とDDR3-1333/1600ではメモリ電圧が異なる点に注意してほしい。当然ながら、DDR3-1333/1600環境の電力は高めの結果となっている。 一方、DDR3-1066同士の環境を見てみると、明らかにCore 2 Extreme QX9770が電力を多く消費する傾向となる。ピーク時で20W以上の差が付いており、CPUのみの消費電力増としては小さくない。この当たりは気に留めておいたほうがいいだろう。 なお、Intel X38とIntel X48の同一環境において、若干ながらIntel X48の方がスコアが低い傾向も出ている。しかし、ほぼ同一仕様の製品とはいえ、マザーボードの違いもあるので、この結果だけでIntel X48の消費電力が下がったと判断しないよう注意してほしい。
●ハイエンドCPUで突っ走るIntel ライバルのAMDとの関係で見た場合、Phenom 9000シリーズが登場したものの、ハイエンドCPUのセグメントではIntelの独壇場となっている。独占状態にあるセグメントでも手を緩めずに、次の一手として投入されたのが今回の製品といえる。 1,600MHz FSB化という点が注目される今回の新製品だが、Core 2 Extreme QX9770はCPUクロック自体が向上しており、性能が安定して向上することが期待できる製品といえるだろう。 もちろん、FSB上昇の性能向上も見られるが、やはりこれはメモリも高速なものに置き換えてこそ、最大限に効果が得られると判断していい。この点において、Intel X48が1,600MHz FSB時に(JEDEC規格である)DDR3-1333をサポートしないのは残念である。 チップセットの選択という面で見れば、Core 2 Extreme QX9650とDDR3-1600の組み合わせがサポートされず、1,600MHz FSBを使う予定がないのなら、目立ったパフォーマンス差が見られない以上、Intel X38でも十分だ。1,600MHz FSB環境を導入するのはCPUのラインナップや、DDR3-1600モジュールの選択肢が増えるのを待ってもいいだろう。1,600MHz FSB登場直後は、Core 2 Extreme QX9770/Intel X48マザーボード/DDR3-1600の3点セットで購入すべきだ。 □関連記事 (2007年12月10日) [Text by 多和田新也]
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