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【やじうまPC Watch】
バッテリ切れ後の対策を競うIntel COREコンテスト結果発表

11月28日(現地時間) 開催

開催場所:イスラエル テルアビブ



 米Intelは、IT関連の報道陣にイスラエルの研究開発施設/製造施設などを公開したが、そうした説明会を行なった最大の理由として、ヨーロッパで同社が行なってきた“Intel University Competition On Renewable Energy”(略してCORE)と呼ばれるコンテストの結果発表場所としてイスラエルが選ばれたという背景がある。

 11月28日(現地時間)には、イスラエル第一の都市であるテルアビブにおいて、コンテストの優勝大学が発表され、表彰式が行なわれた。

●ヨーロッパ各地の大学がノートPCのバッテリレス駆動に挑戦

 今回のコンテストは、今年(2007年)4月に始められたもので、ルールはシンプル。IntelのCore 2 Duoを搭載したノートPCのバッテリが空になってから、ACアダプタ以外から何らかの電力を作り出し、さらに1時間動かしてみせるというものだ。そのルールの枠内であれば、どのような発想であってもかまわないという。

 そうしたルールでいくつかの大学で競争した結果、結果5つの大学(イタリアのミラン工科大学、オランダのデルフィト工業大学、スペインのマドリッド工科大学、アイルランドのダブリン県立大学、ベルギーのKHK)が参加して、争われることになった。Intelの広報担当者によれば、さらにドイツから2大学の参加があったそうだが、結局目標を達成できなかったので、今回は不参加ということになったそうだ。

 それぞれ、どんなことをやっているのか紹介すると

(1)デルフィト工業大学の“Human Power”

デルフィト工業大学の人力発電システム。現時点では両足でペダルを上下させる仕組みだが、将来は自動車のアクセルペダルのような形で発電が可能に

 オランダのデルフィト工業大学(UT Delft)は非常にシンプルに“人力”で発電する仕組みだ。ユーザーが足でペダルを踏み続けることで電力を発生させ、それによりノートPCを動かすのだ。将来の予定では、自動車のアクセルを踏むような形になる予定とのことだが、今のところは両足で、ペダルを垂直方向に上下することで電力を発生する仕組みになっているという。


(2)ダブリン県立工科大学のエタノール2ストロークエンジン

ダブリン県立工科大学のエタノール2ストロークエンジン。エタノールをどう入手するかという問題は残るが、安定した電力の出力が可能になる。最近ではバイオエタノールがトレンドの1つになりつつあるので、将来的には入手も容易になるかも?

 アイルランドのダブリン県立工科大学(Dublin Institute of Technology)は、エタノールで動作する2ストロークエンジンをできるだけ小型化することで電力を発生する仕組みを採用していた。公開された資料によれば、これにより19V/80Wの電力を発生させることができるという。燃料となるエタノールさえ供給すれば、永遠に使い続けることが可能とのことだ。


(3)KHK(Katholieke Hogeschool Kempen)の“Plug'n Go-Cart”

ベルギーのKHKのPlug'n Go-Cart。なぜゴーカートでノートPCを使う必要があるかは不明だが、ソーラーパネルだけでなく人力での発電も可能なハイブリッド方式

 ベルギーのKHKの“Plug'n Go-Cart”は、ソーラーパネルを上部に搭載し、人力で動作するゴーカートだ。通常はソーラーパネルで充電しながら動作するが、曇りの日などでも発電できるように人力、つまり搭載したペダルの操作でもノートPCに電力を供給するという。なぜゴーカートに乗せてノートPCを使う必要性があるのか、その必然性は脇に置いても、なかなかユニークな発想ではある。


(4)マドリッド工科大学の“Pedal Energy Generator”

マドリッド工科大学のPedal Energy Generator。人がペダルを漕ぐだけで、ノートPCに電力を供給できる

 スペインのマドリッド工科大学の“Pedal Energy Generator”も、シンプルに人力を利用する。人間が自転車のペダルに似たペダルを漕ぐことで電力を発生させ、それを58Fのウルトラキャパシタに蓄電後、その電力をノートPCに対して供給する。仕組みとしては非常にシンプルだが、総重量が5kgと他の大学に比べてコンパクトになっているのが特徴だ。


(5)ミラン大学の燃料電池

ミラン大学の水素を利用した燃料電池。排出するものは水だけなので、環境にも優しいのが特徴。ただし、水素をどのように入手するかが今のところ課題だという

 イタリアのミラン大学は、水素を利用した燃料電池でノートPCを動作させた。これには“FCS-100 H-100”という型番もついている。内部は20の水素を利用した燃料電池のセルを格納し、それを利用して最大100Wの電力を発生する仕組みになっているという。水素を利用しているため、利用後に発生するのは水だけで、環境にも優しいというメリットもあるようだ。


 いずれの取り組みも、ノートPCを動かすにはちょっと大げさに過ぎるような気もしなくはないが、各大学とも本気で取り組んだものとあって、実際に審査を担当したIntelの関係者やIDCのアナリストは、どの大学を賞に選ぶか悩んだようだが、結果は以下のようになった。

・優勝:マドリッド工科大学
・イノベーション賞:デルフィト工業大学
・クリーン環境賞:ミラン大学

 優勝したマドリッド工科大学には、1万ユーロが今後の研究開発費として贈られ、そのほかの2大学にはCore 2 Duoプロセッサを搭載したMacBookが賞品として贈られた。

優勝したマドリッド工科大学には研究開発費として1万ユーロが贈られた。イスラエルに行く飛行機(乗り継ぎも入れて日本から24時間以上)の中でバッテリが切れ、ノートPCがタダの思い箱になった筆者としては、もっと手軽に自家発電できるような仕組みが開発されることを切に願っている マドリッド工科大学のシステム。キャパシタが今のところかなり大きいが、今後さらに小型化に取り組んでいきたいそうだ マドリッド工科大学のPedal Energy Generatorは自転車を漕ぐ感覚で発電ができ、ノートPCを使うことができる

 ちょっと強引なCORE(Intel University Competition On Renewable Energy)という賞の名前はともかくとして、大学生達が知恵を絞ってノートPCをACアダプタ以外からの電力以外で動かそうという取り組みは、長い目で考えれば意味があるだろう。最近は環境問題への興味などもさまざまな理由から増大しており、“電力食い”のPCにも厳しい目が向けられつつある。そうした意味で世界の8割近いPCに向けてCPUを出荷しているIntelとしても、いろいろな取り組みをする必要があり、その一環としてこうしたプログラムが行なわれたのだと考えることができるだろう。

 個人的にはマドリッド工科大学のペダル型発電機は、日本のように地震が多い国であれば、いざというときにこれを利用して発電すればPCを使い続けることができるだろうから、そうした観点でちょっとほしいなと思った。もっとも、一緒にこの模様を眺めていた同僚には、“ダイエットになっていいじゃん”と言われて反論できなかったのも事実なのだが……。

□Intelのホームページ(英文)
http://www.intel.com/
□ニュースリリース(英文)
http://www.intel.com/pressroom/archive/releases/
20071128comp_a.htm?iid=pr1_releasepri_20071128ma

□関連記事
【11月30日】Core 2 Duoの故郷を報道陣に公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2007/1130/intel.htm
【2006年10月3日】【CEATEC】PC用HD DVDドライブ、音声認識翻訳端末、Cell気液冷却システムなど
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1003/ceatec.htm
【2004年10月21日】【WPC】WPC EXPOに登場した2台の燃料電池ノート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/1021/wpc3.htm

(2007年12月3日)

[Reported by 笠原一輝]

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