国内最大級の「KOUZIRO 新山口工場」を見学
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KOUZIRO新山口工場 |
9月5日 実施
株式会社KOUZIROは5日、山口県山口市にある新山口工場で、プレス向けの工場見学会を開催した。
新山口工場は、KOUZIROの生産拠点で、ヤマダ電機の傘下になって以降2005年6月に操業を開始した。KOUZIROのビジネスモデルは現在BTOのみとなっているおり、ヤマダ電機の店頭またはWeb上で、好みのスペックのPCをユーザーが注文できるようになっているが、BTOで受注されたPCはすべて、この山口工場で生産している。
●月産5,000台の秘密
同社 代表取締役 社長 松本大輔氏 |
見学会の冒頭で挨拶した同社 代表取締役 社長の松本大輔氏は、「新山口工場の現在の月産台数は4,500~5,000台で、国内でもBTOでこの水準を超える数字の工場はない」とアピールする。
松本氏によれば、同工場の生産性の高さの秘密は、約1年前から新たに導入した「オートネットワークインストールシステム(ANIS)」にあるという。
これまで、同社のPCへのOSやソフトウェアのインストールに関しては、すべて「マスターHDD」をコピーすることでインストールを行なうシステムを採用していた。しかし、BTOのPCでは、インストールを必要とするドライバやソフトウェアがユーザーごとに異なるため、マスターHDDを複数台用意せねばならず、最終的には何百台も抱えることになってしまい、生産性や管理性が低下していた。
ANISでは、インストール用に独自のユーティリティによって、組み立てが完成したPCにシステムにあったハードウェア/ソフトウェアのコードを入力するだけで実行可能になった。ネットワーク経由でイメージを管理しているサーバーから、自動的にOSやソフトウェア、ドライバを選択してダウンロードしてインストールされるようになる。
これにより、PC 1台あたりのインストールの時間を大幅に短縮することができ、最短約10分で完了するようになった。また、イメージのメンテナンスを行なう際は、サーバー側のイメージを修正するだけで済むようになり、メンテナンス性も向上しているという。
このANISに関しては、ノートンなどが提供するソフトウェアでも、ライセンス料をさえ支払えば実現できるできるというが、同社はコストを追及するため、独自のシステムを開発した。機能自体に関しては、リモートインストールサーバーによって実現しているという。
仕様書に書いてあるソフトウェアのコードを入力するだけで、必要なドライバとソフトウェアがネットワークでインストールされる | ANISをまかなっているサーバー。4台あるが、現在実際に稼動しているのは2台のみで、現状これだけで十分だという |
ANISの実現にあたって、Windows VistaとXPとでは手法が異なる。Vistaを例に取り上げると、OS自体がイメージ化されており、インストール時に特殊なXMLを取り込むことで、XMLに記述されたパッケージも自動的にインストールされる仕組みを採用。Vistaのイメージファイルを保存しているサーバーではXMLのパターンを8万通り用意し、BTOの構成にあったXMLを取り込むことでインストールを行なうという。
このANISを採用するPCメーカーは、国内ではKOUZIROのみ、海外を含めても2社しかないという。しかも、同社のANISのインストール速度はサーバーの強化によりかなり高速化されており、「世界一速いANIS」だという。実際、PC 1台の製造は、部品のピックアップ、組み立て、インストール、検査から梱包まで約2~3時間で完成するというが、これはANISがあるからこそ実現できているのだろう。
●品質にもこだわりを
市場動向についても、松本氏が紹介してくれた。同氏によれば、現在デスクトップPCでマイナス20%成長と苦戦を強いられているが、ノートPCについてはプラス6~8%で推移しており好調だという。
「これまでホワイトボックス系PCメーカーは、ナショナルブランドと比較してノートが弱かった。しかし現在、2台目のPCへの需要が高まり、やや特殊用途に特化したスペックを要求するユーザーが多い」という。そこで同社は豊富なBTOオプションを用意することで対応していくほか、今後GPUを搭載したゲーマー向けノート、B5サイズのモバイルノートにも力を入れていくという。
さらに、激化するホワイトボックス系メーカーの対抗策として、品質に徹底的にこだわっているという。
品質へのこだわりは、製品の企画段階から始まる。供給元からのサンプル提供があると、同社の技術部で徹底的にサンプルについて調査し、同社の品質基準に満たさない製品はその時点で採用をやめる。特に、製品の温度の検査に関しては厳しく、これまでもいくつものサンプルの採用をやめたという。
室内には未発表製品などもあるため公開できないが、ここでメーカーからくるサンプルをすべて検証して、同社の基準にあった製品だけが製品化される | 完成品の中からランダムでサンプルを抽出し、ここで再度精密な検査を行ない、問題を発見する |
検査に当たっては、通常の完成品検査のほか、完成品の中から、20台に1台のペースでランダムに抽出して、検査を行なっている。もしここでPCに問題が発生すれば、そのPCと同等構成のPCラインナップについて再度検証を行ない、問題を摘出するようになっている。
松本氏は、「我々はナショナルメーカーに劣らない品質を確保しており、ホワイトボックス系のメーカーの中では最高の品質を実現していると自負している」とアピールする。
今後の課題としては、やはり地上デジタルTVチューナの搭載による、エンターティンメント系PCへの参入だ。現在地デジについてはB-CASカードのメーカーへの発行に制限があるため、同社としての参入が難しいのが現状だという。松本氏は、「地デジは、現時点ではナショナルメーカーにしか実現できない機能であるが、今後はインテルが発表したソフトウェアCASや、法律改正などによって、我々でも搭載できるようになれば、積極的に参加していきたい」と語った。
●組み立て工程
組み立て工程は、部品のピックアップから始まり、組み立て、インストール、検査、梱包を経て出荷される。
部品のピックアップは工場の1階部分で行なわれる。在庫の部品にはすべて独自のコードを割り当てている。受注するときに、受注仕様書に自動的にこのコードが入力されるようになっており、ピックアップを容易にしている。ピックアップされた部品は、いったんエレベータで2階の組み立て工場に揚げられる。
2階部分では組み立てから検査までを行なっている。にピックアップされた製品を組み立て担当まで運ぶ運搬係も配置しており、組み立て担当は組み立てに専念する。組み立て担当は1日あたり15台組み立てることを目標としており、完成台数についてもリアルタイムで監視をおこなっている。
エレベータで2階に運ばれた製品は運搬係が組み立て担当まで運ぶ | ノートPCを組み立てている様子 | こちらはデスクトップを組み立てている様子 |
組み立て担当の足元には特殊な液が入ったマットが敷かれ、長時間立ち仕事の疲労を軽減する効果があるとともに、静電防止の効果もある | 現在の組み立て、出荷、検査状況などがリアルタイムに監視される | 「特殊」と書かれたコーナーでは、法人などの受注からくる特殊案件に対応する |
次に、組み立てが完成したPCはインストールにかけられる。インストールは先ほど述べたようにANISを通して行なわれるため、実際に人が操作するのは最初だけで、残りはすべて無人で行なわれる。インストール後は光学ドライブのトレイが自動的に吐き出され、検査とエージングにかけられる。検査とエージングでは主に動作検証とメモリテストを行なっており、ここで不合格だった場合はリペアグループが修正を行なう。
ソフトウェアインストール中のデスクトップPC | インストールが完了したPCは光学ドライブのトレイが自動的に吐き出され、検査待ちであることを知らせる | 検査を行なっているところ。独自のツールでユーザーのシステムに検査ツールをインストールせずに検査を行なえる |
梱包待ちとなったPC | 2階の梱包エリアでは、マニュアルの同梱などの作業を行なう | システムごとに構成が違うため、内容物も異なる |
最後の箱詰め作業。ここまで1台あたり2時間前後しかかからない |
検査が終わればいよいよ梱包され、発送される。マニュアルなどの添付は2階部分で行なう。その後、エレベータで1階に下ろし、箱詰めされて出荷されるという仕組みだ。
全体的の感想としては、工場がコンパクトにまとめられており、BTO専業メーカーとしては生産性が非常に高いように感じられた。また、静電対策のためのコーティングの床に加えて、長時間立ったままの作業員の疲れを軽減させるための特殊な液体が入ったマットを敷くなど、細かい工夫もみられる。日本の地域産業を支えるPCメーカーだけに、今後のさらなる発展に期待したいところだ。
□KOUZIROのホームページ
http://www.frontier-k.co.jp/
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http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0427/gyokai94.htm
(2007年9月6日)
[Reported by ryu@impress.co.jp]