大河原克行の「パソコン業界、東奔西走」

ヤマダ/フロンティア神代のタッグが本格始動


 ヤマダ電機、フロンティア神代によるタッグチームが、ホワイトボックス事業において、新たなステージへの挑戦を開始した。

 今年1月。電撃的ともいえる形で発表されたヤマダ電機による神代の子会社化。ヤマダは、神代の過半数の株式を取得して連結対象にするとともに、これまで、ヤマダ電機店頭で取り扱っていた複数のホワイトボックスメーカーによる製品戦略を見直し、神代ブランドの製品を主力へと位置づけた。

 それから3カ月。家電量販最大手のヤマダ電機と、ホワイトボックス市場で先行してきた神代によって結成されたこのタッグチームは、これからのホワイトボックス市場において、なにを起こそうとしているのか、その行方が注目されていた矢先でもあった。

 そして、そのタッグによる本格展開が、いよいよ今日から開始されることになるのだ。

●わずか1カ月半でブランド変更

フロンティア神代の新ロゴ

 4月27日、ヤマダ電機の主要店舗で、新たなロゴのホワイトボックスパソコンが展示販売される。

 「FRONTIER-KOUZIRO-」。フロンティアブルーと呼ばれる神代のコーポレートカラーを継承しながらも、英文での表記は、これまでの神代のイメージとは、まったく異なる印象だ。

 神代輝明社長は、「社長就任当初から、どこかのタイミングでブランド、ロゴを変えたいと考えていた」と明かす。

 神代(こうじろ)というユニークな読み方は利用する価値があるだろう、そして、フロンティアというブランドも定着している。これを生かしたいとは考えていたという。

 だが、これまで使用してきた「田舎が生んだコロンブスの卵」というキャッチフレーズがもたらしたイメージからの脱皮も必要だと感じていた。

フロンティア神代 神代輝明社長

 「かつては、なんだか田舎にも面白い会社があるらしいぞ、というイメージを打ち出す狙いがあった。全国区に乗り出していくためには、そうしたインパクトが必要だったからだ。だが、事業の拡大に伴って、いつまでも田舎のメーカーというイメージを打ち出しているメリットがなくなってきたのも事実。次のステージで神代は、どんなイメージを打ち出すべきかを常に考えていた」

 もちろん、ヤマダ電機とのタッグチームの編成によって、そのイメージを変えるきっかけができたともいえる。

 「将来的にはブランドを変えたい、とヤマダ電機の幹部に漏らしたら、すぐにやろう、という話になった」

 その話を切り出したのが今年3月初旬のこと。わずか1カ月半で、新たなロゴを作り上げ、それによる事業展開が開始できる体制を整えた。

●新たなブランドイメージは「インテリジェンス」

 神代社長は、次代に向けたいくつかのブランドイメージを考えていた

 結果として導き出したのが「インテリジェンス」である。

 「ソニーはスタイリッシュであるとか、AVに強いというイメージ、NECや富士通は初心者にも優しい、デルはトータルサポートがしっかりしている、そして、ソーテックは低価格というように、それぞれのイメージがある。それらのメーカーと競合するようなイメージづくりは得策ではない。それ以外に当社が打ち出せるイメージは何かと考えた結果がインテリジェンスだった」

 フロンティア神代のパソコンは、大学や研究機関に対して数多くの導入実績を持っている。研究者たちが安心して利用できるパソコンという実績はすでに証明済みである。

 「インテリジェンスを発揮する分野で、高い実績を持つのが当社のパソコンである。このイメージこそが、今後のフロンティア神代の方向性だと確信した」

 新たなCIによって目指すイメージを「知性を感じさせる、高品質なトータルITブランド」と位置づける。

 英文で整えたロゴの雰囲気や、新たに用意される総合カタログが映画のワンシーンを思わせるようなデザインとなっていることを見ても、これまでのキャッチフレーズで使用していた田舎的なイメージはない。むしろ、180度正反対ともいえる、都会的、先進的イメージを取り入れたものだ。

 そして、今後は製品戦略にもこれを反映させ、筐体にブルーカラーを施した製品も順次拡大するなど、製品づくりにおいてもイメージを変えていく考えだ。

 実は、このCIは、正式には今年6月1日付けで行なわれる。そして、そのタイミングで社名も英文表記の株式会社KOUZIROへと変更する。だが、すでに本日から、ヤマダ電機店頭においては、新たなブランドロゴを採用した次世代戦略が、いち早くベールを脱ぐことになるのだ。

ヤマダ電機店頭にはいち早く新ブランドロゴを採用した製品が並ぶ

●ヤマダが神代を取り扱う理由とは?

 ヤマダ電機が、フロンティア神代の製品の取り扱いを開始したのは、2003年3月からだ。

 それ以前にも、ホワイトボックスの製品は取り扱っていたが、店頭ではいくつかの問題が起こっていた。

 これらのホワイトボックスには、「ナショナルブランドのパソコンまでは必要なく、むしろ低価格で、入門用としてパソコンを購入したい」というユーザーが飛びついていたのだが、マニュアルやカタログの作り方がどうしても組立パソコンの域を出ずに、ターゲットとなる初心者にはわかりにくいものとなっていた。

 それは、そのまま店員が売りにくいという構図にもつながっていた。パソコン専門店ほどの知識を持たない店員にとっては、専門用語が並ぶカタログを理解し、それを来店客に丁寧に説明するには、時間と工数があまりにもかかりすぎていたのだ。

ヤマダ電機リユース・ホワイトボックスPC事業部 藤野豊部長代理

 「例えば、パソコン本体とディスプレイの箱のデザインが違うということにも購入者は敏感に反応していた。正規の製品とは違う物を販売されたのではないか、というイメージを持つからだ」と話すのは、ヤマダ電機リユース・ホワイトボックスPC事業部 藤野豊部長代理。

 秋葉原の組立パソコンに慣れているユーザーならば、ホワイトボックス本体のダンボールが、カラー化した化粧箱であるのに対し、液晶モニターが、型番しか記載されていない味気ないダンボール箱であっても、それは当然のことだと思って購入している。だが、ナショナルブランドの製品に慣れているユーザーであれば、本体とモニターの箱のデザインが統一されていないだけで、その商品構成に違和感を感じるのである。

 「ところが、フロンティア神代の製品を見たときに、ダンボールのデザインが統一されていること、マニュアルがしっかりしていることなど、当社がターゲットとする顧客に合致する製品であると感じた」

 取り扱いを開始して以降、両社の関係は一気に深まった。両社の思惑と戦略が一致していたからだ。そして、今年1月14日には、資本提携というところにまで至ったのだ。

●今年中に構成比30%を目指す

 現在、ヤマダ電機全店における年間パソコン販売台数は120万台に達する。国内パソコン出荷台数の実に10%を占めているという計算だ。

 この120万台のうち、ホワイトボックスが占める割合は約12%。まず、これがすべてKOUZIROブランドのパソコンに置き換えられることになる。そして、今年中には、デスクトップパソコンに占めるKOUZIROブランドのパソコンの比率を30%にまで引き上げる計画だという。

 「先日、社内の会議で、30%を目指すと発表したら大笑いされた」と藤野部長代理は社内の当初の反応を明かす。年間120万台もの出荷規模を誇る同社において、構成比率を一気に2倍以上に引き上げるのはまさに至難の技だ。だが、藤野部長代理には、そこまで引き上げることが可能だという読みがあるようだ。

 ひとつは、KOUZIROブランドに対する信頼感。安かろう、悪かろうのイメージが先行しがちなホワイトボックスにおいて、大学、研究所への多くの導入実績は、それを跳ね返す裏付けとしては十分だ。

 また、これらの製品がヤマダ電機を訪れる顧客層に対して、的を射た製品になりうるという点も重要なポイントだろう。そして、なんといっても、社内において、ホワイトボックスを売るための体制を整えつつある点が、藤野部長代理の読みを確固たるものにしている。

 「昨年12月の人事異動に伴って、社内的にホワイトボックス事業が推進しやすい体制が整った。その一環として、テレビ会議システムを活用したホワイトボックス販売に関する教育が頻繁に行なえるようになった。これまで週30分程度しか割けなかったパソコンの店員教育に、週2時間以上の時間が割けるようになった」という。

 正直なところ、これまではホワイトボックスよりも、手離れがよく、アフターサポートの面でも安心して販売できるナショナルブランドを勧める店員が多かった。だが、教育の効果によって販売知識を持った店員は、自信を持ってホワイトボックスを勧めるようになっているという。さらに、KOUZIROとの連携で、アフターサポート体制を構築できた点も、ユーザー、そして店員にとっても心強いといえる。

 「早ければ、7〜8月には瞬間的に、デスクトップ販売の3割をKOUZIROブランドが占めるかもしれない。ノートパソコンでも、今年末には10%を占めたい」と、藤野部長代理は強気の見通しを示す。

 4月27日の時点では、一部の主力店舗での展示に留まるが、5月初旬には、全国のヤマダ電機約230店舗中パソコンを取り扱っている約200店舗に製品を展示する計画だ。

 今年度、ヤマダ電機ではナショナルブランドに関しては、既存店ベースで前年比5%増を見込む。だが、ホワイトボックスに関しては、上期は3倍増。通期では最低でも2倍増を見込む計画だという。

●今年夏にはオリジナル筐体の製品も

 では、ヤマダ電機とKOUZIROとのタッグは、どんな製品を我々の前に見せてくれるのだろうか。

 神代社長は、「製販一体の製品企画が可能になる」と表現する。

 これを補足するように藤野部長代理も、「顧客の声を反映した製品をすぐに形にできる点は大きな武器だ」と話す。

 「法人向け、SOHO向けの専用モデルや、特定の用途に限定した製品も迅速に製品化できる」(神代社長)、「例えば、キューブモデルにオフィス搭載モデルは必要とされないとか、タワーモデルを購入するユーザーの多くは、リカバリーディスクではなく、OEM版のOSを付属してほしいといった声が多いこと、さらには、ノートパソコンでゲームをやりたいというユーザーに対して、仕様と価格のバランスをとった製品を提供できるというように、細かな要求にも対応できるようになる」(藤野部長代理)。

 そして、早ければ今年夏には、ヤマダ電機オリジナルの筐体を使用したパソコンが、KOUZIROブランドで投入されることになるかもしない。販売店にとって、販売店独自の金型を使用したオリジナルモデルの製品化は、まさに夢といえた。これが、いよいよ実現される段階まできているのだ。

 さらに、こうした独自戦略は、周辺機器にまで広がる。すでにテレビチューナを搭載した17型ワイド液晶ディスプレイ「FR17WTV」を製品化しているが、夏以降にはこれを地上デジタル放送にも対応する考えで、これらの製品展開によってデジタル家電分野にも乗り出す考えだ。

 ヤマダ電機とKOUZIROのタッグチームによって、両社はそれぞれの事業を加速させるとともに、われわれの目の前に、驚くような新たな商品を次々と繰り出してくれそうだ。

□フロンティア神代のホームページ
http://www.frontier-k.co.jp/
□ヤマダ電機のホームページ
http://www.yamada-denki.jp/

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(2004年4月27日)

[Text by 大河原克行]


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