韓国Raon Digitalの「Everun」は、4.8型ワイド液晶を搭載したUMPCだ。Raon Digitalは、2004年11月に設立されたまだ歴史の浅いメーカーだが、UMPCに力を入れており、昨年(2006年)4.3型ワイド液晶を搭載した「Vega」を発売している。 Everunは、同社の2世代目となる製品であり、スペックや機能がさらに強化されている。Everunは、日本ではBruleが販売代理店となり、日本語OSを搭載して発売されている。 今回、Everunのデモ機を試用することができたので、早速レビューしていきたい。 ●コンパクトな筐体にQWERTYキーボードを搭載 Bruleから販売されるEverunには、CPUやHDD容量などの違いによって、全部で3つのモデルがある。今回試用したのは「EVERUN/30H」という製品で、一番下位のモデルとなる。BruleでのEVERUN/30Hの販売価格は109,800円だ。Everun/30Hでは、CPUとしてAMDの組み込み向けCPU「Geode LX 800」(500MHz)を搭載する(他の2モデルは600MHz動作のGeode LX 900を搭載)。 メインメモリの容量は512MBで、増設はできない。ただし、メモリの一部がビデオメモリとして使われるため(デフォルトでは128MB)、OS上では384MBと認識される。Geode LXは、メモリコントローラやグラフィックスコアも統合していることが特徴で、省電力性や省スペース性に優れている。サウスブリッジとしては、「CS5536」を採用している。 Everunのサイズは170×83×25mm(幅×奥行き×高さ)で、重量はモデルによって多少異なるが、EVERUN/30Hの場合は490gである。Vegaのサイズは160×80×27.5mm(同)で、重量は480g(オプションのコンパクトバッテリ装着時は350g)であり、フットプリントは多少大きくなっているが、重量はほぼ同じである。OSはWindows XP Home Editionで、日本語版がプリインストールされている。
液晶はタッチパネル付きで、解像度は800×480ドットである。表示解像度は、本体上面にある解像度切り替えボタンを押すことによって、640×480ドット/800×480ドット/800×600ドット/1,024×576ドット/1,024×612ドット/1,024×768ドット(800×600ドット以上は縮小表示)の6段階での切り替えが可能だ。 Everunの特徴の1つとして、小さな筐体にQWERTYキーボードを搭載したことが挙げられる。Vegaでは、QWERTYキーボードは搭載されておらず、液晶画面に表示される仮想キーボードを利用していた。EverunのQWERTYキーボードは、本体(横長で持った場合)の右側に縦に配置されており、本体を横にした状態では、一般的なキーボードを90度回転させた状態で使うことになる。
このクラスのUMPCでは、キーボードを配置するスペースに制約があるため、OQOやソニーの「VAIO type U」のようにスライド式キーボードを採用するか、富士通「LOOX U」のようにクラムシェル型ボディ(一般のノートPCのような液晶折りたたみ構造)を採用することで、キーボードを搭載することが一般的だが、Everunはそうしたギミックを使わずに、そのままQWERTYキーボードを搭載している。そのため、キーピッチが約7mmと小さく、長文を入力するといった用途には向かないが、使い勝手としてはハードウェアキーボードがあるとないとでは大違いだ。 Everunは、本体を縦にした状態でも使うことができる。Gセンサーを搭載しており、本体を縦に持つと、自動的に画面の表示方向が切り替わる。表示方向は90度ずつ全ての方向に切り替わるが、ユーティリティによって表示方向を固定することも可能だ。キートップの刻印は、45度傾いているが、これは本体を縦にして持ったときにも、文字を識別しやすくするためだ。本体を縦にして持った状態では、一般的なキーボードに近いレイアウトになる。
●光学タッチマウスの出来が秀逸 ポインティングデバイスとしては、光学タッチマウスをキーボード右上(横長で持った場合)に搭載している。この光学タッチマウスは、光学式マウスを裏返したようなデバイスであり、上に載せた指を滑らせることで、ポインティング操作が可能だ。この種のデバイスとしては、操作性は良好であり、思い通りにポインタを動かすことができる。タッチマウス自体がクリックボタンの役割を果たしており、押し込むことで、左クリックになる(Fnキーを押しながら押せば右クリック)。液晶は感圧式のタッチパネル付きなので、付属のスタイラスなどを利用して、ポインティング操作を行なうことも可能だ。 多くの特殊キーを装備していることも特徴である。本体上面(横長で持った場合)に、CPUクロックコントロール(パワーセーブボタン、オートボタン)、画面サイズ変更、ミュートの各キーが用意されており、左側面と下面には、それぞれシフトキー、Fnキー、Altキー、Ctrlキーが用意されている。また、液晶左側には、ファンクションキーや十字キー、上下スクロールキー、左右クリックボタンなどが用意されている。
●ポータブルHDDとしても使える
EVERUN/30Hは、ストレージとして30GB HDD(1.8インチ)を搭載しているが、上位モデルのEVERUN/6Sでは、HDDの代わりに6GBのSSDが搭載されている。また、最上位のEVERUN/66HSでは、6GBのSSDと60GB HDDの両方が搭載されている。SSD搭載のEVERUN/6Sは、重量が30g軽くなり、460gとなるほか、バッテリ駆動時間も7時間(HDDモデルは6時間)に延びる。 Everunは、内蔵ストレージをポータブルHDD代わりに使うことも可能だ。本体の電源を切った状態で、USBケーブル経由でPCに接続すると、Everunの内蔵ストレージがUSBマスストレージとして認識される。ファイルエクスプローラなどを使って、ファイルの転送などが行なえるので便利だ。 ●無線LANやBluetoothにも対応 通信機能もVegaに比べて大きく強化されている。Vegaでは、無線LAN機能やBluetooth機能を内蔵していないことが不満であったが(代わりにUSBタイプの無線LANアダプタが付属)、Everunでは、標準でIEEE 802.11b/g対応無線LANとBluetooth 2.0をサポートしており、使い勝手が大きく向上している。 インターフェイスは、USB 2.0×1、USB mini-B(PCとの接続用)、ドッキングコネクタ、イヤフォン、マイク程度と最低限であるが、付属のVGAアダプタをドッキングコネクタに接続することで、ミニD-Sub15ピンを利用できるようになる。筐体サイズに制限があるため、カードスロット類は一切用意されていないが、できればSDカードスロットが欲しかったところだ。
●パフォーマンスは決して高くはないが、携帯性の高さは魅力 Everunでは、バッテリとして薄型のリチウムポリマーバッテリを採用。バッテリは背面の外装と一体になっており、本体の薄型化に貢献している。標準バッテリで公称6時間の連続駆動が可能だが、オプションの大容量バッテリを利用することで、駆動時間は11時間に延びる。ACアダプタもコンパクトで軽く、携帯性は良好だ。
参考のため、ベンチマークテストを行なってみた。ただし、液晶の実解像度が800×480ドットと狭いため、完走できないテストも多かった。比較用として、ソニーの「VAIO type G」や「VAIO type T」の結果も載せている。 Everunに搭載されているGeode LXはもともと組み込み向けのCPUであり、コアの設計はかなり古い。そのため、Core SoloやCore 2 Duoを搭載した製品に比べると、CPU Scoreは1/5~1/10程度と大きく見劣りする。しかし、Windows XP上での体感速度にはそこまでの差はない。動画のエンコードやデコードといった、CPU負荷の高い処理を行なわせるには明らかに力不足だが、Webブラウズやメールチェック、簡単な文書作成といった仕事なら、十分にこなせる。 長時間負荷をかけていると、本体がかなり熱くなることが気になるが、モノとしての作りはしっかりしており、完成度も高い。出張用などのサブマシンとして使うのなら、その携帯性の高さは魅力だ。Vegaの価格が139,800円であったことを考えると、EVERUN/30Hの109,800円という価格は、リーズナブルといえるだろう(EVERUN/6Sは119,800円。EVERUN/66HSは139,800円)。
【表】ベンチマーク結果
□Raon Digitalのホームページ(英文) (2007年8月30日) [Reported by 石井英男]
【PC Watchホームページ】
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