NVIDIAが5月8日に発表した統合型チップセット「GeForce 7050 PV」。AMDプラットフォーム向けのチップセットで、すでに5月初旬には搭載マザーボードが発売されている。ただ、5月初旬の段階ではNVIDIAから正式なドライバがリリースされておらず、ここで取り上げるのを控えてきたのだが、6月1日にようやく正式ドライバが公開された。そのドライバを利用したベンチマーク結果をお伝えしたい。 ●HDMI対応とサウスブリッジの統合が大きな特徴 すでに発表から1カ月半以上が経過しているGeForce 7050 PVであるが、ここで簡単にチップセットの概要をおさらいしておきたい。今回取り上げるAMDプラットフォーム向けのGeForce 7050 PVは、正式名を「GeForce 7050 PV+nForce 630a」という。また、下位モデルもラインナップされており、こちらは「GeForce 7025+nForce 630a」となる。 “+”という記号が使われているのは、前世代のGeForce 6150/6100シリーズと同様だが、GeForce 7050 PV/7025はワンチップで構成されているのが大きな特徴だ。つまり、従来のノースブリッジに、GeForce 7050 PV/7025というGPUと、nForce 630aというサウスブリッジ周りの機能が統合されていると考えると分かりやすいだろう。機能が集積されているというだけでなく、消費電力の抑制にも効果があるとされている。
両モデルの違いと、前世代製品の上位モデルであるGeForce 6150+nForce 430の違いは表1にまとめた通りだ。GPUとしての機能は、GeForce 7シリーズを引き継いだ独立型シェーダユニットを採用したものとなる。バーテックスシェーダユニット1基、ピクセルシェーダ2基の構成で、コアクロックは425MHz(画面1)。GeForce 6150からコアクロックは下がったことになるが、GeForce 6150シリーズでも、後に登場したGeForce 6150 SE/LEといったSKUではコアクロックが425MHzに設定されている。 GeForce 7050 PVと7025の違いに目を向けると、3Dパフォーマンスに関わる部分に機能差はなく、GeForce 7050 PVでは名前の通り動画再生支援機能である「PureVideo」に対応するほか、HDMI出力サポートとTV出力を内蔵している点が大きな優位点となる。また、細かい点だが、USBポートの数も差別化が行なわれている。 今回テストに利用するのは、GeForce 7050 PV搭載マザーボードとして秋葉原に真っ先に登場したBIOSTARの「TF7050-M2」である(写真1)。microATXフォームファクターのマザーボードで、ほぼ中央部にGeForce 7050 PV+nForce 630aを搭載。クーラーはヒートシンクのみのパッシブクーリングとなっている。 映像出力周りは、ビデオ出力、HDMI出力、D-Sub15ピン出力となっている(写真2)。また、HDMI出力をDVIに変換するアダプタも付属しており、PC用ディスプレイに接続する場合はこちらを利用するといいだろう。
【表1】GeForce 7050 PV/7025の主な仕様
●3DパフォーマンスはGeForce 6150プラスアルファ程度 それでは、GeForce 7050 PV+nForce 630aのベンチマーク結果を紹介したい。テスト環境は表2に示した通りで、GeForce 7050 PV以外の結果は、過去に行なったAMD 690Gの記事より流用している。やや古いデータであるため、一部アプリケーションはこの間にアップデートが行なわれたものもあるが、すべて当時のバージョンに統一して計測している。 なお、GeForce 7050 PVのドライバであるが、NVIDIAの公式サイトに6月1日にアップロードされたForceWare 101.17には、SMBusのドライバが含まれていなかった。そのため、最初にTF7050-M2付属のCD-ROMからDriver Package V10.03をインストール。その後に、ForceWare 101.17をインストールする手順で環境を作っている。
【表2】テスト環境
では、まずは3Dグラフィック性能のテスト結果から紹介していきたい。テストは「3DMark06」(グラフ1~3)、「3DMark05」(グラフ4)、「3DMark03」(グラフ5)、「Splinter Cell Chaos Theory」(グラフ6)、「Call of Duty 2」(グラフ7)、「F.E.A.R.」(グラフ8)、「DOOM3」(グラフ9)である。 GeForce 6150との比較という視点で見ると、3DMark06のFeature Testをのぞいては、いずれもGeForce 7050 PVが同等か、やや高いスコアをマークした。ただ、それほど大きな差とはいえず、3Dゲームにおいて劇的なパフォーマンス変化をもたらすほどではないだろう。この点、従来のグラフィック統合型チップセットの枠組みから大きく飛躍する印象は受けない。 GeForce 7050 PVが3DMark06のFeature Testでは結果が劣るのに、トータルスコアで非常に高いスコアを出す点に疑問があるかも知れない。実はこれにはカラクリがあって、GeForce 6150はShader Model 3.0に準拠するとはされているものの、16bit浮動小数点レンダリングに対応しないため、HDR/SM3.0テストが実行できない。一方、GeForce 7ベースとなったGeForce 7050 PVではこれが実行できているために、スコア算出方法が変わっている。3DMark06のスコア算出方法では、HDR/SM3.0テストを実行できる方が高いスコアが出る傾向にあるためである。 Overallに比べてShader Model 2.0テストの差が極めて小さい点にアーキテクチャ上の進歩が多少は好影響をもたらしている印象は受けるが、シェーダユニットに負荷をかけるような使い方では、コアクロックの低さが出てしまっている。 AMD 690Gとの比較で見ると、ほとんどのテストでAMD 690Gが好結果を出している。F.E.A.R.では倍以上の性能を出しているほか、SM2.0テストしか実行できない3DMark06のトータルスコアも同等以上の結果を見せている点は注目に値する。ドライバによるアプリケーションへの最適化によって左右される場合もあるが、大局的に見てパフォーマンス面ではAMD 690Gの方が上位に位置付けられるとみていい。 続いてはWindows Aeroでの使用感をチェックするため、Windows Vista上での3Dパフォーマンスを見ておきたい。テストは3DMark06(グラフ10)とPCMark05のGraphics Test(表3)である。 多くの結果は、Windows XP上で見えた結果から大きく外れるものではない。ウィンドウの表示速度をテストするTransparent Windowsでも、AMD 690Gの方が良いスコアを出しているあたり、Windows Vista上でもAMD 690Gの方が快適な環境が得られる可能性が高い。 なお、3DMark06のXGAとSXGAのテスト結果は明らかに異常なスコアである。この原因ははっきりとはつかめていないが、ドライバに起因するものだと考えている。というのも、テスト中、3DMark06のテストが途中で中断することが何度かあったため、ドライバの安定性に疑問符が付くからである。 このドライバの不安定さは、Windows VistaよりもWindows XPで現れることが多かったのだが、特に解像度を切り替える時に描画が正常に行なわれずテストを中断するケースが頻発した。正式ドライバが公開されたとはいえ、やや不安の残るドライバといえる。
【表3】PCMark05 Graphics Test - Windows Vista
このほか、通常の使い方において極端にパフォーマンスが落ちることがないかをチェックするため、一般アプリケーションを利用したベンチマークもいくつか試している。PCMark05のCPUテスト(グラフ11、12)、「Sandra XI SP1」のCache&Memory Benchmark(グラフ13)、「SYSmark 2004 Second Edition」(グラフ14)、「CineBench 9.5」(グラフ15)、「動画エンコードテスト」(グラフ16)である。 横並びの結果が出て当然というテストであるが、実際ほぼ誤差の範囲といえる結果となった。GeForce 2製品はメモリアクセス速度がキャッシュメモリを含めて若干遅い傾向を見せるが、メモリアクセス性能の影響が大きいMPEG-2エンコードでGeForce 7050 PVが良好な結果を見せているなど、メモリアクセス性能が直接的にアプリケーション性能に影響を及ぼしてはおらず、それほど深く追及する必要はないポイントといえるだろう。 さて、最後に消費電力テストの結果である(グラフ17)。マザーボード自体が異なるが、いずれも似た構成のmicroATXマザーであり、参考程度にはなるかと思う。 その結果は、ワンチップ化の効果などもあってGeForce 6150から大幅な消費電力抑制に成功していることが分かる。AMD 690Gとは同等かやや高く、特にグラフィックコアへの負荷がかかる場面で、相対的に大きく消費電力が増すことが分かる。最大で10Wの差というのはマザーボードの違いと含めてもやや大きな差と言えるが、統合型チップセットの平均的な消費電力が低下する流れは歓迎できる。
●動画再生の機能面に主眼を置く統合型チップセット GeForce 7050 PVのパフォーマンスを見てくると、GeForce 6150から3Dパフォーマンスには大きく手を入れてきていないことが分かる。多少のパフォーマンスアップは見られるが、対抗製品となるAMD 690Gに対しては若干劣る傾向を見せている。消費電力でもAMD 690Gと拮抗しているレベルで決定打に欠ける印象は否めない。 むしろ、このAMD 690GとGeForce 7050 PVの登場は、これまでのグラフィック統合型チップセットとはちょっと違った土俵で争われたといえるだろう。これまでグラフィック統合型チップセットは、(ディスクリートビデオカードとは別のレベルではあったものの)3Dパフォーマンスとコストが主な注目点だった。 しかし、今回はHDMI出力などに代表されるように、動画再生関連の機能面が大きなポイントになっている。この点では、Intel G965/G33などにClear Video Technologyが実装されたのも似た傾向といえる。 モバイル分野ではすでに次の世代のGeForce 8やRadeon HD 2000シリーズをベースとしたチップセットが登場もしくはアナウンスされているほどで、デスクトップ向けの統合型チップセットも、遅ればせながら次の世代ではDirect X10対応へとコマを進めることになるだろう。 その時は、改めて3Dパフォーマンスも注目されることになるはずだが、モバイル向けとの進み具合の違いも見ても、デスクトップ向け統合型チップセットに対して停滞感を禁じ得ない。市場の変化もあってリソースの注力先が変わっているのだろうが、次のステップへの早急な移行に期待したい。 □関連記事 (2007年6月22日) [Text by 多和田新也]
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