AMD、低電圧版/超低電圧版/UMPC向けCPU“Bobcat”を2008年投入
会期:6月5日~9日 会場:Taipei World Trade Center Exhibition Hall 1/2/3 先週新しいOEMベンダとして東芝を獲得したAMDだが、さらに多くの日本のOEMベンダを獲得すべく、超小型ノートPCやUMPC向けの新しいプロセッサを計画していることを明らかにした。 AMD 上級副社長のアンリ・リチャード氏は、COMPUTEX TAIPEI期間中に筆者のインタビューに答え、「弊社は2008年に、Bobcatという開発コードネームの製品を、低電圧版、超低電圧版、さらにはUMPCなどの市場に投入する」と述べ、日本では事実上Intelの独占市場となっている低電圧版、超低電圧版、UMPC向けCPUの市場にAMDが参入することを明らかにした。 ●日本ではIntelの独占市場となっている小型ノートPC向けCPU市場 現在AMDが発売しているノートPC向けCPUのTurion 64 X2は、通常電圧版と呼ばれる、熱設計消費電力(ピーク時の消費電力、TDP)が35Wの製品で、おもに14~17型クラスの液晶を搭載したノートPC向けの製品となっている。これに対してIntelは、TDPが15Wの低電圧版、9W(デュアルコア)ないしは5.5W(シングルコア)の超低電圧版のラインナップを用意しており、12型(低電圧版)、10型以下(超低電圧版)の液晶を搭載した超小型PCの市場はIntelの独壇場となっている。 以前は、こうした超低電圧版の市場には、TransmetaがCrusoeやEfficeonで参入していたが、その後は新製品の投入が続かなかったことで採用するメーカーがいなくなり、現在はエマージング市場でVIA TechnologiesのC7が採用されていることを除けば、事実上Intelの独占市場となってしまっており、新規参入が待ち望まれていた。 ●コードネームBobcatで小型PCノート市場に参入するAMD
すでにAMDは開発コードネームでGriffin(グリフィン)と呼ばれるスクラッチからモバイル向けに開発したCPUの投入を2008年に行なうことを明らかにしているが、これは通常電圧版向けとなっており、低電圧版や超低電圧版、さらにはUMPCなどで利用されるさらに低消費電力なCPUなどはラインナップされていなかった。 しかし、リチャード氏によれば、AMDが2008年にBobcat(ボブキャット)と呼ばれる製品を低電圧版、超低電圧版、UMPCの市場に投入する計画を持っているという。「日本のOEMメーカーを中心により低消費電力の市場に対するニーズがあることは理解している。我々は2008年にBobcatを持ってこの市場に参入する。Bobcatは低電圧版、超低電圧版だけでなく、より低消費電力のセグメント、たとえばUMPCのような市場に対しても適用していく」(リチャード氏)との通り、15W、9W、5.5Wのような超小型のノートPCだけでなく、5W以下のUMPC向け市場にもSKUが用意されることを明らかにした。 これにより、AMDは通常電圧版向けをGriffin、低電圧版、超低電圧版、UMPCなどをBobcatでカバーすることが可能になる。なお、リチャード氏によれば、BobcatもGriffinと同じようにゼロからデザインされたモバイル専用プロセッサで、具体的な製品構成はまだ未公表ながら単体型プロセッサだけでなく、SoCのような製品展開もありうると示唆した。 ●AMDが参入することで、再び競争が起こり市場が活性化することに期待 AMDが小型ノートPC市場に参入するというニュースは、特に日本のOEMメーカーにとっては良いニュースと言えるのではないだろうか。今のところ、Intelだけが選択肢としてある状況では、Intelと交渉するカードすらなく、Intelに日本側の言い分を聞かせるためには好ましい状況ではなかったのは事実だ。実際、2000年にTransmetaがCrusoeを投入した後、Intelはそれを受けてすぐに超低電圧版をリリースしてきた。このことからも分かるように、競争が存在すればよりよい製品をIntelが出さざるを得なくなるわけで、日本のOEMメーカーにとってもメリットは小さくない。 そうした意味で、AMDがこの市場に参入することは、市場が活性化するという意味でエンドユーザーにとっても大きなメリットがあるといえ、今後の動向には期待したいところだ。 □COMPUTEX TAIPEIのホームページ(英文) (2007年6月7日) [Reported by 笠原一輝]
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