マイクロソフトの代表執行役兼COOに樋口泰行氏が就任
|
ダレン・ヒューストン社長兼CEO(左)と、樋口泰行COO(右) |
3月5日 発表
マイクロソフト株式会社は、3月5日付けで、樋口泰行氏が代表執行役兼COO(最高執行責任者)に就任したことを発表した。
樋口COOは、法人、企業、公共、機関向けビジネスおよび、マーケティング担当部門などのコマーシャル部門を統括し、ダレン・ヒューストン社長にレポートする。また、ヒューストン社長は、コンシューマ部門を統括することになり、現場での担当分野が、樋口氏とヒューストン氏の2人の代表執行役に2分されることになる。
ダレン・ヒューストン社長 |
一方、ダレン・ヒューストン社長は、「私が社長を退任するのではないかという噂もあったが、それは間違い。6カ月、9カ月、12カ月という期間で私が米国に帰るのかというと、そういう検討はしていない。だが、10年間、私が日本にいるのかというとそれはノーだ。今回の樋口氏のCOO就任は、将来の私の後任ということも含めて考えているもの」と、将来的には、日本法人のCEOを見据えた人事であることを明らかにした。
マイクロソフトのリリースでは、「今回の役員人事は、日本におけるマイクロソフトの経営、事業戦略を大きく変更するものではなく、2007年から進めているPlan-Jの一環としての人材登用」としており、「これまでの樋口氏の実績や経験が、日本企業やIT業界とのパートナーシップ、エグレグティブリレーションの効果を発揮し、現経営執行チームと一体化し、Plan-Jの事業を加速させることを目指す」としているが、その一歩先を見据えた人事といえる。
COOの役割については、樋口氏が、「私は、日本HP、ダイエーと続けてCOOを経験し、まるで万年COOのようだが、企業ごとに、その定義が異なる」としたものの、ダレン社長が、「ハーバードビジネスレビューでは、COOとは、CEOに次ぐ2番目のポジションであるとともに、会社のオペレーションのすべてを管理するのが役割としており、その両方にあたる」と樋口氏の役割を位置付けた。
樋口泰行氏は、'57年生まれ、兵庫県出身。'80年に大阪大学工学部電子工学科卒業後、同年、松下電器産業に入社。'91年にはハーバード大学経営大学院(MBA)を卒業後、92年にはボストンコンサルティンググループに入社。'94年にはアップルコンピュータに入社した。'97年には、コンパックコンピュータに入社。2002年の日本ヒューレット・パッカードとの合併にともない、日本ヒューレット・パッカードの執行役員インダストリースタンダードサーバ統括本部長に就任。2003年同社代表取締役社長就任。2005年には、ダイエー代表取締役社長に就任し、同社の再建に携わるが、2006年には社長を退任。2006年12月31日付けで、ダイエー顧問を退任していた。
ハーバードのMBA取得は、ダレン・ヒューストン社長と同じで、樋口氏は、これを「同じ言語が使える人物」と表現。「会社は、どういう職種か、どういう会社かというよりも、どんな人物と仕事をするかが重要であると感じていた。以前からダレンとは面識があったが、話をして見て、経営レベルでの考え方の高さを感じた。また、米国本社でスティーブ・バルマーCEOやケビン・ターナーCOOに会ってみて、その経営に対する考え方で感銘を受けた。成功すると慢心が出るものだが、マイクロソフトは、常に変化、進化に対する危機感を持った会社であり、経営はこうあるべきというものを実践している会社だと感じた。2月にマイクロソフトへの入社を決定した」と語る。
スターバックス出身のダレン・ヒューストン社長と、ダイエーで1年以上の経験を持つ樋口氏が、ツートップを担うことで、IT企業には珍しいユーザー企業経験者が横並びになるという構図も興味深い。
樋口泰行COO |
樋口氏自身も、「IT企業は、自分たちの都合で技術を押しつける傾向がある。顧客サイドを経験したことで、それぞれの産業や企業の戦略にあわせてITの導入を図る重要性を肌で感じた。私は、最初はエンジニアでスタートしたが、ハードメーカー、SI、顧客企業という多面的なこれまでの経験が、これからのマイクロソフトの発展に役に立てる」と語る。
続けて、「マイクロソフトの顔が、外から見にくいといわれるが、Plan-Jによって、企業として日本に根付き、顔が見える会社にしたい。親和性を増すことで、一緒に仕事をしたい、あるいは信頼のある会社である、また、ビジネスをすると一緒に成長できる会社であるという認識を日本のパートナーの方々に持っていただき、会社としての人間力を高めることに力を注ぎたい」とした。
余談になるが、今回会見が行なわれた場所は、樋口氏が、日本ヒューレット・パッカードの社長就任直後に、初めて報道関係者に向けに事業方針を発表したホテルと、奇しくも同じ。
「とくに思い入れがあるわけでもなく、偶然一緒になっただけ」と樋口氏は笑うが、社長として報道関係者の前に登場したのと同じ場所で、IT業界への復帰をお披露目したことは、まさに「戻ってきた」ということを示すものになったといえるだろう。
□マイクロソフトのホームページ
http://www.microsoft.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.microsoft.com/japan/presspass/detail.aspx?newsid=2982
□関連記事
【2005年4月14日】日本HP、樋口泰行社長が5月末で退任
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0414/hp.htm
【2003年4月8日】日本HP、高柳代表取締役社長が退任
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/0408/hp.htm
(2007年3月5日)
[Reported by 大河原克行]