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ISSCC 2007レポート

フラッシュの置き換えを狙う次世代不揮発性メモリ

会期:2月12日〜14日(現地時間)

会場:米国カリフォルニア州サンフランシスコ
   Marriott Hotel



 フラッシュメモリは、電源を切っても書き込んだデータが半永久的に残る。電源を入れれば、書き込んだデータを電気的に書き換えられる。そしてデータを高速に読み出せる。さらに最近は、記憶容量当たりの価格(MB単価)が急激に安くなった。この結果、フラッシュメモリは過去、最も普及した半導体不揮発性メモリとなっている。

 ただしフラッシュメモリには、いくつかの欠点がある。データの書き込みに時間がかかること、書き換え可能回数が1万回〜10万回程度に制限されることなどだ。DRAMやSRAMなどに比べると、不揮発性であることを除けば使いやすいとはあまり言えない。機器設計やメモリカード設計などの工夫でフラッシュメモリの欠点をエンドユーザーにはそれほど目立たないようにしていることと、不揮発性で安価という素晴らしい特徴があるために、フラッシュメモリを搭載した製品がどんどん普及しているのが現状だ。

 ただし半導体メモリベンダーからみると、フラッシュメモリの時代がいつまでも続くとは限らない。フラッシュメモリを超える不揮発性メモリが開発される可能性があるからだ。フラッシュメモリに比べて書き込みがはるかに速く、書き換え可能回数の制限があまりない次世代不揮発性メモリが開発されつつある。その代表が、磁気メモリのMRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)である。MRAM開発で最も先行している米Freescale Semiconductorが、2006年6月に4Mbit MRAMの量産を開始した。このチップについては過去の記事ですでに触れたので詳細は省くが、データの書き込み速度でMRAMはフラッシュメモリをはるかに上回っている。

●512Mbitと大容量の相変化メモリ

 フラッシュメモリの置き換えを狙うのはMRAMだけではない。ISSCC 2007では、次世代不揮発性メモリの研究開発成果がいくつか披露された。

 なかでも注目されたのが、韓国Samsung Electronicsの相変化メモリ(PRAM:Phase change Random Access Memory)である(講演番号26.1)。512Mbitと大きな容量のチップを試作してみせた。

 相変化メモリとは、特定の材料が結晶状態とアモルファス(非晶質)状態を行き来する性質を利用したメモリのことである。材料にはカルコゲナイド系合金のゲルマニウム・アンチモン・テルル(GST:GeSbTe)を使うことが多い。この材料(GST)に比較的大きな電流パルスを流して熱を発生させて急激に溶かす。すると冷えたときにアモルファス状態となる。電気的には高抵抗状態となる。一方、低めの電流パルスを一定時間流すと、こんどは熱によってGSTは結晶状態(多結晶状態)に変化する。電気的には低抵抗状態となる。この抵抗値の違いを2進データの値(1あるいは0)に対応させる。またこれらの状態は電源を切っても保存されるので、不揮発性メモリの記憶素子に利用できる。

 Samsung Electronicsも、GST合金を記憶素子に採用した相変化メモリを開発していた。今回のチップがこれまでの相変化メモリと大きく違うのは、メモリセルの選択スイッチにMOSトランジスタではなく、ダイオードを使ったことである。従来、相変化メモリのセルには、GST合金の記憶素子とMOSトランジスタを組み合わせることが普通だった。Samsungはダイオードを選択スイッチにすることで、メモリセルを大幅に小さくするとともに、データの書き換えに必要な電流値を下げた。

 試作した512Mbit相変化メモリ(PRAM)のチップ面積は91.5平方mmである。製造技術は90nmのCMOS、3層金属配線。メモリセルの面積は0.0467平方μmで、MOSトランジスタを使った場合の約3分の1(加工寸法当たりに換算済み)に小さくなっている。選択スイッチのダイオードは、シリコンの選択エピタキシャル成長技術を使って形成した。

 メモリチップの語構成は32Mワード×16bit。電源電圧は1.8V。読み出しアクセス時間はランダムアクセスが78ns、バーストサイクルが8ns(室温で測定)。書き込みに必要な電流パルスの期間は、アモルファス化するとき(リセット)が50〜100ns、結晶化するとき(セット)が500〜1000nsである。書き込みデータの転送速度は最大4.64MB/secと、まだそれほど高くはない。

 書き換えサイクルは10の5乗回まで確認したところ。データの保持時間は摂氏85度の温度下で10年以上ある。

512Mbit PRAMのチップ写真。ISSCCのTechnical Digestから引用(講演番号26.1) メモリセルの断面構造と特性。左はメモリセルの断面写真。中央はメモリセルの等価回路。右はメモリセルの電流電圧特性。ISSCCのTechnical Digestから引用(講演番号26.1)

●電子のスピンを利用する低消費磁気メモリ

 磁気メモリでは、新しいデータ書き込み技術によるチップの発表があった。日立製作所と東北大学が共同で、電子のスピンを利用した磁気メモリ(SPRAM:Spin-Transfer Torque Random Access Memory)を試作した(講演番号26.5)。

 Freescaleが製品化したチップを含めた現状のMRAMには、消費電流が比較的高いという問題がある。記憶素子である磁気トンネル接合(MTJ:Magnetic Tunnel Junction)に、外部から磁界を与える必要があるからだ。

 磁気トンネル接合(MTJ)は強磁性層/トンネル障壁層/強磁性層で構成された接合で、強磁性層の一方(固定層)は磁化の向きが固定されており、もう一方(自由層)は磁化の向きを自由に変えられる。MRAMでは磁気トンネル接合のごく近くに磁界発生用電流を流す配線層を形成し、自由層の磁化の向きを電流の方向によって固定層と同じにする、あるいは反転させることでデータを書き込んでいる。磁化方向がそろっている場合は電気抵抗が低く、磁化方向が反転している場合は電気抵抗が高くなるので、データの値(1あるいは0)が分かる。

 このようにMRAMでは外部磁界を使って磁化方向の反転を起こすので、原理的に効率が低くなり、大きめの電流を必要とする。Freescaleが2006年7月に製品化を発表した4Mbitチップでも、書き込み動作時の消費電流は155mAと低くない。

 これに対して電子スピンを利用するSPRAMは、MRAMと同じく、磁気トンネル接合(MTJ)を記憶素子とする。違うのはデータを書き込むときにはMTJを横切るように直接、電流を流すことである。すると電子スピンによる磁気トルクが発生する。電流量が一定の値を超えると、磁気トルクは自由層の磁化方向を反転させるようになる。こうしてデータを書き込む。データの値は、電流の向きによって決まる。データを読み出すときは、磁化方向が反転しないような低い値の電流を流して電気抵抗を測る。電気抵抗の違いをデータの1あるいは0に対応させる点はMRAMと変わらない。

 このようにSPRAMは、外部磁界を使わない。そこでMRAMに比べて書き込み電流を低くできるとともに、記憶密度を高められると期待されている。

 日立らの研究グループが試作したSPRAMは、2Mbitのメモリチップである。製造技術は0.2μmのCMOSとかなり緩い。配線構造は1層多結晶シリコン、4層金属配線。チップ寸法は5.32×2.50mm。メモリセルは選択MOSトランジスタとMTJで構成される。メモリセル寸法は1.6μm角。MTJのトンネル絶縁膜は厚さ1nmの酸化マグネシウム(MgO)、自由層は厚さ1nmのコバルト鉄層と厚さ2nmのニッケル鉄層である。

 書き込み電流はメモリセル当たり200μAであり、磁気メモリとしてはかなり低い。書き込みに必要な電流パルスの期間は最短85ns。読み出しに必要な電流パルスの期間は最短35ns。電源電圧は1.8V。

 書き換えサイクルは10の9乗回まで確認した(書き込み電流のパルス幅は100ns)。特に劣化は発生していないという。

 なお現在は研究開発の初期段階であり、メモリセル間の特性ばらつきがかなりあると講演直後の質疑応答で発表者はコメントしていた。

電子のスピンを利用した磁気メモリのチップ写真と主な仕様。ISSCCのTechnical Digestから引用(講演番号26.5) メモリセルの構造と特性。I右はメモリセルの断面構造写真。左はメモリセルの書き換えサイクル試験による電流抵抗特性の変化。SSCCのTechnical Digestから引用(講演番号26.5)

□ISSCCのホームページ(英文)
http://www.isscc.org/isscc/
□Samsung Electronicsのホームページ(英文)
http://www.samsung.com/
□PRAM発表のニュースリリース(英文)
http://www.samsung.com/PressCenter/PressRelease/PressRelease.asp?seq=20060911_0000286481
□日立製作所のホームページ
http://www.hitachi.co.jp/
□日立製作所のニュースリリース
http://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2007/02/0213.html
□関連記事
【2006年7月14日】Freescale、MRAMの量産開始〜究極の不揮発性メモリへの期待と現実
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0714/freescale.htm

(2007年2月16日)

[Reported by 福田昭]

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