東京大学、タブレットPC/ストリーミング配信を用いた教育環境をデモ
2月15日 公開 国立大学法人東京大学は15日、タブレットPCとストリーミング技術を利用した教育支援ソフトウェア「MEET Video Explorer」の試作品を公開。同ソフトを利用した模擬授業を公開した。 NHKアーカイブズの中から抜粋した教育向けビデオをWMV形式に変換した後、MPEG-7準拠の方式でキーワードメタデータを付加し、大学のサーバーに保存。ストリーミング配信はWindows Media Server、メタデータはSQL Serverで管理している。学生はクライアントソフトであるMEET Video Explorerを使用し、キーワードによるビデオの検索と視聴ができるとともに、ビデオから得られた情報をメモすることができる。ビデオ教材による学生の問題発見や問題解決を支援することを目的としている。 MEET Video Explorerは.NET Framework 3.0で作られ、Windows XPおよびVistaに対応。タブレットPCでの使用を前提にしており、メモ領域はペンによる文字入力や図形編集、ビデオクリップの挿入に対応している。また、ビデオのメタデータから、関連/対立するテーマのビデオを色分けで一覧表示する機能などを備えている。
15日に公開されたシステムはまだα版で、ビデオクリップは31番組から切り出した623クリップ、メモ機能は基本的な文字入力/図形描画機能しか備えていない。今後はビデオの本数を増やすとともにクライアントソフトの改善を行ない、2007年10月を目処に実用化を目指す。一方、同時期に図書館に蔵書されている本をデジタル化し、マーキングやキーワード整理を行なえるソフトウェア「MEET eJournal Plus」も今後開発し、2007年秋を目処に公開するという。
タブレットPCに関しては、レノボ・ジャパンが支援し、ThinkPad X60 Tabletを40台提供する。また、インフラに関しては、2007年5月に駒場キャンパスにあるアクティブラーニングスタジオで東大初のタブレットPC対応教室を開設。2008年2月には本郷キャンパスに新しくできる福武ホールにタブレットPC対応教室を3室開設するとしている。
●タブレットPCを活かした教育を展開
15日に都内で開かれた記者会見では、東京大学情報学環 助教授/MEETフェロー 山内祐平氏が同システムについて説明した。 新開発のシステムは、冒頭に「MEET」と名づけられていることから分かるように、マイクロソフト先進教育環境寄附研究部門(MEET:Microsoft chair of Educational Enviroment and Technology)のプロジェクトの一環として開発されたもの。マイクロソフトは各種技術支援も行なっているが、主な部分は東京大学が作成したという。 同氏は、「MEETはナレッジワーカーを育成するのが一番重要なミッションだが、それを促進する1つのキーワードとしてタブレットPCが存在する。タブレットPCにより、学生はデジタル化された書籍に線を引いたり、直感的に要点をまとめたりすることができ、高い学習効果が得られる。自分で課題を見つけてそれを解決し、新たな問題に向かっていく力が身につくだろう」と期待を語った。 また、今後の方向性としては、ビデオ本数の増加によるメタデータの付加作業が難しくなるが、メタデータの付加自体も学習の一環として取り入れ、Wikiなどの活用により付加させていくとした。 発表会の後、実際にタブレットPCとMEET Video Explorerを使用した模擬授業を公開した。学生たちはビデオクリップから得られた情報をもとにスライドを作成し、問題解決や新たな問題の発見などをまとめていた。 実際に使っている学生の声を聞いてみたが、「タブレットPCはペンで自由に文字が書き込めるため、一般的なノートPCでキーボードを打つより、要点を書くことや考えをまとめることに適している。もし家でも学校と同じ学習環境が実現するなら1台欲しい」という。その一方で、「映像や音声、文字の解像度は充分だが、ペン入力のレスポンスがやや悪く、改善の余地がある」、「片手に抱えて操作するには少し辛い重さだ」という意見も聞かれた。
□東京大学のホームページ (2007年2月15日) [Reported by ryu@impress.co.jp]
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