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Mac用仮想PCソフト「Parallels」RC2を試す




●安定度が増したRC2

 Intel Mac上で動作する仮想PC環境ソフトであるParallels Desktop for Macは、2006年夏にリリースされて話題となった。このParallels Desktop for Macが次のリリース(メジャーバージョンアップ)に向けて、現在開発作業中であることは、2006年の暮れにお伝えした通りだ。

 その後もβビルドのパブリックリリースが続いているのだが、最初のリリースの時と異なり、完成度は一進一退という感じ。パブリックリリースの間隔も、最初のリリースの際より開きがちで、開発が山場に差しかかっていることをうかがわせる。筆者の環境でも、2006年暮れに紹介したβ2(ビルド3094)は比較的順調に動いたものの、2007年になってリリースされたRC1(ビルド3120)は、あまり調子がよろしくなかった。

 だが、2月1日にリリースされたRC2は、完璧とはいかないまでも、かなり軌道が修正されたように思う。WindowsアプリケーションをMac OS Xのデスクトップ上で、あたかも単独動作させているように見せかけるコヒーレンスモードの動作がだいぶ安定してきたし、BootCampパーティションを仮想ディスクに見立てて、そこから仮想マシン内にWindowsをブートすることもきちんと動く。この2つは、筆者の環境ではRC1であまり安定して動作していなかったものだ。

 もう1つ大きく進歩したのがVT-xのサポートだ。新リリース版のBeta1からRC1まで、VT-xを有効にしているとWindows Vistaの起動中に停止する、という問題があった。Parallelsは解決を約束していたものの、RC1でも解消しなかったため、Windows VistaではVT-xをサポートしない仕様にするのかとも思っていた(一応、「リリース候補」なのである)。が、RC2ではVT-xを有効にしておいても、Windows Vistaが普通に起動するようになった。VT-xが利用できるようになったことで、重いWindows Vistaも少しは軽快に動くようになった気がする。

Parallels Desktop for MacのRC2版。このリリースでは、仮想マシンを作成した際、デスクトップにその仮想マシンを呼び出すショートカットが作成されるほか、仮想マシンを一覧メニューから選ぶこともできる RC2版で、ついにWindows VistaとVT-xサポートが両立するようになった コヒーレンスモードを使って、Windows Vista Ultimate付属のMahjong Titansを起動したところ。画面最下部にVistaのタスクバーがあるのが変な感じ。このマシンは上限の2GBまでメモリを搭載しているが、この状態で残り500MBを切っている。仮想化技術はハードウェアリソースを極端に消費する

 またRC2では、USB 2.0のサポートが改善し、Isochronousモードがサポートされ、iSightカメラも仮想環境で利用可能になったようだ(筆者は試していない)。USB 2.0のサポート全般が良くなったということだが、筆者の手元にあるPDA(iPAQ rx4240)を同期させることにはまだ成功していない。ただ、rx4240が採用するWindows Mobile 5.0はセキュリティ・フィーチャー・パックとやらが追加されている(Exchange Serverと直接同期するためだとも言われている)せいか、純正推奨環境(ネイティブ動作のWindowsとActive Sync)以外では、なかなか気むずかしい。Mac用の同期ソフトであるMissing Synchでも、Windows Mobile 2003 SEベースのiPAQではうまく行くのに、rx4240は失敗したりする。

 というわけでrx4240と同期するためにも、Parallelsがあるからといって、BootCamp無しではなかなか済まない。その筆者にとって、ParallelsがBootCampパーティションを仮想ディスクとして仮想マシンを立ち上げられるのは、次善の策となる。BootCampから立ち上げた仮想マシンは、そこで加えた変更がすべてBootCamp側にも反映される。ブックマークに追加したURLは共通だし、同じメールを2回POPしたり、Windows Updateのセキュリティパッチを2回当てる必要もない。最大の難点は、Office 2003のアクティベーションが毎回起動することだが、Windows上でOfficeを使わなければならないということでもない(Mac側にもOffice Macをインストールした)から、何とかしのげるだろうと思っている。

●キーボード周りにやや難あり

 致命的ではないにせよ、ややこしいのはキーボードの扱いだ。RC2が比較的順調に動いたのに気をよくして、筆者は普段の実験環境(Mac mini)に加えて、MacBookにもこのRC2をインストールしてみた。普段Mac miniには、無難な英語キーボード(海外で開発されているソフトウェアについては、常に英語キーボードが無難であるのが現実)を接続しているため、問題が少ないのだが、MacBookのキーボードは日本語キーボードなのである。

 ParallelsでBootCampパーティションを仮想ディスクにするには、当然のことながら、まず最初にBootCampをインストールして、そこで設定したパーティションにWindows XPと、BootCampに含まれるドライバディスクの内容をインストールする必要がある。初期のBootCampはMacBookの日本語キーボードをサポートしておらず不便だったが、最近のリリースではAppleキーボードサポートと呼ばれるプログラムがBootCampに添付されており、Macのカナ/かなキーがPCの106日本語キーボードの「ひらがな」に、同じく英数キーが「無変換」にそれぞれマップされるため、かなり便利になっている。

 問題はこのAppleキーボードサポートが、仮想環境ではロードされないため、利用できない点にある。仮想環境で日本語キーボードをサポートするサードパーティ製のユーティリティもあるのだが、微妙に好みと違っていたりして、なかなか踏ん切りがつかない。どうも筆者にとっては、英語キーボードの方が無難であることに変わりないようだ。

 そのほかの改良点としては、Parallels Desktop for Macを終了した時に、使っていたメモリがほぼキチンとシステムに返されるようになったことも挙げられる。逆に、BootCampパーティションから仮想マシンを立ち上げた場合、終了時にBootCampパーティションがMac OSの制御下に戻されるハズなのだが、時々返ってこないことがあったりする。これも、正式リリース時には改善されるものと期待したい。

 なお、現在公開されているプレリリース版のソフトウェアは、国内販売されている日本語版のアクティベーションキーでは、アクティベートできない。製品版では、この制限はなくなるらしいが、それまでは30日間の無償試用キーを使う必要がある。

 さて、現在のペースからいくと、この新しいParallels Desktop for Macは3月上旬あたりまでには正式リリースされるのではないかという気がしている。すでに、このアップデートは既存のユーザーに対し無償提供されることも明らかにされているが、これだけの機能追加をタダで行なうのだから感心する。米国ではMacのシェアが少しずつ上向いていることもあり、業績も好調なのだろうか。すでに非公式ではあるが、次のメジャーリリースではDirect3Dをサポートする予定だというから(Direct3Dのサポートは時間の問題に過ぎない、と言っている)頼もしい限りだ。と同時に、いったいどこまでこの新興のソフトウェアハウスが行き着けるのか、見届けたい気がしてならない。

□Parallelsのホームページ
http://www.parallels.com/
□製品情報
http://www.parallels.com/en/products/desktop/
□関連記事
【2006年12月27日】【元麻布】MacにWindowsを共存させるParallels最新版を試す
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1227/hot462.htm
【2006年12月6日】米Parallels、Mac OS上でXPを動作させる仮想化ソフトのβ版を公開
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/1206/parallels.htm
【2006年4月17日】【元麻布】Windowsが使えるもう1つのMac環境「Parallels Workstation」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0417/hot419.htm

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(2007年2月9日)

[Reported by 元麻布春男]


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