デルのSOHOおよび中小企業向けワークステーション「Precision」シリーズのエントリーモデルとして、「Precision 390」が登場した。CPUとしてIntelのCore 2 DuoまたはCore 2 Extreme QX6700が搭載可能となり、従来のエントリーモデルから大幅なパフォーマンス向上が実現されている。 ●コンシューマ向けCPUを採用し、優れたコストパフォーマンス性を実現 現在日本で非常に高いシェアを誇るデルのワークステーション。その中で、SOHOや中小企業をターゲットとするPrecisionシリーズは、優れたコストパフォーマンス性などで、人気となっているようだ。 そのPrecisionシリーズに、エントリーモデルとして位置付けられているにもかかわらず、クアッドコアCPUが搭載可能な新モデル、Precision 390が追加された。Intel 975X Expressチップセットを採用したマザーボードを搭載し、コンシューマ向けCPUであるCore 2 DuoやCore 2 Extremeを採用することによって、優れたコストパフォーマンスを実現し、幅広いユーザーに対応できるようになっている。 Precisionシリーズの上位モデルでは、CPUとしてIntelのサーバー/ワークステーション向けCPUであるXeonシリーズを採用しているが、エントリーモデルであるPrecision 390では、チップセットとしてIntel 975X Expressを搭載するマザーボードを搭載し、コンシューマ向けCPUであるCore 2 DuoやCore 2 Extremeを採用することによって、優れたコストパフォーマンス性を実現している。 コンシューマ向けCPUやチップセットを採用していると、信頼性に若干難があるのでは、と感じるかもしれない。とはいえ、上位モデルで採用されているプロセッサ・ナンバが5000番台のXeonは、コンシューマ向けCPUであるCore 2 DuoやCore 2 Extremeと同じCoreアーキテクチャを採用しており、仕様面での大きな違いはない。また、Precision 390はメインメモリにECC対応のDDR2 SDRAMが利用されているため、上位モデルと比較して信頼性が劣るということはないだろう。 ちなみに、搭載可能なCPUは、Core 2 Duoシリーズに加え、Core 2 Extreme QX6700およびCore 2 Quad Q6600など。Pentium 4 631もあるが、基本的にはCoreアーキテクチャのCPU搭載が基本になると考えていいだろう。 また、メインメモリは667MHz動作のECC対応PC2-5300 DDR2 SDRAMとなる。800MHz動作のPC2-6400 DDR2 SDRAMが採用されていないのは、Intel 975X Expressが正式にサポートしていないからだろう。信頼性重視のワークステーションとしては妥当な措置だ。 搭載されるマザーボードは、デルオリジナルのBTX仕様マザーボードだ。拡張スロットは、PCI Express x16×1、PCI Express x4×1、PCI Express x1×1に加え、PCI×3となっている。 メインメモリ用のDIMMスロットは4本用意されており、最大8GBまで搭載可能。マザーボード上のポート類としては、シリアルATAが4ポートとパラレルATAが1ポート、FDDポートが1ポートなど。その他のオンボード機能は、Gigabit Ethernetが1ポート(Broadcom CM5754)やHDサウンド機能(Sigmatel STAC9200)だけと、仕様面はかなりシンプルだ。
●OpenGLサポートのビデオカードやSASカードの搭載も可能 ビデオカードには、標準でOpenGLをサポートする製品が搭載される。今回試用したマシンには、GPUとしてQuadro NVS 285搭載のファンレスビデオカードが搭載されていたが、BTOメニューにはNVIDIA Quadro FX 4500やAMD FireGL V7200などのハイエンドGPUを搭載するビデオカードも用意されており、3D描画能力が重視されるグラフィックワークステーション用途にも十分対応可能となっている。 また、内蔵HDDは標準ではシリアルATA仕様のドライブとなっているが、オプションで用意されているSASカード(PCI Express x4、RAID 0/1対応)を搭載することによって、SASのHDDも利用可能となる。 さらに、HDDは標準でRAID構成として発注することも可能となっている。HDDにシリアルATA HDDを利用する場合には、最大4台のHDDを利用し、RAID 0/1/5/10の構成を実現可能。SASカード選択時は、RAID 0/1の構成を実現できる。搭載できるHDDは最大4台とされており、本格的なRAID環境を構築するにはやや心許ないものの、750GBのHDDを4台搭載することで最大3TBの容量を実現できるため、エントリーモデルとして考えると十分満足できるはずだ。 OSとしては、Windows XP Professional(SP2)に加え、Windows XP Professional x64 Edition、Red Hat Enterprise Linux WSが選択可能となっている。 ●縦置き/横置き双方に対応するBTXケースを採用 Precision 390では、拡張性が優れ、縦置き/横置きの双方に対応するBTX仕様のケースを採用している点も特徴の1つだ。見た目は一般的なミドルタワーケースとほぼ同じであるが、BTX仕様のため内部の構造はATX仕様のケースと若干異なっている。 例えば、ケース内部へのアクセスは本体右側面からとなっていたり、空冷用のケースファンが本体前面付近に配置されているといった点などだ。とはいえ、これらがメンテナンス性を犠牲にしているということは全くなく、本体右側面のサイドパネルが、本体上部に用意されているレバーを後方に引くことで簡単に開くようになっているなど、非常に扱いやすいケースといえる。 ケース内部を見ると、CPUに取り付けられたヒートシンクとケースファンを覆うように取り付けられているダクトや、拡張カードを固定するガイドなどが目につく。メインメモリを取り付けるDIMMスロットがマザーボード上部に配置され、電源ユニットとCPU部のダクト、各種ケーブルに囲まれる状態となっているため、メモリ増設時にやや窮屈な感じを受ける。 とはいえ、拡張カード固定用のガイドはワンタッチで外せるだけでなく、拡張カード自体もドライバレスでの固定に対応しており、簡単に取り付けや交換が可能。また、本体底面と一般的なケースとはやや異なる場所に取り付けられているHDD用の3.5インチシャドウベイは、HDDのコネクタ部分をケース開口部に向けて差し込むという仕様になっており、こちらも容易に交換や増設が可能となっている。 ケース内の空冷ファンは、CPU冷却用の12cm大型ファンと、拡張カード部分の冷却用の8cmファンが並んで設置されている。ケース前方にこの2つの空冷ファンが取り付けられていることで、騒音が気になるのでは、と思うかもしれない。確かに、電源投入時には双方のファンがフル回転することでやや大きい音がするものの、すぐにファンコントロール機能が働き回転数が落ち、それ以降はファンの騒音が気になることはなかった。実際にベンチマークテストを実行している状態でもファンがうるさいと感じることはなく、十分な静音性が実現されている。 ケースに用意されている拡張ベイは、5インチベイが2個、3.5インチベイが2個、3.5インチシャドウベイが標準2個、最大4個確保されている。5インチベイが若干少ない気もするが、ワークステーションで多数の5インチベイデバイスを取り付けることはあまり考えられないため、こちらも大きな問題とはならないだろう。 ところで、5インチベイおよび3.5インチベイ部分は、ドライブ類をケースに対して90度向きを変えて取り付けられる仕様となっている。これによって、マシンを縦置きのタワー型として使うだけでなく、横置きのデスクトップ型としても使うことが可能だ(デスクトップ型の場合には、3.5インチベイは1個のみ利用可能となる)。 今回利用した試用機では、横置き用のベゼルが付属していなかったため、ベイ部分がむき出しになってしまっているが、簡単に設置向きを変えることができた。設置形式を自由に選択できるという点は、さまざまな利用形態に柔軟に対応できるという意味で魅力が高い。
●パフォーマンスは申し分ない 今回取り上げたPrecision 390は、ワークステーションということもあり、いつもと同じベンチマークテストを行なうことはあまり意味がないかもしれないが、CPUやチップセットがコンシューマ向けモデルであるという点もあり、参考のためにベンチマークテストを行なってみた。 利用したソフトは、Futuremarkの「PCMark05」と「3DMark03」、「3DMark05」、「3DMark06」、スクウェア・エニックスが配布している「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」だ。試用機の仕様は、CPUがCore 2 Extreme QX6700、メインメモリはECC対応PC2-5300 DDR2 SDRAMを1GB(デュアルチャネル動作)、HDDは容量160GB、回転数7,200rpmのSeagate製シリアルATAドライブであるBarracuda 7200.7、ビデオカードにはNVIDIA Quadro NVS 285(128MB)が搭載され、OSはWindows XP Professional (SP2)であった。この構成を選んだ場合、1月18日現在の価格は275,880円となる。
【表】ベンチマーク結果
結果を見ると、CPUにCore 2 Extreme QX6700を搭載していることもあり、特にPCMark05はかなりの好結果となっている。グラフィックカードが、OpenGL向けとしてはローエンドに位置するQuadro NVS 285搭載カードということもあって、3D描画関連の結果はやや低くなっているものの、このマシンにとってDirectXベースの3D描画能力はあまり大きな意味があるとは言えず、もちろんより高性能なグラフィックカードも選択肢として用意されているため、今回の結果自体を気にする必要はないだろう。 Precision 390は、エントリー向けのワークステーションという位置付けではあるが、BTOメニューに用意されているパーツの選択によっては、ハイエンドクラスのワークステーションに匹敵するパフォーマンスも実現可能だ。また、価格も最小構成は109,980円からと安価に抑えられている点も大きな魅力だろう。 さらに、ワークステーションでは価格面やパフォーマンスだけでなく、充実したサポート体制も重要なポイントとなるが、Precision 390には3年間の当日出張修理サービスに加え24時間365日テクニカル電話サポートなどが用意されており安心だ。SOHO用途や中小企業でコストパフォーマンス性に優れたワークステーションを導入したいと考えているなら、お勧めしたいマシンである。 □デルのホームページ (2007年1月19日) [Reported by 平澤寿康]
【PC Watchホームページ】
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