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PS3、Wii、Xbox 360のコストを探る




●見えにくいゲーム機の真のコスト

 「PLAYSTATION 3(PS3)」「Wii」「Xbox 360」と、3台のゲーム機が出揃った。3社三様の戦略から、それぞれ異なる路線と設計思想を取った3機種。日本では、PS3が、製造上の問題から初期出荷の数量が限られたことや、価格戦略のふらつき、ローンチタイトルの不揃い、日本でのゲームコンソール市場の不調などの悪条件が重なり、PS3バッシングに近い状況となっている。

 なかでも、PS3の不安材料として挙げられているのは、高い製造コストだ。PS3が、現在の高価格でも膨れ上がってしまった製造コストでは逆ざやになっていることが不鮮明材料としてしばしば取り上げられる。予想を超えたコストが、ソニー・コンピューターエンタテインメント(SCEI)の戦略を束縛しているという見方だ。

 一方、Wiiについては、推定の製造コスト試算が低く、現在の価格でも採算が取れていると見られている。そのため、任天堂はWiiでは強気の価格設定をしていると、評されることが多い。もっと安くできるのではないかという見方だ。

 しかし、SCEIと任天堂、それにMicrosoftの3社の価格戦略や行動原理は、製造コストだけでは解明できない。その裏にある、“真のコスト”の構造を見ることが必要だ。それは(1)ゲーム機の開発コストと、(2)ライフサイクルを通じての製造コスト、そして(3)ゲーム機ビジネスでの利益によるコストの相殺だ。

 (1)の開発コストは、今世代マシンのカギだ。PS3のコストは膨れあがっているが、目立って増大しているのは問題にされている製造コストより、むしろ開発コストの方だ。クリティカルなのは、大きくなった開発コストをどうやって回収するかという点にある。一方、Wiiも製造コストは低く見えるが、その背後にある開発コストは増大しているはずだ。任天堂も強気というより、不安で価格を下げきれない要素もあると推定される。

 (2)製造コスト自体も、中長期的には下げられる。ゲーム機の場合、製造コストのかなりの部分は半導体のスケーリングで低減できるからだ。SCEIはこの手法でゲーム機コストを下げることに経験を積んでおり、Microsoftも今回は同じ手法を採った。それに対して、任天堂はそうした半導体技術による低コストを、それほど考慮していないように見える。下に各ゲーム機の将来の推定ブロック図を示すが、PS3とXbox 360は製造コストを大きく下げられるが、Wiiはそうではない。そのため、PS3/Xbox 360とWiiでは、製造コストの低減のカーブが異なる。

PS3のブロック図(左)と将来の予想図
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Xbox 360のブロック図(左)と将来の予想図
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Wiiのブロック図(左)と将来の予想図
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 (3)ゲーム機ビジネスでは、自社ソフトウェア販売やロイヤリティ収入といった付帯ビジネスが期待できる。1台につきソフトが一定数売れれば、自社ソフトの売上げと、ロイヤリティやディスクプレスサービスなどの売上げでコストを相殺できる。今世代機ではこの部分もポイントで、ネットワークという要素が加わったことで、各社ともパッケージ販売以外のオンラインサービスやコンテンツでの収入を期待している。

 つまり、ゲーム機の場合、製造コストは中長期的にはドラマティックに下げることができる。しかし、膨れあがってた開発コストを希釈するためにハードを普及させて出荷台数を増やす必要がある。その一方で、1台当たりのマシンから上がる付帯ビジネスの売上げは、従来より期待できる。こうした要素があるため、SCEIは高い製造コストを許容しているし、その一方で、任天堂は価格引き下げに慎重になっている。ゲーム機ベンダーの行動原理を読み解くには、これらの要素を加味する必要がある。

●開発コストを希釈するために市場を占有する必要が

 ゲーム機では開発コストが大きなウエイトを占めるため、ゲーム機ベンダーはアグレッシブな価格戦略を取らざるをえない。開発コストを回収するためには、ゲーム機の出荷台数を増やさなくてはならないからだ。マシン1台当たりの開発コストは出荷台数で希釈される。そのため、1億台売れるマシンと1,000万台しか売れないマシンでは、1台あたりの開発コストは10倍も違ってしまう。

 逆を言えば、1億台売れると計算して、膨大な開発費をかけることもできる。「ゲーム機ベンダーは、何台売れるからと皮算用して開発コストをどんどん上乗せするようになっている」とあるゲーム機業界関係者は、最近の傾向を語る。つまり、普及することを前提に膨大な開発コストをかける、賭け金をつり上げたバクチになりつつあるわけだ。

 また、SCEIの場合は、自社Fab(工場)または合弁Fabでのチップ製造をメインに考えているため、Fabに対する投資の減価償却も考慮しなければならない。ゲーム機のチップでFabの減価償却を行ない、その後は、償却の終わったFabで他のチップ製造を行なって利益を稼ぐことも想定している。ゲーム機が順調に大量出荷され、半導体Fabがフル回転し続けなければ、このプランも崩れてしまう。

 こうした事情から、ゲーム機ベンダーは、軌道に乗るまでは低価格でゲーム機を販売し、普及を加速する必要がある。そこには、ゲーム機市場独特のメカニズムが働く。ゲーム機の場合、特定の機種がいったん市場の主流を占めてしまうと、ゲームパブリッシャはそのゲーム機向けにより多くのタイトルを投入するようになる。すると、ハードが普及する→タイトルが揃う→ハードの普及が加速する、というポジティブスパイラルが回り始める。これに失敗したマシンは、主流マシンの数分の1の市場しか取れず、沈んでしまう。勝者が一人勝ちする(Winner-takes-all)構図だ。

 そして、ゲーム機では、とくにローンチ時に“垂直立ち上げ”で勢いをつける必要がある。ローンチで一気に台数を出して、消費者に新ゲーム機の波が来たことを印象づけないと、消費者が新ハードに移行する波が形成されないからだ。つまり、開発コストの希釈を考えると、製造コストを割ってでも本体を低価格につけて、ハードの普及の勢いをつけた方がいいことになる。

 日本でのPS3が明らかにまずいのはこの点だ。出荷台数が少ないだけでなく、「PS3がうまく行かないのでは」的な論調が強くなってきている。すると、消費者がPS3に疑問符を持つようになり、普及が順調に行かなくなる可能性がある。従来は、新世代ゲーム機が登場すると、ハードを活かしたタイトルも登場し、それが原動力となりゲーム機の普及を促した。しかし、今回は日本ではタイトルが揃わず、米国では共通プラットフォーム(マルチ)タイトルが主流で、PS3の優位性を打ち出しにくい状況にある。Xbox 360という強力なライバルが1年先行していることも、日本以外の市場では大きく影響する。

 PS3にとっての救いは、BDを初めとするメディアプレーヤーとして使える点だ。PS2もDVDプレーヤーとして使えることが普及の1つのポイントだった。そのため、SCEJは、まず、メディアプレーヤーであることを押し出して、PS3の勢いを保とうとすると推測される。2007年春頃までは、メディアプレーヤーとしての訴求を強めるだろう。ただし、メディアプレーヤーとして普及して行った場合には、ゲーム機として立ち上がるかどうかは未知数となる。

 ちなみに、PS3のCPU「Cell Broadband Engine(Cell B.E.)」について言えば、PS3だけでなく、コンピュータ用途やデジタル家電に使うことで開発費をより広く償却することを想定している。東芝は、現在、家電向けの廉価版Cellを計画中で、「SPE(Synergistic Processor Element)」数を4個に半減させるほか、メインCPUコアの「PPE(Power Processor Element)」を取り去ることも検討しているという。つまり、CellのSPEを純粋にメディアプロセッサとして使おうというアイデアだ。

●比較にならないほど大きくなったソフトウェア開発コスト

 ゲーム機の開発コスト自体も変化している。開発コストでは、従来から大きかったハードウェアの開発コストだけでなく、ソフトウェア開発のコストが膨張している。「昔はゲーム機の開発では、カスタムチップを作るコストが非常に大きかった。それと、量産立ち上げのための設備投資、これが開発のコストだったんです。けれど、今回は、ソフトの開発コストの割合いがすごく上昇しました」と任天堂の岩田聡氏(代表取締役社長)は語る。

 しかも、ソフトウェア面のコスト負担はプラットフォームがローンチした後も続いている。本体側のソフトウェア層のメインテナンスや拡張のコスト、サーバー側のサービス構築と維持のためのコスト、よりリッチな開発環境やライブラリの開発とサポートのためのコスト。これらが、ゲーム機ベンダーに重くのしかかる。

 例えば、PS3では発売後も毎週システムソフトウェアのアップデートを行ない、システムのソフトウェア面の改良を続けている。Wiiではローンチ後も、Wiiチャンネルでのネットワーク系のコンテンツサービスの開発を続けている。Microsoftも同様だ。

 ゲーム機本体のシステムソフト自体が、前世代と比べると比較にならないほどリッチになっている。各社とも、より複雑なOS、ネットワークスタック、各種ライブラリ、デバイスドライバ、さらに非ゲームアプリケーション類まで開発しなければならない。例えば、SCEIは膨大な作業量を必要とするWebブラウザを、自社で開発している。Xbox 360はWebブラウザは表には搭載していないが、実際にはWebブラウザのコンポーネントをXbox 360のOSの中で使っている。SCEIも似たような融合を考え、自社開発したのかもしれない。

 ネットワークサービスが加わったことで、サーバー側のシステムの構築と維持も必要になっている。各社とも、ネットワークサービスによって、パッケージに加えて、さらに多くの売上げを得ようと考えており、そのためにサーバーへの投資が必要になる。

 Microsoftの参入によってゲーム機の開発環境は底上げされた。また、ハードの複雑度が激増したことで、より充実した開発環境が必要になって来ている。そのため、各社とも、開発環境やミドルウエアの拡充を行なわなくてはならない。Microsoftのようなソフトウェア開発の土台がない、SCEIと任天堂にとって、これは大きな負担になっているはずだ。

従来のゲーム機OS(上)と現行ゲーム機のOS
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●難しくなる今世代ゲーム機での互換性維持

 今世代機では、ディスクソフトとの互換性の維持も非常に重荷となる。従来のゲーム機は、ハード側にはローダー程度のソフトウェアしか持っていなかった。OSやライブラリやドライバのほとんどはゲームディスク側にあった。DOS時代のPCソフトと同じ方式だ。

 そのため、ゲームプログラムとOS/ライブラリとの間の互換性は、ディスク上だけで確保すればよかった。ハード側は、例えリビジョンが変わっても完全に同じものとして扱えるという前提なので、検証は非常に容易だった。

 ところが、今世代ではシステム側にOSやライブラリ、デバイスドライバのある程度の部分が載っている。ソフトウェアモデルが、前世代ゲーム機とは根本から異なっている。このモデルは、SCEIはPSPから採用している。そのため、PSP以降のゲーム機では、システム側のソフトウェアモジュールとディスク側のソフトウェアモジュールの間の整合性を維持する必要がある。

 困難はここにある。まず、システム側のソフトウェアは、頻繁にアップデイトを重ねている。新しいゲームタイトルが本体側ソフトウェアの変更を必要とする場合には、ディスクやネットワークでアップデータを提供すればいい。しかし、アップデートしたシステム側ソフトでも、過去のゲームディスク上のソフトウェアに対しての後方互換は維持しなければならない。この検証は、ゲームタイトルやアプリケーションの数が増えるほど膨大な作業になる。PCほどではないものの、PCと同じ互換性の苦しみをゲーム機も抱え始めたわけだ。

 しかし、利点も大きい。ソフトウェア層で互換を維持するため、ハードウェア側の変更が容易になるからだ。従来のゲーム機のように、完全に100%のハードウェア互換を維持する必要がなく、デバイス自体を拡張して行くことができる。ただし、それによって、ゲームタイトル種×システムソフトバリエーション×ハードウェアバリエーションの検証が必要となる。

 こうして見ると、ゲーム機のコストに関わる部分で、ソフトウェア絡みの要素が膨れあがっていることがよくわかる。問題なのは、こうしたソフトウェアやサービスの開発・維持・検証コストの総量がどれだけになるのか、見積もることが非常に難しい点だ。Microsoftはソフトウェア会社でありこうしたケースの経験が豊富だが、SCEIと任天堂にとってはハードルが高いはずだ。こうした背景を考えると、任天堂がWiiの価格設定で慎重になっている理由はよくわかる。WiiはニンテンドーDSよりも、はるかにソフトウェアやサービスの開発コストがかかるプラットフォームだからだ。

●半導体のスケーリングで製造コストを下げる

 膨れあがる開発やメインテナンスコストに対して、製造コスト自体は下がって行く。そのため、ゲーム機ベンダーは、スタート時の高コストさえ耐えれば、後ろに行くに従ってコスト面では余裕が出てくる。Xbox 360とPS3の設計を見ると、半導体のスケーリングを利用してコスト削減を図ろうという意図がよく見える。

 SCEIは、初代PlayStationの時から、半導体プロセスの進歩を利用して、コスト削減をうまく行ってきた。ゲーム機は世代交代まで5年サイクルで進んでいる。今後は、5年もハードが完全に同じスペックで維持されないと推定されるが、ゲームのためのスペックは数年に渡って一定に据え置かれるだろう。5年間では、プロセス技術のノードは2回微細化する。現在、90nmプロセスで製造している3社のゲーム機は、2007年には65nm、2009年頃には45nmプロセスで製造することが可能だ。

 2世代微細化すると、同じ規模のチップのダイサイズ(半導体本体の面積)は1/4になる。ダイが1/4になると、チップの歩留まりも劇的に上がるため、製造コストは数分の1に下がる。また、電力消費や発熱も下がるため、電源や冷却モジュールを簡素化し、EMI対策などもよりフレキシブルにできるようになる。そのため、製造コストは劇的に下がる。SCEIとMicrosoftは、そのために2世代シュリンクすることを前提として、比較的大きなサイズのチップでスタートしている。

 例えば、PS3のCPU「Cell Broadband Engine(Cell B.E.)」は約228平方mm、GPU「RSX(Reality Synthesizer)」は約260平方mm弱。Xbox 360のCPUは168平方mm、GPU「Xenos」は約170平方mmのGPUダイと約70平方mmのeDRAMダイの組み合わせとなっている。Cellを例に取ると、同機能のチップを45nmプロセスで製造するなら、ダイは60平方mm程度にまで縮小すると推定される。チップコストは1/3〜1/4に下がるはずだ。ダイの大きさを見ると、プロセス技術の微細化を見込んでチップを設計したことがよくわかる。

 ただし、半導体チップは微細化して小さくなっても、チップ個数が同じだと、チップパッケージや基板などのコストが下げにくい。そこで、SCEIとMicrosoftは、それぞれチップ個数を減らすことができる仕掛けも、あらかじめ設計の中に持ち込んでいる。

●PS3ではDRAM個数を減らして低コスト化を

発売時のPS3メインボード

 PS3の場合は、まずDRAM個数を減らすと推測される。微細化するとDRAMチップの容量は大きくなって行き、同じ製造コストで2倍の容量のチップにできる。PS3もXbox 360も、DRAMには現在最もビット当たりのコストが安い512Mbitチップを使っている。これを、将来、微細化に従って1Gbit DRAMチップに置き換えれば、DRAMチップ個数を半分にできる。

 DRAM個数を減らす場合に難しいのは、メモリ帯域とメモリアクセス粒度を同程度に維持しながら個数を減らすことだ。

 PS3は512MbitのDRAMチップを8個搭載している。うち4個はRambusのXDR DRAMで、Cellに64bitのインターフェイスで直結されている。このXDR DRAM 4個は、将来的にXDR2 DRAM 2個に置き換えられると推測される。XDR2 DRAMは、現在のXDR DRAMの転送レート3.2Gbpsの2倍、6.4Gbpsの転送レートを実現する。そのため、1Gbitチップに置き換えてインターフェイス幅を半分にしても同帯域を維持できる。SCEIの久夛良木健氏(SCEI グループCEO兼代表取締役会長)は2005年のインタビューで「Rambusのメモリチップを、4個から2個にするのは簡単だ。メモリ帯域を変えずにできる。なぜかというと、Rambusと一緒に(XDR DRAMの開発を)やっているから。そうしたことも全部見据えて(XDR DRAMを)開発している」と語っている。XDR2 DRAMへの移行は、まず間違いないだろう。

 PS3のGPU側のメモリは4個のGDDR3チップがRSXに接続されている。今回、PS3ではRSXとGDDR3チップを同じサブストレート上に載せた。このアプローチを続けるなら、DRAMチップとGPU間をカスタムインターフェイスで結ぶことで、より高速化し、帯域を維持しながらDRAMチップ個数を減らすことができる。カスタム化は、少数製造だと高くつくが、PS3が年間数1,000万台ずつ製造されるなら、カスタムDRAMを使ってもコストが見合うようになる。久夛良木氏は「ボリュームが少ないと難しいが、年間2,000万のボリュームがあれば、解決策はいくらでもある。例えば、(ロジックチップとDRAMチップをワンパッケージに納める)SIP(System-in-Package)にすることも考えられる」と語っている。

 この他、現在のPS3は、PS2との後方互換性のために、PS2メインチップの「EE(Emotion Engine)/GS(Graphics Synthesizer)」チップと128Mbit RDRAM 2個を搭載している。もし、SCEIがPS2互換をソフトウェアエミュレータで取ることができるようになれば、このコストも削減できることになる。ただし、ソフトウェアで高い互換性を実現することは、ゲーム機の場合かなりハードルが高い。

●GPU回りのコストを大きく削減できるXbox 360

 Microsoftは、初代Xboxでは、外部のチップベンダーが製造したチップを購入していた。そのため、半導体プロセスの微細化によるコスト削減の利点を享受することができず、高コストに苦しんだ。その経験から、Xbox 360ではチップベンダーに設計を依頼し、設計を買い上げて、ファウンドリでチップを製造させる方式を取っている。そのため、半導体プロセス技術の進歩に応じて、チップを統合化してコストダウンを図ることが容易となっている。

発売時のXbox 360メインボード

 Xbox 360のコスト削減は、主にGPU回りで実現する。

 また、現在のGPU Xenosは、GPUコアとeDRAM(混載DRAM)チップを混載したマルチダイモジュールとなっている。GPUコアがTSMC製で、eDRAMがNEC。eDRAM側に、いわゆるROP(Rasterizing OPeration)ユニットが搭載されており、256GB/secの超広帯域のオンダイインターフェイスでeDRAMセルに接続されている。Xbox 360のGPUの高性能の秘密はここにあるが、現状ではマルチチップモジュールとなっているためコスト高だ。

 しかし、将来的にはGPUコアとeDRAMをワンチップ化することで、ダイ個数を減らして低コスト化を図ることができる。現在のXenosを見ると、I/O回りの設計上の都合からも、65nmプロセスではeDRAMを統合しなければならないはずだ。GPUコアのダイ(半導体本体)の4辺のうち、3辺がeDRAMとの高速インターフェイスで占められているからだ。GPUコアのサイズが微細化によって小さくなると、eDRAMとの配線は極めて難しくなってしまう。

 GPUコアとeDRAMの統合には、コスト削減だけでない利点がある。eDRAMとGPUコアの間のインターフェイスは高速なので、インターフェイス自体の消費電力も高いと見られる。eDRAMチップの統合によって、このインターフェイスもオンダイになるため、低消費電力化も実現できる。Xbox 360は今後、消費電力も低減させて行くだろう。

 Xbox 360は、GPUであるXenosに、8個のDDR3 DRAMチップが接続されている。しかし、メモリインターフェイス幅は128bitなので、x32のGDDR3で4個構成が可能だ。そのため、将来、DRAMの製造プロセスが微細化して1Gbit品が低コストになった時点で、1Gbit GDDRチップに載せ替えることができる。すると、メモリ帯域を維持したままで、DRAMチップ個数は半分の4個になりコスト削減が可能になる。

●将来的にコストを下げにくいWiiアーキテクチャ

 PS3とXbox 360は、どちらも最初はシリコンコストがある程度高くついている。しかし、プロセスの微細化に従って、ある程度コストダウンが可能な仕組みは持っている。そのため、メカ部分であるディスクドライブのコストを除けば、ハードウェアコストはプロセスの微細化とともに劇的に下げることが可能だ。

 両社とも戦略は共通していると見られる。最初は高コストだが比較的少ない生産量でスタートし、出荷数がピークに達する頃には、微細化と統合化で大幅に製造コストを下げ、ハードで出血しないように抑える。大量生産により下がったコストで、価格も引き下げるのがゲーム機の通例だ。

 PS3は、価格をある程度維持するコンピュータ型の価格モデルを考えていた様子がある。しかし、現在のSCEIがそうした価格モデルを取るとは考えにくい。おそらく、従来ゲーム機と同様に、世代とともにコストダウンを図り、価格も下げて行くだろう。

発売時のWiiメインボード

 SCEIとMicrosoftとは対照的なのが任天堂だ。任天堂は、半導体のスケーリングに応じてチップ規模を大きくするというテクノロジロードマップから外れた形でWiiを設計した。そのため、Wiiでは半導体技術の進歩で、コストを劇的に下げる要素は少ない。例えば、CPUである「Broadway(ブロードウェイ)」のダイは約19平方mmで、これ以上縮小しようがない。

 また、外付けのDRAMチップもGDDR3が1個に、1T-SRAMチップが1個とミニマムで減らしようがない。DRAM数が他の2機種と比べて異例に少ないのは、WiiがHD解像度をサポートしていないからだ。今世代では、HD解像度のサポートがハードの肥大化の最大の原因となっている。

 Wiiで統合化ができるのは、サブストレート上に配している外付けの1T-SRAMメモリだろう。1T-SRAMをGPU内部に取り込むことで1チップを減らすことができる。ただし、この1T-SRAMは、容量がそこそこ大きいため、統合化はやや難しそうだ。

 Wiiではもともとチップ個数が少なくチップが小さいため、製造コストの下げ幅は狭いわけだ。そのため、Xbox 360やPS3とのコスト差は、時間とともに狭くなって行くだろう。もちろん、Wiiがもっとも低コストで低価格に留まるだろうが、差は今ほど大きくは保てない。そのため、Xbox 360やPS3が大幅に価格を下げてきても、それと同じ比率でWiiの価格を下げることはできないと推定される。

 さらにややこしいのは、ここにゲーム機ビジネスの特殊なモデルが絡むことだ。ただし、ゲーム機のビジネスモデルは明らかに転換期を迎えており、パッケージ以外のコンテンツやサービスでの収入モデルへと向かいつつある。3社とも、その方法はまだ模索段階で、どう展開するのかが見えにくい状況にある。

 いずれにせよ明快なのは、ゲーム機のコストは製造コスト積み上げでは見えにくい点。見えない部分の開発コストや、今後のコスト削減モデルも視野に入れないと、ゲーム機ベンダーの行動原理がわからない。だが、今世代のゲーム機が、従来型のモデルの通用しにくい状況に入りつつあるのも確かだ。最も戸惑っているのは、当のゲーム機ベンダーかもしれない。

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【11月29日】任天堂Wii米国版ハードウェアレポート【速報版】
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【11月11日】PLAYSTATION 3ハードウェアレポート【速報編】
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【2005年12月10日】Xbox 360ハードウェアレポート【本体編】
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1210/xbox360.htm

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(2006年12月27日)

[Reported by 後藤 弘茂(Hiroshige Goto)]


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