富士通は、FMVシリーズの購入相談窓口の様子を公開した。 同窓口は、個人のPC購入希望者に対して、どんな用途に使いたいか、あるいはどんな場所で使いたいのかといった要望をもとにして、最適なPCを紹介することを目的とした電話による相談窓口。説明を聞いたユーザーが、PCを購入したいという場合には、近くに購入できる販売店があることを説明したり、同社の直販サイトである「WEB MART」での購入を紹介したりといったことも行なっている。 また、同窓口が設置されているセンター内には、法人向けのインバウンドテレセールスおよびアウトバウンドテレセールスのチームもあり、約70人のオペレータが、相談および営業活動を行なっている。 同窓口があるコンタクトセンターをレポートしよう。 ●2004年からサービスを開始 富士通が購入相談窓口を設置したのは、2004年4月のことだ。 もともと2000年から、WEB MART向けの電話対応販売窓口を設置していたが、問い合わせの中に、購入前の相談案件が多いことから、こうした相談に対応する専用窓口として、「FMVシリーズ購入相談窓口」を新たに設置したのが始まりだ。 当初は5人程度でスタートした同窓口だったが、徐々に規模を拡大し、現在では、法人向けの相談/営業チームを含めて、約70人の体制となっている。
「店舗に出向いて話を聞くのがちょっとはずかしい、あるいは近くに店舗がないといったPC購入希望者が、気軽に問い合わせられる窓口として、店舗を補完する役割を担っている。また、PCに詳しい友人が近くにいない、あるいはインターネットで検索して自力で調べるのが面倒という人に対しても、メーカーの専門員に電話で相談できるという安心感を提供することができる。とくに、女性や高齢者の利用が多い」と、富士通 パーソナルビジネス本部 Web販売統括部 プロジェクト課長 西村知樹氏は、同相談窓口の意義を語る。 WEB MARTでの購入者は30歳以下が半数以上を占めるが、購入相談窓口を通じた購入者は、50歳以上が半数。さらに、女性の比率も26%となっている。この数字からも富士通の狙い通りの成果が出ているといえよう。 ●担当制度などの独自の施策を展開 同窓口の特徴は、大きく3点ある。 1つは、担当制度を設けている点だ。 最初に電話で対応した担当者が、再度、対応することから、1回目の電話で希望の商品が見つからなかった場合や、購入したいPCがその場では決定したなかった場合にも、同じ担当者と話をすることが可能になる。そのため、問い合わせのやりとりに継続性が加わり、利用者も最初から説明するといった手間がなくなる。 また、担当者が不在や、他の電話に出ていて対応できなかった場合にも、蓄積された対応履歴をもとに、別のオペレータでも適切な電話対応が可能になるという。「365日、技術スキルを持った担当者が対応できる体制を整えている」という。 2つめは、担当者が、利用者に代わってお買得商品などを随時チェックし、希望の商品がお買得商品として見つかった場合などに直接連絡をするという対応を行なっている点だ。 WEB MARTでのキャンペーンなど一般に公開されている情報のほか、数が少ないためWebには掲載されない再生品やアウトレット商品などの情報も提供されることがあるという。 「WEB MARTのサイトでも、再生品などの情報を提供しているが、1台、2台といった少量の再生品などに関しては、Webには掲載しにくい。そうした商品が、ご要望のものと合致していた場合には、直接、お電話させていただくサービスもある。購入相談窓口を利用していただくことで、思わぬ掘り出し物を見つけられる可能性もある」(西村課長)という。 そして、3つめの特徴は、応答率95%以上という電話のつながりやすさだ。100回の電話に対して、95回はすぐにつながるという高い応答率は、コンタクトセンターとしては異例ともいえる高率だ。 もちろん、購入後のサポート対応窓口や、技術相談窓口といった、多くの電話が集中するコンタクトセンターと同じ水準で考えることはできないのも確かだが、これだけの高い応答率で電話がつながるというのは、利用者にとってはありがたい。 「お客様が思い立った時にお電話をいただければ、すぐに相談できる。つながらないというイライラを感じさせることがない」と、言い切るのも納得ができる。 1人あたりの平均対応時間は、一般的なサポートが、15分程度と言われれるのに対して、やや長めの30分程度となっているが、それにも関わらず、これだけの応答率を実現しているのは、対応者や回線を潤沢に用意している同窓口ならではの特徴だといえよう。
●3つのチームで構成 相談購入窓口は、大きく3つのチームで構成されている。 1つは、個人向けのインバウンドチームである。 富士通のカタログや広告などに掲載されている0120-719-242に連絡すれば、誰でも無料で相談を受けることが可能である。このフリーダイヤルの番号は、「なっとく富士通(719-242)」と記憶すればいい。 オペレーターは、机の上に2台のPCを設置。右側のPCでは、購入履歴や相談履歴を元にしたログデータを表示し、適切な対応を行なう。次回問い合わせがあった時の申し送り事項などもここに記載される。このPCは外部には接続されず、個人情報が流出しないように管理されている。 左側のPCは外部のネットワークと接続している。問い合わせをしてきた人に代わって、WEB MARTから購入申し込みの手続きをするといった利用や、要求に合致したPCを見つけだすためにも利用される。
さらに、同チームのメンバーは、購入後の簡単な操作相談や技術相談などにも対応することできる技術スキルを身につけている。 2つめは、法人向けのインバウンドセールスチームだ。 法人需要で、購入相談があった場合などに対応するチームである。購入相談とともに、企業における同一仕様PCを複数台数で一括導入するといった相談などにも対応する。 そして、3つめが法人向けアウトバウンドセールスチームだ。このチームは、一度問い合わせがあった法人ユーザーに対して、富士通側から電話をし、その後の増設や買い換えなどの提案を行なうチーム。今回訪問したコンタクトセンター以外にも組織が分散しており、同チームを通じた法人向け商談実績が増加しているという。 同コンタクトセンターにおけるオペレーターの人数構成は、それぞれ約3分の1ずつ。また、男性の比率が約7割というのも、同窓口の大きな特徴の1つだといえよう。 さらにセンター内を見渡すと、パーティションが低く、隣のオペレーターとも仕切りがないというコンタクトセンターとしては珍しい構造を採用している。 「アフターサポートでは、クレーム処理などもあるが、購入相談では、むしろ隣同士のオペレーターが連携して対応することが効果的。そうした連携効果を狙って、パーティションをあえて低くしている」(FMVシリーズ購入相談窓口 木村健一郎リーダー)という。
●販売窓口としての役割も担う 富士通購入相談窓口の最大の役割は、購入前の相談だが、最近では、購入に直結する窓口としての役割も担っている。 「外部コンサルタントの指導もあり、2005年度からは、購入に関しても、一言お勧めするようにしている」と西村課長は語る。それまでは購入に関しては、利用者が求めない限り、商品を勧めるところまでは行わなかったが、やりとりを通じて、一言購入に関しても提案するように変更した。 オペレーター1人あたりの1日の対応件数は約20~30件。そのうち、約半分が購入に関する相談(残りは技術相談や操作に関する相談)であり、さらに、そのうち約2割が購入につながっているという。 「2005年前半までは、購入につながる比率は5%以下に留まっていたのに比べると、実売に直結するケースが明らかに増加している」という。 今後、同窓口では、顧客対応のスキルを高める取り組みを継続する一方で、個人ユーザーに対しても、アウトバウンド型のセールスを開始する計画だという。 「何人かの利用者にヒアリングしたところ、お勧め商品があった場合には、直接、電話をかけてもらっても構わないというケースが意外にも多かった。また、これらの利用者は、前向きに掘り出し物や新たな提案を求めているという傾向が強かった。まずは、2007年度以降を目安に、AzbyClubの登録者を対象に、こちらから電話をするアウトバウンド型セールスを、個人ユーザー向けにも開始したい」としている。 2007年1月には、Windows Vistaが発売となることから、現行のWindows XPユーザーに対するアップグレードの提案、あるいはPCの買い換えの提案などが、アウトバウンド型で行われることになりそうだ。 FMVシリーズ購入相談窓口では、PCをより購入しやすくするための窓口として、これからも試行錯誤を繰り返しながら、さまざまなサービス提供を模索することになりそうだ。 □富士通のホームページ (2006年11月27日) [Text by 大河原克行]
【PC Watchホームページ】
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