●2006年中に利用可能となる、ボリュームライセンス版Vista 11月1日、ボリュームライセンスユーザー向けのマニュアル&ソフトウェアメディア販売を専門とする「マイクロソフトマニュアルオーダーセンター」では、リリースが間近となったWindows Vista日本語版各エディションのマニュアル&メディアセットの製品構成、型番、価格を発表した。 既報の通り、一般向けとして販売されるWindows Vistaのパッケージ版やDSP版(OEM版)、プリインストールPCは、2007年1月30日より販売開始される予定となっている。場合によっては1~2日程度は早く入手できる可能性もあるだろうが、いずれにしろ年内に購入できる可能性はほとんど無い。 一方、ボリュームライセンス版については、上記マニュアルオーダーセンターの一覧表に記載の通り、12月中には出荷される予定だ。もちろんこれはあくまで「メディア」の価格であり、実際にこれらを使ってWindows Vistaをインストールするには、ボリュームライセンス(VL)ユーザー向けのプロダクトキーが必要となる。 しかしこのVL向けプロダクトキーは、ライセンス契約済みのユーザーにはすでに配布が開始されており、メディアさえ手に入ればいつでもWindows Vistaをインストールできる。未契約ユーザーであっても、条件さえ満たせばボリュームライセンスを契約することが可能だ。つまりボリュームライセンスは、製品版のWindows Vistaを最も早期に利用できる方法となるわけだ。 ●11種類も用意されるVL版Windows Vista Windows Vista用のVLメディアは、個人でも契約可能な「オープンライセンス」の場合、メディアの種別(CD-ROM/DVD-ROM)、エディション(SKU: Stock Keeping Unit)、通常版/アップグレード版、通常版/ソフトウェア・アシュアランス(SA)版の違いによって、合計11種に分類される。前出のマニュアルオーダーセンターの一覧表では、SKUとメディアの違いしか記載されておらず、どれを購入するべきか分からないのだが、取材の結果、表に示す通りであることが判明した。
【表】Windows Vista VL版メディアキットの製品構成と型番
この表を見てわかるように、VL版のWindows Vistaは新規インストール用の「フルパッケージ版」がメインで、アップグレード版が用意されるのはわずかにUltimateエディションの32bit版に限られる。VL版の場合、アクティベーションの管理方法が一般向けとは異なる。このため、既存の一般向けWindowsをアップグレードすることはできない、ということであろう。 なお64bit版についてはCD-ROMメディアは用意されず、DVD-ROM版のみとなる。64bit対応CPUを搭載したPCでDVD-ROMメディアが読めないという状況はあまり想定できないため、これは大きな問題とはならないだろう。ちなみにWindows XPの場合、VL版では32bit版と64bit版のメディアがセットとなって1つのメディアキットを構成していたのだが、Vistaでは別々となる。3,150円とはいえ、メディアを準備するのにかかる費用が増えてしまったのはやや残念なところだ。 ●VL版VistaではUltimateでも追加料金不要 すでにボリュームライセンスを契約しているユーザーや、これから契約を行なおうと考えているユーザーにとって分かりにくいのは、VL版ではどのエディション(SKU)が利用できるのか、という点だ。一般向けのライセンスとVL版との最大の違いとなる点がここにあるからだ。 結論から言えば、オープンライセンスを契約しており、かつ後述するSAを購入している場合、Windows Vista Business、Enterprise、Ultimateの3種についてはどれでも自由に使うことができる。オープンライセンスで必要とされる最低ライセンス数は5ライセンスだが、これらすべてをBusinessとして使ってもよいし、Ultimateとして使ってもかまわない。またEnterprise×4とUltimate×1といった具合に、任意に組み合わせて使うこともできる。どのような組み合わせでも契約料に違いは無い。 これは、オープンライセンスの場合SAという考え方があるからだ。SAとは、ライセンス契約を行なったソフトウェアに対する新バージョンが登場した際、無償でそれら後継バージョンにアップグレードできる権利を言う。 Windows XP Professionalでオープンライセンス契約を行ない、かつSA特典を購入しているユーザーの場合、Vista Business、Enterprise、Ultimateの3種へのアップグレードは無償で可能だ。また、Windows Vista Businessでオープンライセンスを契約、さらにSAを購入すれば、EnterpriseかUltimateへは自由にアップグレードできる(この場合、Vista Businessはもともとライセンスを所有しているため、アップグレードとはみなされない)。前出のメディアキットの一覧表において、UltimateおよびEnterpriseにのみ「SA」の表示があるのはこのためだ。 このように、XP時代からの契約者でもこれから契約するユーザーでも、いずれもSA権さえ購入すれば、Windows VistaはBusiness、Enterprise、Ultimateのエディションを問わず、契約数以内で自由に使えることになる。 ●ボリュームライセンスでのライセンス管理
ボリュームライセンス契約者は、専用のライセンス管理サイトにおいて、契約期間や所有ライセンスの状況について、いつでも確認することができる。オープンライセンス契約の場合、契約期間は2年間だが、期間中に対象ソフトウェアの新バージョンが登場した場合、前述のSAによりいつでも無償で新バージョンへのアップグレードを行なうことができる。 またソフトウェアの「ダウングレード権」も所有しているため、契約ライセンス数以内であれば、旧バージョンのソフトウェアを利用する権利も持っている。 なおボリュームライセンス契約期間中にSAにより取得した新バージョンのライセンスは、ライセンス期間満了後も永続的に利用することができる。 ●Windows Vistaから、VL版でもアクティベーションが必要に ボリュームライセンスでよく指摘されるのが、Office XP以降に導入されたソフトウェアアクティベーションの問題だ。VL版のメディアを用いてOSやアプリケーションをインストールする場合、VL版専用の「プロダクトキー」が必要となる。このプロダクトキーは前出のライセンス管理サイトにて発行されるのだが、従来、VL版のキーを用いてセットアップされたソフトウェアは、ソフトウェアアクティベーションを必要としなかった。 Windows Vistaでは、この点でも変更になった。具体的にはマルチプルアクティベーションキー(MAK)と、キーマネジメントサービス(KMS)という、2種のライセンス管理方法を利用する。前者は、1つのキーで複数台のPCをアクティベーションできることを除けば、一般向けパッケージと同様のアクティベーションを必要とするもの。後者は25台以上のPCが接続した環境で利用される、ネットワークベースのライセンス管理手法だ。 アクティベーション不要ということで、不正利用に使われることもあったVL版だが、今後登場する製品については、VL版でも同様のアクティベーション手法を取り入れて行くことが予想される。
●個人でも契約可能なボリュームライセンス 最後に、ボリュームライセンスの購入資格について説明しよう。 よく、ボリュームライセンスは企業/法人に限定されると考える人がいる。しかし少なくともマイクロソフトのボリュームライセンス契約に関して言えば、こうした制限は一切無い。必要ライセンス数さえ満たせば、個人でも問題なく契約できる。ボリュームライセンスを扱う業者(リセラー)によって、取引相手を企業に限定している場合もあるので、個人取引が可能なリセラーを選択する必要があるだけだ。 最も少ない単位で契約できる「オープンライセンス」では、最小ライセンス数は5ライセンスとなる。たとえばWindows Vista BusinessがプリインストールされたPC、パッケージ版のWindows Vista Business、OEM版(DSP版)のWindows Vista Businessのいずれかを合計5ライセンス分購入、ここから90日以内にSA権(13,000円程度)を購入すれば、オープンライセンスが契約できる。 またいち早くWindows Vistaを使いたいのであれば、市販のWindows XP Professional(プリインストール, パッケージ版、DSP版)を合計3ライセンス分購入した上で、「アップグレード&SA権(35000円程度)」を3組購入すれば、オープンライセンスが契約可能となる。 Windows XPのライセンスが3組で済むのは、Windows XPをVistaにアップグレードする際の「アップグレードライセンス」も、1ライセンスとしてカウントされるためだ。つまりアップグレードで1ライセンス、SA権で1ライセンスとカウントこれらを3組ずつ購入すると合計6ライセンスとなり、オープンライセンスに必要となる最低限度の5ライセンスを満足するからだ。 ただこれだと、最低ライセンス数よりも1ライセンス分だけ出費が増えてしまう。SA権をひとつ減らして「アップグレード&SA」×2、「アップグレード(22000円程度)」×1という購入方法も可能だ。もっともこの場合、そのライセンスに関しては今後のアップグレードが行なえなくなるため、EnterpriseやUltimateとしては使えない。またかなり気の長い話であるが、後継OSへのアップグレードも行えなくなる。 Windows Vistaが発表される前であればWindows XP Professionalを5ライセンス分購入した上で、XPのSA権(8,000円前後)を5つ購入すればかなり経済的にオープンライセンスが契約できたのだが、現在ではもう この契約方法は行えない。 【お詫びと訂正】アップグレードライセンスも1ライセンスと数えられることが明らかとなりましたので、記述を追加いたしました。 5ライセンスの中には、Office製品のライセンスも含めることができる。たとえばWindows×3+Office製品×2という組み合わせでも、オープンライセンスは契約可能だ。 なおボリュームライセンス契約では、Windows製品のアップグレードライセンスの購入は行なえるが、アップグレードではないフルバージョンのWindowsライセンスは購入できない。あくまでDSP版や市販パッケージ版やプリインストールPCなどを購入した上で、90日以内にSA権をオープンライセンスで購入することになる。 なお実際に契約する際は、もう少し細かい条件が必要となるため、詳細については対応リセラーに問い合わせて欲しい。ボリュームライセンスは、確かに契約時の初期投資だけを見ると、費用がかかりすぎるように感じる。ただ、ソフトウェアアシュアランスにより、最新バージョンや新たなSKUが登場した場合でも無料でそれらを使えることが多い。サービスパック登場時なども、いつでもそれらを含む最新メディアが購入できる。さらに今回のWindows Vistaのように、通常よりも早くから使い始められたり、価格差のあるUltimateエディションが差額なしで利用できる点など、メリットも増えてきた。購入するライセンス数によっては、むしろ安価となる可能性さえあるほどだ。 SOHOなど、業務によりWindowsのライセンスを数多く必要とする場合はもちろん、複数台のPCを使用する場合で、Ultimateを複数購入する場合などには、ボリュームライセンスの契約を検討してみてはいかがだろうか。
□関連記事 (2006年11月9日) [Reported by 天野司]
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