NVIDIAは9月6日(現地時間)に、2種類のGPUを発表した。1つはすでに本連載でも取り上げた「GeForce 7900 GS」で、199ドルの価格帯の製品だ。そして、もう1つが、今回取り上げる「GeForce 7950 GT」である。 ●GeForce 7900 GTXにより近づいたスペック GeForce 7950 GTは、GeForce 7900 GTの後継となる製品である。主なスペックは表1にまとめたとおりで、GeForce 7900 GTXの下位モデルに位置付けられる。いわゆるG71のコアを利用し、GeForce 7900 GTから動作クロックとメモリ容量を向上。よりGeForce 7900 GTXに近づけたスペックとなっている。
【表1】GeForce 7900シリーズ仕様比較
価格は299ドル。GeForce 7900 GTは発表時の資料では、249~399ドルの間とされており、300~350ドル前後が相場となっていた。この価格帯をやや引き下げ、さらにスペックアップを図ってきたのが本製品の大きなトピックといえるわけだ。ちなみに、この製品の登場を持って、GeForce 7900 GTの生産は終息するとのことだ。 さて、今回試用した製品は、XFXの「GF 7950GT 570M 512MB DDR3 HDCP DUAL DVI TV PCI-E」である(写真1)。写真を見てもわかるとおり、本製品のクーラーはヒートシンクとヒートパイプのみで構成されたファンレスデザインになっている。ただ、これはXFXが独自に行ったデザインで、NVIDIAのリファレンスデザインでは、GeForce 7900 GTと同じものと見られるクーラーが装着されている(写真2)。
ちなみに、XFXの製品名に含まれる“HDCP”という言葉に反応された人がいるかも知れない。実は、GeForce 7950 GTはNVIDIAのリファレンスボードがHDCPの出力に対応しているのだ。写真2を見て分かるとおり、トランスミッタを装着する部分のパターンはブランクになっており、HDCP対応のトランスミッタを実装せず、GPU内にキーを持たせていることになる。 ちなみに、GeForce 7950 GT/7900 GS発表時のニュース記事でも紹介されているプレゼンテーションを見ると、GeForce 7950 GTは「HDCP Support Standard」と記されているが、これは上記のことを意味している。一方、GeForce 7900 GSは「HDCP Support Optional」と記されており、従来製品同様に、外部のトランスミッタを利用してHDCPをサポートすることになるわけだ。 さて、そのほかのボード上の特徴だが、背面はファンレス稼動のためにヒートシンクがせり出しているのが目立つほかは、ブラケット部の構成もGeForce 7900シリーズの他製品を踏襲しており、目立った特徴はない(写真3、4)。
さて、今回試用するXFXのカードは、前々回の記事で取り上げたGeForce 7900 GS搭載製品同様、オーバークロック仕様のものである(画面1)。そこで、今回もNVIDIA Control Panelを利用して、動作クロックを定格に落とした場合の検証も行なうことにする。
●GeForce 7900シリーズを一挙にテスト では、パフォーマンスの検証結果をお伝えしたい。用意した環境と比較対象機材は、表2のとおりだ。今回は、これまでに登場したシングルGPU構成のGeForce 7900シリーズを一挙に揃え、各ビデオカードのSLI構成もテストする。また、299ドルのGeForce 7950 GTの直接の対抗といえそうな、279ドルのRadeon X1900 XT 256MB版の結果も含めている。
【表2】テスト環境
なお、GeForce 7900 GTのシングル構成、GeForce 7900 GSの各構成、Radeon X1900 XT 256MBに関しては、テスト環境が同一なので前々回の記事からデータを流用している。 それでは、まずは消費電力測定の結果である(グラフ1)。GeForce 7900シリーズに関していえば、オーバークロック仕様の製品があるため一部でバラつきもあるが、ほぼ製品のスペック順に消費電力も増減する結果になっている。
今回の主題であるGeForce 7950 GTはファンレスデザインではあるが、ファン付きデザインのGeForce 7900 GTよりも10W以上消費電力が多い。リファレンスカードに準拠したファン付きデザインのGeForce 7950 GTでは、数Wながらさらに上積みされるわけで、この消費電力差は明確に存在すると見ていいだろう。 続いては、ベンチマークテストの結果である。3DMarkシリーズの「3DMark06」(グラフ2~4)、「3DMark05」(グラフ5)、「3DMark03」(グラフ6)から見ていきたい。
GeForce 7950 GTは、スペックどおり定格クロックの状態でもGeForce 7900 GTとGeForce 7900 GTXの間に位置付けられる性能となっている。 GeForce 7900 GTからの性能アップは、負荷が低いところで15%前後、負荷が大きいところで20%前後、最も伸びたところで27%強となっている。コアクロックは約22%アップ、メモリクロックは約6%アップなので、もう少し性能が伸びることを期待する向きもあるかも知れないが、安定して上回る性能は評価していいだろう。 ただ、GeForce 7900 GSのオーバークロック状態が上位モデルのGeForce 7900 GTを脅かすのに比べると、オーバークロックの効果はそれほど大きく感じられない印象だ。 また、Radeon X1900 XT 256MBとの比較では、GeForce 7950 GTが苦戦している結果になっている。3DMark06の低負荷条件と3DMark03を除いては、同等以下の性能に落ち着いてしまっている。ここはRadeon X1900 XTのピクセルシェーダユニットの性能に押し切られと見ていいだろう。残るは実際の3Dゲームを利用したベンチマークテストで、「Splinter Cell Chaos Theory」(グラフ7)、「Call of Duty 2」(グラフ8)、「F.E.A.R.」(グラフ9)、「DOOM3」(グラフ10)の4つの結果を紹介したい。前回、前々回と触れたとおり、Radeon X1900 XT 256MBではCall of Duty 2での計測ができなかったので割愛している。
今回は主に同一アーキテクチャの製品を比較していることもあって、3DMarkシリーズの結果と大きくは変わらない結果となった。低負荷の場合はビデオカードの性能が結果に表れず、誤差も大きい結果を見せているが、高負荷では先の結果と似たような傾向を示すあたり、各製品間にはっきりとした性能差があると判断してよさそうだ。 一方のRadeon X1900 XT 256MBとの比較では、GeForceシリーズが得意とするDOOM3を除いては、やはりRadeon X1900 XT 256MBのよさが目立つ。高負荷でより差を広げるあたりのポテンシャルの高さが注目でき、パフォーマンス面ではRadeon X1900 XT 256MBに軍配が上がる結果といえる。 ●消費電力とHDCPサポートが売りとなるGeForce 7950 GT 以上のとおり、結果を見てくると、GeForce 7900シリーズ間でははっきりした性能差があり、GeForce 7950 GTは従来モデルのGeForce 7900 GT以上の性能を期待できることは間違いない。 ただ、おそらく日本では3万円後半程度で直接比較検討されるであろうRadeon X1900 XT 256MBとの比較では、かなり分が悪い結果となった。自社製品のラインナップ内では、GeForce 7900 GTと同等の価格でより高い性能、をアピールするGeForce 7950 GTではあるものの、ライバル会社の製品とのコストパフォーマンス比較では苦戦しそうだ。 もう1つ苦言を呈したいのは製品名だ。GeForce 7900 GTXとGeForce 7950 GTという製品名を見て、前者のほうが上位モデルというのは、いかにもそぐわない。消費者においても混乱が起きそうなネーミングは避けるべきだろう。 とはいっても、GeForce 7950 GTにも良いところはある。まず、消費電力がRadeon X1900 XTより低い点が挙げられる。性能が劣るとはいえ、多くの3Dゲームを現実的に楽しめる性能を持ち合わせているので、このレベルの性能を持つなら消費電力抑制へ気を回したいというニーズは存在するだろう。 また、リファレンスカードがHDCPをサポートするということは、実際にビデオカードベンダーからもHDCPサポートの製品が多く登場するはずだ。保護されたコンテンツを視聴するうえで、今後さらにニーズが高まってくるHDCPをサポートしている製品がGeForce 7950 GTのスタンダードになる可能性すらあるのだ。GeForce 7950 GT=HDCPサポートという図式が一般化すれば、HDCP対応のDVI端子を持つビデオカードを求めるときに、とりあえずGeForce 7950 GTなら大丈夫、という安心感にもつながるわけで、これは大きなアピールポイントとなるだろう。 □関連記事 (2006年9月15日) [Text by 多和田新也]
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