Microsoftは、9月2日(現地時間)に2007年1月に製品出荷を予定しているWindows Vistaの最新β版となるRC1(Release Candidate 1)を、同社のβサイトなどを通じてβテスターなどに公開した。 5月末に公開されたβ2を利用したβテスターからのフィードバックを元に主に安定性の向上などを目的とした改良が加えられ、より製品出荷版に近づいたバージョンに仕上がっている。 一方で、情報筋によればOEMベンダには、未だに1月のいつの段階でVistaの出荷が開始されるのかは明らかにされていないという。このため、OEMベンダの中には2007年の春モデルの計画について未だに混乱が続いているようだ。 ●ビルドは5600へ 今回公開されたRC1は、ビルド番号が5600となっており、β2のビルド5384に比べて大きく進んでいる。RC1には、英語版、日本語、独語版、仏語版、スペイン語版、アラビア語版が用意されており、Microsoftのβテスター向けサイトなどを通じてβテスターに提供されている。 画面はβ2とRC1の起動画面だが、どちらにも大きな違いはなく、ほぼ同じデスクトップとなっている。ビルド番号を見なければ違いがわからないほどだ。 もっとも、違いが少ないというのはβ2からRC1への進化という意味では妥当な判断だろう。というのも、一般的にはRC版というのは、β2でフィードバックされたバグなどをフィックス(修正)してより出荷版に近づける性格のバージョンであり、基本的な機能などはすでにβ2で盛り込まれているため、今後よほどのことが無い限り大幅に変わるということは得ないからだ。 ただ、細かな部分ではさまざまな修正が行なわれている。ユーザーが目につくところでは、“コンピュータの評価”という項目が変わっている。β2までは、総合評価がすべての項目の中から1番低い数字を選び出され、さらに小数点第1位が切り捨てられていたのに対して、RC1では総合評価にわざわざ総合結果が1番低い得点であるという注意書きを加え、さらに小数点第1位も表示するように変更された。Windowsサイドバーに標準で用意されているガジェットの数が15個から11個に減らされている。 また、Internet Explorer、Windows Media Player 11など、Windows XP用のβ版が配布されているソフトウェアに関しても最新版になっている。メディアセンターのUIの動作に関しても改良が加えられており、メニューが画面の幅を超えてしまう場合には、ポインターを動かすと左右に“<>”の表示が追加されたり、メディアセンターの動作をフルスクリーンで固定するメニューなどが追加された。 ただ、日本語版に関しては、未だにヘルプなどが英語のままになっているなど、未完成の部分も残されている。これらに関しては今後リリースが予定されるRC2、RTMなどへの課題として残されることになる。
●動作速度が向上したRC1 見えない部分の進化では、動作速度の向上が挙げられる。β2を試したユーザーの多くの不満として、“重い”、“起動に時間がかかる”などがあったが、RC1では大きな向上を果たしている。 例えば起動時間だ。全く同じPC上にx64版のWindows Vista β2(ビルド5382)とRC1(ビルド5600)を入れてみたところ、起動時間はβ2が60秒かかったのに対し、RC1では41秒に短縮された。 これは、電源を入れてからウェルカムセンターが起動するまでにかかった時間だ。Core 2 Duo E6700、1GBメモリ、36GB HDD、GeForce 7800 GTのPCで手動計測した。 さらに、Internet Explorer 7の起動時間も短縮された。IEのアイコンをクリックしてからWebサイトが起動するまでの時間が、β2では15秒だったが、RC1では8秒となっている。 また、β2では、一部プログラムでの互換性の問題が発生していたが、RC1では新たに“プログラムの互換性アシスタント”というツールが追加されており、Windows Vistaと互換性がないソフトウェアなどに対する解決方法をオンラインで表示する仕組みなども用意されている。 まだ、インストールして1日程度のため、あくまで主観的な感想だが、β2にくらべて安定感を増したという印象を受けている。β2では動かなかったアプリケーションも、RC1では動いた例があった。 ●まだ決定していないVistaの出荷時期 RC1がリリースされたことで、Windows Vistaもリリースに向けてようやく最終段階を迎えることになる。今後、RC1でのテストを元に、各OEMベンダなどは自社のバンドルソフトウェアなどとの組み合わせをチェックし、2007年1月に予定されているWindows Vistaの正式リリースに備えることになる。 ただ、問題になるのは、そのWindows Vistaのリリースが1月のいつになるのかということだ。複数のOEMベンダの関係者によれば、未だに日本のOEMベンダはMicrosoftから1月のいつ頃出荷されることになるのかということを正式に通知されていないという。 日本のOEMベンダは、毎年1月の頭から中旬にかけて春モデルと呼ばれる春商戦向けの製品をリリースしており、2006年の春モデルに至っては2005年12月に春モデルをリリースするところも少なくなかった。 OEMベンダが年々リリースを早めているのは、少しでも早く新しいモデルを投入することで、他社との競争で優位に立てるからだ。 実際、あるメーカーがライバル社に1カ月先駆けて製品をリリースしたところ、その商戦期でそのメーカーはライバルを大きく引き離す結果を残した。このため、各社の競争は激しくなっており、春モデルなのにリリースされるのは12月という不思議な事態を招いている。 OEMベンダにとって、Windows Vistaのリリース時期は、2007年の春モデルの投入時期を見定める上で非常に重要な要素になっている。すでに、2006年の夏モデル、冬モデルに関してはWindows Vistaを睨んで買い控えが発生していると言われており、OEMベンダとしてはできるだけ早くWindows Vista搭載モデルを投入したいのだ。 Windows Vistaのリリースが1月上旬になるのであれば、OEMベンダとしては1月上旬に設定すればよいだけで、問題がない。しかし、仮に1月下旬になったり、2月にずれ込むようであれば、12月に春モデル第1弾をWindows XP+無償バージョンアップクーポン付きでリリースしておいて、1月末ないしは2月にVista搭載製品を別途出すということを考えなければならない。 おそらく、MicrosoftはこのRC1の反響を見て、発売時期の決定を行なうことになると思われる。しかし、1月まで残されている時間はかなり少ない。Microsoftはリリースを2月にずれ込むことを検討しているとする関係者もおり、Windows Vistaの出荷時期はまだ流動的と言えるだろう。
□Microsoftのホームページ(英文) (2006年9月4日) [Reported by 笠原一輝]
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