山田祥平のRe:config.sys

これでいいのかVistaの検索機能




 Microsoftが次世代のファイルシステムとして取り組んでいた「WinFS」の開発中止をアナウンスしたことは記憶に新しい。結局、Windows Vistaがもたらすはずだった新たな検索機能の拡張案も立ち消えになってしまった。かといって、Vistaの検索機能がここまで貧弱なものに成り下がるというのは納得がいかない。

●構造が変わったディレクトリツリー

 Vistaでは、HDD上のディレクトリツリーが多少変更されている。Cドライブのルートには、Program FilesとWindowsがあるのはXPと同様だが、従来のDocument and Settingsの代わりに「ユーザー」という名前のフォルダができた。実は、このフォルダ、フォルダウィンドウで見ると「ユーザー」だが、コマンドプロンプトでディレクトリを見ると「Users」となっている。そして、その下には、Publicというパブリック共有のためのフォルダと、個々の登録ユーザーの名前を持つフォルダが用意される。スタートメニューには、ログオン中のユーザー名が表示されているが、それを開くと、このフォルダが開くようになっている。いわば、ここがホームディレクトリということだ。XPではディレクトリツリーのルートはデスクトップで、その下にマイコンピュータなどがぶらさがる奇妙な構造だったが、Vistaでは、おそらくは互換性を保つためにそのメタファも残しつつ、実質的なルートはホームディレクトリになったということだ。

 ホームディレクトリには、SavedGames、お気に入り、ダウンロード、デスクトップ、ドキュメント、ピクチャ、ビデオ、ミュージック、リンク、検索、連絡先といったフォルダが並ぶ。これらもまた、コマンドプロンプトで見るとFavorites、Download、Desktop、Documents、Pictures、Videos、Music、Links、Searches、Contactsとなっていて、欧文名と日本語名がうまくペアリングされている。これなら、フォルダ構造を決め打ちした海外のソフトを使うときにも問題が起こりにくそうだ。

●検索フォルダの怪

 Vistaのスタートメニュー内には、検索キーワードを入力するためのテキストボックスが用意されている。ここに探したい単語を入力すると、その場でインクリメンタルサーチが行なわれて、リアルタイムでスタートメニュー内に検索結果が表示される。また、その状態でエンターキーを押せば、新たなウィンドウが開き、そこにすべての検索結果が表示される。

 また、個々のフォルダウィンドウにも検索用のテキストボックスが用意され、ここで入力したキーワードは、そのフォルダ下のファイルだけを対象として検索が実行される。

 検索結果のウィンドウには、“アドバンスド・サーチ”というボタンが用意され、それをクリックすれば、絞り込み検索のための追加指定用ペインが開く。ここで、場所や日付、サイズ、ファイル名などを入力して、結果を絞り込めるようになっている。

 さらに、ホームディレクトリにある“検索”という名前のフォルダを開くと、あらかじめ用意されたいくつかの検索フォルダの一覧が表示される。最近のドキュメント、最近のメール、最近の音楽、最近の画像とビデオといったものが並んでいる。

 では、その「最近の」というのがどの程度最近なのかというと、これがわからないのだ。実際に開いてみると、ドキュメントでは1カ月程度、メールでは1週間程度前のもの以降が表示されるようだ。検索用仮想フォルダの実体は、「.search-ms」という拡張子を持つXMLファイルで、メモ帳などで開いて内容を確認できるが、日付範囲の指定の法則がどうもはっきりしない。というよりも、GUIで確認したり、書き換えたりできなければ意味がないんじゃないだろうか。

 もちろん、独自に実行させた検索は、検索条件として保存し、検索フォルダ内の仮想フォルダとして置いておける。それを開けば、いつでも最新の検索結果が得られるわけだ。ここまで当たり前だとしても、いったん検索条件を保存してしまったら最後、条件を想像するのに十分な明確なファイル名をつけておかない限り、その条件をあとで知る方法がなく、編集さえできない。

●ネットワークフォルダはインデックス対象外

 コントロールパネルには「インデックスのオプション」と呼ばれるアプレットが用意され、これを開くと、インデックスを作成する対象フォルダを指定できるが、ここでは、ローカルHDD内のフォルダしか指定できなくなってしまった。正確には、オフラインファイルは検索対象となるが、そのためにはフォルダの同期が必要になる。つまり、巨大なネットワークストレージ内にある大量のファイルをローカルにキャッシュするわけにはいかない。ということは、それらを検索するにはインデックスが使えないということだ。それとも、将来的に外部から検索要請があった場合、サーバー側が生成したインデックスが使われるようになるのだろうか。それにしたって、NASなどではなすすべがない。少なくとも現時点のヘルプには、

You can only add locations that are on your computer to the index. Network locations can't be indexed, so they will always be searched more slowly than folders on your own computer.
Only files and folders located on your computer can be added to the index. This means that network location will be searched more slowly than files on your computer.

と書いてある。Windowsデスクトップサーチでさえ、ネットワークフォルダをインデックス対象にできたのに実に残念だ。

 WinFSの開発中止表明から日が経っていないことや、β2である点などを考慮すれば、現段階のビルドで、検索機能のインプリメントが中途半端なものになっているのは仕方がないのかもしれない。でも、秋には企業向け、年明けにはコンシューマ向けに出荷が開始されることになっているOSが、8月の時点で、こんな状態でよいのだろうか。

 最近、特にIT業界とは縁のない知人から、Vistaになると、何がどう変わるのかとたずねられることが多い。そして、答えに詰まるのだ。Vistaがもたらすはずの新たな世界を、XPと比べ、目に見えて進化した部分として提示するのは難しいからだ。もはや、現代のパソコンユーザーは、“AeroGlassで見かけが派手になりました”というだけでは、新しいOSに魅力を感じることはないだろう。なのに、検索のような可能性のある機能がトーンダウンしてしまったのでは、かばうこともできない。

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【6月29日】【本田】失われたWinFSへの落胆の大きさ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0629/mobile347.htm
【6月28日】【元麻布】Microsoft、WinFSの開発中止を表明
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0628/hot434.htm

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(2006年8月4日)

[Reported by 山田祥平]


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