PCI ExpressとCore Duo対応の超小型PC
「ミニピーシー LF800」



LF800

 5インチドライブケース並の超小型PCを多数発売しているミニピーシードットジェイピーが、新たな小型PC「LF800」を発売した。

 従来モデルよりやや大きなボディを採用しているものの、3.5インチHDDを内蔵できるシャドウベイが用意されているだけでなく、PCI Express x16スロットも用意されており、サイズを超えた拡張性が実現された、非常に魅力的な小型PCである。



●超小型PCながらキューブPCに匹敵する高い拡張性を実現

 これまでに同社が発売してきた超小型PCは、5インチドライブケース並の非常に小さなサイズのものが大半だった。確かにそのサイズでフルPCとして機能するという点は魅力的ではあるが、拡張性がかなり犠牲になっていたのも事実だった。例えば、内蔵できるHDDは2.5インチのドライブのみで3.5インチの大容量HDDを搭載できなかったり、グラフィック機能はチップセット内蔵機能を使うしかない、などといった点だ。そのため、メインマシンとして活用するには少々厳しかった。しかし、新たに登場したLF800では、本体サイズを若干大きくすることによって拡張性の問題を克服している。

 まずLF800では、一般的なデスクトップPCで利用されている3.5インチHDDを内蔵できるようになっている(2.5インチHDDなら2台内蔵可能)。2.5インチHDDでは、現時点で最も大容量な製品でも160GBしかない。それに対し3.5インチHDDなら、750GBと大容量の製品も登場しており、HDD容量の面で大きなアドバンテージとなる。ちなみに、光学ドライブは5インチのものではなく、ノートPC用の薄型ドライブが搭載できる。

 また、拡張スロットが1スロット確保され、マザーボード上のPCI Express x16スロットが利用可能になっている点も、これまでの製品にはない特徴だ。超小型PCでは、そのサイズの制約から、基本的にチップセット内蔵グラフィック機能を使うしかなく、高い3D描画能力を必要とするゲームなどのアプリケーションを満足に利用できないものが多かった。しかしLF800であれば、PCI Express x16スロットにビデオカードを取り付けることで、高い3D描画能力を発揮させることが可能となる。搭載可能な拡張カードは、Low Profileで奥行きが約185mmほどのものに限られるが、少なくともビデオカードの増設が可能になっているという点は大きな魅力だろう。

 本体サイズはやや大きくなったとはいえ、210×220×115mm(幅×奥行き×高さ)しかなく、設置面積はA4サイズの雑誌よりも小さい。一般的なキューブPCと比較しても体積は1/2ほどしかなく、デスク上に設置して邪魔に感じることは全くないはず。少なくとも、超小型PCというカテゴリーから外れるマシンではない。

ミニピーシードットジェイピーの小型PC「LF800」。超小型ボディながら、3.5インチHDD内蔵、PCI Express x16スロットを用意するなど、高い拡張性が特徴だ 同社の他の超小型PCよりサイズが大きいものの、それでもキューブPCよりかなり小さい。ATX仕様の電源ユニットとの比較からも、その小ささがわかるだろう フットプリントはA4サイズの雑誌よりも小さい。デスク上でも邪魔に感じることはほとんどないはずだ
本体内に3.5インチHDDを収納できるスペースを確保。これにより、大容量HDDの利用が可能になった 本体左側にはPCI Express x16スロットを用意。LowProfileのビデオカードを取り付けて利用できる 本体下部に、ノートPC用の薄型光学ドライブを取り付けられるスペースが用意されている

●CPUはCore Duoを搭載可能

 LF800には、COMMEL(Taiwan Commate Computer)製の「LV-677DC」という、Mini-ITX仕様のマザーボードが搭載されている。このマザーボードは、Celeron M/Core Soloに加えデュアルコアCPUであるCore Duoに対応する点や、ACアダプタ駆動になっている点などが特徴。チップセットはIntel 945GM Express、サウスブリッジはICH7M。メインメモリ用のDIMMスロットは2本用意されており、PC2-5300 DDR2 SDRAMを最大2GB搭載可能。もちろん、2つのDIMMスロットに同一仕様のDIMMモジュールを取り付ければ、メインメモリはデュアルチャネル動作となり、パフォーマンスが向上する。

 マザーボード上には、PCI Express x16スロットが1本にminiPCIスロットが2つ、裏面にはCFスロットがそれぞれ用意されている。オンボードデバイスは、チップセット内蔵グラフィック機能、5.1chサウンド機能、Gigabit Ethernetなど、必要なものは一通り揃っている。ちなみに、オプションとしてminiPCI用の無線LANキット(IEEE 802.11b/g対応)や増設LANキット(Gigabit Ethernet×2)なども用意されており、さらなる機能強化も可能だ。

 付属ACアダプタは、容量が120Wのものだ。ノートPC用のCPUを利用するため、容量120WのACアダプタでも十分安定した動作が期待できる。ただし、ビデオカードを搭載する場合には消費電力に注意すべきだろう。とはいえ、Low Profile対応のビデオカードでは、消費電力の大きなハイエンドクラスのGPUを搭載するものはほとんどなく、多くの場合問題にはならないはずだ。

搭載マザーボードは、COMMEL製のLV-677DC。Core Duo対応のMini-ITX仕様マザーボードで、チップセットはIntel 945GM Expressを採用 Intel Core DuoやCore Soloなど、μPGA479Mソケット対応CPUが利用可能 メインメモリ用のDIMMスロットは2本で、最大2GBのPC2-5300 DDR2 SDRAMを搭載可能
PCI Express x16スロットを装備。ビデオカードを搭載することで、3D描画能力を強化可能だ PCI Express x16スロットに加え、miniPCIスロットが2つ用意されており、オプションの無線LANキットや増設LANキットにより機能強化が可能 マザーボード裏面には、CFスロットが用意されている
オンボード機能は、チップセット内蔵グラフィック機能(GMA950)、Gigabit Ethernet、5.1chサウンド、IEEE 1394など、必要なものはほぼ一通り揃っている LF800はACアダプタでの駆動となる。付属のACアダプタは容量120Wで、サイズもそれほど大きなものではない

●12cm空冷ファン搭載で高い静音性を実現

 LF800では、電源としてACアダプタを利用しているのに加え、マシンには12cmという本体サイズを考えると破格ともいえる大きさの吸気ファンが搭載されている。12cmファンはケースの天板部分に取り付けられており、外気が直接マザーボードに吹き付けられ、CPUやチップセットなどを効率よく冷却する。もちろん、ビデオカードを搭載した場合でもケース内に熱がこもることはなく、安定した動作を実現する。

 ところで、マシン内部には12cmファンに加え、4cmのCPUファンも搭載されているが、双方ともに小型ボリューム型のファンコントローラが標準で取り付けられており、回転数を自由にコントロールできるようになっている。12cmファンおよび4cmファンをフル回転数させた場合にはかなりの騒音が発生してしまうが、ファンコントローラによって回転数を絞れば、高い静音性を実現できる。実際にファン回転数を絞って動作させてみたが、ACアダプタを利用している点も加え、少し離れれば動作音が全く気にならないほどの静音性が確認できた。超小型PCでは、小型のファンを搭載するために、動作音がややうるさいと感じる製品が多いが、LF800に関してはその心配はないだろう。

 ただ、マザーボードのCPUファンコネクタは、ファンコントロール機能に対応する4ピンのPWMコネクタで、BIOSメニューにもファンコントロールの設定項目が用意されているものの、3ピンコネクタのファンは制御できないようで、CPUファンの自動コントロールが行なえていない点はやや残念。そのために、CPUファンにもファンコントローラが接続されているのだろうが、せっかくマザーボードにCPUファンの回転数をコントロールする機能が用意されているのだから、どうせならそちらを利用できるファンを付属してもらいたかった。もちろん、自分でファンを交換するなどの改造を施してもいいし、大型のCPUヒートシンクを搭載して12cmファンのみで冷却を行なうのもありだろう。本体がやや大きいことでケース内部がゆったりしており、こういった改造も気軽に行なえる点は嬉しい。

本体天板部分には、12cmの吸気ファンが取り付けられており、ケース内部の換気能力は非常に強力だ 12cmファンのフィルタは着脱が容易。フィルタを付けておけば、内部へのホコリの侵入を防げる
12cmファンはマザーボードの真上に位置しており、外気が直接CPUやチップセットにあたり、効果的な冷却が行なわれる。CPUには4cmファンを使ったクーラーが取り付けられている 12cmファンとCPUファンには、このようなファンコントローラが取り付けられており、ファンの回転数を自由にコントロールできる

●パフォーマンス重視ならデュアルチャネル動作が基本

 では、ベンチマークテストでパフォーマンスを検証していこう。ちなみに、今回試用したLF800では、CPUはCore Duo T2400、メインメモリはPC2-5300 DDR2 SDRAMが512MB(モジュール1枚のみ)、HDDはシリアルATA対応の200GBドライブ(Seagate製Barracuda 7200.8、ST3200826AS)がそれぞれ搭載されていた。まずは、この状態でテストを行なってみた。利用したベンチマークソフトは、Futuremarkの「PCMark05」と「3DMark03」、「3DMark05」、「3DMark06」、スクウェア・エニックスが配布している「FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3」だ。

 結果を見ると、Core Duo搭載にしてはスコアがあまり伸びていない。メモリのパフォーマンス結果が悪いところからもお分かりかと思うが、メインメモリがシングルチャネル動作となっているため、CPUやチップセット内蔵グラフィック機能(GMA950)のパフォーマンスが最大限に引き出せず、やや低いスコアになってしまったわけだ。パフォーマンスを求める際は、メモリの増設は必須だろう。

【表】ベンチマーク結果
 LF800Let'snote CF-Y5FMV-BIBLO MG75S
CPUCore Duo T2400Core Duo L2300Core Duo T2300
ビデオチップIntel 945GM内蔵Intel 945GMS内蔵Intel 945GM内蔵
PCMark05
PCMarks283523732783
CPU Score426934933851
Memory Score280524262722
Graphics Score6757541096
HDD Score513129773147
3DMark03
1,024×768ドット
32bitカラー
(3Dmarks)
9759961467
CPU Score504479571
3DMark05
3Dmarks353未計測未計測
CPU Score2843未計測未計測
3DMark06
3Dmarks102未計測未計測
CPU Score1499未計測未計測
FINAL FANTASY XI Official Benchmark 3
HIGH176016562150
LOW306527193227

 LF800は、同社の他の超小型PCと比較して、サイズが若干大きくなっており、見た目の存在感は増している。とはいえ、3.5インチHDDが内蔵できたり、ビデオカードが搭載できることで、これまでの超小型PC対する不満のほとんどが解消されており、多少本体サイズが大きくなっていても十分納得できる範囲内。デュアルコアCPUのCore Duoを利用できることも合わせ、パフォーマンスは一般的なデスクトップと全く遜色ないレベルが実現でき、メインマシンとしても十分活用できるポテンシャルを秘めている。しかも、12cmファン搭載によって、高い冷却性能と静音性が両立されており、静音マシンとしての完成度も高い。

 販売価格は、CPUやメモリ、HDDを搭載しないベアボーンモデルが71,400円、CPUにCore Duo T2300E、メインメモリにPC2-5300 DDR2 SDRAMを512MB、250GBのHDDを搭載する構成でのBTOモデルが122,850円(どちらも直販価格)。ほぼ同じ仕様のキューブPCベアボーンなどと比較すると、価格はやや高く感じる。とはいえ、ここまで小型で、かつキューブPCベアボーンと遜色のない拡張性を備えたPCは他にはなく、高い静音性も合わせて、十分な魅力を持つ製品であることは間違いない。メインマシンとしても十分活用できるパワーを発揮する超小型PCを探している人に特にお勧めしたい。

□ミニピーシードットジェイピーのホームページ
http://minipc.jp/
□LF800の製品情報
http://minipc.jp/product/lf800/
□関連記事
【7月10日】ミニピーシー、Core Duo/3.5インチHDD対応小型ベアボーン
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0710/minipc.htm

バックナンバー

(2006年7月19日)

[Reported by 平澤寿康]


【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp ご質問に対して、個別にご回答はいたしません

Copyright (c) 2006 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.