「HP Compaq nc2400 Notebook PC」は、日本ヒューレット・パッカード(HP)が6月8日に発表したビジネス向けの12.1型液晶搭載ノートである。キーボードの防滴機構や500kgfの荷重に耐えるなど、ビジネス向けらしい堅牢性をアピールした製品だ。今回、本製品を試用する機会を得たので、ここで紹介していきたい。 ●マグネシウムやレキサンを使用した頑強さを感じるボディ ここ数年、ビジネス向けノートにおいてボディの堅牢性を重視した製品のリリースが相次いでいる。国内メーカーでは東芝や松下電器などが目立っているが、日本HPの「HP Compaq nc2400 Notebook PC」(写真1)も、こうしたセグメントに向けてリリースされた製品だ。 店頭モデルの主な仕様および価格は、CPUにCore Solo U1300(1.06GHz)、HDD 40GB、1,280×800ドット(WXGA)表示対応12.1型液晶、チップセットにIntel 945GM Express(ビデオ機能内蔵)、メモリ512MB(最大2GB)などを搭載し、価格は207,900円からとなっている。 その本体ボディや天板、パームレストの下などには強度に優れるマグネシウム合金を使用しているほか、パームレスト自体は、防弾用途でも使われるというGEプラスチクス製レキサンを使用することで傷が付くのを防止している(写真2、3)。 同社のアナウンスによれば、天板と底板から均等に500kgfの圧力をかけた試験をパスしたという。ディスプレイを開けるときや、パームレストに手を置いたときのたわみもほとんどなく、確かにその頑強さを感じさせる作りだ。また、本体表面は黒一色ではあるが、手の油などによる汚れが目立ちにくいコーティングなのも好印象だ。
キーボード上にコーヒーをこぼすなどのトラブルは日常でも起こり得る事態であるが、そうした場合に備えて、キーボード上にこぼれた液体を本体下部へ逃がす「ウォーター・ドレイン・システム」と呼ばれる機構を備えている。また、デュポンの防滴・絶縁シートであるマイラーもキーボード下部に敷かれており、コーヒーをこぼした際に本体がトラブルを起こす可能性を下げている。 そのキーボードのレイアウトは好みが分かれるかも知れない(写真4)。Num Lockなど一部のキーがFnキーとの組み合わせでしか利用できないのは仕方ないとしても、それらが右上に集中してレイアウトされているため片手では操作しづらい。また、Fnキーを含む最下部のキーが極端に小さくなっている。使用中、幾度かCtrlキーとFnキーを同時に押してしまうなど、操作に違和感を覚えることがあり、少々使いづらさを感じた部分である。一方で、キータッチは非常に良い。適度なキーストロークに加え、本体の頑強さからくる底部の安定感は抜群だ。 ポインティングデバイスにスティックタイプを採用している点も、根強いファンには喜ばれるのではないだろうか。最近の製品としては珍しくスクロール機能を備えていないのが、この部分では唯一残念な点である。 キーボード上部には無線LANボタンや音量バーなどのアプリケーションボタンが並ぶ(写真5)。面白いのは音量バーで、他のボタンは押す動作をしないと作動しないが、音量バーだけは上をなぞるだけで音量が上下する。iPodのホイールによる音量操作に似たようなイメージで捉えると分かりやすいかと思うが、微調整も簡単で使いやすい。 もう1つ便利なのがプレゼンテーションボタンだ。最初にボタンを押したときに表示される設定画面から、起動するアプリケーションや出力先のディスプレイ、表示解像度、電源設定を指定しておくことで、プレゼンテーションを行なう環境をワンタッチで構築できる(画面1)。本来はビジネス向けの機能ではあるが、例えばDVDプレーヤーを外部ディスプレイに出力するといった具合に、応用次第では個人ユーザーも重宝しそうである。 キーボード手前には向かって左側に各種インジケータ(写真6)、右側には指紋リーダーを備える(写真7)。指紋認証に関する設定は、同社の統合セキュリティ管理ソフトである「HP ProtectTools Security Manager」によって行なえる(画面2)。指紋リーダーももはや当たり前の機能となりつつあり、モバイルノートに必須の機能を確実に備えているといえるだろう。 ●ビジネス用途で求められる最低限のインターフェイスを装備 本製品のインターフェイスは、Type2 PCカードスロット×1、IEEE 1394×1、ヘッドフォン出力、マイク入力、USB 2.0×2、ミニD-Sub15ピン、モデム、Gigabit Ethernetなどである(写真8~10)。カードリーダを搭載しない点などはいかにもビジネスユースの製品という印象を受けるが、そのほかは必要最低限のインターフェイスを備えている印象だ。USB 2.0×2も片側に集中させず、両側面に散らしているのも良い。 オプションのドッキングステーションを利用すれば、さらにインターフェイスを拡張することもできる(写真11~13)。このドッキングステーションには、ミニD-Sub15ピン×1、Gigabit Ethernet、USB 2.0×4、ライン入出力、Sビデオ出力が備えられている(写真14)。本体側のGigabit EthernetとミニD-Sub15ピンは利用できなくなるが、USB 2.0のポート数増加とSビデオ出力は便利だろう。また、ドッキングステーションの価格もHP DirectPlus価格で9,975円と安価に抑えられているのも魅力といえる。 さて、本製品のバッテリは本体背面後部に設置される(写真15)。3セル(10.8A/2.55Ah)の標準バッテリと、9セル(10.8A/7.65Ah)の大容量バッテリが用意され、大容量バッテリはその厚みのために本体後部を持ち上げることになるほか、残量メーターを搭載しているのが特徴だ(写真16~18)。ちなみに前述のドッキングステーションは本体背面部に窪みが設けられており、大容量バッテリを装着したままでもドッキングできるようになっている。 バッテリの公称駆動時間は3セルバッテリで最大約3時間36分、9セルバッテリで最大約11時間とされている。軽量な3セルタイプとしては十分な駆動時間といえるし、いざとなれば大容量バッテリを追加することもできるわけで、ニーズに合わせてバッテリを選ぶことで、モビリティと駆動時間のバランスに満足できるのではないだろうか。 ACアダプタはそれほど大きくなく、携行の障害になるサイズではない。(写真19)。ただ、ACケーブルの接続口がミッキー型のため、ACケーブルを選ぶのが難点といえるだろう(写真20)。
●ハードに持ち歩く人が安心して使える製品 さて、本製品には、法人向けに2製品、個人向けに1製品がラインナップされている。今回借用した機材は、法人向けモデルの「U1300/12W/512/40/N/e/XP」をベースに、一部環境がアレンジされた機種である。異なっているのは光学ドライブとCPUで、光学ドライブは先述のとおりDVD/CD-RWコンボドライブを備える。 CPUはCore Solo U1300またはCeleron M 423を搭載したモデルがラインナップされるが、借用機は製品化前の評価用機材のため、Core Solo U1400が搭載されていた。これは実際の製品にはラインナップされないので注意されたい。 HDDは本体背面にHGST製のドライブが搭載されていた(写真21)。このHDDも堅牢性を重視しており、3Dモーションセンサーを備えることで、あらゆる方向の衝撃や揺れを感知して、必要に応じてヘッドを退避させる仕組みになっている(画面3)。 同じく本体背面にはメモリスロットも装備。メモリスロットは1スロットで、ここに最大2GBのメモリを搭載できる。借用機ではHynix製の512MBを搭載している(写真23)。 本製品はチップセットにIntel 945GMを採用しており、メインメモリの一部をビデオメモリとして割り当てることになる。ディスプレイは1,280×800ドットの解像度を持つワイド12.1型液晶を採用している(写真23)。 さて、この借用機を用いてベンチマークを計測してみた結果を表に示している。ちなみに、比較対象として掲示した結果は、本連載で過去に石井英男氏が計測したものである。また、今回の借用機ではCore Solo U1400を搭載しているほか、製品版ではないため、販売される製品とは異なる可能性があることも特記しておきたい。 ベンチマークスコアで注目しておきたいのはHDDのスコアである。1.8インチHDDを採用している点が響いて、HDDのパフォーマンスが見劣りするのは残念だ。現状、1.8インチHDDで4,200rpmを超える回転数を持つ製品は存在せず、個人レベルの換装で劇的にパフォーマンスが変化することは期待しづらい。このあたりは省スペース設計とのトレードオフといえるだろう。そのほかは、スペック面が近いGatewayのMX1020jに似た傾向となっている。実際の製品ではCore Solo U1300となるので、より近いスコアになると推測される。 もっとも、本製品の魅力はパフォーマンスではなく、やはりそのボディの堅牢性や、指紋認証などの携帯使用における性能にあると思う。とくに本体の頑強さはマグネシウム合金を使用している点などの理屈だけでなく、実際に触って、使ってみると、その頑丈そうなボディに安心感を覚える。毎日のように持ち歩くヘビーユーザーやビジネスパーソンのモバイル用ノートとしてお勧めできる1台だ。
□日本ヒューレット・パッカードのホームページ (2006年6月28日) [Reported by 多和田新也]
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