九十九電機が発売しているeX.computerシリーズは、流通チャネル独自のブランドを冠した、いわゆるホワイトボックス系のPCということになるが、高性能なCPUや大容量のHDDを採用しながら低価格を実現した製品として、注目を集めている。 そうしたeX.computerシリーズの最新製品としてデビューした「N70J Type-M31E」は、NapaプラットフォームベースのノートPCで、CPUにCore DuoないしはCore Soloを採用しながら、10万円台の価格を実現した製品だ。今回は、128,150円のCore Duo搭載モデルを入手したのでその詳細を迫っていきたい。 ●Napaプラットフォームを採用した「eX.computer N70J」 今回取り上げたeX.computer N70J Type-M31Eは、CPUにCore Duo T2300(1.66GHz)、チップセットにIntel 945GM、無線LANにIntel Pro/Wireless 3945ABGが採用されている。なお、BTOに対応しているため、購入時にCPUに他のグレードを選択することもできる。選択可能なのは、 Core Solo T1300 (1.66GHz) の4種類で、現在の最上位モデルであるT2600(Core Duo、2.13GHz)は選択できないものの、予算に合わせて選択できるのは嬉しい。 余談になるが、本製品では、CPUは比較的容易にアクセスできるところにある。本体の底面部にはやや大きめの蓋があり、ネジを外すと、容易に取り外すことができる。そこには、CPU、HDD、メモリなどがアクセスできるように配置されている。CPUはヒートパイプと一体化したヒートシンクの下にあるのだが、外せないことはなさそうだ。 CPUはハンダ付けBGAタイプではなく、ソケットを使うPGAタイプとなっているので、ヒートシンクさえ外せれば、将来的にCPUを交換するのは不可能ではない。例えば、予算の都合で、Core Solo T1300を搭載しておいて、将来的に保証も切れ、Core Duo T2500が安価になってきたころに交換するという楽しみもある。もちろんユーザー側でCPUなどを交換した場合にはメーカー保証が効かなくなるので、実行する場合には自己責任でお願いしたい。 ●HDDはユーザーアクセスが可能な場所にあり比較的交換も容易 メモリは標準構成で512MB。最大で2GBまで増設が可能になっており、注文時にメモリを増設することも可能だ。 メモリソケットは本体裏に1つと、キーボードの裏側に1つの計2つとなっている。キーボード裏のメモリソケットはアクセスするのが難しそうなので、できれば購入時に最大に増設しておくとよいだろう。なお、増設メモリはDDR2-533に対応した200ピンSO-DIMMを利用して増設することになる。 HDDの接続インターフェイスはシリアルATAで、レビューに利用した製品にはHGSTの「HTS541080G9SA00」が採用されていた。HTS541080G9SA00は5,400rpmで80GBの容量を実現しており、一般的なPCの用途であれば十分な性能を持っていると言っていいだろう。 HDDは注文時に40GBにダウングレードできるほか、7,200rpmで100GBという高性能/大容量ドライブに変更することも可能だ。このあたりは予算に応じて選択するといいだろう。HDDは比較的容易にアクセスが可能な場所にあり、保証の対象外となるがユーザー側で交換も可能だ。将来的な容量アップを狙っている場合にはこの点は重要なポイントだといえる。 光学ドライブは、DVD+R DLの書き込みに対応したNECのDVD±R/RWドライブ「ND-6500A」で、最大書き込み速度はDVD+R DL 2.4倍速、DVD+R 8倍速、DVD+RW 4倍速、DVD-R 8倍速、DVD-RW 4倍速、CD-R 24倍速というスペック。こちらもDVD-ROM/CD-RWコンボドライブにダウングレードして、購入価格を抑えることが可能だ。
●いわゆる“ツルツル”13.1型ワイド液晶 本製品の液晶ディスプレイは13.1型ワイド液晶を採用している。解像度は1,280×768ドット(WXGA)と、16:10に近いアスペクト比となっており、16:9のコンテンツを再生するとやや上下が余るが、4:3のアスペクト比のディスプレイに比べて使い勝手がよい。また、WordやExcelなどのオフィスアプリケーションでも画面を広く利用することができるというメリットがある。 採用されている液晶は、いわゆる“ツルツル”とか“ピカピカ”と言われるグレア液晶で、従来の液晶に比べるとやや明るめとなっている。こうしたグレア系の液晶はノングレア系液晶に比べると写り込みが若干気になるものの、輝度が明るめでビデオ再生などにも向いているとされる。筆者が簡易輝度計で計測してみたところ、以下のような輝度だった。全部で8段階で設定することができ、輝度の調節はFnキーとF6、F7で行なえる。
なお、GPUはIntel 945GM Expressチップセットに内蔵されているIntel GMA 950を利用している。GMA 950は、Microsoftが2007年の1月にリリース予定の次期Windows、Windows Vistaに搭載される3Dベースの新しいUI「Aero Glass」にも対応できる可能性が高く、Windows Vistaへのアップグレードを検討しているユーザーでも、一応安心して利用できるだろう。 ●ノートPCとして必要十分な端子類 このほか、インターフェイス類も一通りきっちり押さえられている。デジカメユーザーには気になるカードスロットだが、SDカード/MMCとメモリースティック(PROも含む)の両方に対応したスロットのほか、Type2 PCカードスロット×1も用意されている。SDカードやメモリースティック以外を利用するデジカメを持っているユーザーは、別売のPCカードアダプタで対応することになる。なお、メモリカードスロットはminiSDやメモリースティックデュオといった小型メディアには対応していないので、変換アダプタを利用する必要がある。 ただ、1つ気になったのは、PCカードスロットは蓋の替わりにダミーカードが使用されていたことだ。細かいことだが、ダミーカードは出先で使ったときに無くしやすいし、何よりも利用時にダミーカードを1度外すという作業が必要なので、やや面倒だ。あまり気にならない人であれば、抜きっぱなしで使えばよいと思うのだが、気になる人には気になる点と言えるだろう。ぜひとも次機種では蓋の形に変更して欲しい。 もう1つ気になったのは、ミニD-Sub15ピンの形状だ。大手PCベンダのPCにも見られるこの形状は、左右の金具を止める部分が用意されていない。ディスプレイケーブルをずっと挿しっぱなしで使うときにコネクタを固定することができない。ただし、実際には本製品のようなモバイルノートPCの場合、移動しながら使うので、ディスプレイは出先でプレゼンする時など限定された環境になる可能性が高い。 USB端子が右側に1つ、左側に2つと用意されている点は評価してよい。多くのノートPCでは右側のみとか、左側のみといったことが多いが、その場合マウスを接続する時にケーブルをかなり引き回さなければならないなど、使い勝手があまりよくない。本製品のように左右両方にあれば、右側にはマウスを接続し、左側には携帯電話をUSBケーブルでつなぐ、という使い方ができるので便利だ。この他に、左側にはモデムポート(V.90/K56flex対応)、右側にはIEEE 1394(4ピン)とSビデオ出力が用意されており、ポート類で不満を感じることはないだろう。 キーボードは6列の日本語配列で、「半角/全角」、「\」キーがやや小さくなっていることを除けばすべてのキーは18.5~19mm程度というフルピッチになっており、ストロークも十分確保され、操作性は悪くない。ポインティングデバイスも一般的なパッド型のもので、操作性は良好で特に不満を感じることはないだろう。
●Pentium 4 630搭載デスクトップPCを上回る性能を発揮 それではベンチマークプログラムを利用して、本製品がどの程度の性能を秘めているのかを確認していこう。利用したのはBAPCoのSYSmark04 SE、FutureMarkのPCMark05 CPUテストと3DMark05(v1.2.0)の3つのベンチマークだ。それぞれアプリケーションレベルでの性能、CPU性能、3Dゲームでの描画性能を示す数値となっている。比較対象として用意したのは、Pentium D 820(2.8GHz)とPentium 4 630(3GHz)を搭載した自作デスクトップPCで、ビデオカードにはGeForce 6600(256MB)を搭載している。 結果はグラフの通りで、本製品はPentium D 820を搭載したPCにはかなわなかったものの、Pentium 4 630を搭載したPCにはSYSmark2004 SEのInternet Contents CreationとPCMark05のCPUテストで上回って見せた。このあたりはCPUのCore Duoがデュアルコアであることのメリットがでており、従来ノートPCの弱点であったエンコードや静止画の処理といったコンテンツの処理系の操作性能が向上していることがわかる。 ただし、本製品はGPUにチップセット内蔵型のIntel GMA 950を採用していることもあり、3D描画性能に関してはGeForce 6600を搭載している自作デスクトップPCにはかなわなかった。ノートPCでは、外付けGPUを搭載すると消費電力が増え、結果的にバッテリ駆動時間が短くなる可能性がある。そう考えると、バッテリ駆動時間とのトレードオフしてまで、3D性能を上げることに意味があるかは疑問が残る。
●DVDの再生で2時間46分、文章の読み取りで3時間50分の駆動が可能 本製品は、6セルのバッテリと光学ドライブを搭載していながら全体で約2kgと比較的軽量を実現しており、十分持ち運びできる重量に収まっている。バッテリは11.1Vの4,400mAhで、容量は48.84Whと、このクラスのノートPCとしては標準的なバッテリ容量となっている。実際にMobileMark 2005に含まれる2つのバッテリテスト(DVD再生、リーダー再生)をやってみると、それぞれ166分(2時間46分)と230分(3時間50分)という結果になった。前者に関してはドライブ内にあるDVDを繰り返し再生するというテストで、飛行機や新幹線などでDVDビデオを楽しむ際の指標、後者に関してはブラウザなどで文章を読んでいくという作業を繰り返し行なうテストとなっている。DVD再生で2時間46分の再生が可能であるので、映画1本分は確実に楽しむことができる。また、文章の読み取りテストでも3時間50分は利用可能で、Core Duo搭載PCとしては一般的な駆動時間だ。
●低価格、コストパフォーマンスを追求したいユーザーにお勧め 本製品の標準OSはWindows XP Home Editionが設定されているが、購入時にBTOでMedia Center EditionやProfessionalを選択することも可能だ。なお、OSなしの選択をすることも可能なので、LinuxなどWindows以外のOSを動かしたいユーザーにも興味深い選択と言える。 以上のように、本製品は、Core Duoを搭載したノートPCとして必要な要素をすべて押えており、搭載液晶も13.1型ワイドと大きめで、モバイルPCとしての機能は十分なものと言える。やはり特筆したいのはその価格であり、Core Duo T2300を搭載しながら価格が12万円台後半という価格は十分お買い得だと言えるだろう。何よりもコストパフォーマンスを追求したい、というユーザーであれば本製品を検討する価値が十分にあるのではないだろうか。 □九十九電機のホームページ (2006年4月19日) [Reported by 笠原一輝]
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