いうまでもなく、世の中の半分くらいは女性なわけで、パソコンユーザーもまた、半分は女性である。なのに、百貨店や量販店で見かけるパソコン用の鞄は、そのほとんどが無機質なものばかりで、女性が好みのものを探すのはたいへんだ。かといって、ブランドもののバッグ売り場には、機能よりも見かけが優先されたファッショナブルなバッグが並ぶばかりで八方ふさがりだ。 ●Intel入ってるバッグ インテルがイタリアのファッションブランドFURLAと女性向けのPCバッグを共同企画したという。学生や社会で活躍する女性を対象に、ノートパソコンを機能的に持ち歩けるPCバッグ“Classic”を制作、全国のFURLAショップで限定500個を販売するという。 できあがったバッグは、A4サイズのノートパソコンが収まる大きさで、バッグ内部には、衝撃を吸収するためのウレタン素材でできたインナーポケットがもうけられている。FURLAといえば、皮革製品を想像するが、今回は、軽量化を最優先し、外装にはナイロンが使われている。青山通り沿いにある本店のショーウィンドウには、発売を記念し、各社のノートパソコンをはじめ、65nmプロセスのウェハまでディスプレイされているのを見たときは、さすがに違和感があった……。 インテルの異業種協業というと、ディズニー、吉本興業などが思い出されるが、ファッションブランドは初めてだ。発表会に出席して挨拶したインテル株式会社共同社長吉田和正氏は、数あるブランドからFURLAを選んだ理由として、モノ作りにこだわるブランドであることに敬意を表したといっている。 FURLAは全社員の84%が女性であり、まさに、女性のための女性の会社であるとフルラジャパン代表取締役社長のアレッサンドラ・ベッターリ氏はアピールする。もちろん、社長自身も女性であり、古くからPCを使いこなしているという。同社の理念は外見のみならず、内面から女性がきれいになることを支援することであり、そのためにはパソコンは自己表現の重要なツールとして欠かせない存在だという。 かくして、インテルは、Intel insideではないインテル関連商品を世に出すことになったわけだ。バッグのオーナーとなった女性が、自分のCentrinoパソコンを中に入れて肩にかけて初めて「Intel入ってるバッグ」となるということだ。 この商品の企画は、ほぼ1年近く前に立ち上がり、隠密裏に作業が進められた。Intelは、今年初頭にロゴを変更し、新たなブランドイメージを打ち出したばかりだが、その作業と並行して進められた企画であったため、けっこうややこしいやりとりが必要だったらしい。 バッグそのものにIntelのロゴがくっついているわけではない。外見はちょっと大きめのバッグであるというだけで、内部にパソコン収納スペースがしつらえてあるようには見えない。パソコンを普段から持ち歩いている女性は、おそらく、汎用的なファッションバッグに直にパソコンを入れてしまうか、ちょっと心配な女性は、衝撃防止のためのインナーバッグを使っている程度なのだろう。 ちなみに、このバッグが、機能的にできているかというと決してそうではなく、たとえば、量販店でよく見かけるパソコンバッグのように、電源アダプタを入れるスペースが用意されていたりすることもなく、マウスなどの小物を入れるための専用ポケットもない。あくまでも、ファッションバッグ側からのアプローチでできている。そこはそれ、Centrinoパソコンなら、電源アダプタなしでも1日の持ち歩きならバッテリも十分ということなのだろう。 製品企画にかかわったインテル株式会社広報室の中村由美子氏によれば、コラボレーションは意外にスムーズに進んだらしい。互いの専門分野がまったく異なるために、要求する要素がぶつかりあうこともなかったようだ。ただし、日本法人同士での企画であったため、FURLAのイタリア本社を説得するのには、多少の苦労があったようだ。 ●パソコンは壊れ物ではなくなりつつある 松下のLet'snoteやNECのLaVie Jのように耐加圧を謳うパソコンが登場し、パソコンは以前よりも壊れ物ではなくなりつつある。特に気を遣うことなく、ごく普通のバッグに忍ばせていても、あまり心配はないと、松下側から説明を受けたこともある。むしろ、大事にくるんで持ち歩かず、裸で鞄にいれておき、すぐに取り出して使える便宜を享受してほしいというのが作り手側の気持ちだ。 その一方で、鞄側からのアプローチも積極的になってきた。ぼくは今、オスプレーというアメリカのアウトドア用品のブランドのフォーカスというデイパックを使っている。このブランドは、バリバリの山歩き用製品を各種ラインアップしているところで、このデイパックもウェストベルトやチェストベルトを装備し、十分に山歩きに耐える仕様となっている。 だが、こんなデイパックにも、パソコンを収納するスペースが設けられているのだ。メーカーによれば、その部分には水のパックを入れておき、チューブで外から飲めるようして使えるということだが、本来の目的はパソコン収納だ。ここにパソコンを入れても、メインスペースには、適当な倍率のズームレンズを装着したデジタル一眼レフカメラがスッポリと収まる。取材の対象によっては、さらに長焦点距離の明るいズームレンズを入れたり、大光量のストロボを入れたりする。 デイパックというのは、移動するという点ではラクだし、機能的なのだが、移動中に中身をとっかえひっかえするには向いていない。肩の負担を考えなければ、やっぱりショルダーバッグの方が使いやすいのだ。 だから、ぼくは、デイパック2つとショルダーバッグ1つ、計3種類のバッグを用意しておき、その日、出かける目的によって持ち出すカバンを決めている。それぞれのバッグには、LANケーブルやUSBケーブル、モバイルマウス、メモ用のUSBメモリ、筆記用具に名刺入れなど、出先で必要になると思われる小物をワンセットにして入れっぱなしだ。だから、でかける場合も、フル充電状態のパソコンを、どのバッグに入れるかを決めるだけで、出先であれがない、これがないという忘れ物が発生しないようにしてある。毎日パソコンを持ち歩くというのは、そういうことだ。 幸い、パソコンも1kg程度になったので、ちょっとした打ち合わせや記者発表に出席する程度の外出なら、ショルダーバッグでも肩への負担を感じなくなったのはうれしい。だから、ほとんどの外出はショルダーバッグで、特別な日だけデイパックを持つという感じになっている。 ●女性は実は力持ち 年から年中同じような格好をしているぼくのような人種と違い、女性というのはつくづくたいへんだと思う。その日着る洋服と履くクツにあわせてバッグを決め、中身を総引っ越しさせる。何が入っているのだかよくわからないが、大振りのバッグに詰まった小物類をみると、相当な重量になっていることが想像できる。 だからといって、ワンピースやスーツにデイパックや黒いPCバッグというわけにはいかないのが女性の論理である。せめて、少しでも荷物の総重量を減らしてあげられるようにパソコンが貢献できればと思う。もちろん、持っていてうれしいスタイリッシュなパソコンであることは最低条件だ。意外と、女性は女性向けと称して作られた商品を喜ばないという傾向もあるようだが、実際のところはどうなんだろう。必然的に、工業製品はユニセックス指向をとりがちだが、あるんだったら、やっぱり可愛いのがいいよねというのが、本音じゃないかと思うのだ。 □関連記事
(2006年3月24日)
[Reported by 山田祥平]
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