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Intel、モビリティ事業部ガディ・シンガー氏インタビュー
「超小型PC“Ultra Mobile PC”の現状」



Intelモビリティ事業部副社長
ガディ・シンガー氏

 2005年8月のIDFで、Intelは、HandTopという新しいプラットフォームを提案した。このHandTopは、現在では、「Ultra Mobile PC(UMPC)」として現在計画が進んでいるという。このためにIntelは、低消費電力のプラットフォーム開発を行なうLow Power Intel Archtecture & Technology Group(以下LPIAと略す)を立ち上げている。

 今回、Intelのモビリティ事業部副社長であり、LPIAのGeneral Managerでもあるガディ・シンガー氏に取材を行なった。シンガー氏は、以前は、XScaleを担当していたこともある。

 インタビューはUMPCの解説から始まった。UMPCは、現在のノートPCと携帯電話やスマートフォンの間に位置するデバイスだ。ポジション的には、PDAや携帯ゲーム機などに近いポジションにあるが、アーキテクチャがPCそのもので、Windowsがそのまま動作するという点が大きく違う。

●丸1日動作するUMPC

UMPCが狙うポジション。現在のノートPCと携帯電話の間にある。PDAや携帯ゲーム機などが占めているポジションでもある

 シンガー氏は、UMPCのポジションを「スウィートスポット」と呼び、携帯性と使いやすさを両立させたポジションだと言う。

 現時点では、UMPCの詳細は公開されていない。しかし、ガディ・シンガー氏は、UMPCの条件として以下のものを挙げた。

・丸1日(Full Day)の動作時間、数日のスタンバイタイム

・重量は1ポンド(約450g)以下

・液晶のサイズは4〜8インチ(約10〜20cm)以内

 また、前述のように完全なPCであり、Windows VistaやLinuxといったPCで使われているOSがそのまま動作するという。

 量産製品が登場するのは2〜3年後という見通しをシンガー氏は述べたが、今年中に動作するプロトタイプが公開されることになるとのことだ。

 シンガー氏によれば、UMPCは、すべての技術が完成してから登場するのではなく、段階的に、進化させていくという。このため、最初の動作するデバイスが今年登場し、その後にVer.1のUMPCが登場、さらに開発を続けてVer.2というような形で公開されていくようだ。1つの区切りとして、Intelは2010年までに消費電力が0.5Wのプロセッサを開発する予定で、これが登場したときに、UMPCが完成することになる。

 そして、このどこかの時点で、早ければ2〜3年以内にOEMの要望などにより、製品化が行なわれる可能性があると、シンガー氏は述べた。

 UMPCのターゲットは、Windows Vistaなのかという質問に対し、同氏は、UMPCは、基本的にノートPCと同じPCであるため、PCで動作するOSはそのまま動作する。特にVistaをターゲットにしているわけではないが、当然動くと述べた。また、Linuxなどについても、当然動くし、実際に何を搭載するのかはOEMの選択だとしている。

 LPIAグループで、UMPC用のCPUやチップセットのコンポーネントを開発するのかという質問には直接答えてはもらえなかったが、LPIAグループで開発した技術は、既存の技術と融合させるものであり、そのポイントが「低消費電力」ということなのだという。また、現状のIntelは、グループが独立して製品を作り上げることはせず、複数のグループが成果を共有するような形で製品を開発していくとのことだ。つまり、ゼロからCPUやチップセットを作るのではなく、既存のモバイル向けCPUやチップセットを流用したり、その派生品などを開発するようである。

 また、「低消費電力で小さなフォームファクターの」、「UMPC専用のコンポーネントを提供する」のは間違いないとのことなので、たとえば、CPUとチップセットを組み合わせたパッケージなどを開発することになるのだと思われる。


UMPCが想定する4つの利用モデル。Webや文書などの閲覧や通信などが主体

 気になるUMPCのパフォーマンスだが、「ノートPCよりは低くなるが、利用形態として考えているコンテンツを楽しむような使い方には十分な性能を持つ」とのことだったので「Windows VistaでInternet Explorerを使ってコンテンツを楽しむ程度の性能はあるのか」と聞いてみたところ、「その通りで、動画の鑑賞やGPSを使ったロケーションアウェアなアプリケーションなら十分な性能」という回答を得られた。

 実際、使い方としては、4つの利用モデルを想定しているようだ。1つは、文書ファイル、予定情報などを外出先で利用すること(Work On The Go)、音楽や映像などを外出先で楽しむ(Entertainment On The Go)、電子メールやVoIPなどのコミュニケーションを外出先で行なう(Communicate On The Go)、最後は、ナビゲーションやマップなどの位置情報と連動するアプリケーションやWebなどを利用すること(Access Internet On The Go)である。

 PDAやスマートフォンとぶつかるのではないかという質問に対しては、「ほとんどのPDAやスマートフォンは、UMPCよりもスクリーンが小さなものになるだろう。また、PDAやスマートフォンに独自の機能があるなら、それを要求するユーザーは、PDAやスマートフォンを選ぶことになる。しかし、PCとの互換性を重視するならばUMPCが選択される。このように、両者は共存するだろう」という回答が得られた。しかし、実際には、PDAや、類似のシステムなどが大きく影響を受けることになると思われる。また、PSPのようなデバイスもあり、ノートPCと携帯電話の間の領域は激戦区になるかもしれない。

 また、シンガー氏は、UMPCのモックアップを見せてくれた。これは、システム手帳ぐらいのサイズで、全面が液晶になっている。実際には、底面側が可動するようになっていて、ずらすことでキーボードやポインティングデバイス(シンガー氏はGame Controlと呼んでいた)が現れる。


シンガー氏が持参したUMPCのモックアップ。液晶を上にして上下2段に別れており、上にずらせば、ゲームコントローラーが、液晶を横に回転させるとキーボードが現れる構造になっいてる

●RubyからUMPCへ

 UMPCは、いきなり登場したように見えるが、実際にはかなり以前から準備されてきたようだ。2004年秋のIDFで、R&D担当(当時)のPat Gelsinger氏は、超小型のPCを公開している。

 展示会場で動作デモが行なわれていたが、そのときに「Low Power IA」という表記がすでに使われていた。これが発展してUMPCになったものと思われる。このデモ機は、説明員の話によれば、Pentium M CPUとチップセットをパッケージに入れずに基板上に直接マウントしたものだという。また、電力管理は、ポリシーマネージャと呼ばれるプログラムモジュールが、ゲームやWebアクセスといったコンピュータの使い方に対応して、必要なデバイスを、必要な性能で動作させるように電力制御を行なうようになっていた。

 そのほか、ノートPCでいうサスペンドからの回復を高速かつ低消費電力で行なうため、HDDではなく、フラッシュメモリにメモリや内部状態を書き出していた。このようにすることで、現在のスタンバイと同程度の時間でサスペンドが可能になっていた。

2004年9月のIDF ShowCaseで、公開された超小型PC。中身は完全なPCでWindows XPが動作している 超小型PCのプロトタイプ。このセットを使ってLPIAの研究開発を行なっていた そのときのブースにあったパネル。すでにLPIAの文字がある

 このプロトタイプは、翌2005年春のIDFで「Ruby」という名称が与えられていた。おそらくこのRubyが、UMPCのベースになったのであろう。

 そして、2005年秋のIDFでは、基調講演でオッテリーニ氏が「消費電力が0.5WのCPUを2010年までに開発する」と発表した。また、このとき展示会場では、Rubyで、カメラを使った顔面の認識などのデモが行なわれていた。これをみても、一応のパワーはもっているようだ。また、デモでは、Windows XPだけでなく、Linuxも動かしていた。

2005年8月のIDF Fallで、HandTop(当時の呼び方)を見せるIntelのオッテリーニCEO 展示会場にあったセットには、Rubyという名称が付けられていた。また、隣のセットはLinuxが動作している(シールに記載がある) このとき、2010年までに消費電力0.5WのCPUを開発することを発表した

LPIAが利用する電力制御モデル。OS側からアプリケーションの動作情報を得、ポリシーに応じて、デバイスの電力制御を行なう。これは、MP3プレーヤーソフトが動いているときの動作で、画面を暗くし、無線モジュールを低消費電力状態に、CPUには、あまり負荷がかからないので、クロックや電源電圧を下げる。また、HDDは、音楽再生に最適化したアクセス方法を使い、間欠的に動かすようにする。CPUが実行しているプログラムに応じてデバイスの電力制御を行なうため、常にシステム全体を電力に対して最適化した状態にすることができる(Intel “Low Power Intel Architecture for Small Form Factor Devices”より)

 これまでの状況を見ると、2005年の中頃には、UMPCを新規のプラットフォームとして立ち上げることが決定され、そのために新しいプロセッサの製品ラインを開発することが決まったのだと思われる。

 シンガー氏がいう、Windows Vistaでコンテンツが楽しめる程度の性能は、おそらくは、現状のCeleron Mぐらいの性能だと思われる。Intelは、Windows Vistaに対応する製品として、現状のYonaやMobile Pentium 4、Celerom Mを挙げているからだ。このうち、最低ラインは、超低電圧版Celeron Mで900MHz程度である。現在は名前のない0.5WのCPU(とりあえずLPIAプロセッサか)は、いくつもの低消費電力技術や小型化の技術を使うことになると思われる。

 4命令同時実行が可能なMeromやその後継CPUをベースにすることでクロック周波数を下げ、さらに微細化やクロックゲーティングといった技術を使う。また、2005年秋のIDFでJustin Ratner氏が公開した、CMOSのボルテージレギュレータや、複数のチップを重ね合わせるスタックチップ(これについては、2005年春のIDFでRatner氏が将来技術として基調講演で取り上げた)なども2010年なら実用化されていそうだ。

 チップセットも、前述の電力制御で周辺装置の省電力化がやりやすいように作り、さらにクロックゲーティングのような技術を使って、チップセット自体の消費電力を下げる。また、このころには、無線LANなどもチップセットに取り込まれているのかもしれない(Radio Free Intelとして2004年にPat Gelsinger氏が基調講演で取り上げた)。

 2010年という期限に対しては、あと5年ほどの余裕があり、その間のバッテリやHDD、ディスプレイデバイスの進歩を考えると、バッテリで一日動作するPCは、必ずしも夢物語ではない。ただ、UMPCは動き出したばかり、計画前倒しだけでなく、軌道修正も素早いIntelのこと、5年先にはどうなっているかは予測不可能だ。ただ、現在のCPUのトレンドは、低消費電力化。ノートPCのみならず、デスクトップ用、サーバ用のプラットフォームも低消費電力を目指している。

 LPIAの技術は、UMPC以外にも、応用可能だ。つまり、UMPC計画自体がどうなろうとも、UMPCプラットフォーム開発の過程で作られた技術は無駄にはならないわけだ。シンガー氏が他のグループで開発した技術との融合を行なうといったことには、このような意味が込められているのではないだろうか。


□Intel Low Power IA(英文)
http://www.intel.com/technology/systems/lpia/index.htm
□IntelのWindows Vista対応モバイルCPU(英文)
http://www.intel.com/business/bss/products/client/vistasolutions/mobile.htm
□関連記事
【2005年8月25日】【IDF】オッテリーニCEOが次世代マイクロアーキテクチャへの移行を発表
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0825/idf03.htm
【2005年4月8日】【IDFJ】未発表のFuturemark製デュアルコア対応3Dベンチがデモ
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0408/idf02.htm
【2004年9月11日】【IDF】パット・ゲルシンガー氏基調講演レポート
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2004/0911/idf06.htm

(2006年2月20日)

[Reported by 塩田紳二]

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