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MIPS、マルチスレッディング対応の32bitコアファミリを発表

2月6日(米国時間) 発表



 米MIPS Technologiesは2月6日(米国時間)、32bit MIPSアーキテクチャでマルチスレッディングに対応したコアファミリ「MIPS 32 34K」(以下は34Kと表記)を発表した。MIPSがこれまでにライセンス販売してきた32bitプロセッサコアと同様の、論理合成可能なソフトウエアプロセッサコア(シンセイサイザブルコア)である。論理合成を実行する前にユーザーがプロセッサの仕様を選択し、その条件選択に沿った回路(RTL:register transfer level)が専用ツールでプロセッサコアとして生成される仕組みになっている。

 MIPSはここ数年、32bitプロセッサコアではハイパフォーマンスと呼ぶハイエンドのコアを拡充してきている。2003年6月にハイパフォーマンスでは最初のコア製品「24K」を開発し、2005年5月にはDSP拡張を装備した「24KE」を発表した。今回の34Kは24KEを基本に、複数のスレッドを同時に処理するマルチスレッド処理機能を実装したコアである。なおマルチスレッド処理技術そのものは、「MT ASE (Application Specific Extension)」の名称で2003年10月に拡張機能として発表していた。

 34Kはハードウエアとしてはシングルコアだが、2個の処理エレメント(VPE:Virtual Processing Element)を仮想的に備え、同時に最大5個のスレッドを処理する。VPEの数と、VPEに割り当てるスレッドの数は、あらかじめユーザーが設定できる。OSとVPEの割り付けでは、1個のOSに2個のVPEを割り付けてもよいし、2個のOSのそれぞれにVPEを1個ずつ割り付けてもよい。

32bit MIPSプロセッサコア製品のロードマップ。「4K」や「4KE」などのエントリレベル製品群と、「24K」や「24KE」などのハイパフォーマンス製品群に分かれている。今回発表された「34K」は、「24KE」にマルチスレッディングの機能拡張を付加したコアである。34Kの動作周波数は90nmプロセスで製造したときに500MHzとなっている 34Kコアのマルチスレッド処理。仮想的な処理エレメント(VPE:Virtual Processing Element)を最大2個、スレッド処理のリソース(TC:Thread Context)を最大5個まで搭載できる

 34Kコアが各スレッドを処理する優先順位は、QoSと呼ぶ回路が動的に決定する。これにより、ビデオデータやオーディオデータなどのストリーミングデータを切れ目無く処理できるようになる。なおQoS回路はオプションであり、QoS回路を実装しない場合は、各スレッドの処理順位は固定される。

 34Kコアの回路面積は、24KEに比べると16%程度大きい。これに対し、MIPSが例として挙げたベンチマークでは、34Kの性能は24KEに比べて6割程度向上している。なおMIPSは今回の発表で、組み込み用途向けにはシングルコアのマルチスレッディングの方が、デュアルコアやデュアルイシュー(2命令同時発行)よりもコストパフォーマンスが高いと表明している。

アプリケーションとスレッド処理の関係。QoS回路が、スレッド処理の優先順位を動的に変更する 処理性能の比較。EEMBCベンチマークのOSPFとPKFLOWを処理させた場合。24KEコアではOSPFとPKFLOWを連続して処理させ、34KコアではOSPFとPKFLOWを同時に処理させた。34Kでは、処理に必要なクロックサイクル数が24KEに比べて約6割に減少した
34Kの機能一覧。黄色の文字で書かれた部分が、24KEとの違い。パイプラインの段数は9段となり、24Kの8段に比べて1段増えている 34Kコアのブロック図。点線で囲んだブロックは、搭載するかどうかをユーザーが選択できるオプションである VPEを2個実装したときの詳細。VPEA(左)が標準的な制御処理を実行し、VPEB(右)がDSP拡張を実装してデータ処理を実行するように設定した例(2003年10月にMIPSが発表した、MT ASEに関する資料から抜粋)

 なお34KのVPEとマルチスレッディングに対応するOSやソフトウエア開発環境は、MIPSのパートナー企業が順次、提供していく予定である。

34Kを利用したアプリケーションの例。スキャナとプリント機能を備えた複合機プリンタに適用した。プリント機能のスレッドとスキャナ機能のスレッドがそれぞれ別のVPE上で動く。OSは例えばパートナー企業のTimesysが、SMP Linuxを提供する 34Kをサポートするパートナー企業の名称と主な製品

□MIPS Technologiesのホームページ(英文)
http://www.mips.com/
□関連記事
【2005年5月24日】Spring Processor Forum 2005レポート
~さまざまなDSP搭載プロセッサ(その1)
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0524/spf05.htm
【2003年10月18日】【後藤】全てのCPUはマルチスレッドへ、明確になったCPUのトレンド
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2003/1018/kaigai034.htm

(2006年2月7日)

[Reported by 福田昭]

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