NVIDIAは1月18日に「GeForce 7300 GS」を発表した。これまでハイエンドセグメント向けにのみリリースされていたGeForce 7シリーズが、ようやくローエンドにも降りてきた格好だ。そのパフォーマンスを検証してみたい。 ●メインメモリ容量に応じてフレームバッファも可変 まずは、GeForce 6200の後継となるGeForce 7300 GSの主なスペックを確認しておきたい(表1)。アーキテクチャ面では基本的にGeForce 7シリーズに準じており、Cine FX 4.0、IntelliSample 4.0、PureVideoなどを実装。また、GeForce 6200では対応していなかった、HDRを実現するための64bitテクスチャブレンディング/フィルタリング等もサポートしている。同技術に関する最近の話題としては、αRGBの各チャネルに対して浮動小数点16bitテクスチャリングを必要とする、3DMark06のHDR/SM3.0テストが1つの例である。 GeForce 7800 GTX/GTとの比較でいえば、コア/メモリクロックやシェーダユニット数が異なるほか、SLIに対応しない点も異なる。また、GeForce 7800 GTX/GTは0.11μmプロセスで製造されていたが、GeForce 7300 GSはNVIDIAでは初めて90nmプロセスを導入。ライバルのATIは90nmプロセスをすでにRadeon X1000シリーズから導入しており、プロセス技術の面ではNVIDIAが追い付いた格好となる。 なお、この表におけるGeForce 7300 GSのスペックは試用するASUSTeKの製品(写真1~2、画面1)をベースに記しており、実際の製品ではメモリクロックが異なる製品も登場する予定で、購入時には注意したい。メモリインターフェイスは64bit、利用可能なメモリはGDDR2またはGDDR3となっている。
また、GeForce 7300 GSは、TurboCache機能をサポートしている。TurboCache機能は、ビデオカード上に搭載したビデオメモリ以外に、メインメモリの一部をフレームバッファとして利用できる機能だ。 今回試用したASUSTeK製カードではGDDR2メモリを128MB搭載しているが、PCのメインメモリが512MBの場合はビデオメモリが256MB、1GB以上の場合は512MBとして認識される(写真3、画面2~3)。必要に応じてメインメモリを利用する仕組みなので、2D描画がメインであればあまり心配する必要はないが、3D描画時には最大で384MBもメインメモリが占有される可能性もあるので注意したい。
●ビデオメモリのボトルネックが顕著 それでは、パフォーマンスの検証を行なっていきたい。環境は表2に示したとおり、比較対象にはGeForce 6600、GeForce 6200、Radeon X1300 PROを用意した。なお、GeForce 6200搭載カードは、Albatronの「PC6200」で、コア300MHz/メモリ400MHzと、定格よりやや遅い設定の製品となっている。GeForce 6600はELSAの「GLADIAC 743 128MB」を利用しており、こちらは300MHz/550MHzでの動作となる。 Radeon X1300 PROは、リファレンスカードを利用。搭載製品の販売価格が15,000円前後と、GeForce 7300 GS(同1万円前後)よりも少し上のクラスであるが、後発のGeForce 7300 GSがどこまで対抗できるのか見てみたい。
まずFutureMarkの「3DMark06」の結果である(グラフ1~3)。ここではGeForce 6600と6200のビデオメモリが128MBと、3DMark06の要件を満たしていない。そのため、少しでも解像度を上げたり、フィルタを適用したりするとテスト途中でエラーが発生しまった。かろうじて1,024×768ドット/フィルタ適用なしの条件では完走を果たしたので、参考値として掲載した。また、GeForce 6200はHDR/SM3.0テストを実施できないため、3DMarks値の算出が別の計算式で算出されていることになる。 この結果を見ると、Radeon X1300 PROの性能の高さが目に留まる。とくに解像度やフィルタなどで描画負荷が高まったときの性能差が大きく、SM2.0テストで4倍以上、HDR/SM3.0テストで5倍以上も開いた。これは、GeForce 7300 GSのTurboCacheによるメインメモリ上へのアクセスや64bitメモリインターフェイスという仕様に対して、ビデオカード上のローカルメモリのみで、しかも128bitのメモリインターフェイスを持つRadeon X1300 PROとの差が大きく表れた結果といえるだろう。 NVIDIA同士の比較でいえば、SM2.0、HDR/SM3.0ともにGeForce 6600とGeForce 6200の間のスコアとはなっているが、GeForce 6600に肉薄する数値を見せているあたりは、同社におけるバリュー向け製品の性能底上げには成功している感を受ける。
続いては、「3DMark05」の結果である(グラフ4)。ここでは、1,024×768/1,280×1,024ドットのフィルタ適用なしの条件において、GeForce 7300 GSがGeForce 6600を上回るという好結果を見せた。一方、GeForce 6200との比較においては、描画負荷が高まるにつれ、差を詰められる傾向にある。
このほか、「3DMark03」(グラフ5)、「AquaMark3」(グラフ6)、「DOOM3」(グラフ7)、「Unreal Tournament 2003」(グラフ8~9)の結果を掲載している。AquaMark3とUnrealTournament2003のBotmatchの結果は、3DMark05に近い傾向で描画負荷が小さいとGeForce 7300 GSがGeForce 6600を上回る性能を見せる。 残りのテストではGeForce 6600が優位に立っているほか、描画負荷が大きくなるほどGeForce 6600の優位性は高まる。健闘はしているが、追い抜くには至らないのが惜しいところだ。 GeForce 6200との比較では、DOOM3を除けば、安定してGeForce 7300 GSが好結果を残している。ただ、この比較においても、やはり描画負荷が高まったときに、GeForce 6200のローカルメモリによるフレームバッファと128bitメモリインターフェイスの優位性が表れる格好になっている。
●価格とアーキテクチャ勝負の製品 以上のとおりベンチマークの結果を見る限りでは、低解像度では健闘を見せる本製品だが、Radeon X1300 PROやGeForce 6600に差をつけられており、高解像度においてはTurboCache無しのGeForce 6200と同等かそれ以下。加えて言うならば、Radeon X1300 PROにはCrossFireというアップグレード手段も残されているわけで、3Dパフォーマンスの面ではインパクトの弱い結果となった。 ただ、このクラスにおいては価格や機能も重要視される。GeForce 6600(128MB)やRadeon X1300 PROは1万円台前半~半ばぐらいの価格帯となっている。GeForce 7300 GSは複数メーカーが1万円を切る価格帯の製品を検討していると聞き及んでおり、価格面では優位に立てそうだ。 また機能面でいえば、3D描画時のHDRサポートのみならず、PureVideoもGeForce 6200ではサポートされない2:2/3:2逆テレシネや時空間インターレース除去などをサポートした。 つまり、価格や機能の面での魅力は決して小さくなく、3D描画性能にこだわらないユーザーにとっては、有力な選択肢が登場したといえるのではないだろうか。 ATIがいち早くハイエンドからローエンドに渡って90nmプロセス、新アーキテクチャの製品を投入したのに比べると、NVIDIAのGeForce 6シリーズからの移行は明らかに遅れをとっている。それだけに、GeForce 7シリーズのバリュー向け製品、しかも90nmプロセスの製品が投入されたという事実は大きい。今後、GeForce 6600/6600GTクラスの後継となるGeForce 7シリーズの登場にも期待したい。 □関連記事 (2006年1月31日) [Text by 多和田新也]
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