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Macworld Conference&Expo San Francisco 2006

スティーブ・ジョブズCEO基調講演レポート
~Intel Core Duo搭載で新世代を迎えるMac

会場:San Francisco The Moscone Center
   (モスコーニセンター)

会期:1月10日~13日(現地時間)



 米Apple Computerにとって大きな転換点となる2006年は、その象徴とも言える新製品の投入で幕を開けることになった。Macworld Conference&Expo San Franciscoの基調講演で、同社のスティーブ・ジョブズCEOはIntel製CPU「Core Duo」を搭載する「iMac」と「MacBook Pro」2つの新製品を発表。2006年にはMac全てのラインナップをIntel製CPUへと移行することも明らかにし、新世代Macへのスタートを切った。本稿ではその基調講演の模様をお伝えする。

●iPod向けのアクセサリー「iPod Radio Remote」を発表

 定刻の午前9時よりやや遅れてステージに登場したジョブズCEOは、ここ数年来の講演では恒例の直営店舗の状況から講演をスタートさせた。同氏によれば、昨年末のホリデーシーズンには全世界135店舗に延べ2,600万人が店舗を訪れ、四半期の売り上げが初めて10億ドルに達したことを明らかにした。

 また、その好調さの最大の要因でもあるiPodに関して、2004年ホリデーシーズンの実績である450万台を大きく上回る、1,400万台ものiPodを2005年の同一四半期に売り上げたという。これは世界中で1分あたり100台を超えるiPodが売れている計算になる。iPodの総出荷数4,200万台のうち、3,200万台が2005年内に売れたとされる。

 iTunes Music Storeでは1日300万曲がダウンロードされ、マーケットシェアは83%にも及ぶ。米国でスタートしているTV番組の配信では、開始3カ月で延べ800万番組を販売。加えて10日から人気番組「サタデーナイトライブ」の提供を開始する。またABCやESPNとのパートナーシップでスポーツ番組の配信も始まっている。いずれも日本からは利用できず、またJapan StoreではTV番組の配信自体が始まってはいない状況だ。

2005年のホリデーシーズンに1,400万台のiPodを売り上げた。全世界で1分あたり100台を超えるiPodが売れる計算だ TV Showの配信は開始3カ月で800万ダウンロードを超えた。米国の人気番組「サタデーナイトライブ」も10日から配信が始まる

 iPod向けのアクセサリー「iPod Radio Remote」は、有線リモコンとFMチューナを組み合わせた製品。iPod nanoや第5世代iPodに接続して利用する。受信帯域は米国とヨーロッパ標準では87.5MHz~107.9MHz、日本標準では76MHz~90MHz。単一の製品でiPod本体の設定で受信エリアを切り替えて使用可能だ。本日から出荷がはじまり、米国では49ドル。日本では5,800円の価格設定となっている。

 iPod関連で最後の話題は米3大自動車メーカーでは初めて、クライスラーグループによるiPodのサポートがスタートする。2006年に全米でChrysler、Dodge、Jeepが販売する40%の車にiPodのインターフェイスが搭載される見込みだ。

iPod向けのアクセサリー「iPod Radio Remote」。iPod Shuffleのコントローラ部分だけを切り抜いたようなデザイン FMチューナ利用時の表示。選曲はオートスキャンと、クリックホイールを操作してのチューニングの両方で行なえる

●ポッドキャストにフィーチャーするiLife '06のアップデート

 続いて「MacworldだからMacについての話をしよう」と切り出したジョブズCEOは、最初に「Aperture」を紹介。ただし先日製品発表したばかりのアプリケーションとあって、アップデートではなく、製品の重要性と初見となる来場者に向けた紹介を重視した内容となっていた。同様にMac OS X 10.4 "Tiger"のウィジェットについても時間を割いた。紹介されたGoogleやESPNのウィジェットは、同日から提供されているMac OS X 10.4.4のアップデートを実施することで自動的にインストールされる。

現在は1,500を超えるウィジェットが利用可能となっているMac OS X 10.4 "Tiger" なかにはゲレンデ情報を表示するウィジェットもある

 ここ数年は年初恒例となっている「iLife」も「iLife '06」としてアップデートされた。構成アプリケーションのなかでiTunesを除く、iPhoto、iMovie、iDVD、GarageBandの4種がそれぞれバージョンアップしている。「iPhoto」では25万枚の写真を管理できるようになったほか、フルスクリーンでレタッチができる機能も追加された。

 また従来のブック作成機能に加え、カレンダーやメッセージカードなども作成できる。ジョブズCEO自らデモしてみせたのはPhotocastingの機能で、言うなればポッドキャスティングの写真版。元々iPhotoには.Macと連携してアルバムを公開する機能を備えていたが、これを特定の登録した閲覧者に配信する仕組みだ。

 ポッドキャストへのフォーカスは「GarageBand」でも顕著で、ここではポッドキャスト用のファイルを作るPodcast Studioの機能に絞ってのデモが行なわれた。新バージョンには200を超えるサウンドエフェクトと100を超えるジングルが収録され、容易にDJ風の演出が可能。もちろんこれらは著作権フリー音源だ。ポッドキャストに利用する音源にはiChatの会話も利用することができる。

 GarageBandを使ったPodcasting制作のデモは、ジョブズCEO自身が次期iPodの秘密をばらすという内容。台本まで用意して「Hi, I'm Steve!」からスタートし「すごい秘密を手に入れたぜ。アップルの内部情報によると、次期iPodは8ポンドの本体に10インチのスクリーンを搭載するビッグなものだ!」とブチ上げる。

 別トラックにジングルを加え、同時に表示されるアートワークも用意。このアートワークが最新のiPod Adに手を加えたもので、デモ以上のネタに仕上がっている。このデモでは、ジョブズCEOのボイストラックが入ると自動的にジングル側の音量が下がる機能も見所なのだが、会場ではそれに気がつかないほどにウケている来場者も見られた。

iPhotoからPhoto Castingを設定する。アップロードされた写真は登録済みの購読者に自動的に配信される ナレーションの台本を手に、GarageBandを使ってポッドキャスティング用のファイルをノリノリで制作するジョブズCEO 画面右上には、Apple内部情報からもたらされた8ポンド、10インチスクリーン(笑)の新型iPodも映し出されている

iLife '06から新たに加わる「iWeb」。6番目のアプリケーションはテンプレートへのドラッグ&ドロップでBlogやポッドキャスティング付きのサイトを容易に制作できる

 加えてiLife '06には「iWeb」が6番目のアプリケーションとして加わった。Web制作のアプリケーションだが、提供されるテンプレートに写真やムービーをドラッグ&ドロップするだけで容易に制作できるのが特徴。BlogやPodcastingもサポートしている。

 iLife '06は、79ドルで同日より出荷を開始する。最大5クライアントにインストール可能な99ドルのファミリーパックも用意されている。日本国内向けの価格はそれぞれ8,800円と10,800円。新たに出荷されるMacには付属する。

 2005年に発表されたiWorkも「iWork '06」としてアップデートされた。こちらも「iLife '06」と同様に79ドルで同日より出荷。ファミリーパックは99ドル。日本国内向けの価格はそれぞれ8,800円と10,800円。新しいMacにはトライアルバージョンが付属する。


●新世代Macは、iMacから登場

 2005年のWWDCにおいて「2006年6月までに最初のIntel製CPU搭載のMacを出荷する」とアナウンスしたジョブズCEOが、ここで状況の進展度合いをアップデートした。ステージの奥からスモークに包まれて登場したのは、Intelのポール・オッテリーニ社長。Core Duoとおぼしきウェハを手に、ジョブズCEOへと歩み寄り「Intel側の準備はできたよ」と手渡した。ジョブズCEOも「Apple側も大丈夫」と応じた。

 そうして「今日、Intel製プロセッサを搭載するMacをロールアウトする。これは最初の新世代Macだ」と宣言。最初のモデルとしてiMacを紹介した。

 このiMacは従来のiMac G5と「同じ大きさ、同じデザイン、同じフィーチャー、同じ価格」。では、どこが違うのか?「それは2~3倍高速になっている」と誇らしげにジョブズCEOは告げた。Intel Core Duoを「1つのダイに2つのコアを搭載するIntel最新のプロセッサ」と紹介し、SPECint_rate2000とSPECfp_rate2000のデータを例示して、高速性を数字で表した。

Intelのポール・オッテリーニ社長は、Core Duoとおぼしきウェハを手に、ジョブズCEOへと歩み寄り「Intel側の準備はできたよ」 Core Duo搭載のiMacは同じ大きさ、同じデザイン、同じフィーチャー、同じ価格。しかし、2~3倍速い SPECint_rate2000とSPECfp_rate2000のデータを例示して従来比2~3倍の高速性を数字で表した

 先にジョブズCEOが発言した「Apple側の準備」は、Mac OS X 10.4 "Tiger"とそれに付随するアプリケーションのユニバーサルバイナリ化である。ここで同氏はさきほどまでiLife '06をデモしていたiMacを指し示し、「もう(Intel対応アプリケーションの)デモは見たじゃないか」と種明かしをしてみせ会場を沸かせた。

 「Aperture」や「Final Cut Pro」、「Logic Pro」などいわゆるプロフェッショナル向けのアプリケーションは、3月にPower PCベースのMacでもIntelベースのMacでも動作するユニバーサル・バイナリ化が行なわれる。これらはそれぞれ49ドルでユニバーサル・バイナリ化されたバージョンへの交換が可能になるという。

 サードパーティではQuarkがMacworld Expoの会場で、ユニバーサル・バイナリ化された次期バージョンのベータ版を提供する。またMicrosoftからは、同社のMacintosh Business UnitのRoz Ho氏が登場し、Mac向けの次期Officeの開発と提供を最低でも5年に渡って継続することを表明した。次期Officeはユニバーサル・バイナリ化されたアプリケーションとして登場する見込み。

 また、2005年のWWDCでは2007年6月とコメントされていたMac全ラインナップのIntel化の完了時期を前倒しして、2006年内に全ラインナップの更新が行なわれることを明らかにした。

「Apple側の準備はできたよ」は、Intel製CPU対応のMac OS X 10.4.4 "Tiger"。付属するアプリケーションなども含めてユニバーサル・バイナリ化されている さきほどまでiLife '06をデモして見せていたiMacを指し示し、「もう(Intel対応アプリケーションの)デモは見たじゃないか」と種明かし WWDC 2005で発表した予定を6カ月前倒し。2006年内にはMacの全ラインナップでIntel製CPU搭載が実現する

●One more thingは、「MacBook Pro」

 お約束となった「One more thing……」は、PowerBookのアップデートだった。昨年のWWDCでも紹介された「ワット当たりのパフォーマンス」がPower PC G4に対して約4倍になるというCore Duoを搭載するノートブック。最初期モデルから15年続いたPowerBookの名を廃して、「MacBook Pro」として発表された。

 製品の詳細については別記事にて詳しく触れるが、iMacで示したのと同様のベンチマークで、既存のPowerBook G4に対して4~5倍の性能を持つことをアピール。本体はこれまでのどのPowerBookよりも薄い。また搭載されるLCDの輝度は同社のシネマディスプレイに匹敵し、そのパネルの上部にはiSightカメラを搭載する。iChatAVのデモは、お馴染みのフィル・シラー副社長が相手。お約束のようにジョブズCEOが「さぁ誰と話そうか?」と発言するとその後の展開を予測した来場者達から早々に笑いも漏れた。シラー副社長は場内の関係者席でMacBook Proを手にiChatAVに参加した。

G5プロセッサを搭載していたiMac G5に比べiMac(Intel Core)が2~3倍速いのなら、G4プロセッサのPowerBook G4に比べてMacBook Proは4~5倍速い MacBook Proの紹介でもベンチマークの結果を披露
Core Duo採用の根拠である「ワット当たりのパフォーマンス」の優位性を、WWDC 2005の講演に続いて強調した 液晶パネルの上部にiSightカメラを内蔵。このスライドが表示されて会場は沸いた

 iMac G5で搭載されたFront Rowもサポート。MacBook ProにはApple Remoteも付属してFront Rowをリモコン操作できる。そしてまったく新しいフィーチャーが「MagSafe」。電源ケーブルを電気湯沸かしポットのように磁石で吸着する仕組みで、コードを足に引っかけたりする事故を防げるとしている。

 基調講演で詳しくは触れられなかったが、PowerBook G4で搭載されていたPCカードスロットは、MacBook ProでExpressCardスロットへと変わっている。MacBook Proは、この日発表された新製品の中で唯一2月に出荷される製品となる。

 最後に、iMacの発表直後に見せたCMがもう一度上映された。このCMはAppleのWebサイトで見ることが出来る。

 '76年4月1日、エイプリルフールに創業したApple Computerは、今年創立30周年を迎える。スクリーンには30年前の若き日のスティーブ・ジョブズ氏とスティーブン・ウォズニアック氏が映し出された。ジョブズCEOは「30年間にわたり、素晴らしいパーソナルコンピュータを作り続けてきた」と、コメントして講演は締めくくられた。

磁石で電源ケーブルを吸着する「MagSafe」。特許出願中ということだが、電気湯沸かしポット系の技術とはどう違うのかも気にかかるところ 講演の最後に示されたスライド。'76年4月1日、エイプリルフールに創業したApple Computerは、今年創立30周年を迎える

□Macworld Conference&Expoのホームページ(英文)
http://www.macworldexpo.com/
□Apple Computerのホームページ(英文)
http://www.apple.com/
□関連記事
【1月11日】アップル、Intel Core Duo搭載の「MacBook Pro」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0111/apple1.htm
【1月11日】アップル、Intel Core Duo搭載の「iMac」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0111/apple2.htm
【1月11日】アップル、表計算機能などを強化した「iWork '06」
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2006/0111/apple3.htm
【2005年6月7日】【WWDC】スティーブ・ジョブズCEO基調講演詳報
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0607/apple3.htm

(2006年1月11日)

[Reported by 矢作晃]

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