●ダヴィンチコードとソニー
ただ、筆者がソニーという企業名を聞いてまず連想する電子/電気機器メーカーという色彩より、映画や音楽などのコンテンツ分野の比重が高い内容だったのは、タイトルが示す通り。エレクトロニクス分野のCEOである中鉢社長との分権体制を考えれば、不思議でもなんでもないが、ソニー全体のCEOとしては、もう少し踏み込んで欲しい印象は否めないところだ。特に、紹介されたソニー製品が、必ずしもわれわれ日本人にとっての新製品とは限らない点が、この印象を強くする。
このダヴィンチコードは、ソニー製のデジタルシネマ機材で高解像度の映画となり、さらにBlue-Rayでパッケージ化される模様だ。もちろんそれを見るのはBRAVIAとGrand WEGA(米国ではリアプロのGrand WEGAは人気が高い)というわけで、確かに今回の基調講演の縦糸になり得るものではある。実際、ゲストとして映画ダヴィンチコードのプロデューサー(Brain Grazer)、監督(Ron Howard)、俳優(Tom Hanks)が顔をそろえており、力が入っているのは間違いない。Tom Hanksはソニー製デジタルカメラDSC-T7を持って登場、広告役まで勤めた。 ●コンテンツとエレクトロニクスを両手に
逆に日本人としてとても気になったことがある。それは、冒頭で上映されたビデオだ。街に突然三角形(再生ボタンの象徴)が現れ、それを押すとさまざまなコンテンツが街にあふれ出し、それを世界各地のニュースが伝える、といった内容で、もちろん日本も登場する。そのシーンに登場する女性アナウンサーの名前が「鈴木少し花」なのである(わざわざ日本語のキャプションが入る)。
まぁ、ハリウッド映画等には良くありがちな間違いではあるのだが、日本企業であるソニーのビデオとしてはいただけない。おそらく会場にいた日本人は、みなガッカリしたのではないだろうか。ソニーはもはや日本企業ではなく、世界企業だと逆説的に言っているのかもしれないが、ソニーが日本にルーツを持つ企業であることに変わりはない。誰かチェックする日本人スタッフはいなかったのだろうかと残念に思う。 ●XCP/rootkitの問題に言及 こうしたディテールも含めて、クラフツマンシップのようなものが最近のソニーには希薄になっている気がしてならない。あるいはQUALIAの反動、ということなのかもしれないが、物作りをするメーカー(少なくともソニーの半分は今でもそのハズである)として、失ってはならない側面もあると思う。このあたりは、中鉢社長に期待したいところだ。 さて、ソニーということでどうしても言及しなければならないのは、昨年世間を騒がせたXCP/rootkitの問題だろう。CESといういわばお祭りの場だけに、全く触れないのではないかとも思っていたのだが、冒頭でサラリと言及された。 内容的には、XCPが著作権を保護するというより、ユーザーに酷い仕打ち(使われた言葉はpunishment)をする結果となってしまったのは皮肉なことだったが、それだけコンテンツ保護について真剣に考えている証である、といったような話で、ユーザーに対する謝罪、というニュアンスは感じられなかった。CESというイベントが基本的に業界関係者向けで、ユーザーや消費者向けのイベントでないことを反映したものかもしれないが、この件についても、もっと踏み込んだ発言が欲しかったように思う。
□関連記事 (2006年1月8日) [Reported by 元麻布春男]
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