12月19日、富士通が春モデルのラインナップを発表した。春モデルの発表は、年明けの1月になされるのがこれまでの通例であったが、今年は富士通だけでなく、NECや東芝といった主要PCメーカーがこぞって12月19日に製品を発表し、その多くは12月中に、出荷/販売が開始されるという、やや異例の展開となった。 今回発表された春モデルの中でも、特に注目したいのが、FMV-BIBLO NXシリーズの最上位モデルとなる「FMV-BIBLO NX90R/W」である。富士通のサイトに掲載されているFMV-BIBLO NX90R/Wのスペックを見ると、CPUが「インテル社次世代デュアルコアプロセッサ(未公表)」となっているほか、キャッシュサイズやシステムバス、チップセットも「未公表」とされている。 この現時点で未発表のモバイル向けデュアルコアCPUは、開発コードネーム「Yonah」と呼ばれているCPUであることは推測に難くない。Yonahは、2006年1月5日から開催される2006 Internationl CESで正式発表される予定で、CPUの名称や詳細な仕様、対応チップセットなどについても、そのときには明らかにされるはずだ。Yonahおよび、Yonahを採用した新プラットフォームの「Napa」については、笠原氏の記事に詳しいので、そちらを見て頂きたい。 今回は、FMV-BIBLO NX90R/Wの試作機を試用する機会を得たので、早速レビューしていきたい。なお、今回試用したのは、量産品ではなく、試作機であるため、細部の仕上げなどが異なっている可能性がある。また、ベンチマークなどの評価も行なっていない。 ●1.66GHz駆動のデュアルコアCPU「Yonah」を搭載 FMV-BIBLO NX90R/W(以下NX90R/W)は、17型ワイド液晶を搭載した大型ノートPCで、富士通のBIBLOシリーズの中でも、最も大型の製品である。サイズは、403×295×46.5mm(幅×奥行き×高さ)で、重量も約4.6kg(下位モデルのNX70R/Wの場合)あるので、基本的に省スペースデスクトップ代わりに使うための製品だ。 CPUは、前述したように現時点では未発表だが、システムプロパティ画面(画面1)やデバイスマネージャ(画面2)を見る限りでは、1.66GHz動作のYonahを搭載しているようだ。タスクマネージャを開いても、やはりデュアルコアCPUとして認識されていることが確認できる。
チップセットについては、デバイスマネージャでMobile Intel 955XM/945GM/PM/GMS/940GML Expressと認識されており、本製品ではGPUとして、ATIのMobility Radeon X1400を搭載(画面4)していることから、グラフィックスコアを統合していない、Mobile Intel 945PM Express(以下Intel 945PM)が採用されているものと推測される。 標準で768MBものメモリを実装していることも評価できる。ただし、その内訳は512MB+256MBとなっているため、2つあるSO-DIMMスロットは埋まってしまっている。同容量のSO-DIMMを2枚装着した場合は、デュアルチャネルアクセスが有効になるため、パフォーマンスの向上が期待できるのでこのような仕様となっているのだろう。メモリは最大2GBまで増設が可能だが、増設する場合は、標準で装着されているどちらかのSO-DIMMを外す必要がある。なお、メモリの仕様は、PC2-5300(DDR2-667)と公表されている。
●HDDを2台搭載し、合計320GBの大容量を実現 CPUやメモリ以外の仕様も充実している。HDDとして、2.5インチ160GBドライブを2台内蔵しており、合計320GBという、デスクトップPC顔負けの大容量を誇る。光学ドライブとしては、2層メディアのDVD±R DL対応DVDスーパーマルチドライブを搭載。DVD±Rメディアには最大8倍速で書き込みが可能だ。 液晶ディスプレイには、17型ワイド液晶を搭載し、解像度は1,440×900ドット。光沢タイプの液晶だが、低反射コートが施されており、映り込みが抑えられている。2灯式バックライトを装備しているため、輝度が高く、発色も鮮やかだ。視野角も広く、液晶の表示品位については不満はない。 前述したように、GPUとして、Mobility Radeon X1400を搭載する。ビデオメモリは128MB実装しているが、必要に応じてメインメモリの一部を動的にビデオメモリとして確保するHyperMemoryをサポートしており、ビデオメモリは最大256MB相当となる。Mobility Radeon X1400は、DirectX 9をフルサポートしたGPUであり、最新ゲームも快適にプレイすることが可能だ。 ハードウェアエンコーダ搭載のTVチューナを内蔵しており、TV番組の視聴や録画が行なえることも特徴だ。ゴーストリダクションや3次元Y/C分離回路、エッジエンハンサなどの高画質化テクノロジー「Dixel」を搭載しており、TV番組を高画質で楽しめる。ステレオスピーカー以外に底面にサブウーファを搭載するなど、オーディオ周りも充実している。 また、電源OFFの状態からでも、すぐにテレビの視聴や録画、DVD-Videoの再生などが可能な「インスタントMyMedia」機能を装備している。インスタントMyMediaは、付属の赤外線リモコンを利用しても操作が可能なので、家電感覚で気軽に使える。
●テンキーと指紋センサーを装備 ボディサイズが大きいので、キーボードにも余裕がある。キーピッチは約19mmで、キーストロークは約3mm、配列も標準的なので快適にタイピングが可能だ。また、右側にテンキーを装備していることも特徴だ。多数の数字を入力する場合、テンキーがあるとないのとでは、入力効率が大きく変わる。表計算ソフトを使う場合も、テンキーは役に立つ。 ポインティングデバイスとしては、パッド型のフラットポイントを搭載。スクロール機能付き光学式マウスも付属するので、好みに応じて使い分ければよいだろう。また、左右クリックボタンの間に、スライド方式の指紋センサーを搭載していることも特筆できる。パスワードを入力する代わりに、指紋センサーに指を滑らせることで認証が可能であり、セキュリティについても安心できる。 また、キーボードの上部に、円形のプログラマブルボタンやモードボタン、TVボタン、チャンネルボタン、録画ボタンなどの専用ボタンが用意されているのも便利だ。プログラマブルボタンは、モードボタンによって、CD/DVD操作モードとアプリケーション起動モードの切り替えが可能で、CD/DVD操作モード時には、ボタンにLEDによるアイコン表示が浮かび上がるようになっている。
●USB 2.0ポートを5基装備 インターフェイス類も豊富に揃っている。ポートとしては、外部ディスプレイ、IEEE 1394(4ピン)、USB 2.0×5のほか、音声入力端子、Sビデオ入力端子、コンポジット入力端子、アンテナ入力端子、D端子、Sビデオ出力端子、モデム、LANなどが用意されている。USB 2.0ポートが5つあれば、まず不足することはないだろう。 また、PCカードスロットとExpress Cardスロットを1基ずつ装備しているほか、SDメモリーカード/メモリースティック/xD-Picture Cardに対応したカードスロットも装備しているので、デジカメで撮影した画像の転送などに便利だ。また、IEEE 802.11a/b/g無線LANを装備しており、無線LANスイッチがキーボードの奥に用意されていることも評価できる。 バッテリの仕様や公称駆動時間は、現時点では未公表だが、試用機に装着されていたバッテリは、14.4V、2,000mAhの4セル仕様であった。本体のサイズの割に、バッテリの容量は小さめだが、本製品は基本的に据え置きで使われるマシンであるため、バッテリ駆動時間はそれほど重要ではない。
●デスクトップに負けないパフォーマンスを求める人にお勧め NX90/Rは、最新のモバイル向けデュアルコアCPU「Yonah」を搭載したマルチメディアノートPCである。高画質化機能を装備したTVチューナを内蔵し、2台のHDDを搭載するなど、機能的にも充実している。持ち運びを重視する人には向かないが、GPUを搭載していることとあわせて、デスクトップ代わりに使えるパワフルなノートPCを探している人には、特にお勧めしたいマシンだ。 □富士通のホームページ (2005年12月26日) [Reported by 石井英男]
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