PCパーツに限らず一世代前の製品というのは、価格が下がり、値頃感が出ることで、人気を集めることが多い。GeForce 6800シリーズも、そうした一世代前の製品といえるが、後継製品のGeForce 7800シリーズがハイエンドに向けた2製品のみのラインナップに留まっていることから、GeForce 6800もいまだ現役製品であるという一面を持っている。また、そのラインナップはメインストリームセグメントをもカバーできるほど広がり、性能差が分かりにくくなっているのも事実。そこで、ここでは現役のGeForce 6800シリーズを並べて、性能比較を行なっていきたい。 ●計7製品が登場したGeForce 6800シリーズ NV40の開発コード名で呼ばれたGPUが「GeForce 6800 Ultra」として登場したときの衝撃を覚えている方も多いだろう。ShaderModel 3.0に対応した初のビデオカードとして、また、3DMark03のスコアが1万を超えた初のビデオカードとしてインパクトが大きかった。 この、GeForce 6800の最初の製品であるGeForce 6800 Ultraが登場したのは2004年4月15日に遡る。当時はまだAGPが主流であり、GeForce 6800 UltraもAGP版が最初にリリースされた。そして、下位モデルのGeForce 6800 GTでHSIをオンチップ搭載しPCI Expressに対応。その後もバリエーションモデルがリリースされ、先月7日に発表された「GeForce 6800 GS」をもって、計7モデルが登場したことになる(表1)。
しかし、GeForce 6800には歩留まりの悪さというネックがあり、特に上位モデルは入手するのが困難な時期が続いてしまった。だが現在では、GeForce 6800 GSといったコアクロックを上げたモデルも登場し、GeForce 7800 GTX/GTの下位モデルとして、本製品にも活躍の場があるようだ。 下位モデルと書いたものの、GeForce 6800 GSは、ハイエンド製品のみで提供される機能の1つになってきた256bitメモリインターフェイスを持つ。しかも、3万円弱で購入できる。GeForce 6800 GTはそれより1万円ほど高価ではあるが、GeForce 7800シリーズの価格帯(5万円以上)に比べれば、かなり安価といえる。 本来のメインストリーム向け製品であるGeForce 6600シリーズの価格は1万半ば以下に下がってはいるが、GeForce 6800 GS/GTもちょっと前までのメインストリーム製品並みの価格帯で購入でき、買い得感は十分だ。 ●現役のGeForce 6800シリーズ4製品をテスト それでは、現在リリースされているGeForce 6800シリーズの4製品を集めて、ベンチマークを実施する。ここでは、すべてリファレンスカードに仕様が近いという理由で、InnoVision製品で統一している。 なお、GeForce 7800 GTX/GTの登場によりGeForce 6800 Ultraは製造終了になっている。本来OEM向けのGeForce 6800 GTO/LEも同様だ。GeForce 6800 LEは秋葉原等で現在も入手は可能だが、今後入手する機会は減る一方であるので、テストからは割愛している。 ちなみに、GeForce 6800 XT搭載製品で、今回のテスト中、相性と思われる問題が発生した。今回使用したカードは、nForce4 SLI環境では正常動作するものの、Intel 925XE環境ではビデオBIOS起動時にフリーズしたり、Windowsが起動してもベンチマークがほぼ完走しない状態であった。同一製品をもう1個用意してみたのだが、こちらはIntel 945G環境では正しく動作するものの、Intel 925XEとnForce4 SLI環境では同様のトラブルに見舞われた。個体差やロット差もあるとは思うが、少々気に留めておきたいポイントである。
では、順に結果を見ていきたい。まずはFutureMarkの「3DMark05」からである(グラフ1)。ここでは4製品を1つのグラフにまとめて掲載しているが、スペックや搭載製品のメモリ容量からある程度推測できる通り、GeForce 6800 GT/GSと、GeForce 6800無印/XTとで結果が大きく分かれた。 まず、GeForce 6800とGeForce 6800 XTについてだが、コア/メモリクロックが同一で、ピクセル/バーテックスシェーダのユニット数が異なる両者はら、その違いが素直に性能差として表れた結果になっている。この両製品は、今回実施した全テストで似たような傾向にあり、明確な性能差が見て取れる。 問題はピクセル/バーテックスシェーダが多いGeForce 6800 GTと、コアクロックが高いGeForce 6800 GSの性能差である。3DMark05のスコアを見ると、ほぼすべてのテストでGeForce 6800 GSが上回っており、コアクロックの高さが活きている結果となった。
もう少し詳細を見るため、3DMark05のFeature Testも実施してみた(グラフ2)。すると、Pixel/Vertex Shaderテストにおいても、GeForce 6800 GSが良好なスコアを見せており、ここまではGeForce 6800 GTのピクセルシェーダ/バーテックスシェーダの優位性はまったく現われていない。
そのGeForce 6800 GTの優位性がようやく見えてきたのが、Fill-Rateのマルチテクスチャリングテストである(グラフ3)。GeForce 6800 GSでは、ROPs(ラスタオペレーションサブシステム)数も減らされているという話があり、これも多少は影響したのかも知れない。
このほかに行なったテストは「3DMark03」(グラフ4)、「AquaMark3」(グラフ5)、「DOOM3」(グラフ6)、「UnrealTournament 2003」(グラフ7、8)だが、高解像度やアンチエイリアシング/異方性フィルタリングを適用するにつれ、GeForce 6800 GTが良好な結果を見せる傾向が強いことが分かる。特に、FSAAや異方性フィルタリングはピクセルシェーダの能力が大きく影響するため、こうした状況にGeForce 6800 GTの優位性があるといえる。 ただし、3DMark05やAquaMark3では、負荷が上がってもGeForce 6800 GSが上位のスコアを保ち続けている。これはバーテックスシェーダが行なうジオメトリ処理に負荷が大きすぎて、ピクセルパイプライン数の優位性が発揮されていないのではないかと想像される。
●GeForce 6800 GS、GeForce 6800に魅力 以上のとおり、GeForce 6800シリーズの比較を見てきたわけだが、下位モデルの製品選びは、それほど難しくないのではないだろうか。GeForce 6800とGeForce 6800 XTのスコア差は、かなり明確に表れている。それでいて、GeForce 6800が2万円前後、GeForce 6800 XTは17,000円前後と差は大きくなく、これならGeForce 6800を選んだほうが後悔しない結果になりそうである。 難しいのは、上位のGeForce 6800 GTとGeForce 6800 GSだ。解像度上昇やフィルタリングの適用によってGeForce 6800 GTに優位性があることが分かるが、そのメリットが表れずにGeForce 6800 GSがコアクロックの高さで押し切ってしまうケースが見られる。 この2製品の価格差は1万円前後であるが、GeForce 6800 GTは1万円を追加することで、より高い画質でもパフォーマンスを維持できるかも知れない、という点に投資をできるユーザー向けの製品だろう。パフォーマンスとコストのトータルバランスではGeForce 6800 GSに軍配が上がる印象で、広くお勧めできる製品といえる。 □関連記事 (2005年12月22日) [Text by 多和田新也]
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