[an error occurred while processing the directive]

エルピーダ、広島工場300mm増設ライン竣工
~2006年にDRAMトップスリーの地位を確保へ

広島工場全景

12月1日 開催



●世界トップスリーの地位を確保へ

 国内唯一のDRAM専門ベンダーであるエルピーダメモリ株式会社と、その100%子会社である広島エルピーダメモリ株式会社は12月1日、300mmウェハを処理する製造ライン「E300エリア2」の量産開始に伴う竣工式を開催した。竣工式には、半導体製造装置ベンダーや材料ベンダーなどの役員およそ130名が招待された。また報道機関向けには質疑応答の時間が設けられた。

竣工式会場の入口。広島エルピーダメモリの増設ラインである「E300エリア2」の隣に位置する、事務棟兼動力棟の「G棟」と呼ばれる建物の4階で実施された 広島エルピーダメモリの全景。左側の長い巨大な建屋が300mmウェハを処理する「E300」である。手前に既存のラインである「エリア1」、左奥に今回増設された「エリア2」と「エリア3」が位置する

 竣工式で挨拶に立った広島エルピーダメモリ代表取締役社長兼エルピーダメモリ取締役の大塚周一氏は、2006会計年度第2四半期(2006年7~9月期)にはDRAMの生産数量がbit換算で前年同期の3倍と大幅に増える見通しであると説明した。この結果、DRAMの世界市場におけるシェアは20%を超え、DRAMベンダーとして世界トップスリーの地位を確保するとの見通しを示した。「トップは無理でもナンバーツー、悪くてもトップスリーには入れるのではないか」(大塚氏)。なお調査会社であるIC Insightsによると、2004年にエルピーダメモリはDRAMベンダーとして世界5位にあり、市場シェアは6%だった。

広島エルピーダメモリの大塚周一代表取締役社長 DRAM生産数量(bit数換算)の増産計画。2005会計年度後半から急激に拡大させる

 この背景となるのがエルピーダメモリのきわめて積極的な設備投資である。同社は2005会計年度に1,900億円の設備投資を計画している。この中で300mmウェハ処理ラインである「E300」関連の投資が1,680億円を占める。

 2005会計年度第2四半期(2005年7~9月期)の時点で3万6千枚/月を処理中の「E300エリア1」に、10月に稼働を開始したエリア2が加わることで、300mmウェハの処理能力はエリア1とエリア2の合計で2005年会計年度第4四半期(2006年1~3月期)に5万4千枚/月に達する予定だ。

 さらに、中国SMIC(Semiconductor Manufacturing International Corp.)には2万5千枚/月、台湾PSC(Powerchip Semiconductor Corp.)には7千枚/月のDRAM生産を委託していることから、それぞれ2,000億円と560億円の設備投資に相当するとした。合計で4,460億円の設備投資を実施したことに等しいという。

2005会計年度の設備投資額。外部調達分を含めて4,460億円に達するとした 広島エルピーダメモリにおける直近の生産能力推移。当初計画よりも4カ月ほど前倒しで生産能力を拡大しつつある

●生まれ変わったDRAM量産ライン

 挨拶の中で大塚氏は、前身であるNEC広島(広島日本電気)と現在の広島エルピーダメモリは、まったく違う工場であることを強調した。

 エルピーダメモリがNEC広島を買収して2003年9月に広島エルピーダメモリを発足させてから、現在までに生産現場の意識は大きく変わったという。難しいこと、厳しいことを実行して当然という意識になっているとする。台湾のPSCに出張して彼我の差を目の当たりにしたことも大きかった。「台湾メーカーから得るところなどない」と軽視して出張した技術者が、PSCが生産技術で自分達よりも先に進んでいたという事実に落胆して帰ってきたという。PSCで学べたことが、現在につながっている。

 また生産技術者がいないと製造部が動かなかったのが、現在では製造部が率先して動くようになった。さらにコスト削減に対する意識が高まり、ウェハ1枚の不良から原因を追及するようになったとする。

 実際、さまざまな数字の変化が、生産現場の変革を裏付けている。例えば広島NECの200mmウェハラインだった「E200」は当初、最大処理能力が2万6千枚/月とされていた。ところが広島エルピーダメモリになってから生産性を高めたことで、現在では5万枚/月という当初の設計を大幅に超える枚数を処理している。300mmウェハラインの「E300エリア1」も初めは広島NECの生産ラインだった。最大処理能力の設計値は1万8千枚/月である。それが現在では、3万6千枚を月に処理するようになっている。

生産現場の意識の変化。「難しい」や「厳しい」といったマイナス言語は禁句だという エルピーダメモリと広島エルピーダメモリの沿革。エルピーダメモリは、日立製作所とNECのDRAM開発製造部門が分離統合して'99年12月に設立された。坂本幸雄氏がエルピーダメモリの代表取締役社長に就任したのが2002年11月。坂本社長以下の現経営陣の元でエルピーダメモリは初めて黒字化し、2004年11月には東証1部に上場を果たした 「E300エリア1」におけるウェハ処理枚数(Wafer Out)とリードタイム(Cycle Time)、生産歩留り(Line Yield)の推移。広島エルピーダメモリが発足した2003年9月を境にリードタイムが短くなり、生産歩留りが上がっていることが分かる。なお現在のリードタイムは40日であり、生産歩留りは99%を超えているという

「E200」と「E300」のウェハ処理枚数の推移および生産品目。E200では液晶ドライバなどの受託生産に力を入れている 広島エルピーダメモリにおける現在の生産状況。「E300エリア2」はクリーンルームの半分に製造装置を搬入し、この10月半ばから稼働を開始した。「E300エリア3」は建屋だけで、まだクリーンルームにはなっていない。将来の拡張に備えた建屋である。「エリア3」まで含めると、「E300」は全体で10万枚/月を超える処理能力を有するようになる 「E300」における製造ライン。局所クリーン化と自動搬送を組み合わせており、完全に自動化されている。作業員の主要業務は、製造装置のメンテナンスである

●年に10nmずつ微細化する

 このほか大塚社長は、エルピーダメモリは半導体製造技術を年に10nmのペースで微細化していく方針であることを示した。90nm技術による量産を2005年に開始した。80nm技術による量産を2006年には始める計画である。

エルピーダメモリにおける技術ロードマップ 90nm技術で処理するウェハの投入量。2006年3月には「E300」で処理するウェハの7割が90nm技術を活用するようになる

□エルピーダメモリのホームページ
http://www.elpida.com/ja/
□ニュースリリース
http://www.elpida.com/ja/news/2005/12-01.html
□関連記事
【11月21日】SMIC、本社CEO来日記者会見~2006年はエルピーダの生産能力を3.5倍に
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1121/smic.htm
【11月14日】エルピーダ、512Mbit DDR3モジュールのサンプル出荷開始
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/1115/elpida.htm
【8月23日】エルピーダ、512Mbit DDR3 SDRAMの開発を完了
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2005/0823/elpida.htm

(2005年12月2日)

[Reported by 福田昭]

【PC Watchホームページ】


PC Watch編集部 pc-watch-info@impress.co.jp
お問い合わせに対して、個別にご回答はいたしません。

Copyright (c)2005 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.